正解は胸の中に

生徒

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優しい友達

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~昼休み~


 僕は江桐えぎりに呼ばれ屋上で待っていたのだが彼女はいつまで経ってもやって来ない。一応、待っててとは言われてるのだけども。

 「山田くんは先に屋上行ってて、ちょっと遅れるから。また後でね」
 「うん、わわ、わーかった」

 彼女はそう言い残してからもう十分を過ぎようとしていた。僕がもう待つのに耐えられなくなったころに屋上の扉がものすごい勢いで開いた。

 そこには、江桐ともう2人ほど人が来ていた。片方は江桐よりも小さく髪はロングのストレート。片方は活発そうで、少し髪の色が光の当たり具合によって黒く見えたり、茶色に見えたりする髪の色だった。

 すると、活発そうな方の子が僕に対して、テンション高めで話しかけてきた。

 「初めまして。菊池 優美きくち ゆみって言うんだよろしく」
 「初めまして。私は江桐ちゃんの友達の椎葉 一織しいば いおりです。よろしく」

 と、ちっちゃい方の女の子がさっきの子のお詫びをするような挨拶をくれた。まあ、軽く会釈でもしてればいいか。無理するとまた変なことになってしまう。というか折角の友達が減ってしまう。

 「よ、よろしく」

 なんで毎回僕は、一言一言いう度にどもってしまうんだろうか。ここを無くせばまだマシになるのにと、ひとりで考えていると江桐が僕に対して話し始めた。

 「どうせ、朝のこと忘れてると思うからもう1度説明するね。この2人は今回、君の人見知り克服計画を達成するための私からのサポーターになる人なんだ。名前は聞いた?」

 僕はその言葉に対して、頭を上下に動かして答えた。声に出して気持ちを伝えるのは苦手だ。上がってしまう。

 すると、彼女は「ならよろしい」と言ってベンチに座っていた僕の横に引っ付きそうなほど密着して来た。にしても、シャンプーの香りが凄くいいな。なんか違う緊張が来たんだけど。

 「ねえ、山田くん。私と話すのって緊張しちゃう? それならさ、私とはせめて話せるようになってほしいんだ。だって──」

 彼女が何か言いそうになった時、急に菊池が大声で叫び出した。
 「なっ、なんだとーーーーー。折角今日の為に作ってきたタコさんウインナーを地面に落としちゃうなんて、なんてことだ」

 「大丈夫だよ、ゆーちゃん。私のウインナーあげるから元気出して欲しいな。ゆーちゃんが元気じゃないとみんなやる気なくなっちゃうよ?」

 一応補足しておくと、ゆーちゃんというのは菊池のあだ名だ。つけられた理由は優美だから、ゆーちゃんちゃんとのこと。よく分からねえな。

 と、いった感じで菊池が食べ物を落としたから、急に叫び声を出したらしい。にしても、そんな声がよくもまあ出ることで。僕の鼓膜が敗れるところだった。

 僕はさっき江桐とは話の途中だった為また聞き直さないとと思い彼女に質問をしてみた。

 「あ、あの、え、江桐。さっき、ななな、何て言ったの?」

 僕はさっき江桐が言おうとした事を聞き直すと彼女はそっぽを向いてまともに取り合ってくれなかった。だよな、こんな喋り方じゃ他の人からしたら俺なんて喋ってる時に凄く動揺してるようにしか見えないからな。

 「別に、何でもないから。それに聞かなかった山田が悪いんだよ」 

 僕が彼女の方を見ると彼女と目が合い彼女は顔を急に赤くして、両手で顔を抑え始めた。一体何があったというんだよ。俺の顔を見るなりそんなことしてきてさ酷くないか?

 それで僕はこうしてやっと飯を食べれるようになり、なぜか少しの間長い沈黙が続いた。別に気まずくはないけど、なんか静かだな。

 僕は飯が終わりベンチで気持ちよく仰け反っていると、椎葉が急に話しかけてきた。でもなんだか少し怒ってるっぽいかな? でも僕、怒らせるようなことしたっけな。

 すると彼女は突然僕の目の前でお辞儀をしてきた。こりゃあもう、傍から見たら僕が謝らせてるみたいじゃないか。別に僕はそこまでひどい人じゃあないんだけどな。

 「先程は、すみませんでした。急に大声を出してしまって」

 ん? 大声? それを出したのって椎葉じゃなくて菊池の方だった気もするけど、本人がそう言ってるんだったらまあいいか。別に俺は謝られる必要ないしね。謝るんなら江桐の方にして欲しいや。

 「だ、だい、大丈夫だよ」

 何でやっぱりこんな風にどもってしまうんだろう。もっと力を抜いて喋るのはネットと同じで簡単だって心に言い聞かせないと折角こうやって治す手伝いしてもらってるんだし。

 すると、チャイムが鳴った。いつもなら長くて長くて仕方のない昼休みがあっという間に終わってしまった。人と喋れない僕でもこうやって喋れば楽しいんだっていうことを自覚した。

 「じゃあね、山田くん放課後も会えたらいいね」
 「バイバイ、山田と江桐~」

 椎葉と菊池の二人はチャイムのなった直後屋上から走り出していった。僕も教室に戻らなくちゃと思い立とうとすると、横で菊池がすうすうと寝息を立てて寝ていた。

 どうしよっか、でも治すって決めたんだからしっかり声を出して起こさなくちゃな。

 「江桐、お、おーきて、起きてよ」

 僕は彼女の体を揺らし声をかけて起こした。でも、彼女はずっと「んー」とか
しか言わなかった。僕はこりゃもう無理だと思いベンチを立つと彼女が起きた。

 「ふぁー、山田くん。他のみんなは? もう帰っちゃった?」

 僕はいつもの癖で頭を上下にする運動をしかけたが僕はそれを我慢して声を出して彼女に伝えた。これも治すための一環だしな。

 「う、あ、うん。すでに戻っ、…、戻ったよ」

 僕はまたどもってしまったが、これでも成長できた気がして堪らなかった。そりゃあ癖を我慢して言葉で伝えれたという達成感があったからだ。

 彼女は僕のこの返答に何か嬉しそうな、感じを漂わせていた。彼女は何か分かってくれたのだろうか。僕にはわからないけど。 

 「山田くん。教えてくれてありがとう。てかもう授業始まってるけどどうする? サボっちゃう? 私は初めてするけどね」
  「う、うん」

 僕はなぜか声が裏返った。彼女はそれを見て僕と視線を逸らして笑った。僕はそれを見てなんとも思わなかった。いつもなら、腹が立つはずなのに。
 
 「サボっちゃうとは言ったけど何しよっかな。山田くんは何したい?」
 「えっ、とー、あ、の、さっき、の二人の話が、っと、聞きたい」
 「菊池と椎葉ちゃんのお話かぁ、別に長い付き合いじゃないから面白い話とかないんだよね」

 彼女は右手の指でで髪の毛を絡ませて思い出を思い出しているようだった。彼女は「うーん」と唸りながら何かを考えていた。

  僕はそんなふうにしている彼女をいつの間にか呆然と見つめていた。彼女はそれに気がついたのか僕の方を向いてきた。

 「山田くんどうしたの? 私の顔に何か付いてるかな」
 「ううん、べ、別に、なな、何も無い、よ?」
 「そっか、なら話すね」

 彼女はそう言って僕の方を向き直してきた。

 「あの二人はね、私が一年生の時一緒のクラスだった友達なんだ。それでクラスはみんなバラバラだったけどみんな来てくれたの。なんて言うんだろう。ちょっと言うの恥ずかしいけど私の親友みたいなものかな」

 僕は彼女の言った ”親友” という言葉が胸に刺さった。親友。僕もこんな人を作らなくちゃと変な使命感にさいなまられた。
  
 でも、そうなるにはもっとちゃんと話せなくちゃいけないし、僕も彼女たちに答えてあげないと。これが僕のできる最高の恩返しだしね。
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