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街視点:虹の軌跡と希望
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スタンピートとは滅多に起こるものではないが、ダンジョンの数が多ければ多いほどその可能性は高くなる。
つまり、周囲に無数のダンジョンがあるダンジョン都市こと魔法都市カステルは、比較的スタンピートが起こりやすい街だということだ。
そのため街は巨大な石の城壁に囲まれ、魔物の襲撃に備えられるようになっているそうだ。そんな石の壁には4つの門が存在し、それぞれ東口、西口、南口、北口と呼ばれている。
「ったく、なんでよりによって南口なんだよ!」
「家が南口の近くにあるせいで不安になるのはわかるが、ちゃんと手を動かせよ」
「はいはい、わかってるよ。」
今回スタンピートが起こったのは、南口の方向にあるSSランクダンジョンである。そのため、武力を持たない民衆のほとんどは南口の反対にある北口の近くに避難させられていた。
もちろん街の外へ逃げていくことができた人々も存在するが、馬車等の移動手段を持つ貴族や運よく馬車に乗れた数少ない平民のみである。
流石に、この都市に住む数十万人の全てを1度に移動させる手段は存在しないのだ。そのため、武力あるものは民衆を守るための準備を進めていた。
「こっちは配置終わったぜ。そっちはどうだ?」
「俺のところももう終わる。他にやることは無さそうだし……装備のメンテナンスでもしておけ」
Dランク以上の冒険者達は作戦会議を進めている中、Eランク以下の冒険者達はポーションの配置や罠アイテムの設置などを任されていた。
「了解。……ん? 光? いや、あれ魔物じゃねえか!? なんでこんな早く!?」
そんな中、一足先に作業を終えた冒険者がふと街の外を眺めると、こちらに迫り来る魔物の大群を発見したのだ。
作業を進める数十名の冒険者に焦りが広がる。魔物の大群となれば、自分たちだけでは到底他者できないからである。
「お、おれ! ギルドに応援を呼んでくる!」
「まて、焦るな。焦ってもいい事はないぞ。ぱっと見魔物の数は少ないし、多くて400程度だろう。一度魔物の種類を判別してから、相性のいい冒険者を数パーティー連れてくればいい」
焦って冒険者ギルドに駆け込もうとする若い冒険者に対し、貫禄のある中年冒険者は冷静に一言。
ギルドに駆け込む前に、一度魔物の詳細を確認する判断を下した。
魔物の詳細もわからずギルドに飛び込み「ま、魔物がもう来やがった!」とでも叫ぼうものなら、無駄な混乱を招くのは目に見えているからだ。
「あ、あぁ。そうだな。スキルで確認してみる」
「お前、あそこまで見えるか? よければ俺も手伝うけど」
「多分ギリギリかな。バフを頼むよ」
「おけおけ」
「それなら、俺がその視覚を全員に共有するぜ」
やはり、貫禄や余裕というのは周囲の人間にも安心感を与えるようで、この場の混乱はだいぶ鎮まった。
そして、低ランク冒険者たちは協力して魔物の判別のために動き始めたのである。
【眼球操作:視力増強】
【感覚支援:視力強化】
【感覚共有:簡易視覚】
「あん? 虹?……ハハハッ! こいつはすげえ!」
1人の冒険者がスキルによって視力を強化し、街に迫り来る魔物の大群を観察した。すると突然、狂ったように笑い出したのである。
「いや、あれを見ろって……そうか。共有されてる視覚は少し視力が落ちるもんな。もう少しで見えるようになるだろうから、よく見ておけって」
「は? なんだよそれ。一応非常事態なんだからな?勿体ぶんなよ」
「ふはは、普通ならこんな事はしないさ。でも、お前たちにも希望ってもんを味わってもらいたいと思ってな」
なにやら意味深な発言をする冒険者に対し少しの不信感を抱きつつも、その場に集まった冒険者たちは、共有された視覚から目が離せなかった。
希望とは? 一体何が来ているっていうんだ?
そして、彼らは目撃した。背の高いゴブリンを守るように囲む、340の宝石を。
「おいおいマジか! 」
「ヴァリアンじゃねえか!」
先に見た冒険者が言った通り、それはまさに『希望』だった。
「緊急招集の時にもいなかったし、今回は来れねえのかと思ったぜ!」
「Sランクが1人と……いや、Sランクが複数人とBランク相当の従魔が300以上! これは勝ったな!」
普通、冒険者たちは日帰りでダンジョンを攻略するものだが、ヴァリアンは何日間も泊まり込みでダンジョンに潜ることで有名な狂った冒険者だ。
そのため、ダンジョン内にいるせいでスタンピートの警報が届かず、到着が遅れるのではないか。あるいは、来れないのではないかと予想されていたのだ。
「おいおい……脳汁止まんねぇ……。っ! 足の速えやつ! 冒険者ギルドに行って伝えろ!」
「おうよ!」
彼らは、本物の笑顔を思い出した。
つまり、周囲に無数のダンジョンがあるダンジョン都市こと魔法都市カステルは、比較的スタンピートが起こりやすい街だということだ。
そのため街は巨大な石の城壁に囲まれ、魔物の襲撃に備えられるようになっているそうだ。そんな石の壁には4つの門が存在し、それぞれ東口、西口、南口、北口と呼ばれている。
「ったく、なんでよりによって南口なんだよ!」
「家が南口の近くにあるせいで不安になるのはわかるが、ちゃんと手を動かせよ」
「はいはい、わかってるよ。」
今回スタンピートが起こったのは、南口の方向にあるSSランクダンジョンである。そのため、武力を持たない民衆のほとんどは南口の反対にある北口の近くに避難させられていた。
もちろん街の外へ逃げていくことができた人々も存在するが、馬車等の移動手段を持つ貴族や運よく馬車に乗れた数少ない平民のみである。
流石に、この都市に住む数十万人の全てを1度に移動させる手段は存在しないのだ。そのため、武力あるものは民衆を守るための準備を進めていた。
「こっちは配置終わったぜ。そっちはどうだ?」
「俺のところももう終わる。他にやることは無さそうだし……装備のメンテナンスでもしておけ」
Dランク以上の冒険者達は作戦会議を進めている中、Eランク以下の冒険者達はポーションの配置や罠アイテムの設置などを任されていた。
「了解。……ん? 光? いや、あれ魔物じゃねえか!? なんでこんな早く!?」
そんな中、一足先に作業を終えた冒険者がふと街の外を眺めると、こちらに迫り来る魔物の大群を発見したのだ。
作業を進める数十名の冒険者に焦りが広がる。魔物の大群となれば、自分たちだけでは到底他者できないからである。
「お、おれ! ギルドに応援を呼んでくる!」
「まて、焦るな。焦ってもいい事はないぞ。ぱっと見魔物の数は少ないし、多くて400程度だろう。一度魔物の種類を判別してから、相性のいい冒険者を数パーティー連れてくればいい」
焦って冒険者ギルドに駆け込もうとする若い冒険者に対し、貫禄のある中年冒険者は冷静に一言。
ギルドに駆け込む前に、一度魔物の詳細を確認する判断を下した。
魔物の詳細もわからずギルドに飛び込み「ま、魔物がもう来やがった!」とでも叫ぼうものなら、無駄な混乱を招くのは目に見えているからだ。
「あ、あぁ。そうだな。スキルで確認してみる」
「お前、あそこまで見えるか? よければ俺も手伝うけど」
「多分ギリギリかな。バフを頼むよ」
「おけおけ」
「それなら、俺がその視覚を全員に共有するぜ」
やはり、貫禄や余裕というのは周囲の人間にも安心感を与えるようで、この場の混乱はだいぶ鎮まった。
そして、低ランク冒険者たちは協力して魔物の判別のために動き始めたのである。
【眼球操作:視力増強】
【感覚支援:視力強化】
【感覚共有:簡易視覚】
「あん? 虹?……ハハハッ! こいつはすげえ!」
1人の冒険者がスキルによって視力を強化し、街に迫り来る魔物の大群を観察した。すると突然、狂ったように笑い出したのである。
「いや、あれを見ろって……そうか。共有されてる視覚は少し視力が落ちるもんな。もう少しで見えるようになるだろうから、よく見ておけって」
「は? なんだよそれ。一応非常事態なんだからな?勿体ぶんなよ」
「ふはは、普通ならこんな事はしないさ。でも、お前たちにも希望ってもんを味わってもらいたいと思ってな」
なにやら意味深な発言をする冒険者に対し少しの不信感を抱きつつも、その場に集まった冒険者たちは、共有された視覚から目が離せなかった。
希望とは? 一体何が来ているっていうんだ?
そして、彼らは目撃した。背の高いゴブリンを守るように囲む、340の宝石を。
「おいおいマジか! 」
「ヴァリアンじゃねえか!」
先に見た冒険者が言った通り、それはまさに『希望』だった。
「緊急招集の時にもいなかったし、今回は来れねえのかと思ったぜ!」
「Sランクが1人と……いや、Sランクが複数人とBランク相当の従魔が300以上! これは勝ったな!」
普通、冒険者たちは日帰りでダンジョンを攻略するものだが、ヴァリアンは何日間も泊まり込みでダンジョンに潜ることで有名な狂った冒険者だ。
そのため、ダンジョン内にいるせいでスタンピートの警報が届かず、到着が遅れるのではないか。あるいは、来れないのではないかと予想されていたのだ。
「おいおい……脳汁止まんねぇ……。っ! 足の速えやつ! 冒険者ギルドに行って伝えろ!」
「おうよ!」
彼らは、本物の笑顔を思い出した。
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