それでもあなたは銀行に就職しますか 第4巻~彰司と佳奈子の勉強会~「不渡り手形」

リチャード・ウイス

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東京の味

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「ラーメン二郎って、すごく旨いですよね、好物ですよ、私」
東京にあるそのラーメン店について、ビールのつまみにとりあえず注文した茄子田楽を頬ばりながら、瀬良弘一は東郷彰司にそう言った。
「俺も好きなことは好きだけど・・・ほかのラーメン屋をさし置いてまであそこが旨いと思ったことは無いな」
「えっ、そうですか、しかし、あれって三田が発祥でしょ。なのに・・ですか?」
「そんなに褒めるのだったら・・・これは何を注文したか分かるかい、二郎のカウンターで(ダイ・ダブル・からめ・野菜・アブラまし)ってね」
そして彰司は意地悪そうに、右ひじをついた手にほほを乗せて(ん?わからないだろ?ふふっ)と言う顔をした。

 今日は西村佳奈子と時々やっている勉強会の日だったが、彰司は久しぶりに瀬良とも飲みたい気がして、今回は三人での開催となった。
 もちろん佳奈子には伝えてあり、彼女も「瀬良さん?すごい久しぶり。私こそ、ご一緒しちゃっていいんですか」とOKをくれていた。

彰司が言ったラーメン二郎の特有の呪文のようなオーダーのしかたを聞いて瀬良は
「その注文内容ですか。わかりますよ。十分わかります」そう言って笑った。
切り返すように東郷は言った。
「しかし、君の所の早稲田の明治通り交差点近くにもあるだろう、あの美味い味噌ラーメンの・・・ええっと・・・そうそう『えぞ菊』だ」 

「どうしてあそこを知っているんですか?あの辺りは東郷さんの活動圏外だったでしょ」
「なぜかって?君のところの大学に行っていた友人に教えてもらったのさ」続けて
「で、ついで言うと、下落合にあるウチの社の独身寮は知っているよな、時々東京に出張する時に俺たち行員も宿舎に使えるヤツ。あのマンション風で結構人気の」
「はい、知ってます・・」
「あそこからは、西武線で高田馬場まで行き、そして山手線や東西線に乗り換えるだろ」
「なるほど、三~四日の出張だったら、仕事帰りの寄り道がてらに『えぞ菊』まで行けちゃうわけだ」
「そう、散歩も兼ねてね。そんなこんなで銀行に入ってからだけど、もう十回は行ってるよ」
「だからですね」と瀬良は納得した。

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