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鬼人族のメンバーの恋
【巳編】捻れた好き*2*
しおりを挟むジリリリッ・・・・!!
「うう・・・もう、朝なのぉ・・・・」
時計を止めて、起き上がる。窓から漏れる日差しが眩しい。一つ背伸びしてから、制服へと着替え、一階に降りた。
「おはよう、奈津ちゃん」
「おはよう、お母さん」
物心がつく前に母が病死し、ずっと父と一緒に過ごしてきた奈津は、義理の母にあたる美春との同居を不安に感じていた。しかし、蓋を開けてみれば、とても楽しい時間を過ごすことができている。
だからか、すんなりとお母さんと呼ぶこともできた。こうして、一緒に朝ご飯を食べる時間にも楽しく談笑できている。
だけれど・・・・
階段を下りる音が聞こえ、思わず硬直してしまった。これまた毎回のパターンである。
階段を下りてくる人間など、義兄である翔しかいない。びくびくしながら、階段の方を見ると、やっぱり、翔が立っていた。
そっと窺ってみると、やはりというか、いつものあの目でこちらを眺めていた。
翔は鞄を持ちながら、テーブルについている両親に挨拶してきた。一緒にいる奈津に対しては当然のようにスルーだ。
もっとも、学校で会うとわざとらしく、「おはよう、巳園」と挨拶してくるので、挨拶していないと文句を言うこともできなかった。
にっこりと笑顔を見せるだけまだマシと思うしかない・・・。とはいえ、こうしてビクビクしなければならないというのはかなり神経が参るけれど。
「おはよう、母さん、父さん」
「あ、ああ・・・おはよう」
「おはよう・・・翔、奈津ちゃんへの挨拶は?!」
「・・・学校でちゃんとしているから大丈夫だって」
「翔、いい加減に奈津ちゃんへの態度を改めなさい!!!」
「じゃあ、行ってくる」
母親の注意すら無視して出ていくその姿は、奈津が学校で見る姿とは全く違っている。こっちが素だとわかるだけに、自分への態度が本気だと伝わってくるのが切ない。
ご飯を食べていた手を止めて、美春に思い切って聞いてみた。
「・・・お母さん・・・やっぱり、いきなり妹が出来るってことっていうのが嫌だったんですかね」
「そんなことはないわ。貴方のお父さんと付き合っていた頃から、貴方のこともちゃんと話してあったのよ。あの日まで、妹に会うのが楽しみだって喜んでいたのだけれど・・・」
「だとしたら、私と会った時というのが、問題だということですよね」
はぁとため息をつきながら、食べ終えたお皿をキッチンへ運んだあと、玄関へと向かった。
「奈津ちゃん、バカ息子なんて気にしないで頂戴ね?あの子も素直じゃない所があるから」
「いえ・・・じゃあ、行ってきます」
無理やり笑顔を作ってから玄関を出て、学校まで走った。とりあえず、今は頭を切り替えていかねば、学校に間に合わない。
先ほどまで悩んでいたソレを片隅に押しやり、目の前の道路を駆けていった。
「ナイッシュー!!!」
体育の授業では、男女別でバスケットの実技をやっていた。
男女に別れて、それぞれのコートでペアになって1on1を練習する形で進んでいる。交代を待つ間、朱莉と奈津は一緒に座って待っていた。
「本当に心当たりないはないのね?」
「何度も言うけれど、まったくないからね。半年間、ずっとあんな調子だし」
「でもさ、初対面だったんでしょ。それですぐに嫌われるっていうのも、おかしくない?実際、会ったとたん、様子が変わったんでしょ?」
「うん」
「本当によくわかんないわ…って、あ、あぶ、あぶないっ!!!」
朱莉が慌てて指を差してきたのを見て、首を傾げた奈津は後ろを振り返った。その時、周りの悲鳴と同時に、意識がブラックアウトした。
(・・・・ったぃ・・・・なに、が・・・・・・・当たった・・・?)
「・・・巳園っ・・・・・何バカやってんだ!?」
なんでかはわからない。
だけれど、薄れていく意識の中で義兄の声が聞こえた気がした―――。
(バカって・・・・何よ・・・ってか・・・こんなときでも、名字で・・・呼ぶんだね・・・・)
そこまで、嫌われてたのかなぁ・・・・。
ぼんやりと光が見える。それと同時に、人の顔が見えてきた。重たい瞼を開きながら、必死に起き上がろうと腕を伸ばした。
「・・・こ、こは・・・・」
「あら、起きたのね、巳園さん。大丈夫かしら?」
くらくらする頭を抑えていると、保健室の養護教諭が顔を出して、質問してきた。それに対して、なんとか顔を縦に振った。
「うう・・・頭がくらくらします」
「やっぱり、脳震盪を起こしているわね。ボールが額に当たったから無理もないけれど。授業への参加もいまさらだし、もう少し横になったらどう?」
道理で頭が痛いわけだと、奈津は手を伸ばして額を撫でた。感触からして、消毒した上でガーセを貼ってもらったのだと解った。
「あ、本当だ」
「そうそう、ちゃんと、錦蛇君にお礼を言うことね。貴方をここまで運んでくれたんだから」
「・・・・はい、わかりまし・・・・え?あの、あの、その、ソレは本当ですか?体育の先生ではなく、あの錦蛇君が?」
「え、ええ・・・間違いないけれども・・どうかした?あ、もしかして、貴方もファンなの?」
「いえ、全然ファンじゃないです、そこは全力で否定します」
そこはきっぱりと訂正しておく。そうでないと、あらぬ誤解を受けかねない。ひいてはそれはあの義兄に迷惑をかけるのと同意義で。
またあの冷めた目で嘲られると思うと、震えが止まらない。震えを抑えようと、掛け布団を深くかぶって再び横になった。
「と、とりあえず、もう少し寝ます・・・はぁ・・・」
「な、何か解らないけれど、そうなさい。私は少し用事でここを離れるからね」
「はぁい・・・」
頭痛と睡魔に負けた奈津は目を閉じて、再び眠りについた。
どれぐらい寝ていたのか解らないが、揺さぶされる感覚に目を開けると、養護教諭が起こしてくれたらしく、目の前に立っていた。
「ぐっすり寝ていたわね。もう下校の時間よ」
「・・・はい」
「ほら、鞄もあるし、もうこのまま帰りなさい」
「・・・・え、鞄、ですか?」
驚いた奈津に対して、養護教諭は椅子の方を指さした。その椅子には確かに奈津の鞄と制服が置いてあった。しかも、ベッド下においてあった体育館靴も上靴に変わっていることに気づいた。
(朱莉かな・・・でも、朱莉だったら、私を起こしてくれるはずだし・・・後で聞いてみよう。)
色々と疑問を感じるものの、奈津は制服に着替えてから保健室を出た。その時、廊下から慌てる声が聞こえたので、振り返ってみると、そこにいたのは、親友の朱莉だった。
「奈津、大丈夫なのっ!?」
「あ、朱莉。もう大丈夫だよ、ごめんね。」
「良かったぁ。そうだ、錦蛇から鞄とか受け取った?」
歩きながら、朱莉と話していると思いもよらないことを言われて固まる。奈津は 思わず真顔で朱莉の肩を掴んで質問した。
「・・・朱莉、それ、どういうこと?」
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