香帆と鬼人族シリーズ

巴月のん

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鬼人族のメンバーの恋

鈍感なココアと照れ屋なミルク

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「おはよ、ココア」
「・・・・・おはよう、ミルク」
「ちょ、その呼び方をやめろ」
「なら、あんたもやめてよ」

亜美がぎゃあぎゃあと校門で幼馴染と言い合っていたら、生徒指導の先生が怒鳴りながら走ってきた。

「げっ」
「うわ、ヤスキン先生じゃん!お先!」
「まてああああああああ、 戸来とらい!またお前らか!!」
「おい、俺を置いていくなよ!」

2人はダッシュで玄関に入り、教室までダッシュで階段を駆け上がっていく。これまたいつもの日常だ。

「ふー疲れた・・・」
「朝からご苦労さんだねぇ、ココアにミルク」
「くっそ・・・ココアのせいで俺まで変なあだ名が定着したじゃねぇか」
「もとはあんたがあたしの名前をからかったからだと思うけれど?」
「あぁ?」

ウルサイ幼馴染を無視して、戸来亜美とらいあみは授業のために教科書を机の上に出していた。ちなみに幼馴染である田見たかひさはわなわなと肩を震わせながらも、他の友達に腕を掴まれて抑えられていた。

「離せぇえええ、俺はこいつを!」
「はぁー相変わらず素直じゃないんだから・・・授業がもう始まるからいい加減にしなよ、ミルク」
「うあぁあああん、お前まで俺をそのあだ名で呼ぶのかよ!」
「はいはい、あ、席に着かないと」

だんっと足を踏んだ隆久をスルーした周りは一斉に席に着いた。同時に先生が入ってきたため、文句を言うこともできなかった隆久はぶつぶついいながら、亜美の右隣の席に座った。
それをちらっと横目で眺めていた亜美はため息をついた。

(・・・私たち二人の言い争いはもはやクラスの名物と化しているけれど、こうなったのもミルクのせいなんだよなぁ。)

この学校に入学して最初の自己紹介の時にあだ名を作ろうと最初に言い出したのが隆久で、亜美としても別にそれぐらいは許容きょよう範囲はんいだった。しかし、隆久は何故か自分の名前のあだ名を考えずに、隣にいた亜美の名前の漢字を当て字にした形でココアにすると言い出した。
それがきっかけで亜美はココアとあだ名をつけられて注目の的となってしまった。亜美としては一人注目されるのが嫌だったので、ひねりにひねって、結局、同じく当て字で隆久をミルクと呼ぶことにした。すると、彼もまたあっという間にクラス全員に注目されてしまい、言い合いになってしまった。
そして、その言い合いが名物になった頃には、隆久と亜美のあだ名はすっかり定着してしまっていた。

「おい、ぼんやりするなよ、ココア」

(このとおり、担任の先生まで呼ぶ始末しまつ。ああ、もう・・・・全部、隆久のせいだかんね!)

亜美はいらつく気持ちを抑えて、教科書とノートを開いた。隣で隆久が亜美をちらちらと眺めていたことなどまったく気づいていない。

「あー、今日も疲れたぁ・・・もう帰ろうっと」
「お、おい、あ・・・み、見てくれよ、この問題の解き方を教えてくれ」

何故か、亜美を引き留めてきた隆久が途中で何かを誤魔化したようにノートを開いて差し出してきた。それに訝しく思う亜美だったが、別に急いでなかったことから教えてあげることにした。
そして2人はお互いに座りあって少し話合っていた。その間も隆久の目は時々泳いでたが、亜美は気づかず真剣になって教えていた。

「あ、こう解くのか」
「そう、で、そこの部分が季語だからね。でも、めずらしいね、和歌が解らないって。確か得意じゃなかったっけ?」
「はははー俺だって、ド忘れすることはあるんだよ。はぁ・・・」
「ふーん。じゃあ、帰るわ。クラブ頑張ってね」
「・・・お、おう」

何故か隆久が凹んでいる様子だったが、亜美はもうそろそろ帰る時間だったためでスルーして教室を出ていった。玄関に行くと、友達が待っていてくれたので、一緒に帰り道を歩き出した。遅くなった理由を話すと、友達は呆れた顔をしていたが、口元はずっと笑っていた。

「相変わらず・・・ヘタレだなぁ」
「え、何か言った?」
「ううん、亜美は気にすることないよ。それより、また明日」

もう家の近くだからと道を曲がっていった友達はにやにやとした顔で消えていった。亜美は疑問を感じつつも、家へと帰った。そして、次の日もまた同じように・・・・騒がしい朝を迎えることになる。

「おはよ・・・・・げっ、ミルク」
「ミルクって呼ぶな、バカココア」
「馬鹿っていう方が余計なの、それよりその絆創膏ばんそうこうは何なの?」
「うっ・・・クラブでちょっと、な」

目をそらしつつ走って行った隆久に驚きつつ、亜美は追いかけもせず教室へと入った。何故か机に伏して落ち込んでいる風な隆久が見えたことから何か悩みでもあるのかもしれないと思い直して、話しかけてみた。

(隣だしなぁ・・・何かあったら、絶対にあたしがフォローする羽目はめになるんだし、今のうちに聞いておこうっと。)

「どうしたの、何か悩みがあるなら言いなさいよ。隣でそんな顔をずっとされるのも困るからさ」
「・・・はぁ。いや、その、お前に言えるほど悩みじゃねぇし」
「ふーん?」

まだ落ち込んでいる様子を見せている隆久に困惑していると友達が挨拶してきた。友達の一言に反応する元気はあるようで何よりだと思いながら亜美は隆久のすぐ切れる物言いに呆れていた。

「おはっようー亜美、それにミルク」
「黙れや、お前なんか砂糖の癖に!」
「甘い方じゃなくて、里宇の方ね。区切りを間違えないでちょうだい」
「わざと間違えてんだよ、このボゲェエエ!!」

何故か絶叫しながら机に頭を打ち付けた隆久にクラス全員が注目するが、里宇と呼ばれた亜美の友達はのんきに自分の席へ着いている。汗を流しながらも、亜美はしょうがないなとばかりに、隆久の頭をなでた。

「はー。とりあえず気にすることないよ、早く悩みが解決すると良いね、隆久」
「・・・・っ・・・・・!!!」

撫でられた瞬間、起き上がった隆久は何故かこっちを潤んだ目で見つめてきた。

「な、何なの・・・?」
「あ・・・・ああああああ、こ、こっち見るなよ、バカココア!」
「はぁ、心配して損した、もういいや。」
「・・・くそぉぉおおお!!」
「うるさいなぁ、ちょっと黙ってよ、ミルク」
「・・・っ・・・・」

また馬鹿にされたので、もう相手にするのをやめて席に着いたら、何故か壊れたロボットと化した隆久が震えながら机にのせた腕に顔を埋めていた。
何故か時折、奇声が聞こえてくるがスルーことにした。辺りを見るとクラスのみんなもまたかというあきれ顔を見せていることからほっておいても大丈夫だろう。やってきた担任も呆れていたが、結局放置していたし。

「またか。相変わらず素直じゃないな、ミルクは」
「先生、素直とかうんぬんはともかく、ミルクと呼ぶのは止めてくださひ・・・うう・・・」

先生には隆久が落ち込んでいる理由が予測できるらしい。すごいなと思いながら、これまた後ろにいた里宇と呼ばれている友達に声をかけた。

「ねぇ、先生までミルクが悩んでいる理由を知っているってことは、すごく重要なことなのかな?」
「ああ・・・うーんどっちかってとくだらない方かも。実際クラスのほとんどが呆れているからね」
「そうなの?うーん、やっぱり、言い合いばっかりするから教えてもらえないのかもかなぁ」
「ぶっ・・・聞いたでしょ。ミルク、あんたちっとも報われてないよ」
「ダマレ、俺が聞き耳を立てていたと知っていた上でそれをいう・・・・ぐがっ!」

いきなり隆久が言葉を止めたのは、先生が近くに来て出席簿ですッパ叩いたからだ。よほどHRを終わらせたかったらしい。蹲っている隆久をよそに委員長に指示まで出している。

「黙るのはお前だ、ミルク。委員長、さっさと号令を出しなさい」

(ちなみに担任はバリバリに男前な女性。そして、委員長は里宇のことね。一応、参考までに・・・あれ、誰に向かって言ってるんだろ、あたし。)

HRが終わり、今日も一日が終わったと思い、帰ろうとする亜美だが、この日もまた隆久に呼び止められていた。

「お、おい、ちょっと待ってくれ。」
「どうしたの、ミルク」
「うっぐ・・・ちょ、ちょっと待て」
「だから、何なの」

何故かしどろもどろになってる隆久が、何故かいきなり手を差し出してきた。その手に手紙を持って。

「・・・手紙?」
「っ・・・いいから、さっさと受け取れよ、バカココア!」
「えー、なんかたくらんでないよね?」
 
挙動不審きょどうふしんな隆久の様子を不審に思った亜美はなかなか手を出さない。イラついた隆久は亜美の右手を無理やり広げて手紙を握りしめさせた。

「ああっ?」
「クラブあるからもう行く!あ、それ・・・サトウや他の奴らには見せるなよ!渡すなよ!じゃあな!」

何故か顔を真っ赤にして嵐のように出ていった隆久に唖然としながらも、握りしめている手紙を鞄の中へと入れた。
玄関にいくと昨日と同じで友達(里宇)が待っていてくれていた。

「どうしたの、変な顔をして」
「ん、なんでか、怒っている顔をしたミルクから手紙をもらったんだよね」
「ぶはっ!!!チョー古典的で笑える!!よりによって手紙を選ぶって~ウケる~ちょっと見せてよ」
「ダメ。あたしもまだ見てないし、誰にも見せたらだめって言ってたもの」
「あー、まぁ、そうだろうね。ま、いいや、予想はつくし。となると、後はあんた次第か・・・頑張りな、ココア」

意味深な言葉を残して昨日と同じく道を曲がった友達に今日もまた疑問だらけだった。しかし、その疑問は家で手紙を開いたことで一気に解消された。
この夜、亜美が絶叫し、一気に混乱に陥ったことは言うまでもない。

「え・・・ええ、これ、まさかの・・・ラブレター!?え、ええ?あいつ、あたしのこと嫌いじゃなかったの!?っていうか、これ・・・なんて返せばいいの?え、頑張れってそういうこと・・・うそぉ・・・どん、な、顔して会えばいいのよう」



さてはて、次の日の朝、亜美はなんと返事をしたのでしょうかね・・・。



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