94 / 111
街視点:虹の軌跡と希望
しおりを挟む
スタンピートとは滅多に起こるものではないが、ダンジョンの数が多ければ多いほどその可能性は高くなる。
つまり、周囲に無数のダンジョンがあるダンジョン都市こと魔法都市カステルは、比較的スタンピートが起こりやすい街だということだ。
そのため街は巨大な石の城壁に囲まれ、魔物の襲撃に備えられるようになっているそうだ。そんな石の壁には4つの門が存在し、それぞれ東口、西口、南口、北口と呼ばれている。
「ったく、なんでよりによって南口なんだよ!」
「家が南口の近くにあるせいで不安になるのはわかるが、ちゃんと手を動かせよ」
「はいはい、わかってるよ。」
今回スタンピートが起こったのは、南口の方向にあるSSランクダンジョンである。そのため、武力を持たない民衆のほとんどは南口の反対にある北口の近くに避難させられていた。
もちろん街の外へ逃げていくことができた人々も存在するが、馬車等の移動手段を持つ貴族や運よく馬車に乗れた数少ない平民のみである。
流石に、この都市に住む数十万人の全てを1度に移動させる手段は存在しないのだ。そのため、武力あるものは民衆を守るための準備を進めていた。
「こっちは配置終わったぜ。そっちはどうだ?」
「俺のところももう終わる。他にやることは無さそうだし……装備のメンテナンスでもしておけ」
Dランク以上の冒険者達は作戦会議を進めている中、Eランク以下の冒険者達はポーションの配置や罠アイテムの設置などを任されていた。
「了解。……ん? 光? いや、あれ魔物じゃねえか!? なんでこんな早く!?」
そんな中、一足先に作業を終えた冒険者がふと街の外を眺めると、こちらに迫り来る魔物の大群を発見したのだ。
作業を進める数十名の冒険者に焦りが広がる。魔物の大群となれば、自分たちだけでは到底他者できないからである。
「お、おれ! ギルドに応援を呼んでくる!」
「まて、焦るな。焦ってもいい事はないぞ。ぱっと見魔物の数は少ないし、多くて400程度だろう。一度魔物の種類を判別してから、相性のいい冒険者を数パーティー連れてくればいい」
焦って冒険者ギルドに駆け込もうとする若い冒険者に対し、貫禄のある中年冒険者は冷静に一言。
ギルドに駆け込む前に、一度魔物の詳細を確認する判断を下した。
魔物の詳細もわからずギルドに飛び込み「ま、魔物がもう来やがった!」とでも叫ぼうものなら、無駄な混乱を招くのは目に見えているからだ。
「あ、あぁ。そうだな。スキルで確認してみる」
「お前、あそこまで見えるか? よければ俺も手伝うけど」
「多分ギリギリかな。バフを頼むよ」
「おけおけ」
「それなら、俺がその視覚を全員に共有するぜ」
やはり、貫禄や余裕というのは周囲の人間にも安心感を与えるようで、この場の混乱はだいぶ鎮まった。
そして、低ランク冒険者たちは協力して魔物の判別のために動き始めたのである。
【眼球操作:視力増強】
【感覚支援:視力強化】
【感覚共有:簡易視覚】
「あん? 虹?……ハハハッ! こいつはすげえ!」
1人の冒険者がスキルによって視力を強化し、街に迫り来る魔物の大群を観察した。すると突然、狂ったように笑い出したのである。
「いや、あれを見ろって……そうか。共有されてる視覚は少し視力が落ちるもんな。もう少しで見えるようになるだろうから、よく見ておけって」
「は? なんだよそれ。一応非常事態なんだからな?勿体ぶんなよ」
「ふはは、普通ならこんな事はしないさ。でも、お前たちにも希望ってもんを味わってもらいたいと思ってな」
なにやら意味深な発言をする冒険者に対し少しの不信感を抱きつつも、その場に集まった冒険者たちは、共有された視覚から目が離せなかった。
希望とは? 一体何が来ているっていうんだ?
そして、彼らは目撃した。背の高いゴブリンを守るように囲む、340の宝石を。
「おいおいマジか! 」
「ヴァリアンじゃねえか!」
先に見た冒険者が言った通り、それはまさに『希望』だった。
「緊急招集の時にもいなかったし、今回は来れねえのかと思ったぜ!」
「Sランクが1人と……いや、Sランクが複数人とBランク相当の従魔が300以上! これは勝ったな!」
普通、冒険者たちは日帰りでダンジョンを攻略するものだが、ヴァリアンは何日間も泊まり込みでダンジョンに潜ることで有名な狂った冒険者だ。
そのため、ダンジョン内にいるせいでスタンピートの警報が届かず、到着が遅れるのではないか。あるいは、来れないのではないかと予想されていたのだ。
「おいおい……脳汁止まんねぇ……。っ! 足の速えやつ! 冒険者ギルドに行って伝えろ!」
「おうよ!」
彼らは、本物の笑顔を思い出した。
つまり、周囲に無数のダンジョンがあるダンジョン都市こと魔法都市カステルは、比較的スタンピートが起こりやすい街だということだ。
そのため街は巨大な石の城壁に囲まれ、魔物の襲撃に備えられるようになっているそうだ。そんな石の壁には4つの門が存在し、それぞれ東口、西口、南口、北口と呼ばれている。
「ったく、なんでよりによって南口なんだよ!」
「家が南口の近くにあるせいで不安になるのはわかるが、ちゃんと手を動かせよ」
「はいはい、わかってるよ。」
今回スタンピートが起こったのは、南口の方向にあるSSランクダンジョンである。そのため、武力を持たない民衆のほとんどは南口の反対にある北口の近くに避難させられていた。
もちろん街の外へ逃げていくことができた人々も存在するが、馬車等の移動手段を持つ貴族や運よく馬車に乗れた数少ない平民のみである。
流石に、この都市に住む数十万人の全てを1度に移動させる手段は存在しないのだ。そのため、武力あるものは民衆を守るための準備を進めていた。
「こっちは配置終わったぜ。そっちはどうだ?」
「俺のところももう終わる。他にやることは無さそうだし……装備のメンテナンスでもしておけ」
Dランク以上の冒険者達は作戦会議を進めている中、Eランク以下の冒険者達はポーションの配置や罠アイテムの設置などを任されていた。
「了解。……ん? 光? いや、あれ魔物じゃねえか!? なんでこんな早く!?」
そんな中、一足先に作業を終えた冒険者がふと街の外を眺めると、こちらに迫り来る魔物の大群を発見したのだ。
作業を進める数十名の冒険者に焦りが広がる。魔物の大群となれば、自分たちだけでは到底他者できないからである。
「お、おれ! ギルドに応援を呼んでくる!」
「まて、焦るな。焦ってもいい事はないぞ。ぱっと見魔物の数は少ないし、多くて400程度だろう。一度魔物の種類を判別してから、相性のいい冒険者を数パーティー連れてくればいい」
焦って冒険者ギルドに駆け込もうとする若い冒険者に対し、貫禄のある中年冒険者は冷静に一言。
ギルドに駆け込む前に、一度魔物の詳細を確認する判断を下した。
魔物の詳細もわからずギルドに飛び込み「ま、魔物がもう来やがった!」とでも叫ぼうものなら、無駄な混乱を招くのは目に見えているからだ。
「あ、あぁ。そうだな。スキルで確認してみる」
「お前、あそこまで見えるか? よければ俺も手伝うけど」
「多分ギリギリかな。バフを頼むよ」
「おけおけ」
「それなら、俺がその視覚を全員に共有するぜ」
やはり、貫禄や余裕というのは周囲の人間にも安心感を与えるようで、この場の混乱はだいぶ鎮まった。
そして、低ランク冒険者たちは協力して魔物の判別のために動き始めたのである。
【眼球操作:視力増強】
【感覚支援:視力強化】
【感覚共有:簡易視覚】
「あん? 虹?……ハハハッ! こいつはすげえ!」
1人の冒険者がスキルによって視力を強化し、街に迫り来る魔物の大群を観察した。すると突然、狂ったように笑い出したのである。
「いや、あれを見ろって……そうか。共有されてる視覚は少し視力が落ちるもんな。もう少しで見えるようになるだろうから、よく見ておけって」
「は? なんだよそれ。一応非常事態なんだからな?勿体ぶんなよ」
「ふはは、普通ならこんな事はしないさ。でも、お前たちにも希望ってもんを味わってもらいたいと思ってな」
なにやら意味深な発言をする冒険者に対し少しの不信感を抱きつつも、その場に集まった冒険者たちは、共有された視覚から目が離せなかった。
希望とは? 一体何が来ているっていうんだ?
そして、彼らは目撃した。背の高いゴブリンを守るように囲む、340の宝石を。
「おいおいマジか! 」
「ヴァリアンじゃねえか!」
先に見た冒険者が言った通り、それはまさに『希望』だった。
「緊急招集の時にもいなかったし、今回は来れねえのかと思ったぜ!」
「Sランクが1人と……いや、Sランクが複数人とBランク相当の従魔が300以上! これは勝ったな!」
普通、冒険者たちは日帰りでダンジョンを攻略するものだが、ヴァリアンは何日間も泊まり込みでダンジョンに潜ることで有名な狂った冒険者だ。
そのため、ダンジョン内にいるせいでスタンピートの警報が届かず、到着が遅れるのではないか。あるいは、来れないのではないかと予想されていたのだ。
「おいおい……脳汁止まんねぇ……。っ! 足の速えやつ! 冒険者ギルドに行って伝えろ!」
「おうよ!」
彼らは、本物の笑顔を思い出した。
0
あなたにおすすめの小説
『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる
暁刀魚
ファンタジー
社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。
なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
カクヨム様にも投稿しています。
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。
平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。
どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる