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天然最強な赤ずきんと飢えたオオカミ

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※男目線寄りです。





緊張で鼓動が激しいのが解る。今日は久しぶりの同窓会だ。
しかも、彼女と再会ができるチャンスでもある。そう思うと、この同窓会の幹事を務めてくれた長根と笹野には感謝しかない。

実際、三佐瑠梨とはあの修学旅行以降、会話をしなくなった。すれ違う時や、同じ教室の中にいる時はあっても、昔のような気さくさで会話することはなくなったのだ。



(きっかけは高校の修学旅行の二日目の夜の王様ゲームだったか。)



「じゃー5番、好きな女のタイプを公表してみろよ。」

その時俺の頭に浮かんだのは、瑠梨の顔。思わずちらっと瑠梨の方を見ると顔を逸らされた。肩まであるさらさらな髪からみえる耳が赤くなっていることから、「俺を見ていたのかも?」という勘が働いた。思い当たった時、思わず内心でガッツポーズしたのは、昔から瑠梨が好きな俺としてはなんとしてもこの修学旅行中に付き合いたいという気持ちがあったからだ。

(瑠梨の態度からして、両想いの可能性はあるはず・・・いい返事を期待してもいいよな?あでも、この場で告白してもムードのかけらもないし、からかわれるのも嫌だな・・・。)

気付けば、新は瑠璃を連想できないようなタイプを好みだと答えていた。

「んと・・・女の子らしくて、髪の毛がロングで物静かな子かな。」

すると、きゃーっという黄色い声が聞こえてきた。嫌な予感を感じつつ、その声の方向に目を向けると、真っ赤に顔を染めた瀬尾沙也加がこっちの方を見ていた。沙也加の側にいた子が友達なのだろう、チャンスだよ!と瀬尾の肩を揺すっているのが見えた。


(・・・これ、嫌な流れになりそうだな。)


「あ、あのっ・・・新君!」


(あ、やっぱり。もしかしなくとも、告白されるパターン。・・・おいおい、好きな子に告白現場を見られるって悪い予感しかないし、印象もわるくなりそうなんだけれど!?)


思わず瑠梨を探そうと目を皿にするが、当の瑠梨は寝るつもりなのか、こっそりと立ちあがっていた。
そして、あっという間に目の前でドアの方へと消えて行ってしまった。思わぬ展開に唖然としていた新を余所に周りは一斉にカップル誕生か!とはやし立てているが、好きな子が同じ空間にいなくてがっかりしている今の新にはどうでもよかった。

「・・・はぁ。」
「あ、新君、私ね、貴方の好みのタイプに合っていると思うんだけれど・・・付き合わない?」
「なんでお前と付き合わなきゃならねーの?」
「・・・・・・・っ・・・!!」

告白を流されたことでショックを受けて友達からの慰めを受けている沙也加はまるで悲劇のヒロインだ。
確かに美人の部類に入るしクラスでも人気者でモテる上に友達も多い。だが、新にとってはたんなるクラスメートの一人だ。


(それに、お前の告白なんかどうでもいい。お前が欲しいのは俺と付き合っているというステータスだけだろ。)


「それに、告白はやっぱり男からだよな。」


新がぼそっと呟くとなぜか、近くで聞いていた沙也加の表情が明るくなった。それに気付くことなく、スルーした新は気分を切り替えて「寝るわー」とみんなに告げ、ていよくゲームから抜け出した。

次の日、新はリーダーとしていろいろと動いていた。瑠梨が地図係になったのを知り、話せる機会が多いだろうと、自らリーダーに立候補したのだ。


(面倒でもやってよかった・・・忙しかったけれど、それだけ瑠梨と話せたし!それに、自由行動の今なら、連れ出して告白できるかも。)


「おーい、瑠梨。ぼーっとしていないで行くぞ?」
「あ、ごめん。えっと、新、次はどこへ行くの?」
「次はあそこへ行く。えっと、最寄り駅は・・・おい、地図を出してくれよ。」
「あ、うんっ、今出すね。」

こういう時、名前呼びできるのは幼馴染の特権だ。新が内心で浮かれながら瑠梨と会話していると、沙也加が瑠梨と新の側へ近寄って会話を引き裂くように割り込んできた。

「ねぇ、三佐さん、地図持ちは私がするわ。」
「・・・なんで?私が地図係になっているんだよ?」
「だって、新君と一緒にまわりたいんだもん。それに、新君のタイプである私が一緒にいた方がいいでしょう?だから、三佐さんはあっちにいってくれるかしら?」

新は、瑠梨に話しかけている沙也加に苛立ったが、瑠梨が注目されている今、大事にすると迷惑がかかるのではと考えがよぎった。新は罵倒したい気持ちをぐっとこらえ、かろうじて注意だけに留めた。しかしそれで止まらないのが沙也加で。

「・・・おい、瑠梨にそんなことを言うなよ。」
「新君、その子を庇うだなんて!!まさか、その子のことが好きなの?!」

驚くように聞いてきた沙也加の大声は周りにいた仲間たちの目を引いたようで、一斉に視線が向けられた。その視線に慌てながらも、何かを口にしなければと焦る。


(ど、どうしたら・・・ここで俺が告白しても瑠梨には迷惑になるだろうし・・・ひ、否定しなければ・・・)


混乱してしまった新はグルグルと回る頭の中で必死に言葉を考え、ようやく絞り出せた声は・・・


「ばっ・・・・誰がこんな女らしくないヤツなんか好きになるかよ!!」


・・・あの時に、しーんっと静かになった空気もいたたまれなかったが、それ以上に、瑠梨の冷たくなった視線に耐えられなかった。新が冷や汗を流す中、沙也加だけが嬉しそうに話しかけてきていた。


(しかもなぜか俺の腕に腕を絡めているし・・・くそ、ますます誤解の嵐じゃねぇか)。


「そうだよね。全然、新君のタイプに合ってないもんね。良かった、じゃあ行きましょうよ。」
「はぁ・・・・わかったよ。はい、沙也加さん。」
「ふふん、最初からそうしていればよかったのに。」

瑠梨が地図を瀬尾に押し付けて俺から離れて行った時なんかは、口から魂魄が出ていくかと思うほどショックを受けた。身体から力が抜け、引っ張ってくる瀬尾に流されるほどふらふらになっていた。
その後のことはきれいさっぱり記憶にない。気付けば、なぜか家で朝ご飯を食べていた。カレンダーを見るとすでに修学旅行は終わっていた。


(そうだよ・・・いつ帰ったか、思い出せないほどショックを受けたんだった・・・。)


ぼーっとした頭で学校に行ったら、瑠梨の髪がショートカットになっていることに気づいてかなりの衝撃を受け、さらに距離を置かれていることにも気づいた俺は益々落ち込んだ。この時ばかりは長根の必死に話しかけてきている声すら耳に入らなかったほどだ。(余談だが、長根と親友になったのはこの時だ。)







(タイムマシンがあるなら、迷わずあの時に戻ってるな・・・。)


懐かしくも苦々しい過去を思い出してはため息が出る。その時、長根が手を振って騒ぎだした。カウンターの方で笹野と一緒に飲んでいる。そしてその隣にいたのは・・・ショートカットの頭に紅色のスレンダーなワンピースを纏った女性。その女性こそがずっと新が会いたいと思っていた彼女だ。


(高校を卒業した後、一度も姿を見なかったが・・・やっぱり綺麗になっている。いや、瑠梨はあの頃も可愛かったけれどさ、なんてか、女としての色気が・・・・・あれ、もしや酔ってないか?)


瑠梨と目が合ったと思ったら、彼女は3杯目のカクテルを飲もうとしていた。思わず声をかけてしまったのは、このまま酔っぱらわれたらまともな話もできないかも?という不安があったからだ。

「・・・久しぶりだな、瑠梨、それから長根に笹野も。」
「おう、遅かったなー。」
「久しぶり。元気そうで。ほら、瑠梨も海野に会うのは久しぶりよね!?」
「はいはい、解ってるって。海野も久しぶり。」

笹野に言われて手を振っている瑠梨の顔に嫌悪感がないのを確認して、ホッとする。これなら大丈夫そうだと安心し、ポケットに忍ばせていたルームキーを握りしめた。

「・・・・長根に笹野も足止めありがとな。今度ゆっくり酒を奢る。瑠梨、ちょっと一緒に来てくれ。」

長根と笹野が含みある笑顔を見せるのと裏腹に瑠梨は不満そうな顔だがスルーしておく。

「え?ええー、まだ、お酒を飲んでいる途中なんだけど!?」
「そこにある酒はルームでいくらでも頼めるし、頼んでやる。ほら、行くぞ!」

コップを無理やり奪い、カウンターへと置いた。それを未練がましく見つめていた瑠梨の腕を掴んで、部屋へと向かう。エレベーターに乗り込んだ時、瑠梨はさっきまでの毅然さがウソのようにテンション低く、ショボンと肩を落としていた。


(絶対こいつ、何もわかっていないし、気づいていないな・・・そうだ、昔からこうだった・・・。)



部屋に連れてきてすぐに目に入った高級そうなソファーに瑠梨を座らせると、我に返ったのか声があがった。

「あれ、ここはどこ?それに、私がここにいるの・・・?」
「相変わらずというか・・・夢中になるとまったく周りが見えなくなる癖は変わってないな。ここは最上階のスイートルーム。ちなみに俺が予約した部屋だ。」
「それだけ稼いでるんだ。すごいねー。」

棒読みで言う新に瑠梨は騙されないぞという表情で警戒している。一体なんで?と言ってきた瑠梨に対して、新はニヤリと笑みを見せながら口を開いた。

「修学旅行の時に傷つけてしまったのを謝れていないし、それに、好きな子に告白するなら、こういうロマンチックなところがいいかなーと・・・。」
「へぇ。いいじゃない。その子も喜ぶよね。」
「・・・お前のことなんだけれど?」

深いため息をついた新は瑠梨に近寄り、背中に手をまわして、ワンピースのファスナーを一気におろした。瑠梨がにげられないように、腰を固定し、抱きしめるような形で覆いかぶさる。ふわっと髪が揺れるのと同時にシャンプーの香りが新の鼻をかすめた。

(あ、すべすべ。それに、いいにおい。今の俺って、絶対、変態になっているよなぁ・・・。)

背中の真ん中を指でそっと縦になぞっていけば、瑠梨がビクッと身体を竦ませる。瑠梨が顔をあげたその時、口が開いてピンク色の舌が見える。思わず、新は瑠梨にキスしていた。逃げようとする舌を捕まえ、角度を変えて何度も舐めたり追いかけたり、時には歯の方を舐めたりと楽しんだ。その間にも瑠梨が息を必死に整えようとしているが、そのたびにキスして舌を絡めるのがこれまた楽しい。

「んっ・・んっ・・・!!」

(・・・・ああ、もう真っ赤になっている瑠梨が可愛い。このまま食べてしまいてぇ・・・)

気づけば、俺の背中にまわしていた手はブラのホックの周辺を触りまくっていた。新がブラを外そうかと迷っていた時、瑠梨が肩を震わせたのが感触で分かった。ちらっと瑠梨の顔をのぞくと、少し熱を帯びてピンク色に染まっていて、口を必死に閉じながら目を潤ませていた。
瑠梨の顔に思わず欲情した新は肩にかかっていたワンピースを脱がせにかかった。背中にまわしていた手を少しずつ脇に移動させ、ブラの隙間から指を差し入れて胸の方を撫でると、瑠梨のくぐもった甘い息が漏れた。


「ひゃんっ・・・!」


(あ、わりと形よさそうなライン・・・しかもイイ反応。)


反応した瑠梨が慌てて降ろしていた足を竦ませて、体育すわりのように膝を曲げだす。ワンピースを脱がされないようにするための対処だろうが、ちょっと力を入れただけで、ワンピースが少しずつ|捲<めく>れていく。瑠梨が必死に足をジタバタさせるので、足を間に挟んでみじろぎができないように固めた。慌てふためく瑠梨が腕をのばし、余裕がない俺の顔を必死に押しのけようとしてくる。

「なんで!?ちょ、ちょっと待って、お願いだから脱がさないでー!」
「・・・ちっ」

舌打ちしてしまうが、瑠梨がやっと俺の気持ちに気づいたのかもと考えると、ここはひとつ仕切り直さないといけないかもしれないと思い直す。

(このすべすべした肌、もうちょっと触っていたかったんだけれど・・・まあ、あとでもいいよな。)

とはいっても名残惜しい。手を離せば、瑠梨は肩まで脱がされていたワンピースを整え、ファスナーを自分で閉じていた。自分で閉じられるのかと感心しつつも、新もまた煩悩を抑えるべく、服の皺をのばして瑠梨から離れた。(え、なぜって?主にズボンの位置直しですがナニカ?←)

ようやく、告白の仕切り直しだと意気込んだとたん、出てきたのは瑠璃の無慈悲な言葉。思わず新は一瞬固まったが、震える声で必死に声をあげた。

「・・・で、なんだっけ・・・そう、どうしてこんなことを?」
「おぃっ?!こうして振り出しに戻る~ちゃららーんって、頭の中で流れたぞ!ほっんとに双六(すごろく)みたいな展開ってあるのか、それとも、俺に対する嫌がらせか!?」
「・・・ねぇ、大丈夫? 頭、壊れてない?」

少しピンク色に染まった顔をきょとんと横に傾げる瑠梨。

(ハイコレきたー。椅子に女の子座りでちょこんと上目遣い。これに萌えない男はいないだろ。これが惚れた女なら尚更・・・って違う違う!問題はソコじゃない。)

「ここまで言っても気づかないってすげえ。天然通り越してもう馬鹿だわ、いや、そんなとこも可愛いけど・・・こんな奴が好きな俺も大概馬鹿だな。なー、どうしたら俺の好きな気持ちを受け止めてくれるのかな?」
「え?なんかわからないけれど、ストレートに告白したら伝わるんじゃない?」
「・・・かなりストレートに好きだって言った気がするんだが。」
「へーそれ、かなり鈍いねえ。そんな子を好きになるなんて大変だなぁ。ねぇねえ、どんな子?私も知っている子なのかな?」


新の脳内でビシッと何かが割れる音がした。


( に ぶ い の は ・ ・ ・ お ま え だ よ ! ! ! )


震えながらも新はついさっきまでの瑠梨を思い浮かべていた。

「ねぇ、海野君?」

名字呼びとはいえ、俺の名前を呼んでくる瑠梨。
キスに慣れなくて必死に息を吸おうとする瑠梨。
背中を触られ、ブラの隙間に指を入れただけでひゃんっと可愛い声を出す瑠梨。
・・・・・潤んだ目・・・・ピンクに染まった頬。

「ねーねー聞こえてる?」

もしあそこで止めていなければ瑠梨の全部を触れたんじゃなかろうか。
そしたら瑠梨が俺を受け容れてくれた可能性もなきにあらずで・・・・・・。

「ねぇ、海野君の好きな子って同窓会にいるの?これから告白するとかー??」

我に返ってみると、瑠梨は興味津々に誰、誰なの?と聞いてきていている。その様子がさっきまで頭の中で・・あんなことこんなこと(自主規制)してくる瑠梨と相対的で。
新は現実に引き戻されたような気分になり、両手で顔を覆って「どうしようもない!」と叫んで、ベッドへ駆け込み、布団へ顔を埋めた。
自分がもう完全に煩悩に飲み込まれて脳内に出てくる瑠梨の言動が・・・ヤベェと自問自答していたら(現実世界の)瑠梨の声が椅子の方から聞こえてきた。

「・・・そういえば、海野君の好みって、女の子らしいロングの子だったよね。そりゃ、大人しそうだし、天然とかはいってそうだなぁ。となると・・・あの子かな?」
「・・・・そこか、そこも誤解していたのかよっ!」

聞き捨てならないとばかりに椅子の方へ這って近寄ると瑠梨はぎょっと驚き、引き気味に足を床からあげていた。そんな瑠梨の驚きに構わず、新は瑠梨の前で正座し直した。まあ瑠梨が足をあげた反動でちらっと見えたフトモモに目がイったのは男の性と思って許してもらいたい・・・・男の性ってすげぇな。

「瑠梨、まずそこを訂正する。あのゲームで言った俺の好きなタイプは嘘だ。」
「そうなんだ。嘘・・って・・・・えっ?」
「どちらかというと、明るくて、阿吽の呼吸で息が合うお前が好みドンピシャ。というか、お前も俺のことを好きだっつーのは気づいていた。そもそも、お前との距離を縮めたくて修学旅行中に告白するつもりだったのに・・・・距離が縮むどころか、一気に距離が遠くなってしまったのに唖然としてしまったぜ。」

(主に瀬尾のせいで。・・いや・・・そもそもあそこで俺が失敗しなかったら、絶対高校の間にいい関係にもなっていたはずだ・・・・ブレザーのスカートを外す瑠梨とか見れたかも・・・あ、すげぇ、もったいないことしてるな、俺。)

・・・とかそんなことおくびに出さない俺スゲーわ。と感心している間に、瑠梨が驚きながら慌てたように質問してくる。

「じゃ、じゃあ、なんであの時に嘘をついたの・・・?」
「(決まっている。)わざわざ周りに言うことじゃないし、囃し立てられるのが嫌だったから。」
「ああ、告白タイムみたいになるのが嫌だったんだ・・・結局、告白大会みたいになったけれど。」
「そこ(瀬尾のくだらない告白と瑠梨が消えたこと)は予想外だった。」

目を丸くさせて驚く瑠梨を見て新は思った。自分の方が驚きたいわ!と。
思わず遠い目になってしまう。何故、好きな子にここまでびっくりされなきゃならないのか。

(くそ、思わず涙がでてきてしまうじゃないか・・・もっと早く告白していれば、ブレザー姿の瑠梨とあんなことこんなこと(自主規制その2)ができたのに・・・白いブラウスから見える谷間に埋まるとかたまらん・・・・って、違う!!!問題なのは、今なお告白中の俺の気持ちにまったくこれっぽちも気づいていないことだ!!)

がっくりと肩を落としながら、新は話を続けた。いい加減気づいてくれと念じながら。そしてその思いがようやく通じ・・・かけたが、それでもきょとんとしている瑠梨に対してもう我慢の限界だった。

「あのな、俺はお前にキスしただろう?服だって脱がそうとしただろ!その流れでいい加減に気づけよ、前のことを言っているんだって。いいか、俺はお前のことが好きだからここに連れてきたんだっつーの、そりゃ、はっきりと好きだって言わなかった俺も悪いけれどさ!さすがにあんまりだろ、その鈍感さは!」

苛立った新が瑠梨の肩を掴んで揺さぶった。もはやロマンの欠片もない告白になってしまったのはやむを得ない。あまりにも鈍い瑠梨が悪いから仕方がないのだと言い訳する。

(すまん。つい、せーくすしたい気持ちが先に出てきてしまった。って、ちがう、いや、惚れてるのも本当だし、瑠梨の全部が欲しいのも本当だけれど、まず瑠梨の気持ちが先だ、煩悩はひとまず抑えろ、俺!)

ここにきて瑠梨は風向きがおかしいことに今頃やっと気づいた。それどころか、言っていたことが、ようやく脳裏に結びついたらしく、カタカタと頭が動きだした瑠梨は思い出したのか少しずつ自分に語りかけるように口を開いた。

「・・・好きな子を連れてきたって言ったよね?」
「ああ、はっきり(何度も)言ったな。」
「ここっていうのは、もしかしなくとも。」
「この(瑠梨のために抑えた)スィートルームのことだな。」
「えっ、じゃあ、海野君の好きな子って私のことだったの!?」
「・・・ここにきて2時間弱。話に話を重ねてやっと気づくとか。誰か、マジで俺の(性欲に耐え・・・たつもりの)忍耐力を褒めてほしいと思う。本気で切実に!!」

やっと通じた・・・!と思うと、表情が明るくなる。まるで世界が輝いて見えると思いつつ、瑠梨を見やると恥ずかしさからか顔が真っ赤になっていた。

「え・・・で、でも・・・タイプじゃないって・・・」
「だから、それは俺が恥ずかしいからついた嘘だ。本当はずっとお前を好きだったけど言えなかった。それは俺がほんっとうに悪いと思ってる。だから・・・こうやって連れてきたんだよ。」
「・・・海野君・・・。」

(・・・いやいや、その潤んだ目で名字呼びとか男心を解ってねぇ。できるなら、名前の方で!!)

「いや、ここは流れ的に名前で呼ぶところな。はい、やり直し。」

新の言いたいことが通じていない(当たり前だ、口に出さんと伝わらん。)ので、瑠梨は何かなんだかわからず首を傾げるしかない。その可愛さに悶えつつ、新は名案とばかりにポンッと手を打った。

「こりゃダメだ・・・(あ、そうだ、身体の方から仕込めばいいんじゃね?気持ちはもう伝わっているし)。よし、これから名字で呼ぶごとに罰としてキスする。これ決定事項な。それから、今夜は帰さないからそのつもりで。」

新は瑠璃の驚きを無視して椅子から引き離し、お姫様抱っこで抱えたままベッドへと移動した。布団におろされたことで、瑠梨は新の意図にやっと気づいたのだろうパニックを起こし、慌てている。
慌てふためく瑠梨のワンピースが視界に入った時、新はなぜか昔読んだ『赤ずきん』を思い出した。


(ふむ、物語風なら、“こうして赤ずきんちゃんは飢えたオオカミに食われましたとさ”ってとこか。)


「さて、いただきます・・・まずは脱がさないとな。」
「や、やめてぇええええええ、新――――――!!!」
「おお、名前でちゃんと呼べるとか、偉いな~褒美にキスしてやるよ。」
「どっちにしてもキスするんじゃないーーーーーーーぃいいいい!」

この後、オオカミ・・・いやいや、新は夢(正しくは妄想)にまで見た瑠梨と結ばれ大変満足した夜を過ごしましたとさ。

(んーいい朝だ。昨夜は隅々まで瑠梨を堪能したし、次はデートとか恋人らしいことを楽しむか。)

「うう、ばかぁ・・・もう、お嫁にいけないじゃん!!」

シャツのボタンを締めている途中で瑠梨の叫び声が聞こえた。それに思わず固まってしまったのは聞き捨てならない言葉が入っていたからだ。


(・・・・嫁に・・・いけない・・だと・・・俺を前にして?)


嫌な予感を感じつつ、必死に怒りを押し殺した俺は、瑠梨にできる限り優しく聞いた。瑠梨の顔が引きつっていたのを見れば失敗したのだと解るが、それでもし聞き出せば、予想外の返事が返ってきた。


「なぁ、嫁にいけないって言っただろう?それって、俺以外の男の嫁になるつもりなのか?」
「え?海・・・じゃない、新は私をお嫁さんにするつもりでいるの?」


(違うだろ、ここは、私をお嫁さんにしてくれるの?とかそういう反応が返ってくるもんだろ・・・いやそういかないのが瑠梨だよな・・・とりあえず、身体にもう一度刻み付けておくか。)


・・・・・・・・・長い長い沈黙の後、新はにっこりと微笑んで、シャツのボタンをはずしにかかった。
笑みを浮かべた俺の顔に悪魔の角が見えたのだろうか、瑠梨は真っ青な顔でシーツを纏ったまま、逃げようととしていた。もちろん、新が逃がすわけもない。
シャツを脱ぎ捨てた新はシーツの裾を踏み、瑠梨を捕まえてしっかりとお仕置きするべく、ベッドへと再び押し倒し、手をシーツの隙間から見える太腿に忍ばせた。太腿を撫でつつ、秘めた部分の方へと手を動かすと瑠梨の感じながらも止めようとする声が聞こえてくるが、この程度で止めるならとっくにとめているわけで。


「ひっ・・・や、やぁっ・・あ、あし・・ふと、もも・・・さわらな・・っ・・んっ!!」


秘部にたどり着くとそこはすでに汁で濡れていた。シーツで見えないものの、濡れた感触でそれに気づいた新は、ゆっくりとそこを解しながら、瑠梨の耳元で囁いた。


「捕獲完了♪さあ、楽しいお仕置きの時間をやり直そうか。」
「やーーーーーごめんなさいぃいいいっ!!」







・・・こうして赤ずきんは再びオオカミに掴まり、再び美味しく頂かれましたとさ。






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