香帆と鬼人族シリーズ

巴月のん

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番外編:虎が見守ってきた龍の片想い(3)

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「ふへへへっへ」

このブロッサムにいる全員が全員、キモイ。と思っていても、それを口にだせないのは、そのキモイ男が我らが鬼人族の族長だからだ。
まぁ、俺は言うけれどね。だって、副官だからね!!(嫌だけれど)
皆の期待の目をうけて、マスターからかりたハリセンでぶっ叩いた。

「八尋、キモイからやめて」
「いてっ!!」
「香帆ちゃんとようやく付き合えることになったからって浮かれないでよ。」
「そうなのー。やっと公衆の前で香帆って呼べるんだよ!ずっと田城って我慢していたのにねー。ぐふふ、解禁って素晴らしいよね」
「だから、キモイっつーの!」

そうなのだ、この女狂い、ついに初恋を実らせて、カップルになったのだ。で、後輩で同じ図書部にいるという田城香帆ちゃんが、その被害者なんだよね。(被害者て酷くないー?by八尋)
俺にとってはかなーりの恩人なんだから、余計に、八尋の毒牙にあうと考えるとちょっと申し訳なくなる。(それもあって、香帆ちゃんから何かを頼まれたときは全力、優先的に対応している。)

「でね、相談があるのさ」
「うん、そうでなきゃこんな風にみんなを集めないよね。何なの?」

そう、今日は珍しく八尋から全員ブロッサムに集合という掛け声があったから幹部まで全員集合している。ちなみに俺はこの集合を事前にきかされていなかったから、顔を引きつらせた。

「お前ら、彼女と結ばれたのってどれぐらいの期間なのー?」

大真面目に言う八尋に全員がズッコケたのは言うまでもない。ちなみに一番嘆いて怒鳴っていたのは、まだドーテーの奴ら・・・・どうせ俺なんか!と言って涙目で帰って行った奴ら続出。
他の奴らは呆れながらも、逃がさんとオーラを出していた八尋に渋々と口を開いた。

「その日すぐにやらないの・・・?」
「ガッツイてるみたいでかっこ悪いからやらないなー。八尋みたいに顔がいいならともかくさ」
「そーそー、普通の人は族長みたいにすぐにはやらない」
「・・・俺が女狂いって言われてたの、それもあったのネ・・・メモっとこう」
「大抵は、一ヶ月とかじゃない?ここにいる奴らの話を聞いても」
「そうだね、キスはその日とか一週間とかはあるけど、やっぱりセックスとなるとな~」
「へっ?ど、どういうことなのー?」
「やっぱ、女性ですぐにヤル人ってビッチなイメージがあるじゃないですか?それと一緒で女性もすぐにヤろうとする男はヤリ〇ンだって思ってるってことですよ」
「ああっ・・・そ、そりゃそうだよね・・・ってことは、俺、ヤリ〇ンだって思われちゃう?」


(思われちゃう?じゃなくて、もう思われてるんだっつーの・・・香帆ちゃんはとっくにお前が女狂いのタラシって知ってるからな?というか、お前なんでそんなに必死こいて大真面目に聞いてるの・・・・・そいつ、最近彼女出来たばっかりの男なのに、なんでお前が助言を受ける側に・・・。いや、もういちいちつっこんでたらきりがないか。もう呆れ果てるしかねーわ。)


もう呆れ果てたので、カウンター席に移動して、マスターと2人で傍観していた。マスターはというとニヤニヤしている。

「いいんじゃねーか、あの八尋がこんなにも必死になるってなかなかないぞ?」
「聞いてることはめっちゃくちゃ情けないけどね」
「はっははは。そういえば、お前莉里ちゃんとはどうなった?」
「香帆様のお蔭でなんとかうまくいったよー。ほっんとう、危うかったよ。俺、八尋と同類と思われてたの!あの女狂いの馬鹿と!だから、俺必死に言ったよ。あんなヤリ〇ンと一緒にしないでくれって。香帆ちゃんに協力してもらって、土下座までしたんだから!!俺とあいつを一緒にしないで、俺はちゃんと付き合った子を大切にします、あのバカみたいにすぐに捨てませんからって!」

思いだしては不愉快になる。マスターに愚痴っていたらいつの間にか八尋が険しい顔で後ろに立っていた。

「・・・・・何だよ?」
「ねぇ、莉里ちゃんとやらって、たしか香帆の友達だよねー?」
「そうだよ。」
「その子に俺の悪口を言ったら当然、香帆にも伝わるよねぇ?」
「・・・・・・てへっ★」
「確信犯だってことだよねー、その悪口!!!!!」

俺のテヘペロを正しく読み取った八尋は俺にプロレスをかましてきた。それに負けじと俺も返す。もちろん、その場が大騒ぎになったのはいうまでもない。あっちこっちめちゃくちゃにしたあとようやくおちついた俺達は憮然とした顔でにらみ合った。むーと睨みつける八尋に俺はドヤ顔で指差した。

どっちにしろ、こいつの勝ちは絶対ないと思っているからね、俺は!

「まぁ、確かに、噂を広げるような真似をしたのは悪いと思うよ。思うけどさ・・・もともと広がってる噂を否定なんて、元彼女達がいる限りしようがないからねっ?」
「うっぐ・・・・!!!!」
「むしろ、香帆ちゃんに理解ある友達がいるのはありがたいと思わないと。昨今、不良っていうだけでやめとけって言う友達も多いんだからね?」
「う。うう・・・そ、それは確かに」

八尋にもそれぐらいは解っていたようで、かなりダメージを受けている。それにトドメとばかりに俺は叫んだ。(幹部は俺を含めて11人。ちなみに、俺と八尋を含めて全員干支の漢字が入っていたりする。)

「鬼人族幹部全員集合っ!お前ら、全員彼女いるよね。一人一人、八尋にしっかりと現実を教えてやれ、彼女とはすぐにできないっつー悲しい現実をな!!」

っつーことで、幹部全員で、八尋に世間一般のカップルの常識というものをしっかりと叩き込んでやった。すでに八尋は屍状態だったが、反省はしない。

「ということで、お前ら全員、解散な。お疲れ!」
「「「お疲れっした―!」」」

八尋を無視して全員解散と相成った。八尋はよろめいていたが、メモをしっかりとっていたあたり、無駄にはしないという執念がものすごい。

「・・・・うん、俺がどんだけ一般人とかけ離れていたか思い知ったよ・・・俺、俺頑張るから!」
「・・・とりあえず、健全なデートが出来るようになってから言いな。世間一般の女性から見たらお前を恋人に?それはないわーってタイプだから。一般人からすれば、関わりがないから客観的に好き勝手言っているだけ。ついでに、顔が良いからまだヒドイ男でもモテるというだけ。よーするに世間から見れば、観賞用の男か、セクフレという認識しかないの、お前は」

しれっと珈琲を飲みながら告げると今度こそ、ばたりとソファーに倒れてしまった。そんな俺と八尋のやりとりをみたマスターが顔を引きつらせた。

「お前も言うね」
「・・・・言い方は違うけれど、これ全部、莉里にはっきりと言われた言葉だよ。多分八尋が彼女と会ってもコテンパンにされるだけだと思う」
「その彼女凄そうだな・・・ははは・・・」

次の日、何故か期末テストの結果発表で学校中が大騒ぎだった。廊下に張り出された掲示板をみた生徒や先生から驚きの声がいくつも上がっていたのも無理ない。普段学校に来ない八尋が満点で学年一位だったんだから。

(そりゃそうだろう、いつもはかったるいからといって、平均80点台を狙っている八尋が、コレだからなぁ。・・・それにしても、俺、一応80点台を目指していたのに、なんで二位なんだ?生徒会のやつら、たるんでるんじゃないか・・・一度、文句言っておかないと。)

「八尋、なんで?」
「・・・・多分、香帆のことで浮かれていたからかも。テストの時の記憶が一切ない」
「まぁ、お前はそういうヤツだよね。しかしまた模試とかなんとか面倒なことになりそう」
「当分学校は休もうかな・・・って香帆っ!?」
「うわっ!いきなりどうしたんだよ?」

教室の机でかったるそうにスマホを動かしていた八尋の表情がいきなり変わった。それに驚いた俺の前に、八尋は嬉しそうにラインのトーク画面を見せてきた。

「見た?香帆が、『八尋先輩、満点で一位なんてすごいですねって!今度勉強を教えて欲しいので、一緒に図書館に行きませんか』ってさ!!もー可愛いなっ、香帆は!!図書館で勉強・・・ああ、いい響き」
「『図書館デートってばっかじゃない、あそこじゃエッチとかキスとか何もできないのになんで行くのかわからないんだけどー?』」
「何、それヒドイ台詞だね。図書館は勉強が基本だよ?勉強が解らないって言う彼女に手取り足取り教えてあげることで好感度アップできる重要な場所なのに」
「言っとくけど、さっき言ったセリフはお前が中2だか3の時に言っていた言葉だよ」
「ぐはっ・・・し、証拠は!」
「今もいるかな、希望が丘図書館でお前を逆ナンパして、その健全なる図書館のトイレでお前につっこまれてアンアン喘いでいた図書司書のお姉さん」
「その図書館だけ外して他の図書館を勧めようっと・・・希望が丘図書館ね?ブラックリストにも入れよう」

真っ青な顔になりながらも文字を打っている八尋にざまぁと呟いた後、ゲームに戻った。


(まぁ、香帆ちゃんのお蔭で、まともになりつつあるからいいかな。)


「ちょっとまって。ゲームはいいけれど、何、その雑誌。しかも、デート特集」
「今度莉里とデートに行くから、その下見の参考にしようと思って」
「下見!?下見なんて必要なのっ?」
「・・・ああ、そういえば、お前に下見は無縁だったな。どこでもいつでもさかるから。」
「ねーねー、下見ってどういうことを見るの?俺、そんなの習ってないよ!」
「あのな、普通は習わなくても、彼女の反応を気にして事前に調べようとするんだよ、馬鹿か!」
「図書館も下見しなきゃなんないよね・・・下見ってことは、一人で?え、ソレ、すっごい空しくないー?」


(前言撤回。全然まともになってねぇ!!これだから、超イージーモードでモテてきた苦労知らずのイケメン馬鹿っていうのは・・・!!)


本気で哀れみを込めた目を向けてくる八尋にプッツン切れたのはいうまでもない。




「お前な・・・必死こいて、デートで彼女を喜ばせようと頑張っている世間一般の彼氏に謝ってこい!!!」





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