【R18】第二王子と妃の夫婦事情

巴月のん

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34)再びすれ違う想い

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記憶喪失になったザンだが、元々の外面が良いお蔭で、周りにはさほど大きな影響はなかった。ある意味、本来の口の悪さを知らないことが功を為した例ともいえる。
ザンには総団長としての記憶もないが、いずれはなるべくしてするべきことだと捉えていたせいか、心構えはできていたらしく、副団長達の助力を受けながら、少しずつ仕事をこなしていた。

「なんだって、俺はこんなに仕事を抱えているんだ・・・忙しすぎる!!」
「そりゃ、総団長ですから、当然のことかと・・・なんで俺をじっと見ているんスか・・・!?」
「・・・お前と話していても違和感がないことがすごいなと。」

ラティスに話しかけられたザンがボソッと呟く。ザンからすれば、兵士に対しては今まで気を許してなかったので、ラティスのように気安く会話できることが不思議だという。
そういうことならと、ラティスが自分との出会いについて軽く説明すると、ザンは眉間にしわを寄せた。

「というわけで。あれ、なんすか、今度は不満気な顔になって。」
「アリアが兵士に・・・確かに彼女らしい行動だが、俺がみすみす逃がすというのが想像できん。」
「あっ、そっちですか。多分、反対派の貴族たちを抑えていたせいで後れを取ったのだと思いますよ。」
「反対派というのは、どういう意味でのだ。」
「ザン様曰く、異世界の身元もはっきりしない人間の血を高貴なる皇族の血筋に混ぜていいのかというバカなことを言っている厄介で面倒くさいバカ達らしいです。」
「・・・・俺は記憶があろうとなかろうとまったく変わっていないことが良く解った。」

クククッと歪んだ笑みを見せると、ラティスは「ちっとも変っておりません。ただ・・・」と発言を区切った後、アリアの部屋を指さし、続きを言った。

「アリア様との関係はちょっと前より後退してしまったような気がしますけど。」
「・・・・・あいつが、悪い。まさかあんなに体の相性が良いとは思わなかったんだ。」
「だからって、アリア様が起き上がれないほど潰してどうするんすか。お蔭で、アリア様は自室に結界を張ったまま出てきません。お蔭で仕事が大変なんですけど・・・自分を含めて。」
「・・・・・・・・・あー、まぁ、その・・・・悪い。」

ラティスの言っていることに覚えがあったザンはそっと目を逸らした。
アリアを部屋に連れて引きこもった一週間。これでもかとアリアの身体を喰らいつくしたのに、足りないとばかりにさらに三日ほどベッドに押しとどめたのだ。
さすがのザンも後ろめたい。
アリアの機嫌取りをと思っても、当の本人が出てこない以上、手の打ちようがない。


「まぁ、もう少ししたら出てくるとは思いますんで、それまでは難しいかと。」
「じゃあ、アリア抜きの仕事を優先してくる。またな。」


ザンはラティスと別れて、執務室に戻った。一方で、アリアはというと、部屋で拗ねていた。


「うう・・・・何度も言ったんだよ!?何度もやめて、休みたいって言ったのにぃいいいい!!ザンの馬鹿あああっ!!!」
「お、落ち着いてくださいませ、アリア様!!」


泣きながらクッションを投げまくっていると、ベッドの傍に控えていたメイドがおろおろしながら、宥めてきた。シャラはアリアの指示を受けて、休んでいた仕事の処理作業に追われていたため、別のメイドが2,3人で対応している。


「アリア様、どうか横になってくださいませ。身体がまだ本調子ではないのですから。」
「うう・・・喉がひりひりするし、あちこちが痛いし、もう・・・やだよ、あんな絶倫バカ!!」


まだ独身で、どう返事を返していいのか解らないメイドは顔を赤らめながら、タオルを差し出した。そのタオルを受け取って、涙を拭いていたアリアはきっと窓を睨みつけた。


「第一、なんなの、あれはもう、羞恥心を煽らせた癖に、散々じらすとかありえない!ねぇ、貴方もそう思うでしょう!?」
「あ、アリア様、このメイドは彼もいない独身ですので、少々刺激が強すぎるかと!!」
「・・・・センパイ、ヒドイです・・・でも、でも、きっと殿下のことですから優しくされたかと!」
「貴方が独身であることは事実でしょう!!・・・あ、アリア様・・・・どうされました?」
「・・あれのどこが優しいっていうのよ・・・!!!」


メイドの掛け合いを聞きながら、アリアは思いっきり思い出していた。



『ぞくぞくするな・・・しかも、この滑らかな感触はなんというか、癖になりそうだな。』


(下着をぽいっと投げ捨てていうことじゃないです。エロいといいながら揉まないで。)


『俺だけを見ろ。何も、考えるな。』


そのセリフにカチンときて、「散々、私の奥を突いてどろどろにしておいて言うことがそれか!」とにらみつけたら、より激しくなってしまった。ザンの嬉しそうな表情で余計な刺激を与えてしまったことに気づいたが、もう遅かった。
まぁ、早い話が、自分がザンのスイッチをONにしてしまったのだ。ある意味、自業自得と言えるが、アリアとしては納得できない部分もある。アリアは、クッションを抱きしめながらぽつりとつぶやいた。


「・・・何が驚きって、今のザンが、18歳っていうことよね。あの年であれだけ手練れならそりゃ女なんて選り取り見取りでしょうよ。」



(・・・・・・なんだか、ザンが遠く感じるなぁ。)









「邪魔するよ、ザン。どうだ、慣れてきたかね?」

皇太子でもあり、兄であるザリュルエルトが突然執務室に来たことに驚く。
目を丸くしながらも、ザンは兄をソファーのほうへと促した。


「兄・・・・いえ、皇太子殿下。どうぞ、お座りください。」
「堅苦しい挨拶はいらない。ここではいつも敬語なしでしゃべっていたからね。ふふ、そういう畏まっているザンも久々に見たなぁ。」
「・・・俺は、どんな人間でしたか?」


真顔で聞いてくるザンに対し、ザリュルエルトは目を細めた。


「そうだね、まだ公共の場では猫をかぶっているけれど、私たち家族の前ではちらっとではあるけれど、素がでるようになったよ。」
「・・俺が、ですか・・・?」
「そう。特に、アリア妃のこととなると君は感情が豊かになっていたね。」
「そうですか・・・?」


納得がいかないという顔を見せたザンだが、ザリュルエルトは笑い出した。


「君たちは最初、心がずれまくっていたけれど、ここ最近はいい雰囲気だったんだよ。そう考えると、アリア妃が結界を張るのも久々で懐かしいな。そういえば、何をして怒らせたんだい?」


興味津々に聞いてくる兄に呆れつつも、ザンはこっそりと告げた。少々無理をさせたと話せば、ザリュルエルトはなるほどとうなずいた後、何かを思い出したような顔を見せた。


「あれ。以前もそんなことがあったような気がするな。あ、そうだ。あれだ、思い出したよ。君がアリア妃に無体なことをして怒らせたんだっけ。デリカシーがない!とかなんとかで確か、一か月ほど結界が張られていた。君から彼女の機嫌を直したいから、おすすめのホテルとかを教えてくれと言われた覚えがあるよ。」
「・・・なんというか、もう今のままでも特に困らない気がしてました。」
「そりゃ、元は君だから、変わらないのは当然だよ。3年ぐらい前だから・・・その時のアリア妃は16歳ぐらいだったはずだ。」
「それはまた・・・ずいぶん長く彼女と一緒にいるんですね、俺は。」
「しかも、君が自分から真名を教えているからね、相当相性が良いということなんだろう・・・ああ、時間だ、行かなくては。」


目を見張ったザンだが、ザリュルエルトはそれに気づくことなく、仕事へ戻っていった。一礼しながら、退出していった兄の背中を見送った後、ザンは椅子に座りなおした。


「誰にも、心を許さなかった俺が・・・真名を教えただと?」


ふと、アリアの顔が思い浮かぶ。
心を見透かすような微笑を見せたと思うと、明るい笑顔を見せる。
夜はうってかわって、甘い喘ぎ声を出し、艶やかな体を惜しげもなく見せてくれた。
白い肌に、黒い髪がよく映えていた。あれはかなりクる。


あの性交は・・・・きっと、彼女にとっては今までと変わらない時間なのだろう。たぶん、俺だってそうやって彼女を愛したのだと思う。でなかったら、いやいやながらも受け入れないだろう。
でも、少なくとも今の俺にとっては何もかもが初めてなのだ。


「・・・・なんだか、もやもやするな。」


なぜかイラっと来る自分に疑問を持ちながらも、再びペンを執る。



奇しくも、同時刻で悩んでいた二人。そんな二人の思いを知ってか知らずか、ラティスだけは廊下で寒気を感じていた。








「・・・なんだか、悪い予感をひしひしと感じるッス・・・!!!!」






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