【R18】第二王子と妃の夫婦事情

巴月のん

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39)不可解な主の行動を辿る(シャラ視点)

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「テステス。こちら、ラティスです。聞こえていますか、シャラさん。」




・・・緊迫感があるのかわからない護衛仲間の声が聞こえた。魔導具通信機で会話ができるのは便利だけれど、この場の空気にはそぐわないと思うのは彼の声がのんきだからだろうか。


「聞こえていますけれど・・・そんなあっけらんと。ザン様は大丈夫なんですか。」
「はっはっ、大丈夫じゃないから、こうして俺が盛り上げようと頑張ってるんスよ!!!」



・・・どうやら、ヤケになっていたらしい。



「とにかく、アリア様が消えてからもう一週間は経ってますから。そろそろザン様も我慢の限界がきてるッスよ・・・まぁ、仕事に忙殺されてて動けてませんけど。で、そちらは?」
「こちらは、アリア様の魔力をたどってなんとか目的地の近くまでは来ているわ。ただ、ここで途絶えているのよね。そちらは女神様に探すようお願いしたと聞いたけれど?」
「・・・それが、女神様は今は動くべき時ではないとおっしゃられたとか。それもあって、ザン様の怒りは半端なく、宰相が必死に押しとどめています。」
「・・・・仮にも総団長ですものね。」
「そうっス・・・これから稽古なんですよ・・・俺終わったかもしれない、うううううっ!!」
「・・・とりあえず頑張って探しますけれど、期待はしないで頂戴ね。」


通信を終わらせると、そばに控えていた部下が口を開いた。


「シャラ様、ザン様の様子はいかほどに?」
「荒れているようよ。まぁ、無理もないわね。さて、私たちも動きましょう。」


私の家は代々、聖女様を裏から護衛する影の役目を命となして生きてきた。
男は兵士に、女はメイドになり、皇族に仕えるだけの能力を学び、手に入れ、暗殺技術を磨きながら聖女様がお出ましになられるその時を待つ。そして、聖女様が現れた際には、たとえ相手が皇族であろうとも、命を懸けて聖女様を守ること。それが我が一族が女神様に与えられた宿命。
その家の長女として生まれた私には、部下たちを指揮し、アリア様を探し出さねばならない義務がある。


「・・・女神様がお動きにならなかったということはアリア様が無事と思っていいのかしら。」


黒い装束を身にまとい、アリア様がよく例えている忍者姿とやらで森の中へと忍び込むと、大きな別荘らしきところが見えた。アリア様の魔力がここで途絶えているというラティスの報告をもとにこの建物を探し出したが、窓を見るにどうやら犯人らしき人間の影が見えた。私が振り向く宇都、部下たちが合図とみて、一斉に周りを囲んだ。

「では、いきますよ。」

ドアを盛大に蹴って部下たちを全員家の中へと入れ、自分は最後尾に立った。そして、彼らに一斉捜索を命じ、私はリビングへと入った。
彼らは一斉に散らばって、やるべきことを各自でこなしてくれている。何とも有能な部下たちである。


「・・・やはり、あなた方でしたか、ピエール様。」
「父上、こ、この黒ずくめの者たちは・・・」
「うむ、噂は本当じゃったか、聖女のためだけに皇族が密かに作り上げた影の一族。その一族は皇族の直属になるため、あらゆる機関を飛び越え、警察よりも権力があるとか。その跡取りがそなたということか・・・シャラ・ダラフェッサよ。」
「私のことは結構。それより、アリア様をどこにやった?」
「ふ、一足ひとあし遅かったの。彼女はここを出ていきおったわ。」
「なんですって。」


にやりと笑ったピエールに対し、シャラが眉をひそめたその時、部下の一人がそばに寄ってきた。


「シャラ様、あちらの部屋にアリア様の服らしきものが・・・・しかし、折りたたんであることからして、どうも剣呑けんのんな様子ではないご様子です。」
「・・・つまり、アリア様は自分の意志で出て行かれた。」
「その可能性が高いかと。」
「そう・・・とりあえず、あなた達の身柄は拘束させていただきます。ザン様のこれまでにない怒りをその目でとくと見てくるが良い。」
「ひぃいいいいっ!やっぱりだ、父上!!魔王はやっぱり怒ってるんじゃないかぁあああ!」
「うろたえるでないわ。こうなることは予想の範囲内であったであろう。」
「そ、そうでしたね、父上!!」
「お前たちがどう考えようと無駄よ。ザン様はそこまで甘くはない。」


手を一振りすると、部下たちが一斉にピエール親子を拘束して部屋を退出していった。この後は護送されて地獄行きとなるが、同情はしない。
シャラは誰もいなくなったリビングを一回りし、腕を組む。


(確かに、この様子を見ても手荒い真似はされていないようね・・・。)


「・・・だが、アリア様が自ら出ていくとは。その気になればザン様のところにすぐに行かれるはずだ。それをそうしないのは、何らかの問題でもあったのかもしれないということ?」
「シャラ様!」
「なんだ、騒々しい。」
「こ、このようなものを発見しました!!」
「これは、アリア様の字ね。さすがに私が探しにくることは予想してらしたみたい。」
「し、しかし、内容については・・・」

くまなく捜索したところ、枕のところにメモが忍ばせてあったという。部下が驚いたのはそのメモがシャラ宛に書かれており、その内容が思いもよらないことだったからだ。


『シャラへ、これを見ていたらお願い。ザンが私を探しに来ないように工作しておいてほしい。後、ピエール親子のことも殺されないように見張っていて。彼らにはまだやってもらうことがあるから。それから・・・』


「し、シャラ様、如何されますか。」
「だが、これはザン様の意に反するのでは。」
「では問おう、我が一族は何のために存在するのか。」
「シャラ様、それは当然、聖女様をお守りするためであります!」
「なれば、我々がなすべきことはただ一つであろう・・・アリア様も何らかの意図を考えてのメモを私宛に残したに違いない。」
「では。」
「そうね・・・全員に伝令なさい。我々はここで何も見なかったことにする。それから、城に戻ったら、ザン様が動く日を先延ばしにする裏工作を行うとしましょう。」

部下たちが肯定の意を取って動き出したのを見た後、シャラはメモを懐に入れながら歩き出した。いろいろと考えることはたくさんあるが、シャラにとって一番難関なことはたった一つだけだ。


「・・・ピエール親子が殺されないようにということが一番難しいわね。ザン様の怒りは確実にあの親子に向かっているから。」



(しかし、アリア様は一体何をお考えなのか。)



「まぁ、最後のほうに、『ザンに会いたいけれど我慢する』という本音が書かれていたあたり、しなければならないことができたと考えるべきでしょうか。」


シャラはため息をついてから、部下たちが設定した転移装置をくぐって城へと戻った。メイド服に戻ったシャラがそこで見たのは、ボロボロに打ちのめされているラティスと、まばゆい笑顔を見せているザンだった。
訓練が終わったばかりなのだろう。いつものフード姿と異なり、黒い鎧で武装している。
いつになく鋭い視線に思わず息をのむが、ザン相手に下手なことは言えない。まずは挨拶が無難だろうと口を開いた。


「・・・ただいま戻りました、ザン様。」
「おかえり。それで、成果は?」
「申し訳ございません。すでに逃げられた後のようで、あの別荘には誰もいませんでした。」
「へぇ・・・・本当に?」


・・・昔から、ザン様は鋭い。いかなる嘘であってもすぐに見破るお方だ。一体どうしてかはわからないが、彼には彼なりの魔法かなんかで見破っているのではと思うことがある。ただ、今回のザン様の指摘はいつになく鋭いもので、剣をこちらに突き付けてくるほど怒りを抱えていらっしゃる様子だ。


「っ・・・そういうことでお願いいたします。」
「あっそ・・・。つくづくどこまでもアリアは・・・面白いな。どこまでも俺を振り回してくれる。」


そういいながら、ザン様は剣を一振りし、壁一面に傷をつけた。隣で剣がギリギリで当たりそうになったラティスは壁に張り付いた状態で震えていた。


「・・・ラティス、もう少し稽古に付き合え。」
「は・・・はひぃいい・・・・うう・・・・」
「シャラ。」
「はいっ!?」

思わず上ずってしまったが、さらに驚いたのはザン様がおっしゃったこと。

「アリアの意志であるなら、不本意だが誤魔化されてやろう。いいか、本来なら説教ものであることを忘れるな。それから、あれの目的を調べることと報告は怠るなよ。」


(・・・見透かされている!どうして?何故なの・・・どうして・・・!?)


ザンの鋭い瞳を前に是と頷き、震える声で返すのが精いっぱいだった。

「シャラ、返事は?」
「か、かしこまりました。ピエール親子についてはこれから尋問する予定です。」
「なら良い。ラティス・・・ぼけっとしてないでついてこい。」
「はいっぃいいいい!!」

冷たい視線で私を一瞥いちべつした後、さっさと歩き出したザン様を追ってラティスが走っていった。彼らの姿が小さくなったのを見届けた時、シャラは自分が汗びっしょりになっていることにやっと気づいた。それもそのはず、ザン様の怒りによって廊下にはありえないほど魔力が高まっていたのだから。
おそらくこれでは魔力によって倒れたりする人間が出てくるかもしれないと危惧したシャラは、メイド達全員に魔導具で耐性装備をするように伝えることを決めた。そして、誰もいない廊下で汗をぬぐいながらボソッと呟いた。





「・・・アリア様が帰ってきた時が・・・いろんな意味で怖いわ。」







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