香帆と鬼人族シリーズ

巴月のん

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鬼人族のメンバーの恋

不良な犬と普通の猫(※BL注意)

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「これ、また下駄箱に入っていたんだけれど、どうしたらいいと思う?」
「なにそ・・・って、手紙!?」


その通りとばかりに俺は頷いた。
俺の目の前に座っていた玲生れおは俺が持っていた手紙をひったくって読みだした。その間、イチゴミルクを飲んで待っていたら、読み終わった玲生が手紙から視線を外して話しかけてきた。

「こりゃ、また、熱烈な告白なこった・・・」
「ん、で、どうしたらいいと思う?」
「ほっとけば?」
「そう言うと思った。これはどうしようかな」
「捨ててやるよ」
「ん、了解」

じゃあ任せると言い残して、俺は立ち上がった。ヤツはやることがあるから後で言っているが、おおよその予測はつく。だから一応、言っておいた。

「やりすぎないでよ」
「何のことだか・・・ああ、次の授業さぼるから」
「はぁ・・・了解」

俺の言いたいことが解ったのだろう、しばらっくれた顔でコーラを飲んでいた。それに苦笑いを返しながら教室へと戻ると、隣の席の友人が話しかけてきた。

琢磨たくま、玲生はどうした?一緒に昼ごはんだったんだろ?」
「うん、さっきまで一緒だった。玲生ならさぼるってさ」
「あー相変わらずだな。それにしても、お前らの関係が良く解らん。お前は優等生、あっちは不良だっていうのに、仲良しだよな」
「幼稚園からの幼馴染だしね。別におかしいことではないと思う」

返事を返しながら、教科書とノートを取り出した。と、同時にチャイムが鳴り、先生が入ってくるのが見えた。とりあえずはと授業に集中するためにシャープペンを取り出した。

ノートをとっている間も、琢磨は玲生のことを考えていた。

(幼稚園からの幼馴染。だからこそ、お互いに考えてることは言わなくても解ることがある。たまにすれ違って喧嘩をすることもあるけれど。)

玲生は、鬼人族という暴走族の幹部をやっている。
以前に総長や副総長にも会ったことがあるが、思っていたほど怖い人達ではなく、なかなか面白い人達だった。

(多分、彼女さんについて話をしていたせいもあるんだろうなぁ。)

先生の話が聞こえてくるが、頭に浮かんだのは、去年の11月頃に彼女のためにと必至にダンスの振り付けを覚えようとしている総長の姿だった。

(何故か、副総長さんや玲生も一緒になって覚えていたけれど。)

不良3人がテレビの前でダンスの振り付けを真顔で追って踊っていた。その光景をつい思いだしてしまい、授業中なのに吹いてしまった。

「・・・・誰だ、今のは・・・ああ、猫井ねこいか。」
「申し訳ありません。つい余計なことを考えてしまいました。」
「まったく・・・そういえば、犬山いぬやまはどうした?来ていないのか?」
「昼休みまでは見ましたが、それ以降は見ていません。」
「そうか。ちゃんと授業を聞きなさい。解説を続ける・・・」

先生とのやり取りの後は授業に集中していたおかげか、あのシュールな姿が脳裏に浮かぶことはなかった。授業の後は帰宅するだけだ。リュックに荷物を詰めていると、担任がプリントを渡してきた。

「ああ、猫井。確かお前は犬山と家が近いんだったな。悪いが、このプリントを犬山に渡せるか?」
「ああ、大丈夫です。家が隣ですので」

(とはいえ、あっちはアパートで独り暮らし、こっちは家族で一軒家だけれどね。)

「それなら、すまんが頼まれてくれ。ありがとうな」

(・・・・今夜は確か帰れないって聞いたから、アジトの方へ寄ろう)

担任から受け取ったプリントをもって『ブロッサム』へ向かった。結構大きめな公園の裏側にあって、わりと隠れ家や的なカンジで建っている赤れんがの店は結構雰囲気がイイ。公園の裏側とあって、滅多に人が来ないことも要因だろう。マスター曰く、アジトになっているからな、一般人が来られては気まずいところもあるだろうからという配慮だそうだ。元々アジト的なもので、お店は後から経営を始めたのだとか。色々と面白い話を聞いていたせいか、『ブロッサム』がわりと好きだ。
ブロッサムの前に着いたので、扉を開けて入ると、マスターと目が合った。

「すみません、彼はいますか?」
「ああ、猫井君か。おーい、わんこ、お客さんだぞ」

大声で奥の部屋の方へ叫んだマスターの声に反応してか、わんこ・・・もとい、ヤツが不機嫌そうにやってきた。

「マスター、わんこって呼ぶなっつーの。ああ、やっぱり、琢磨か・・・あっちに行こうぜ。マスター、俺のおごりでこいつにメロンソーダな」

マスターに一言文句を言った後、空いた席へと誘導してくれる玲生についていった。

「ん。はい、これ」
「ああ、サンキュって、これだけのために来たのか?」

あきれ顔になる玲生にダメだったのかなと思いながら、一応確認する。

(え、これ、もしかして家においてほしかったとかそういうことかな?)

「・・・嫌だったらもうこないけれど・・・」
「そうかいそうかい、寂しいなって思っていたのは俺だけかよ」

拗ねた玲生の言い方になぜかこっちが赤面してしまった。玲生の言っていることを反芻しながらも、しどろもどろになってしまい、やっと声に出せた一言は我ながら可愛くなかった。

「・・・そう思うなら、授業をさぼらなきゃいいのに」
「お前に会いたいのと授業を受けるのじゃ全然違うわ、ボケ。とにかく、ありがとよ」
「ボケって言うな。・・・あと、お願いがあるんだけど」
「なんだ?」
「明日暇だから、泊まりに行っていい?」
「っ・・・あ、ああ。暇ならしょうがない、相手になってやるよ」


(・・・素直じゃないよな、相変わらず。ま、お互い様だけれど。)


玲生は顔を逸らしたが、耳をみれば照れていることがすぐに解る。返事にほっとして、もうそろそろ帰らないといけない時間になったので、帰ろうと立ち上がった。マスターにお礼を言って、出ると、玲生が見送りのために立っていてくれていた。ふと、思いだしたことを聞いてみた。

「そうだ、もう手紙は捨ててくれたの?」
「ああ、とっくに捨てた。ついでに手紙の主にも話はつけた。ったく・・・野郎の癖に俺のモノに告白とかいい度胸しているよなぁ」

玲生はそういいながら、俺の頬や顎を撫でてきた。いや、なんで今なんだろうか・・・玲生のツボはよく解らない。しかし、相変わらず男前な顔だよなぁ。


(女顔のおれとは大違いだよ・・・幼馴染の癖にこんなにも差がついちゃうのか。)


「・・・・俺達の関係は一部しかしらないんだから気づかないし、普通、こんな関係だって思わないから人のモノだと気づかなくて当たり前だと思うけれど」
「それでもなんか察するものはあるだろ、雰囲気的に。しっかし、お前もよくよく男に告白されるよな。むかっしからそうだったから驚きはしないが・・・なんちゅうか、社会人になった時が心配になる」

眉間に皺を寄せた玲生の心配はもっともだ、確かに女顔で線が細いせいか、同性に告白されることが多い。ちなみに、異性からの告白は一度もない。

(・・・・まぁ、俺も玲生とこういう関係になるのは予想外だったけれど・・・。)

「おい、ぼーっとしてんなよ。いいか、俺は送ってやれないからな、気を付けて帰れよ。もう暗いし、危ないから寄り道もすんじゃねぇよ」
「玲生、子どもに言い聞かせるような言い方やめてよ」

玲生の言い方に頬を膨らませていると、玲生がニヤリとして俺の耳元に囁いた後、頬にキスしてきた。しかも、片手は項を撫でている状態で。

「じゃあ、言い方を変える。心配だからさっさと帰って俺を安心させろ。そしたら、明日可愛がってやるよ?」

(ちょ・・・こ、れは・・・反則・・・!!)

「くっ。これだからイケメンは・・・・でも明日の可愛がりはいらないっ!」
「それじゃ面白くないだろうが」
「それは玲生が面白くないっていう意味でしょ!!あいにく、こっちは面白さは求めてないからっ。じゃあね!」
「おう、また明日な」

真っ赤になる顔を手で隠しながらさっさと歩き出した。少し歩くと後ろから玲生の声が聞こえることに気づき、振り返らずに手だけを振り、今度こそ家へと帰ろうと走り出した。


(くっそ・・・なんで、負けた気分になるんだろう・・・明日は絶対にこっちが振り回してやるから!!)


そう言いながらも、琢磨はなんとなく予感めいたものを感じていた。多分明日も玲生が優位に立ちそうだなと。



「・・・ま、いいか。こっちが遊びにいくんだから、あっちが優位でも」


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