谷神は死せず

乍冥かたる

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死への時間

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ベッドの上で、天井を見つめた。

丸太が綺麗に並んでいて、寝返りを打つと、鼻腔内に木材のいい香りがやってきた。

しばらくすると、身体が小さく重くなり、寝入ってしまいそうになった。

「んー、だめだめ」

あと一時間もすれば、食事の時間だ。

どんな食事だろう。冬でもない美瑛では、カニやホタテという感じでもないし、美味しい野菜が食べたい。

そう思いながら、わたしは自然と股間に手を当てていた。

特に、変な気持ちになったという訳でもなく、いつものことなのだ。

自室でも、ベッドに横たわり、寝る前にこうして自慰をする。

初めて自慰を覚えたのは、小学生の時だった。あれは、五年生だったか、六年だったか。

愛用の抱き枕を抱えていた。それも、その日はいつもより強めに抱いていた。

抱き枕に当てた腰のあたりに覚えた妙な感覚。感覚は、中毒性をもって下半身を走り、下半身のその感覚を求めるために、何度も何度も腰を押し当てた。

押し当てながら分かった。感覚を感知している部分は腰ではないということを。

腰よりももっと中心の、もっと敏感な部分であり、抱き枕を離し、その敏感な部分に自分の手でパジャマ越しから触れたとき、トロンとするような、得も言われぬ快感があった。

わたしは、その快感の虜になった。

以来、寝るときは、うつぶせになり、手を股間に当て、そのトロンとした感覚のまま寝入ることが多くなった。

右手を股間に当て、中指や薬指あたりでその部分に触れるようにし、左手をその上から添える。

両手の指を少しギュッと押し付けると、トロンとした感覚が起こる。

そのまま、落ちるように寝てしまうのだが、これは、ひとつの幸福と言えた。


中学に入り、本格的に自慰を覚えた。

自分の指で性器を弄ることに自慰という名詞があり、特にわたしだけに与えられた感覚ではないらしいということ。

そういった世間的な概念と、さらに小学生来の行為を押し進めた新しい世界。

初めて、直接に性器を指で触れたのがその頃だった。

普段、下着を汚すだけの液体状のものが、直接そこに触れるにつけ、程よい滑りをもたらし、過剰な感覚を和らげ、あるいは敏感な感覚を増幅させた。

自分で肩や腰を揉んでも気持ち良さが足りないというが、自慰に関しては違った。

ミリ単位の感覚が、自分だけにしか分からない感覚とリズムがあった。

粘液に絡まりながら、中指が秘部を撫でる。

その一度目の撫で具合が心地良ければ、立て続けに同様に繰り返す。

弱ければ、立ちどころに強めに修正し、貪るように撫でる。

この間、数秒のこと。

一定の撫で具合に無意識に飽きれば、あるいは違和感があれば、また、変化を楽しみたいなら、リズムを変えるのだ。

ゆっくりと、ゆっくりと、焦らすように、ゆっくり、ゆっくりと楽しむときは、わたしは犬だった。

架空の主人がいて、その主人の優しさを涎を垂らしながら待つように、従順に焦らしに耐え、次の一手を待つ。

感覚が極まり、感度が極まると、あとは乱暴に性器を自らの指で犯した。

粘液はわたしの乱暴な指使いを守るように煽るように溢れ出し、感覚だけが脳天を乱舞する。

乱舞する感覚は直接的すぎて、身体はそれに呼応するように痺れ、ある一点の極みに達した時、身体は精神ごと何かに叩きつけられ、あとは解放という名の死だけがあった。



落ちに落ち、

落ちに落ち、


落ち着く先は、あらゆる不条理から脱却した、己自信を崩壊せしめた、心地良いだけの死だった。
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