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幕間9)改めて妻の良さを再確認(???目線)
しおりを挟むどうやら、俺は記憶をなくしているようだ。
少し背が高くなっているのも、魔力が増加しているのも、周りの顔ぶれが変わっているのもそのせいらしい。
でも、俺からすれば、なんだか違和感だらけで、しいて言うなら未来へ飛ばされた感じしかしない。
幸いだったのは、ここでの俺も今の俺とさして変わらなかったことぐらいだろうか。
そんな俺には一つ困惑していることがある・・・いや、困惑というより・・・衝撃に近いものだが。
「ザン王子殿下、ぼろを出さないように気を付けてくださいませね。」
優秀なメイドである幼馴染の呟きが耳に入る。
どう考えても大丈夫とは思えなかったが、ザンはとりあえずと現状把握に必死だった。
「・・・善処する。」
「今日はアリア様のフォローもありませんから、お気をつけて。」
今日は貴族のパーティーに招待されている。俺を支援する貴族の中でも古株の地位にいるので、さすがに欠席は失礼にあたると参加することにした。ただ、アリアは・・・まぁ、あれだ。抱きつぶしたせいで体調がよろしくないため、欠席としたが。
主催者にも挨拶をし、一番重要な役割は果たした。後は少し回ってから帰るだけである。
挨拶をするたびに、アリアにもよろしくと言伝を頼まれる。
(アリアが俺の妃ねぇ・・・なんだか慣れん。)
集約するなら、「なぜ、結婚したんだ、俺!」だな。
皇帝陛下の命令で政略結婚となった。ここまではいい。
でも、正式に婚姻を結んだ上で結婚式を挙げて、正式な夫婦になった。これはどうしてそうなったのかわからん。
そもそも、女というのは――
「・・・あら、ザン様!!」
「あら、本当ですわ。どうぞ、こちらへ。」
「・・・・・はぁ。では、失礼します。」
・・・こうやって群がってくる頭の悪いやつらばかりだと思っていたからな。
(幼馴染は別としても・・・香水と化粧くさい女はどうにも合わない。以前なら、体の相性がよければいいという考え方もしていたが、アリアという人間が傍にいる今、そんな気も起きない。)
「ねぇ、記憶喪失というのは本当ですの?巷で噂になっておりますけれど・・・」
「・・・・ええ、どうやらそうみたいですね、とはいえ、少し前までの記憶はありますが。」
「では、仕事に支障はありませんのね!良かったですわ・・・ところで、その、少し前というのは、結婚する前の・・・ですか?」
「ええ。そうですが、それがどうかなされましたか?」
「まぁ・・では私たちがいろいろと教えて差し上げますわ!!ねぇ、皆様?」
「・・・・それはそれは、ありがとうございます。」
何かを含んだ表情を見せた女性に対して思うことはただ一つ。
(お前達の考えてることなど、手に取るようにわかるんだよ、メス狐が。)
・・・魔力が高いことは総じていいことばかりではない。
なんらかのデメリットもある。
俺にとって最たるデメリットは子どもができにくいことであること、そしてもう一つが、他人の心を読み取れることだ。もっとも、自分の目に見える範囲でしか読み取れないが。
例外は、父上と母上と・・・アリアのみ。
(そういえば、昨夜は心地よかった。やっぱり、アリアがいると大分違うな。)
いつもなら、警戒しながら寝るというのに、昨夜はその必要もなかった。
体が覚えているのか、アリアを抱きしめると不思議と落ちつく。
(それに、あの髪の毛や肌の香りもよい。)
『んっ・・・やぁっ、はげしっ・・・!!』
後ろから柔らかな胸をもみながら、アリアの秘部を貫く快感。
突くたびに、彼女の髪の毛が揺れてアリアの肌によく映えていた。窓近くで月明りに照らされて、彼女の体に張り付いた汗が滴のように垂れていて、これまた欲情をそそる。
思い出すと体が疼く。
10代の俺としてはもっとガンガンやりたかったが、当のアリアがもう無理っ!!と魔法まで出して拒否した以上、俺としては引き下がるしかなかった・・・異世界の技術とやらをもっと知りたかったのに。
(・・・そう考えたら贅沢だな。結構前からそばにいたのに両想いになったのが、最近だとは。なんともったいないことをしてんだよ、俺は。あんな相性がいい女、滅多にいないぞ。)
そういえば、シャンプーやリンスも開発が進んで、恐ろしく良いものになっていた。
あれも俺が開発したと聞いている。聞いた直後に脳裏に浮かんだのはアリアだった。ああ、なるほど、この世界での俺も彼女に溺れているんだってよくわかる。
(でも、この世界の俺は記憶喪失になって、18歳の俺が出てきた。)
俺だって気付いている。彼女の目が時折揺れることに。
時々、俺ではない俺を見ている時がある。そして、俺はそれに対して・・・・
(めっちゃくちゃイラついている。ああ、思い出しただけでまたイラっときた。)
思考を止めようとしたその時、ようやく自分がいるところを思い出した。
そばには、俺を持ち上げつつも、アリアの悪口をしゃべっている女数名。
もういい加減聞き飽きたと思った俺は口を開いた。
「ねぇ、聞いておられます?ザン様は、それはそれはもう優しい方で、アリア様の無茶も受け入れられて・・・そういえば、以前もアリア様の命令でドラゴンをお捕まえに・・・」
「黙っていただけませんか。」
「えっ・・・・」
「聖女であるアリアは俺の正妃です。その妃を貶めることは俺を貶めたのと同意義です。さすがにそのようなことを言われて素直にうなずくことはできませんね。」
「はっ・・・い、いえ。そんなつもりでは・・・」
「俺には過ぎた素晴らしい女性です。それにこの国にも繫栄をもたらしてくれると聞く。そのようなできた女性をまたバカにしたその時には・・・」
少しトーンを落として、目を鋭くさせる。これだけで他人に恐怖を与えられることを俺は良く知っている。
「それ相応の制裁をさせていただきますのでそのおつもりでどうぞ。では、失礼します。」
おびえる女性陣をよそに、ザンは社交の場を退出していった。記憶喪失という話が広まっていたこともあり、スムーズに出ていくことができた。
扉を閉めると、廊下で待機していた執事のポトスが進み出てきた。
「お疲れ様です、わが君。」
「ああ。いろいろと面倒なものだな、大人の世界は。」
「18歳にしては立派なものでございましたよ。」
「身体が覚えているんだろうな。俺としては助かった。それはそうと、彼女は?」
「アリア様でしたらまだ腹を立てているようで、結界が解かれる気配はございません。」
(どうやら、昨夜のことをまだ怒っているらしい。でも、夫婦なんだからあれぐらいは・・・)
「シャラが言うには、ここ数日仕事で忙しかったご様子。それもあっての疲れなのでしょう。少し休みを与えてやってくださいませ。」
心を読んだかのように諫めてくるポトスに降参と了解の意を込めて手を挙げた。
「・・・しょうがない。おとなしく自分の部屋に戻るとしよう。」
「それがよろしゅうございます。それから、あの女性陣についてはいかがいたしましょうか。以前からうっとうしいと言われていた方々だったので、すでにマーク済みですが。」
「前科があるなら、遠慮はいらないな。裏で手を回してくれ、いつものように、な。」
「かしこまりました。」
お辞儀をして消えていく執事を見送ってから部屋に戻ろうとする。
その途中で通るのはアリアの部屋だ。ザンの部屋が奥にあるので必然的に通るが、今はバリアによって扉が閉ざれているので、特定の人間しか入れない。だが、気配からして部屋に彼女がいることがわかる。
「・・・・アリア。」
「何よ。言っておくけれど、開けないからね。」
話しかけてみると、一拍待った後で足音と声が聞こえた。どうやら扉の前にいるようだ。
「いや、お休みを言いたかっただけだ。」
「そう・・・おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ、我が妃。」
返事を待たずにさっさと歩き出す。不思議とさっきまでのイラつきはなくなった。
さっきの会話で胸にストンと落ちたからだ。
(なんだ。結局アリアが俺の妃であることには変わらないんだよな。そうだよ、何バカみたいなこと考えていたんだろうか。)
「ザンっ!!」
突然後ろから聞こえた声に思わず振り返る。そこにはアリアが仁王立ちしていた。
「アリア?どうし・・・」
驚きから駆け寄ると、アリアのほうから突然抱きついてくる。一体どうしたと首をかしげていると、いきなり口づけされた。驚く間もなく離れていったアリアが去り際にポツリとつぶやいた。
「また明日っ・・・おやすみ、ザンファルティアール!」
・・・・その日の夜、ザンは悶え死んだとか死ななかったとか。
そして、懲りずにアリアを抱きつぶしたことで、アリアの怒りに火を注ぎ、またもや結界をかけられるはめになるとはこの時のザンは思ってもなかった。
彼曰く、「可愛いことを言うアリアが悪い」だそうである。
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