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理不尽には理不尽を
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貴族の理不尽に晒され、命の危険にさえ晒された人々。そんな彼らが見ていられなくて、ついつい一緒に王都まで行く?なんて誘ってしまったわけだ。
しかし、即答で『はい行きます!』とはならないよなぁ。『すこし考える時間をくれ』とこちらに告げ、家族や知り合い同士で相談を始めた。
やはり仮面をかぶっていると警戒されやすいのか?それとも、龍に乗るという未体験の出来事に不安を覚えているのだろうか。
どちらの可能性もあるし、どちらも仕方のないことだ。むしろ、しっかりと警戒心を持っていて感心するくらいである。
「あの、すみません。もしかしてヴァリアンさんですか?」
みんなが答えを出すのを待っていると、1人の女性が一歩前に出てそう言った。どうやら、俺のことを知ってくれている人がいたみたいだな。
「はい、知ってくれてるんですね! 嬉しいです!」
「やっぱりヴァリアンさんだった! いつも見てます! 見覚えのある人だなぁと思ってたんですよ! 」
おお、知ってくれているだけでなく、いつも配信を見てくれているらしい。なんだか、Aランクになったことを実感する日々である。
常連視聴者との出会いに感激し、ありがとうございます。と頭を下げる。
「あぁ……この謙虚な感じ、本当に本物だぁ……。私、1週間後に王都で大事な用があるんです! ヴァリアンさんに乗せていってもらってもいいですか?」
俺のいつもの態度で、本物だと判断を下したようだ。最近、少し天狗になっていたせいで『あんた偽物だろ!』って言われてしまわなくてよかった。
「ええ、ぜひ乗っていってください! 絶対安全にお運びしますから!」
「ふふ、そこは信用してますよぉ」
大事な視聴者だ。絶対に運んでいる最中にヘマをする訳にはいかない。元より大切に運ぶつもりだったが、さらに気合が入った。
その後も雑談を交わしていると、そんな俺たちの善良な雰囲気を感じ取ったのか、徐々に乗客が増えていく。
幸い、龍になった俺の体は巨大だ。店員オーバーの心配はない。なんなら、風を操って数千人を運ぶことだってできるだろう。
結局、王都へ行くはずだった人全員だけでなく、龍に乗ってみたいという人間も加わり、100人ほどを運ぶことになった。大仕事だな。
「それじゃ、そろそろ行きますか」
「おぉぉぉぉぉ!」
「いよいよか!」
「貴族様に馬車を奪われた時はどうなることかと思ったが、結果オーライだな!」
「ママ! ミィーちゃん、お空を飛ぶの?」
「そうよ、あのお兄ちゃんがお空の旅に招待してくれたのよ。後でお礼を言いに行こうね」
「うん!」
そろそろ出発することを乗客たちに呼びかけると、期待と興奮の混じった歓声が飛び交う。やはり、魔界でも空の旅は珍しいものなのだろう。翼の生えた魔族は例外として。
「おい! まて!」
早速天龍に変化しようとしていると、先程のバカ貴族が声を荒げた。こいつ、まだ居たのかよ。あんだけ恥かいたんだから、さっさと居なくなればいいのに。
「なんです?」
「なんだその態度は! ふん、まあいい。今の態度を不問にしてやる代わりに、お前に俺を乗せろ! もちろん貸し切りでな!」
なんの用かと思えば、よく脂の乗った贅肉をプルプルと揺らしながらそう言った。
偉そうな顔が鼻につく。全てが自分の言うとおりになると思っている、その態度が。
乗客たちの馬車を奪っただけでなく、俺という移動手段までこの人たちから奪おうというのか。
「いえいえ、貴族様を乗せるなんてことできませんよ。万が一のことがありますから。」
「なんだと!? 貴様、俺様の言う通りにできないと言うのか?」
本当にコイツは話が通じないな。殺してしまおうか? コイツを見ていると、人間界のクズを思い出す。魔界に来てから久しく忘れていた、この理不尽という名の暴力の不快感を。
「そもそも、貴方のような人間に空の旅が耐えられるんです?ビビって暴れられちゃ困るんですよ」
「貴様! 俺様を侮辱したな! 死刑、死刑だ! この件はお父様に」
【天龍】
グァァァァァァァァァァァ!!!!
「うわぁぁぁぁぁぁ!!! パパぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ひたすらに、腹が立った。魔界ではいい人たちとばかり触れ合っていたからだろうか。それとも、力を得て俺も変わってしまったのだろうか。
人間界にいた頃なら軽く流せていたような、そんな日常の理不尽にも激しく腹が立った。
だが、その程度で手を出しては同格の人間に落ちると言ったものだ。軽く吼えるだけにとどめておいてやろう。
冒険者なら誰でも耐えられるような、その程度の威圧。この貴族が日常で振り撒いている理不尽や恐怖より数段劣る悪意。
たったその程度のものを受けただけであるのに、尻餅をついて失禁する始末。今まで、どれだけ甘やかされてきたのかが透けて見えるようだ。
逃げようとしても腰が抜けて逃げられず、手足を子供のようにバタバタとさせている。実に滑稽である。
「この程度でビビってちゃ、やっぱり乗せるわけにはいかないですね。馬車の利用をおすすめします」
我ながら大人気なかったかなとは思う。でも仕方ないよな。この世では名声値が、力が全てなんだから。
俺はそれを、痛いほど知っている。
あとがき
ここまでお読みいただきありがとうございます!
今回は、少しイキった俺つえええ回を作ってみました!どうか不評でないことを願います。よろしければ、感想、評価、お待ちしております!
しかし、即答で『はい行きます!』とはならないよなぁ。『すこし考える時間をくれ』とこちらに告げ、家族や知り合い同士で相談を始めた。
やはり仮面をかぶっていると警戒されやすいのか?それとも、龍に乗るという未体験の出来事に不安を覚えているのだろうか。
どちらの可能性もあるし、どちらも仕方のないことだ。むしろ、しっかりと警戒心を持っていて感心するくらいである。
「あの、すみません。もしかしてヴァリアンさんですか?」
みんなが答えを出すのを待っていると、1人の女性が一歩前に出てそう言った。どうやら、俺のことを知ってくれている人がいたみたいだな。
「はい、知ってくれてるんですね! 嬉しいです!」
「やっぱりヴァリアンさんだった! いつも見てます! 見覚えのある人だなぁと思ってたんですよ! 」
おお、知ってくれているだけでなく、いつも配信を見てくれているらしい。なんだか、Aランクになったことを実感する日々である。
常連視聴者との出会いに感激し、ありがとうございます。と頭を下げる。
「あぁ……この謙虚な感じ、本当に本物だぁ……。私、1週間後に王都で大事な用があるんです! ヴァリアンさんに乗せていってもらってもいいですか?」
俺のいつもの態度で、本物だと判断を下したようだ。最近、少し天狗になっていたせいで『あんた偽物だろ!』って言われてしまわなくてよかった。
「ええ、ぜひ乗っていってください! 絶対安全にお運びしますから!」
「ふふ、そこは信用してますよぉ」
大事な視聴者だ。絶対に運んでいる最中にヘマをする訳にはいかない。元より大切に運ぶつもりだったが、さらに気合が入った。
その後も雑談を交わしていると、そんな俺たちの善良な雰囲気を感じ取ったのか、徐々に乗客が増えていく。
幸い、龍になった俺の体は巨大だ。店員オーバーの心配はない。なんなら、風を操って数千人を運ぶことだってできるだろう。
結局、王都へ行くはずだった人全員だけでなく、龍に乗ってみたいという人間も加わり、100人ほどを運ぶことになった。大仕事だな。
「それじゃ、そろそろ行きますか」
「おぉぉぉぉぉ!」
「いよいよか!」
「貴族様に馬車を奪われた時はどうなることかと思ったが、結果オーライだな!」
「ママ! ミィーちゃん、お空を飛ぶの?」
「そうよ、あのお兄ちゃんがお空の旅に招待してくれたのよ。後でお礼を言いに行こうね」
「うん!」
そろそろ出発することを乗客たちに呼びかけると、期待と興奮の混じった歓声が飛び交う。やはり、魔界でも空の旅は珍しいものなのだろう。翼の生えた魔族は例外として。
「おい! まて!」
早速天龍に変化しようとしていると、先程のバカ貴族が声を荒げた。こいつ、まだ居たのかよ。あんだけ恥かいたんだから、さっさと居なくなればいいのに。
「なんです?」
「なんだその態度は! ふん、まあいい。今の態度を不問にしてやる代わりに、お前に俺を乗せろ! もちろん貸し切りでな!」
なんの用かと思えば、よく脂の乗った贅肉をプルプルと揺らしながらそう言った。
偉そうな顔が鼻につく。全てが自分の言うとおりになると思っている、その態度が。
乗客たちの馬車を奪っただけでなく、俺という移動手段までこの人たちから奪おうというのか。
「いえいえ、貴族様を乗せるなんてことできませんよ。万が一のことがありますから。」
「なんだと!? 貴様、俺様の言う通りにできないと言うのか?」
本当にコイツは話が通じないな。殺してしまおうか? コイツを見ていると、人間界のクズを思い出す。魔界に来てから久しく忘れていた、この理不尽という名の暴力の不快感を。
「そもそも、貴方のような人間に空の旅が耐えられるんです?ビビって暴れられちゃ困るんですよ」
「貴様! 俺様を侮辱したな! 死刑、死刑だ! この件はお父様に」
【天龍】
グァァァァァァァァァァァ!!!!
「うわぁぁぁぁぁぁ!!! パパぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ひたすらに、腹が立った。魔界ではいい人たちとばかり触れ合っていたからだろうか。それとも、力を得て俺も変わってしまったのだろうか。
人間界にいた頃なら軽く流せていたような、そんな日常の理不尽にも激しく腹が立った。
だが、その程度で手を出しては同格の人間に落ちると言ったものだ。軽く吼えるだけにとどめておいてやろう。
冒険者なら誰でも耐えられるような、その程度の威圧。この貴族が日常で振り撒いている理不尽や恐怖より数段劣る悪意。
たったその程度のものを受けただけであるのに、尻餅をついて失禁する始末。今まで、どれだけ甘やかされてきたのかが透けて見えるようだ。
逃げようとしても腰が抜けて逃げられず、手足を子供のようにバタバタとさせている。実に滑稽である。
「この程度でビビってちゃ、やっぱり乗せるわけにはいかないですね。馬車の利用をおすすめします」
我ながら大人気なかったかなとは思う。でも仕方ないよな。この世では名声値が、力が全てなんだから。
俺はそれを、痛いほど知っている。
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