これは私が望んだ復讐です

四葉美名

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33話 スカーレットの覚醒①

(えっ! 体が金色に光ってる!)


 しかし驚いたのも束の間、その淡い黄金色の光はふわりと霧が晴れるように消えていった。そしてすぐにランディの大声がその場に響き渡る。


「うわ! け、怪我が治ってる!」
「えっ?」


 信じられないといった表情で、ランディは自分の腕を高く上げた。そしてまわりの人達に見せつけるようにブンブンと振り回す。


「ほら! みんな見てくれ! 痣も消えたし、さっきまでの痛みもない! 腫れも治まっているぞ!」
「す、すごい! 聖女様の力だ!」
「スカーレット様のおかげよ!」


 わああ! と今までとは段違いに騒ぎ出し、皆が私の名を叫び出す。しかもさっきより人が集まっていて、警備の騎士たちにも手が負えないようだ。王宮から駆けつけた人達は呆然とした表情でこっちを見ているけれど、私だってなにが起こったのかわからない。


(本当にあの傷は私が治したのかしら? 光ったのは見えたけど、あれが聖女の力?)


 今までは教会の魔道具に魔力を注いで、結界を修復していた。その時だって光ったことはない。それに一度だって誰かの傷を癒したことはないのだ。


(これで他の人達まで怪我を治してくれって集まったらどうしよう。嘘つきだと思われてしまうわ)


 そんな不安で怖くなっていると、シモン様がポンと私の肩を叩いた。


「君の本来の力が覚醒したな」
「え? わたくしの本来の力?」


 シモン様はさっきの光のことも知っているのだろうか。誰もが大騒ぎしているこの場で、彼ひとりだけが落ち着いた表情で私を見ている。


「ああ、さっきランディが骨折も二日で治ると言っていただろう? あれは他の国ではありえないのだ。たいていひと月以上は治療が必要なのだが、この国ではすぐに治っていた。それがどうしてかわかるか?」
「……いいえ」


 たしかにこの国は災害も発生しないが、病気や怪我の報告も少ない。そのせいか他国では多くいる医者も病院もほとんどなくて、陛下はそれが自慢だと言っていた。


 この国だけが怪我の治りが早い。そう言われても私には理由がまったく思い浮かばず、首をかしげるだけだ。するとシモン様はクスッと笑って、私の頬にふれた。


「それは君の治癒の力のおかげなんだよ、スカーレット。君が毎日結界に聖女の魔力を注いでいたから、治癒の力が空から降り注いでいたんだ」

「わ、わたくしの治癒の力が結界に?」


 にわかには信じられず、私はパチパチと瞬きをする。そんな私がおかしいのかシモン様は「本当になにも知らなかったんだね」と言って笑った。


「カリエント国の古い文献には、聖女についてこう書いてある。治癒の力を持つ聖女の魔力の色は、黄金色。私が初めてこの国に来た時は驚いたよ。結界からキラキラした金色の魔力の粒が降っているのだから」

「シモン様にも結界が見えるのですか?」

「ああ、薄っすらとだが見えるよ。だがカリエントでも魔力量の多い私くらいだろうな。そもそも結界は昔の聖女が作ったものだから、死んでしまうと同じ聖女以外は見えないらしい。魔力の多い私は、君の魔力が混じっている結界だから見えるのだろうね。そういった事はこの国では教えてもらっていないのかい?」

「初めて聞きました……」


 カリエントに残っているくらいだから、きっとこの国にも聖女に関する文献はあると思う。だけどきっと陛下や司教様は興味がなかったのだろう。一度もそんな話を聞いたことはなかった。


「本来の君の力は治癒であって、結界に使うべきじゃないんだ。だから相当苦しかったと思うよ」
「……はい。幼い頃はよく倒れていました」
「そうか……。だが治癒の力をさっき使ったが、今の体調はどうだ?」


 そう言われて初めて自分の体を動かしてみると、やけに体が軽く感じる。いや、聖女として働いてから、こんなに体調が良いのは初めてかもしれない。


「むしろさっきより気分が良いです。それに――あっ! 見てください! これ!」
「ほう……、消えているな」


 私の腕から、いくつもあった青い痣が消えている。ランディたちに見せたばかりだから、たしかに少し前まであったはず。それなのに今は綺麗に消え、そのうえ血色も良くなっていた。


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