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グレッティ商会の仕事人

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「うわぁぁぁぁぁぁ!」

 宿屋を探して歩いていると、後ろ側で叫び声が上がった。

 どうやら、荷物を運んでいた男性が転けてしまったようだ。腕から零れ落ちた大量の荷物が宙を舞い、男性の表情が絶望に染まった。


【風妖の瞳】


 荷物が地面につく寸前、風を巻き起こして荷物を浮遊させる。危ないところだった。もう少し気づくのが遅れていたら、大量の木箱が散乱して中身も大変なことになっていたはずだ。

 状況は理解できていないものの、荷物が無事だったことに安堵したようだ。男性の表情が絶望から困惑に変わった。

「大丈夫ですか?」
「あ、あぁ、大丈夫です。……これはあなたが?」
「はい、割れ物が入っていたら大変だと思って咄嗟に。ご迷惑でしたか?」
「いえいえいえいえ! とんでもない! ほんっとうに助かりました! ありがとうございます! 」
 
 荷物が無事だったことで、男性の表情がパァッと明るくなる。野郎の笑顔に興味はないが、人助けとは気持ちの良いものだ。

 表情から大切なものだとは分かっていたので、助けられて良かった。

「これ、どこまで運ぶんです? また落としたら大変ですし、このまま運ぶの手伝いますよ」
「申し訳ねぇ……お願いしてもいいですかね?」
「もちろんですよ。ちょうど暇してたんです」

 彼は俺の提案を飲んだ後、浮遊している荷物の中からいくつかを拾い上げた。どれもがかなりの大きさをしているので、あれだけでもかなり重いだろうな。

 この量を1人で運ばなくてはいけないとは、一体どんなブラックな労働先なんだろうか。少し用心しながら進もう。

「目的地はグレッティ商会ってところでして、この王都でも1番大きな商会です……っと、ちょうど見えてきましたね、あの赤い屋根の建物です」

 彼の指示に従いながら道を進んでいくと、馬鹿でかい建物が現れた。いや、でかすぎだろ。あれが商会?貴族の屋敷じゃなくて?

 見渡してみるも、赤い屋根の建物は他にないし、あれがグレッティ商会で間違いなさそうだ。

 ぷかぷかと浮かぶ荷物たちにかなり視線を感じるが、気にしないで商会の裏口と進んで行く。

「ここまでで大丈夫ですので、本当にありがとうございました」

 目的に到着すると、彼はいい笑顔でそう言い、何度も頭を下げた。

 礼を受け取り、言われた通りに荷物を降ろした。すると、それらを木の板の上にどんどん積み上げていく。

 仕事に戻ったようだし、邪魔しないようにささっと退散しよう。

 しかし、せっかくここまで来たのに宿探しに戻るのはもったいないよな。先程の彼がクーポン券をくれたことだし、何か買い物でもしていこうか。

 

 
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