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鬼人族のメンバーの恋
【巳編】捻れた好き*8*
しおりを挟む(うう・・・・怖かったよう・・・!!)
5限目が終わったとたん、気が抜けたとばかりに机に伏した。
「あっぶなかった・・・あの時チャイムが鳴ってくれたお陰で逃げられた・・・!!」
「チャイムに助けられたね」
「・・・ねぇ、なんでばらしたの?」
「え、アイツにも知る権利はあるでしょ~まさかずっと隠し通すわけにはいかないでしょうし」
「そりゃそうだけれど・・・タイミング最悪だよ」
ジト目で朱莉を睨みつけたが、あっけらんと笑っている。あの時の彼の笑顔を思いだしたら、震えが止まらない。何故朱莉は平気なんだろうか。
「うう、怖かった。見た?あれ、今にも噛みつきそうな勢いだった・・・!!」
(もし、あの時にチャイムが鳴らなかったらと思うと・・・考えるだけでも恐ろしい。そもそも、あそこで弁当を食べるようになったのも、彼が教室に来た時以来、女子の質問攻撃がものすごいことになったことが原因なのに!!)
これから、また弁当を食べる所を変えなければいけないかも・・・と考えると、面倒なことこの上ない。元凶の朱莉を恨みつつ、ため息をついた。
「ああもう・・・」
「賭けてもいいわ、アイツは、放課後にあんたを捕まえに来るわよ」
「恐ろしいことを言わないで――――!!」
起き上がって叫んでも、朱莉は無情にも微笑むだけ。自分でも、予想できるだけに、放課後が怖い・・・!
(・・・・朱莉はどっちの味方なんだろう?朱莉は、私のためだっていうけれど・・・)
「・・・本当に私のためになるとは思えない!!」
ちいさく呟いたのは、玄関に不機嫌な顔で立っている錦蛇 翔がいるのが目に入ったから。
思わずUターンしたくなったが、靴は丁度、彼が立っているところのすぐ近くにある。
(・・・これじゃ、逃げられない。)
諦めの境地というのはこのことをいうのだろうかと、見当違いなことを考えながら、下駄箱の方へ近づき、靴を履き替えた。自分に気づいた錦蛇君が、指を外に向けて微笑んでいる。
(他の女子の目が痛いよう・・・私はこの人の義妹ですよ?皆様、見当違いの嫉妬はよして下さぃいいいい!)
「巳園さん、少々話したいから一緒にきてくれるかな?」
(というか、他の生徒達がいる中で、はっきりとしゃべったのって、絶対嫌がらせでは。ああ、このぶんだと、明日に質問ラッシュかも・・・嫌だなぁ。)
「大丈夫、遼河もいるから」
「あ、猿渡君もいるなら、安心だね」
(皆様、聞きました?2人きりじゃないよ!!ちゃんと他の人達もいるよ――!!)
思いっきり安堵した。少しばかり、気分が浮上したが、彼の眉間の皺は未だ取れていない。
錦蛇君に連れられて喫茶店に入ると、先に席をとっていた猿渡君が手を振っていた。
全員が座った時、先制攻撃をしかけてきたのは、当の錦蛇君本人。しかも、学校にいる時の声と違って、家にいる時と同じぶっきらぼうな言い方・・・。
(猿渡君も気にしてないってことは・・・そうか、こっちが素だったんですね。)
「・・・で、どういうことだよ?」
「えっと・・・・一人暮らししたいなって思って」
「別に、一人暮らしなんかしなくたっていいだろ」
呆れたように言う錦蛇君だが、原因は、貴方が自分に対してかなりそっけないぐらい冷たいことにある・・・・という、その事実を言っていいものどうか、迷う。
(言ったら、どういう反応をするのか・・・。)
「確認ですけど・・・錦蛇君は、私のことを妹と思えないから、条件を付けたんですよね?」
「・・・ああ」
「なら、私が一緒にいなければ、条件はいらないと思うんです」
「・・・・おい、翔、条件って、どういうことだよ?俺、そんなことちっとも聞いてねぇんだけれど」
何故か、自分の言葉に対して目を丸くしている。そして錦蛇君に対して呆れたように聞いている猿渡君。思っていたのと違う反応に首を傾げた。
「巳園、少しタイム。ちょっとこいつと話していいか?すぐ戻るから」
猿渡君は言い終えるとすぐに、錦蛇君の首根っこを掴んで、トイレの方へ走って行った。疑問に思いつつも、メニューにプリンを見つけたとたん、男子2人のことも忘れて注文していた。
「あー、ここのプリンも美味しい!!冷たいのがこれまたカラメルソースと合うし」
そんなことを呟いていたら、男子2人が戻ってきた。何故か、前のめりになっている猿渡君と、そっぽを向いている錦蛇君の態度が対照的だった。
「プリン2個も注文したのか・・・いや、それはともかくさ、一人暮らしは危ないと思うぞ」
「でも、お母さんやお父さんはセキュリティがしっかりしてるところなら構わないって」
「・・・・もう、親には話してあるのか?」
「うん、保証人が必要だから・・・お母さんは心配してくれたけれど、最終的には大丈夫だったよ。だから、心配いらないと思うんだよね。昔から鍵っ子だったから、一人は慣れているし」
(昔から、1人で留守番が多かったから、慣れっこなんだよね。)
というか、錦蛇君は、何でずっとしかめっ面なんだろうか・・・・?
「だから、あまり気にしないでください」
「気にするわ、バカが」
「だから、お前は黙れっつーの!今のお前、総長と同じぐらいすげぇ、間抜けだぞ」
「おい、それはさすがにひどくないか」
「事実を言ったまでだ。いや、そんなことよりよ、巳園・・・?」
「ふへ?」
「もしもだよ、もしも、コイツが普通に対応するなら、1人暮らしは止めるのか?」
何故か、やけにもしもという仮定で聞いてくる猿渡君。
一体何を言わせたいのか解らないが、嫌っているのはこっちではなく、そちらだということを暗に含めて伝えた。
「え、でも、名前も呼びたくないぐらい嫌われてるなら、意味がないと思うんですが」
何故か、猿渡君は、返事を聞いたとたん、錦蛇君の頭をスパーンッと叩いていた。
「翔、お前さぁ、もう思い切って言ってしまえよ」
「言えるかよ、その、今更だし」
「ほっんとうに・・・お前は・・・・・・・!!!!!」
スパーンッと、2回目の叩く音が響いた。いい音がしたなと思いながらも、プリンを完食した。
「ごちそうさまでした。ということで、もういいですか?」
「まだ話は終わってねぇっ!!」
「ええ・・・その、錦蛇君は、私がいない方がいいのでは」
「そんなわけないだろう。・・・どっちかというと、家にいて欲しいとは思ってる」
「え、でも、妹とは・・・・」
「思ってないし、思えない」
「・・・矛盾していませんか」
錦蛇君の歯切れの悪い言い方に、思わず唸ってしまう。
だって、これでは堂々巡りではないか。結局この人は私をどうしたいんだろう。
(・・・意味が解らないっ・・もう、はっきり聞こう!)
意を決して、錦蛇君にストレートに聞いてみた。
「錦蛇君にとって、私はどういう存在なんですか?お母さんの再婚に邪魔な人間と思っているのか、はたまた、単なるクラスメートで妹にはしたくないっていう感じなのか。そういうのはっきりさせてくれませんか?」
一瞬の間をおいた錦蛇君は、隣にいる猿渡君と目を合わせた後、しぶしぶとばかりに口を開いた。
「・・・俺が、お前を初めてみたのは、高1の時。バイト先で働いていた時に、お前が客としてやってきたんだ」
「え、っていうことは・・・去年から、私のことを知っていた!?」
「・・・ああ、毎回来るたびに、プリンの新作を注文していたのを覚えている」
「え、もしかして、バイト先って、もしかして、こ、コンビニぃいいっ!?」
(・・・つまり、私と錦蛇君は再婚の時が初対面じゃなかったんだ!?)
「あ、それで、私が気づいていなかったから怒ったってこと?」
「少し、違う・・・ああ、もう・・・黙って聞けよ」
頭を掻きながらも、腕を組んで悩んでいる様子が見える。よっぽど言うのに抵抗があるらしい。隣にいる猿渡君に顔を向けると、ニヤニヤと楽し気な顔だ。
一方で、錦蛇君はこちらを見ようともしないし、見られるのも嫌なのだろう、顔をそむけている。
(でも、納得はできた。そりゃ、顔を覚えられてないのって、向こうにとってはショックだもの。あれ、でも、なんか、少し違うとか言っていたような・・・。)
とりあえず、姿勢を正して、錦蛇君の話を聞くことにした。
・・・その前に、プリンをもう一度注文したら、猿渡君が呆れた顔をしていたけれど、キニシナイ。
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