香帆と鬼人族シリーズ

巴月のん

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鬼人族のメンバーの恋

【巳編】捻れた好き*9*

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短いポニーテルの髪の毛。
後ろで結んだとこが、犬の尻尾みたいにふりふりと揺れている。

(・・・昔飼っていた犬みたいだ)

少し地味だけれど、落ち着いた眼鏡。
無理にコンタクトをするつもりがないのだろう、眼鏡がしっくり合う顔立ち。
くりくりとした目に、少し低い身長で幼く見えるが、いい意味で落ち着いていた。
同級生で化粧好きな子とはまた違う。流行に流されないことから、“自分”を持っているということもよく解る。
無理に自分を見せているカンジもなく、自然体。

その自然さは、学校以外で見かける彼女の表情や態度にもよく表れていた。


「お願いしますー!!」


(またプリンか・・・。)


「こちら、しめて580円となります・・・スプーンは・・・・はい、ありがとうございました。」

コンビニでバイトを始めた時に、初めてレジで対応した客が、目の前にいる彼女だった。
毎回、違うプリンを嬉しそうに買っていく彼女。
気づけば、目で追っていた。彼女は気づいていなかったけれど、学校で見かけた時にすぐに解った。
・・向こうはこれっぽちも気づいていないようだったけれど。
名前を知りたいと思っていたら、たまたま総長の彼女である香帆さんが知っていて、彼女の名前の漢字を知った。なんでも学校祭の時に実行委員で一緒になったとかなんとか。

『巳園 奈津』

(干支の・・・俺と同じヘビか。)

共通点を見つけたことが不思議と嬉しかった。
同級生で、隣のBクラスに在籍していることも解った。

彼女のことを知っていくうちにつれて、いろんな顔が見られるようになった。

プリンをみつけては喜び、プリンが売り切れたのを見ては悲しむ。
限定プリンを見つけては飛び跳ね、目当てのプリンがないと項垂れる。
これぞまさに、一喜一憂・・・というのを、実際に体現してくれた子だった。


(・・・・とりあえず、プリンが大好きなのは解ったよ!!もういいから!)


重度のプリン好きに呆れたが、店員の立場以上、おいそれと突っ込めないし、会話もできない。
学校でも顔を覚えられていないから、こっちから話しかけると不信に思われる。(ちなみに、うちのコンビニでは香帆さんと一緒になって、“プリンちゃん”とか“プリン好きさん”と呼んでいる。)


だけれど、それでも、何故か―


(あの子から目が離せない。)


多分、この時にすでに俺は惚れていたんだと思う。つまり、ハマったのだ。
あの屈託のない笑顔に。ころころ変わる表情に。

そんなある日、母から再婚するという話を聞いた。


「再婚?へー母さんと再婚したがるって・・・あいたっ!」
「お黙り。とっても優しい人なのよ。あちらには貴方と同じ歳の娘さんもいてね。貴方より誕生日が遅いと聞いているから、妹になるのかしら」
「あれ、マジで?じゃ、妹ができるんだ!?」
「ええ。たしか、なつちゃんというんだったかしら。写真で見たけれど、かわいい子だったわ」
「へぇ・・・」
「こんど夕食会で一緒に食べようって約束したから、翔もちゃんと参加してね」
「りょーかい」

同じ歳とは言え、妹が出来るのは嬉しかった。
一人っ子ということもあって、きょうだいというのに憧れがあったから。
でも、でも・・・神様、あんた俺になんか恨みでもあるの?

夕食会で合流した時に、目の前にいた“なつちゃん”に、俺がどんだけびっくりしたか。

「あ、錦蛇君・・・」

(なんで・・・よりによって、この子なんだよ!)

 「・・・ちっ・・・義理の妹になるのってお前だったのかよ」
 「ちょっと!! ごめんね、奈津ちゃん。あなたね、妹が出来るって楽しみにしていたのに、どうしていきなりそんなことを言うのよ?」


(それはこいつ以外での話だっつーの。でも、妹になるのが、こいつなら話は違ってくる。)


頭に血が昇った俺は、気づけば、母さんと義理の父になる巳園さんに条件を突き付けていた。

 「・・・母さん、巳園さん、やっぱり昼間に言ったこと、撤回する。再婚は構わないって言ったけれど、こいつが妹になるっつーんなら、条件を付け足す」


・・・・だって、俺、この子を妹にしたくない。


「学校では絶対にこの子と兄妹になるってことは伏せておいて。もちろん、学校では名字も変えない。」


兄妹なんてありえない。
俺はこの子を好きで、彼女にしたいと思っている。

それなのに、名字も同じになる?
結婚もしていないのに?

これから、この子と一緒にいるだけで、他人に兄妹なんだって言われる訳?
カップルなんて思われることなんて、一生ないってことじゃん・・・。


そんな不毛な関係、まっぴらだ。マジでありえない。


プリンが好きで、感情豊かな彼女。
でも、俺のことを覚えていない。
・・・今だって、純粋に俺のことを見てきている。
いやいや、俺はお前の兄なんかになるつもりはないから。


・・・そうだよ、絶対に・・・妹だなんて思ってやらない。



俺は、お前のことが、好きなんだから。



気づけば、俺は彼女に向かって、口にしていた。

「お前も絶対に学校ではしゃべるなよ。俺は・・・お前と兄妹の関係になるのはまっぴらごめんだから」

いった後で気づいた。これ、真意を覚られるんじゃね・・・・と思ったが、彼女はあっさりとスルーしてくれた。それどころか、親友にだけは言ってもいいかと言う始末。

(・・・そんなに、俺は眼中にないってか・・・いや、もしかしたら天然で解ってないだけかも。)

彼女からすれば他人だ。
そりゃ、いきなりクラスメートが兄になるのだ。
仲良くしたいというのはよく解る。

(それが俺じゃなかったら、いくらでもいいと思うんだよな。でも、俺は嫌なんだ。)

こっちは、彼女をよく見知っているだけに、叫びたくなった。だが、叫ぶわけにはいかないこともよく解っていた。
震える声を必死に押し殺し、言えたのはたった一言。我ながら、ヒネリのない言葉だった。

「・・・・・そいつの口が堅いならな」


夕食会が終わった後、ダッシュでアジトに寄って、遼河りょうが愚痴ぐちった。
遼河には、バイトのことも、巳園のことも言ってあるから、八つ当たり相手には最適だった。
俺としては、小気味よい音が響いて気持ちよかった。あっちは痛みからか、呻いていたけれど。

「遼河ぁああああ!!!!」
「ぐはっ!ちょ、ちょっと待て・・・い、いきなり何故・・ぶん殴った?」
「・・・・・・・八つ当たりだ」
「いきなりでわかるか。というか、お前さ、今日新しい親父さんと妹に会うって言ってなかった?」
「その妹が、巳園だったといえば解るか」
「・・・え、巳園って、お前が言っていたコンビニのプリンちゃんだよな?」
「そう、その子だ。・・・よりによって妹だぞ?つまり、この俺が戸籍上は彼女と同じ巳園になる。同じ家で過ごせるのは嬉しいが、兄妹になるのは嬉しくない。あと、何故お前がプリンちゃんと呼ぶ?」
「落ち着け、もちつけ、イライラしすぎ。・・・というか、ちょっと待て」

ぐちぐちぐちと言っていたら、遼河がスマホを取り出して何かを調べていた。
一体何だと思っていた時、遼河が口を開いた。

「・・・良かったな、翔。近親婚による遺伝的・倫理的弊害が生じないため、義理の兄妹同士で結婚することは、例外的に認められていますだとさ」

俺の愚痴にうんざりだと思っていたらしく、検索して調べてくれていた。遼河のスマホを取り上げて事実かどうかを確認して、やっと落ち着いた。

「なんだ、結婚できるのかよ、驚かせやがって・・・」
「それはこっちのセリフだ。ちゃんと調べてから暴走しろ」

あきれ果てた遼河に、何も言い返せなかった。
それでも、心情面で、家族になることをすぐに受け入られる訳もなく。

(っつーか・・・俺、あの子と同じ家で過ごすことになるのか・・・。それはそれでどうなんだ?)

結局俺は、彼女の前では不機嫌な態度をとったままだった。
だが、内心では葛藤していた。

(・・・やべぇ。今さら、友好的な態度をどうやって取れと。・・・いや、待て。今、彼女は俺のことで頭がいっぱいのはず。そしたら嫌でも、俺を意識するんじゃないか。)


それなら、願ったりかなったりだからよしとしよう。


当分は放置で行こうと思っていた矢先、体育でボールをぶつけられた巳園が倒れた。
巳園とよく喋っている来音の声を聞いた俺は思わず、叫んでいだ。



 「・・・・巳園っ・・・・・何バカやってんだ!?」




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