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第一章
カルディアの内情
マルセルは一呼吸置き、重々しく口を開いた。
「カルディア王国は、先王の崩御後、王位継承を巡って激しい内乱に見舞われました。叔母上も噂くらいは耳にしておられるでしょう」
セラは静かに頷く。カルディアは川を隔てた豊かな国だが、ここ数十年は血で血を洗う争いが続いていた。
「その混乱を治め、ようやく即位したのがエドモンド陛下です。まだ二十になったばかりです」
「二十歳? それでは私より四十も年下ではないの」
呆れと驚きが入り混じる。
「我が王家には他に若い王女がいるでしょう。同年代の娘のほうが――」
「現国王の長女は、今日聖女になってしまいました」
セラは小さくため息をもらした。
「嫁がせるべきだったのでは?」
「代々、国王の長女は聖女とならねばならない。嫁がせれば我が国は太陽神に見放されます」
融通のきかない話だと内心で嘆く。
「では、あなたのお子は?」
「去年、二人目の王女が生まれましたが、数か月の命でした」
「……ごめんなさい」
重い沈黙の後、マルセルは続けた。
「カルディアはいまだ王家の権威が揺らいでいます。民は疲弊し、王家を弱体化させようと狙う者も多い」
「だから私?」
「叔母上は長年、太陽神ソレイユに仕え、あらゆる国と聖職者から信頼を得てこられた。その威光があれば、エドモンド陛下の政権は盤石になります」
セラは皮肉をこめて笑った。
「カルディアに恩を売っておきたいのね」
マルセルは短く頷いた。
「叔母上でなければ、ならないのです」
最後までお読みいただきありがとうございます。
※面白いと感じていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。
「カルディア王国は、先王の崩御後、王位継承を巡って激しい内乱に見舞われました。叔母上も噂くらいは耳にしておられるでしょう」
セラは静かに頷く。カルディアは川を隔てた豊かな国だが、ここ数十年は血で血を洗う争いが続いていた。
「その混乱を治め、ようやく即位したのがエドモンド陛下です。まだ二十になったばかりです」
「二十歳? それでは私より四十も年下ではないの」
呆れと驚きが入り混じる。
「我が王家には他に若い王女がいるでしょう。同年代の娘のほうが――」
「現国王の長女は、今日聖女になってしまいました」
セラは小さくため息をもらした。
「嫁がせるべきだったのでは?」
「代々、国王の長女は聖女とならねばならない。嫁がせれば我が国は太陽神に見放されます」
融通のきかない話だと内心で嘆く。
「では、あなたのお子は?」
「去年、二人目の王女が生まれましたが、数か月の命でした」
「……ごめんなさい」
重い沈黙の後、マルセルは続けた。
「カルディアはいまだ王家の権威が揺らいでいます。民は疲弊し、王家を弱体化させようと狙う者も多い」
「だから私?」
「叔母上は長年、太陽神ソレイユに仕え、あらゆる国と聖職者から信頼を得てこられた。その威光があれば、エドモンド陛下の政権は盤石になります」
セラは皮肉をこめて笑った。
「カルディアに恩を売っておきたいのね」
マルセルは短く頷いた。
「叔母上でなければ、ならないのです」
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