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高崎市 奈美のこと
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昼時になり、奈美が手作り弁当を取り出したのは、さすがに悪いと思った。
「いや、弁当まで用意してくれたの? 朝から大変だったね」
「ううん、昨日の残りを詰めただけで、たいしたもんじゃないんで」
プラパックが膨張するほど、ご飯が詰められてある。もうそれだけで美味そうだ。
たしか、奈美は、工場の食堂で働く調理師だと聞いていた。さすがに、こういったものは、手際よく用意するのだろうか。
卵焼きに、肉じゃがと、かぼちゃのコロッケ。それに、大和の大好物だというバナナ。
適当な日陰を見つけ、ゴザを敷いた。
奈美がコロッケを細かく刻むと、大和がそれをフォークで刺して、器用に食べている。
肉じゃがは難しいのか、自分で刺すことはできないようだ。
そのうち、自分で食べることに飽きたのか、口だけ開けて、運ぶようにねだっている。
「奈美、食えないでしょう。俺がやるから」
大和を抱きかかえ、膝の上に乗せた。
フォークで口に運んでやると、ほとんど丸呑みで肉じゃがを飲み込んだ。
さっきの消化していない人参は、こういうことらしい。
「ふふ」
「え、どうしたの?」
「いや、こいつ、頭が男臭い」
「そうなの、男の子って、子供の頃から体臭あるんですよね。知り合いの女の子は、汗を掻いても、そんなに匂わない」
昼を終えて、散歩。陽が、どんどん強くなってくる。
公園も歩き尽くしたところで、気軽な素振りで言ってみた。
「ホテルでも行く?」
「え? え? いや、え??」
「まさか、大和もいるし、変なことにはならないだろうから、お昼寝って感じでどう?」
思ったより驚かれて、こちらも顔が引きつりそうになった。
本当に、下心はなかったのだが、どうにかなるかもしれないという期待は、ないと言えば嘘だった。
「ああ、いいかも」
ホッとした。
しかし、子供が間にいるというだけで、こんなにもスムーズになるものだろうか。
邪魔どころか、潤滑油だ。
だけど、ホテルに行っても、こいつのおかげで、本当に何もない気がする。まあ、それもいい。
車に戻って、ホテルを検索すると、意外に、すぐ近くに数箇所もあった。
適当に決めたホテルに着き、降ろそうとすると、大和がぐずりだした。
「眠いんだ、きっと」
奈美の手を払い、俺の方へ抱っこしろという。
俺が気に入られたというより、単にぐずってそうしているのだと思う。
抱っこすると体全体があったかく、鼻が出ていたので、ティッシュで拭ってやった。
「重いでしょ。眠いと重くなるんです」
キーを受け取り、カビ臭いエレベーターに乗った。
それが開くとカビ臭い廊下で、枯れない造花が花瓶に挿されている。
この感じが、いつも嫌いじゃない。
部屋に入ると、エアコンが既に効いていて、広いベッドに大和を置いた。
奈美は自分の荷物を置き、すぐに大和のおむつを確認した。
「うんこはしてないけど、しっしたっぷりね」
俺は洗面所に向かい、うがいをした。
足元を、どうやってベッドから降りたのか、全裸の大和が歩いてきた。
「こら、やまとーっ、おむつ替えようね」
奈美が呼んでいる。
しばらく見ていると、大和が自分のものを触り始めた。
「?」
目を疑った。
「ああっ、大和、おしっこした!」
全裸でまさかの大放尿。
奈美が血相を変えて走ってきて、俺はしばらく笑いが止まらなかった。
「いや、弁当まで用意してくれたの? 朝から大変だったね」
「ううん、昨日の残りを詰めただけで、たいしたもんじゃないんで」
プラパックが膨張するほど、ご飯が詰められてある。もうそれだけで美味そうだ。
たしか、奈美は、工場の食堂で働く調理師だと聞いていた。さすがに、こういったものは、手際よく用意するのだろうか。
卵焼きに、肉じゃがと、かぼちゃのコロッケ。それに、大和の大好物だというバナナ。
適当な日陰を見つけ、ゴザを敷いた。
奈美がコロッケを細かく刻むと、大和がそれをフォークで刺して、器用に食べている。
肉じゃがは難しいのか、自分で刺すことはできないようだ。
そのうち、自分で食べることに飽きたのか、口だけ開けて、運ぶようにねだっている。
「奈美、食えないでしょう。俺がやるから」
大和を抱きかかえ、膝の上に乗せた。
フォークで口に運んでやると、ほとんど丸呑みで肉じゃがを飲み込んだ。
さっきの消化していない人参は、こういうことらしい。
「ふふ」
「え、どうしたの?」
「いや、こいつ、頭が男臭い」
「そうなの、男の子って、子供の頃から体臭あるんですよね。知り合いの女の子は、汗を掻いても、そんなに匂わない」
昼を終えて、散歩。陽が、どんどん強くなってくる。
公園も歩き尽くしたところで、気軽な素振りで言ってみた。
「ホテルでも行く?」
「え? え? いや、え??」
「まさか、大和もいるし、変なことにはならないだろうから、お昼寝って感じでどう?」
思ったより驚かれて、こちらも顔が引きつりそうになった。
本当に、下心はなかったのだが、どうにかなるかもしれないという期待は、ないと言えば嘘だった。
「ああ、いいかも」
ホッとした。
しかし、子供が間にいるというだけで、こんなにもスムーズになるものだろうか。
邪魔どころか、潤滑油だ。
だけど、ホテルに行っても、こいつのおかげで、本当に何もない気がする。まあ、それもいい。
車に戻って、ホテルを検索すると、意外に、すぐ近くに数箇所もあった。
適当に決めたホテルに着き、降ろそうとすると、大和がぐずりだした。
「眠いんだ、きっと」
奈美の手を払い、俺の方へ抱っこしろという。
俺が気に入られたというより、単にぐずってそうしているのだと思う。
抱っこすると体全体があったかく、鼻が出ていたので、ティッシュで拭ってやった。
「重いでしょ。眠いと重くなるんです」
キーを受け取り、カビ臭いエレベーターに乗った。
それが開くとカビ臭い廊下で、枯れない造花が花瓶に挿されている。
この感じが、いつも嫌いじゃない。
部屋に入ると、エアコンが既に効いていて、広いベッドに大和を置いた。
奈美は自分の荷物を置き、すぐに大和のおむつを確認した。
「うんこはしてないけど、しっしたっぷりね」
俺は洗面所に向かい、うがいをした。
足元を、どうやってベッドから降りたのか、全裸の大和が歩いてきた。
「こら、やまとーっ、おむつ替えようね」
奈美が呼んでいる。
しばらく見ていると、大和が自分のものを触り始めた。
「?」
目を疑った。
「ああっ、大和、おしっこした!」
全裸でまさかの大放尿。
奈美が血相を変えて走ってきて、俺はしばらく笑いが止まらなかった。
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