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横暴な貴族と怪しい仮面
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「もう、明明後日か」
明明後日、つまり3日後には表彰式が始まるわけだが、俺は未だにダンジョン都市に滞在していた。
もっと早く王都に行ってもよかったんだが、王都は物価も高いと聞くし、あちらには家もない。金銭面を考慮すると、一軒家があるこちらにしばらくいた方が、節約になるだろうと考えたのだ。
あれから約2週間ほど準備期間があったわけなので、しっかりと作法は身につけることができた。
ファンのみんなにも表彰を受けることになったので、しばらく動画投稿をお休みするということを伝えている。
なのでダンジョンに行ったりはせず、午前に作法を練習し、午後からは日課のトレーニングをひたすら行う日々を送っていた。
トレーニングに集中できる期間が長期的に取れたため、練習不足だったCランク以上の魔物の力もだいぶ操れるようになってきた。
しかし、流石に長年使い続けてきたGランクの魔物の練度には敵わない。今後も練習が必要だろう。
その練習も兼ねて、今回の移動はCランク以上の魔物たちで行っていこうと考えている。必要な荷物をまとめて、早速街の外に向かおう。
♢♢♢♢♢♢
「なんだこのボロボロの馬車は!? こんなもので俺様を安全に運べるのか!?」
「ひぃぃぃ! 申し訳ございません! ただいま緊急で貸し出せる馬車がそちらしかなく……」
街から出るため、家から1番近い門へと来ていた。ここは確か、西門だったと思う。
普段はそこまで人が集まっているイメージのない西門なのだが、今日は結構騒がしくなっているな。
周りの反応を見るに、あの騒いでいる貴族らしき男が原因らしい。
「門番さん、ストレージの使用許可をいただいていいですか?」
「あ、ああ、かしこまりました。身分証の提示をお願いいたします」
「はい、これで」
街の中でストレージ機能を使うのは禁止されているわけだが、例外がいくつか存在する。そのうちの一つとして、門番に使用許可を得た場合は使用が許されているのだ。
ということで、許可を得たので荷物を全てストレージにしまっていく。大した量の荷物ではないが、手に持っていると邪魔だからな。
「ところで、あれ、なんの騒ぎなんです?」
教えてくれそうな雰囲気があったので、門番さんに話を振ってみる。すると、少し吃った後に口を開いた。
「あー、あの貴族様が乗ろうとしている馬車。実はあれ、王都行きの相席馬車だったんですけどね? 貴族様の馬車が使えなくなったからって、圧力をかけて馬車を貸切にして奪ったんですよ」
なるほど、貴族の権力を使って横暴なマネをしているわけか。しかも、奪ったのにも関わらず文句をタレていると。
「なるほど。迷惑なもんですね~。じゃあ、あそこに集まっている人たちって……」
「そうですね、馬車に乗るはずだった人たちだと思いますよ。まったく、理不尽な話だ」
本当に理不尽な話だ。あそこで騒いでいる男はまだ成人には見えないし、どこかの貴族の子息だろうな。
自分が偉いわけでもないのに威張り散らし、その権力を持って強制的にファンを増やし、また威張る。
人間界にもそういった貴族はかなり存在した。苦労して名声を集めているこちらからすると、貴族は本当に嫌いな人種だ。
どうせ、馬車を奪ったせいで馬車に乗れなくなった人たちのことなど何も考えていないのだろう。
「おい! お前ら! 何を不躾にこちらを見ている? 罰を与えられたいのか!」
馬車を奪われたんだ。そりゃ文句の一つや二つは言いたくなるし、理不尽な貴族のことを恨むだろう。
そんな恨めしい視線を感じ取ったのか、馬車に乗るはずだった数十名が、横暴貴族のターゲットにされてしまった。
「その馬車、ミィーたちが乗る馬車だもん! 勝手なこと言わないで!」
そんな横暴な態度に堪忍袋の緒が切れてしまったのだろう。1人の幼女が、声を震わせてそう言った。
「あぁん? なんだこのガキ! 俺様に楯突こうってか?」
「あぁ、ミィちゃん! 申し訳ございません貴族様! どうかお許しを!」
幼女に反抗されムカついたのか、貴族が声を荒げた。幼女の母が必死に謝罪するも、聞き分けるつもりはなさそうだ。
「おい! お前ら、名声値はいくつだ?」
「……私はEランクですが、この子はDランクです! とても優秀なスキルを持っていて」
「ハハハハ! EランクにDランク? クズじゃないか! お前らみたいなクズはな! 俺のような貴族様がありがたく始末してやるよ!」
母が必死に弁明するも、バカ貴族は最初から話を聞くつもりなんてなかったのだろう。
始末してやるよ!と、そう言い放った途端、巨大な炎が生成され、母娘に向かって射出された。
「キャァァァーー!!!」
まさかとは思ったがコイツ、本当にスキルを発動させやがった!
【眼の悪魔】
「あれ? なぜだ! なぜ俺の炎が!」
なんかいってらwww実に無様なり。
消失の魔眼により、貴族のスキルと魔力を消失させた。そして、何も知らないふりをして、馬車を奪われた彼らに声をかける。
「馬車がなくなって困っていると聞きました。僕も王都までいく予定があるのですが、よければ運んでいきましょうか?」
「は、運んでくれるたぁありがてえが、馬車もないようだし、どうやって運んでくれるんだ?」
【天龍】【地龍】【水龍】
「空でも、陸でも、海でも。お好みの方法で運んで差し上げますよ」
それぞれの龍の姿を見せた後、にっこりと微笑んでそう言った。
あ、仮面つけてるんだった。俺怪しっ。
明明後日、つまり3日後には表彰式が始まるわけだが、俺は未だにダンジョン都市に滞在していた。
もっと早く王都に行ってもよかったんだが、王都は物価も高いと聞くし、あちらには家もない。金銭面を考慮すると、一軒家があるこちらにしばらくいた方が、節約になるだろうと考えたのだ。
あれから約2週間ほど準備期間があったわけなので、しっかりと作法は身につけることができた。
ファンのみんなにも表彰を受けることになったので、しばらく動画投稿をお休みするということを伝えている。
なのでダンジョンに行ったりはせず、午前に作法を練習し、午後からは日課のトレーニングをひたすら行う日々を送っていた。
トレーニングに集中できる期間が長期的に取れたため、練習不足だったCランク以上の魔物の力もだいぶ操れるようになってきた。
しかし、流石に長年使い続けてきたGランクの魔物の練度には敵わない。今後も練習が必要だろう。
その練習も兼ねて、今回の移動はCランク以上の魔物たちで行っていこうと考えている。必要な荷物をまとめて、早速街の外に向かおう。
♢♢♢♢♢♢
「なんだこのボロボロの馬車は!? こんなもので俺様を安全に運べるのか!?」
「ひぃぃぃ! 申し訳ございません! ただいま緊急で貸し出せる馬車がそちらしかなく……」
街から出るため、家から1番近い門へと来ていた。ここは確か、西門だったと思う。
普段はそこまで人が集まっているイメージのない西門なのだが、今日は結構騒がしくなっているな。
周りの反応を見るに、あの騒いでいる貴族らしき男が原因らしい。
「門番さん、ストレージの使用許可をいただいていいですか?」
「あ、ああ、かしこまりました。身分証の提示をお願いいたします」
「はい、これで」
街の中でストレージ機能を使うのは禁止されているわけだが、例外がいくつか存在する。そのうちの一つとして、門番に使用許可を得た場合は使用が許されているのだ。
ということで、許可を得たので荷物を全てストレージにしまっていく。大した量の荷物ではないが、手に持っていると邪魔だからな。
「ところで、あれ、なんの騒ぎなんです?」
教えてくれそうな雰囲気があったので、門番さんに話を振ってみる。すると、少し吃った後に口を開いた。
「あー、あの貴族様が乗ろうとしている馬車。実はあれ、王都行きの相席馬車だったんですけどね? 貴族様の馬車が使えなくなったからって、圧力をかけて馬車を貸切にして奪ったんですよ」
なるほど、貴族の権力を使って横暴なマネをしているわけか。しかも、奪ったのにも関わらず文句をタレていると。
「なるほど。迷惑なもんですね~。じゃあ、あそこに集まっている人たちって……」
「そうですね、馬車に乗るはずだった人たちだと思いますよ。まったく、理不尽な話だ」
本当に理不尽な話だ。あそこで騒いでいる男はまだ成人には見えないし、どこかの貴族の子息だろうな。
自分が偉いわけでもないのに威張り散らし、その権力を持って強制的にファンを増やし、また威張る。
人間界にもそういった貴族はかなり存在した。苦労して名声を集めているこちらからすると、貴族は本当に嫌いな人種だ。
どうせ、馬車を奪ったせいで馬車に乗れなくなった人たちのことなど何も考えていないのだろう。
「おい! お前ら! 何を不躾にこちらを見ている? 罰を与えられたいのか!」
馬車を奪われたんだ。そりゃ文句の一つや二つは言いたくなるし、理不尽な貴族のことを恨むだろう。
そんな恨めしい視線を感じ取ったのか、馬車に乗るはずだった数十名が、横暴貴族のターゲットにされてしまった。
「その馬車、ミィーたちが乗る馬車だもん! 勝手なこと言わないで!」
そんな横暴な態度に堪忍袋の緒が切れてしまったのだろう。1人の幼女が、声を震わせてそう言った。
「あぁん? なんだこのガキ! 俺様に楯突こうってか?」
「あぁ、ミィちゃん! 申し訳ございません貴族様! どうかお許しを!」
幼女に反抗されムカついたのか、貴族が声を荒げた。幼女の母が必死に謝罪するも、聞き分けるつもりはなさそうだ。
「おい! お前ら、名声値はいくつだ?」
「……私はEランクですが、この子はDランクです! とても優秀なスキルを持っていて」
「ハハハハ! EランクにDランク? クズじゃないか! お前らみたいなクズはな! 俺のような貴族様がありがたく始末してやるよ!」
母が必死に弁明するも、バカ貴族は最初から話を聞くつもりなんてなかったのだろう。
始末してやるよ!と、そう言い放った途端、巨大な炎が生成され、母娘に向かって射出された。
「キャァァァーー!!!」
まさかとは思ったがコイツ、本当にスキルを発動させやがった!
【眼の悪魔】
「あれ? なぜだ! なぜ俺の炎が!」
なんかいってらwww実に無様なり。
消失の魔眼により、貴族のスキルと魔力を消失させた。そして、何も知らないふりをして、馬車を奪われた彼らに声をかける。
「馬車がなくなって困っていると聞きました。僕も王都までいく予定があるのですが、よければ運んでいきましょうか?」
「は、運んでくれるたぁありがてえが、馬車もないようだし、どうやって運んでくれるんだ?」
【天龍】【地龍】【水龍】
「空でも、陸でも、海でも。お好みの方法で運んで差し上げますよ」
それぞれの龍の姿を見せた後、にっこりと微笑んでそう言った。
あ、仮面つけてるんだった。俺怪しっ。
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