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第12話 剣士、魔剣娘と出会う その2
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冒険者ギルドから聞いた情報では、王都サイファルから半日かけて歩いた村だったところに、『銀の狼団』が潜伏しているという。
居場所まで分かっていて、いまだに手が出せないのは、アルテシアからも聞いていた通り“用心棒”のせいである。
現在、アルムとイーリスはあと一時間も歩けば、その件の村へと着くルートを歩いていた。
「イーリス、武器はどうだ?」
「はい。だいぶ手に馴染んできました!」
彼女の手には武器屋で購入した槍があった。装飾がほとんどない、しかし造りは頑丈な、まさに質実剛健な一品。アルムの目から見て、これならば多少雑に扱っても全然問題ない。
「だったら大丈夫だな。期待しているぞ」
「はい! 任せてください!」
道中、作戦を立ててみたが、元よりアルムはそう言った戦略を立てることは不得手としている。
突撃あるのみ。それがアルムの流儀であり、究極である。
不覚にも、ヴァイフリングもそれは好みの方針だったようで、特に嫌味を言われることは無かった。
『おい、イーリス。ついでに小童』
イーリスの頭の辺りから、にゅっと出て来たヴァイフリングが、自慢の紫髪をかき上げる。
「何だ。これから命のやり取りがあるんだ。水差すなら後にしろ」
『アァ!? 我輩がこと、戦闘において遊びなぞ入れるかこのバァーカ!』
「だったら何だ……!?」
『あそこ、見えるか?』
アルムとイーリスが彼の指さす方向を見てみると、古びた寺院があった。地図にも載ってない、所謂廃墟である。辺りには廃墟特有の沈んだ雰囲気が漂っていた。辺りには黒い鳥が飛びまわっている。
「わ……怖そうなところですね……」
「あそこがどうした?」
『分からぬのか? あそこに弱った生命力一つと、何やらイキがった生命力複数を感じるぞ』
イーリスは咄嗟に槍を握り締めていた。
「ヴァイさんそれ、本当ですか!? それなら早く行かないと!」
「行くのは良い。だが、臭いな」
ヴァイフリングの話が本当ならば、明らかにトラブルの予感しかしない。
アルムの中の常識から言えば、そんな寂れた所に、それだけ人がいるという事は十中八九、真っ当な状況ではないことが確実なのだ。
「弱った生命力ってことは死んじゃいそうなんですよね? だったら、私は行きたいです。お願いしますアルムさん!」
彼女の懇願を無下にする気はない。そして、そもそもアルムもスルーするという選択肢は最初から存在していなかった。
「じゃあイーリス、俺が先頭だ。確か水の拘束魔法を使えるよな? いつでも発動できるように準備していてくれ」
「分かりました!」
『何だつまらん。我輩に任せればすぐにでもあんな枯れ木、一瞬で塵芥に還せるというのに』
「絶対駄目ですよヴァイさん!!」
足音を殺し、廃墟の扉の前まで来た二人は、とりあえず聞き耳を立ててみる。詳細までは聞こえないが、何やら声がした。
二人は目線だけで会話する。
“行くか、行かないか”。アルムは首を一度横に振り、親指を扉の前へ立てる。
これが意味する所を理解し、彼女は苦笑する。
「邪魔するぞ」
大剣で扉を叩き切り、破壊する。そのまま大剣から両の短剣に持ち替え、入室をした。
「誰だテメェら!?」
一瞬で室内を見やり、アルムは大きくため息を吐く。
武装した男達四人。そして奥には赤茶色の髪を持つ男性が縛られ、椅子に座らされていた。男性の顔には殴られたと思わしき傷が何か所も付いていた。
「み、皆さん!? 何をやっているのですか!? 奥の男の人、縛られているじゃないですか! 早く縄を解いてあげてください!!」
武装集団は特に返すこともせず、じりじりと二人に近寄っていく。
「この現場を見られたからには、お前らを生かして帰す訳にはいかないな」
「逆だ。お前ら、今すぐ武器を捨てた方が身の為だ。俺は明確な敵意と殺意を以て、向かってくる奴には容赦はしない主義だからな」
だが、アルムは臆さない。前の世界での戦に比べれば、この程度の数、まるでお話にならない。
彼の勧告に、血の気の多いのが一人、向かってきた。手には剣を握り締めて。
「『アクア・バインド』! 縛って!」
アルムの指示通り、既に魔法発動の用意が出来ていたイーリスは、相手の両足に渦巻く水流の輪を発生させた。
突然の捕縛に、足が縺れて転んでしまう男の後頭部を、即座にアルムは叩いた。気絶を確認、これで後、三人。
瞬殺に、残りの三人も剣を構え、臨戦態勢に移行する。
「イーリス、下がってまた今の魔法の準備をしてくれ。俺はあいつらを軽く小突く」
「分かりました!」
言うと同時に、両の短剣を構え、疾走するアルム。
一息に三人の間合いに入り込んだ彼のそこからは、職人技であった。
右から刃が飛んでくれば、それを弾き、左から剣が振りかぶられたと思えばそれを迎え撃つ。常に自分が危険そうな攻撃だけを弾き飛ばすアルムに、傷を付けられる者は一人たりともいなかった。
これは既に技量の勝負ではない、スタミナの勝負になっているのだ。
それに、とアルムは後方の準備が終わりそうなイーリスを横目にする。
――既に、自分が手を下さなくても勝負は決まっていた。
「『アクア・バインド』三連発、です!! 縛って!!」
ヴァイフリングの影響からくる、無限の魔力は短時間での魔法連発を可能としていた。
全ての敵が、両手両足を水流の輪で拘束されたところで、ようやく攻撃が止んだ。首をコキコキと鳴らし、呼吸を整え終えたアルムが無表情で三人に近づき――そこからの出来事は誰もが想像出来うることであった。
居場所まで分かっていて、いまだに手が出せないのは、アルテシアからも聞いていた通り“用心棒”のせいである。
現在、アルムとイーリスはあと一時間も歩けば、その件の村へと着くルートを歩いていた。
「イーリス、武器はどうだ?」
「はい。だいぶ手に馴染んできました!」
彼女の手には武器屋で購入した槍があった。装飾がほとんどない、しかし造りは頑丈な、まさに質実剛健な一品。アルムの目から見て、これならば多少雑に扱っても全然問題ない。
「だったら大丈夫だな。期待しているぞ」
「はい! 任せてください!」
道中、作戦を立ててみたが、元よりアルムはそう言った戦略を立てることは不得手としている。
突撃あるのみ。それがアルムの流儀であり、究極である。
不覚にも、ヴァイフリングもそれは好みの方針だったようで、特に嫌味を言われることは無かった。
『おい、イーリス。ついでに小童』
イーリスの頭の辺りから、にゅっと出て来たヴァイフリングが、自慢の紫髪をかき上げる。
「何だ。これから命のやり取りがあるんだ。水差すなら後にしろ」
『アァ!? 我輩がこと、戦闘において遊びなぞ入れるかこのバァーカ!』
「だったら何だ……!?」
『あそこ、見えるか?』
アルムとイーリスが彼の指さす方向を見てみると、古びた寺院があった。地図にも載ってない、所謂廃墟である。辺りには廃墟特有の沈んだ雰囲気が漂っていた。辺りには黒い鳥が飛びまわっている。
「わ……怖そうなところですね……」
「あそこがどうした?」
『分からぬのか? あそこに弱った生命力一つと、何やらイキがった生命力複数を感じるぞ』
イーリスは咄嗟に槍を握り締めていた。
「ヴァイさんそれ、本当ですか!? それなら早く行かないと!」
「行くのは良い。だが、臭いな」
ヴァイフリングの話が本当ならば、明らかにトラブルの予感しかしない。
アルムの中の常識から言えば、そんな寂れた所に、それだけ人がいるという事は十中八九、真っ当な状況ではないことが確実なのだ。
「弱った生命力ってことは死んじゃいそうなんですよね? だったら、私は行きたいです。お願いしますアルムさん!」
彼女の懇願を無下にする気はない。そして、そもそもアルムもスルーするという選択肢は最初から存在していなかった。
「じゃあイーリス、俺が先頭だ。確か水の拘束魔法を使えるよな? いつでも発動できるように準備していてくれ」
「分かりました!」
『何だつまらん。我輩に任せればすぐにでもあんな枯れ木、一瞬で塵芥に還せるというのに』
「絶対駄目ですよヴァイさん!!」
足音を殺し、廃墟の扉の前まで来た二人は、とりあえず聞き耳を立ててみる。詳細までは聞こえないが、何やら声がした。
二人は目線だけで会話する。
“行くか、行かないか”。アルムは首を一度横に振り、親指を扉の前へ立てる。
これが意味する所を理解し、彼女は苦笑する。
「邪魔するぞ」
大剣で扉を叩き切り、破壊する。そのまま大剣から両の短剣に持ち替え、入室をした。
「誰だテメェら!?」
一瞬で室内を見やり、アルムは大きくため息を吐く。
武装した男達四人。そして奥には赤茶色の髪を持つ男性が縛られ、椅子に座らされていた。男性の顔には殴られたと思わしき傷が何か所も付いていた。
「み、皆さん!? 何をやっているのですか!? 奥の男の人、縛られているじゃないですか! 早く縄を解いてあげてください!!」
武装集団は特に返すこともせず、じりじりと二人に近寄っていく。
「この現場を見られたからには、お前らを生かして帰す訳にはいかないな」
「逆だ。お前ら、今すぐ武器を捨てた方が身の為だ。俺は明確な敵意と殺意を以て、向かってくる奴には容赦はしない主義だからな」
だが、アルムは臆さない。前の世界での戦に比べれば、この程度の数、まるでお話にならない。
彼の勧告に、血の気の多いのが一人、向かってきた。手には剣を握り締めて。
「『アクア・バインド』! 縛って!」
アルムの指示通り、既に魔法発動の用意が出来ていたイーリスは、相手の両足に渦巻く水流の輪を発生させた。
突然の捕縛に、足が縺れて転んでしまう男の後頭部を、即座にアルムは叩いた。気絶を確認、これで後、三人。
瞬殺に、残りの三人も剣を構え、臨戦態勢に移行する。
「イーリス、下がってまた今の魔法の準備をしてくれ。俺はあいつらを軽く小突く」
「分かりました!」
言うと同時に、両の短剣を構え、疾走するアルム。
一息に三人の間合いに入り込んだ彼のそこからは、職人技であった。
右から刃が飛んでくれば、それを弾き、左から剣が振りかぶられたと思えばそれを迎え撃つ。常に自分が危険そうな攻撃だけを弾き飛ばすアルムに、傷を付けられる者は一人たりともいなかった。
これは既に技量の勝負ではない、スタミナの勝負になっているのだ。
それに、とアルムは後方の準備が終わりそうなイーリスを横目にする。
――既に、自分が手を下さなくても勝負は決まっていた。
「『アクア・バインド』三連発、です!! 縛って!!」
ヴァイフリングの影響からくる、無限の魔力は短時間での魔法連発を可能としていた。
全ての敵が、両手両足を水流の輪で拘束されたところで、ようやく攻撃が止んだ。首をコキコキと鳴らし、呼吸を整え終えたアルムが無表情で三人に近づき――そこからの出来事は誰もが想像出来うることであった。
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