モザイクセカイ

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2『セカイ』の『ルール』

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 「良かったじゃねぇか! この『セカイ』じゃ名前が無いとどうにもなんねえ。そういう『ルール』だからよ」

 『彼』はゴロゴロ石の言っている意味の全てが理解できなかった。
 自分自身の名前を知らなかったこと。知らない女に勝手に名前を付けられたこと。この『セカイ』では名前が無いと生きていけないこと。
 どれもこれも『彼』には理解が不可能であった。

 「しかも『赤ちょうちん』ってとびきりのオシャレネームじゃねーか! 俺なんて『ゴロゴロ石』だぜ? 」

 「…『赤ちょうちん』」



 門を出る頃には日が沈もうとしていた。

 「いやぁ今日は疲れたなぁ。早く一杯いただきたいもんだ」

 ゴロゴロ石がそう言い切る前に、『彼』は食い込むようにして言った。

 「『ゴロゴロ石』さん、僕本当に何も覚えてないんです。この『セカイ』に来る前のこと。もしかして何かの事故に遭って、記憶喪失になったのかもしれません」

 するとゴロゴロ石は、腹を抱えて笑い始めた。

 「お前そんなことあるわけ無いだろ! ! 全くこれだから新人はいけねぇよな」

 笑いが落ち着いたところで、深く息を吸い込んだ後にこう続けた。

 「いいか、お前がここへ来る前のことなんて俺にはどうだっていい。この『セカイ』で生きて行きてぇなら『ルール』を守ることだ。ただ『ルール』に従って生きろ。そうじゃなきゃここでは生きられねぇ。もっともこのこの『セカイ』から出てぇっつうなら話は別だかな。あと『ゴロさん』でいい。」

 そう言い切った後で、ゴロゴロ石はタバコに火を付けた。

 「もしこの『セカイ』から出たらどうなるんですか?」

 「そんなん出た奴にしかわかんねぇだろうが」

 何分か沈黙の時間が続き、ゴロゴロ石がタバコの吸い殻を足で踏み潰した音で『彼』は我に返った。

 「『ゴロさん』は、いつこの『セカイ』に来たんですか?」

 「うんと昔だ」

 「名前は誰に付けてもらったんですか?」

 「あのくそババァだ」

 「あの人そんな昔からこの『セカイ』にいたんですか?『ゴロさん』より若いですよね?」

 「何言ってんだ、あいつは俺より3回りは上だぜ」

 『彼』はつい吹き出してしまった。

 「お前、俺が老けてるって言いてぇのか? 」

 「違います! 違います! あの人が若すぎるんですよ! 」

 初めて会った人とこんな会話をしていることを、ふとおかしく感じた。

 「まぁこれで俺の役目は終わった、後は1人でがんばるこったな……あぁそうそう、暇な時にここへ訪ねてみるといい」

 そう言うとゴロゴロ石は、ズボンのポケットから紙切れを取り出し、『彼』に渡した。そこには小さい文字で、名前が書いてあった。

 「…『カチカチオバケ』?」

 視線を戻すと、もうそこにゴロゴロ石の姿は無かった。

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