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1章:ありえないほど最弱から究極で最強へ
【3】新たな天職
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◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ジェイクはいつもより少し早く目を覚ました。
というのも、外がいつもよりうるさかったからだ。
ジェイクの住む部屋は要約するとただの屋根裏部屋なので、防音などという概念は一切ない。
というわけで朝がうるさいのはいつも通りなのだが、それにしてもこの日は普段以上にうるさかった。
「いったいなんだっていうんだ?」
ジェイクが外に出ると、人々が自分のスキルを空打ちしていた。
「お、おい。……何やってるんだ?」
これには流石のジェイクも戸惑った。
空打ちというのはつまり特に目標も目的もないのにスキルを使うことだ。
火を出したり、風で木を切ったり、地面を隆起させてみたり。
朝練ぐらいならわかるが、今日に限ってみんながみんなそうしている理由がわからない。
ジェイクが状況を理解したのは近くの少年が叫んだのを聞いてからだ。
「ジェイク! スキルの威力が落ちてるんだよ! めちゃくちゃ落ちてるんだ!」
「威力?」
ジェイクはハッとしてみんなが使っているスキルを確認した。
結構上位の天職持ちも混じっているはずなので、街中の人間がこぞってスキルを使えば今頃は大災害になっているはずだが、全くその気配はない。
「確かに……。みんな、かなり下級のスキルばっかりだな。まあ俺から見ればそれでも凄いが」
何がなんだかよくわからないが、この状況でも自分が最下位だということだけは間違いないとジェイクは思った。
「こうしちゃいられねぇ! 神殿に行って何が起こったのか聞いてくる!」
一人の男がそう叫ぶと、周囲のみんながハッと我に帰ったように動きを止めた。
「そ、そうだ! 神殿だ! 神殿に行こう!」
「何かの間違いだ! 俺のスキルがこんなにショボいなんて!」
人々は我先にと神殿に向かって走りだした。
ジェイクもなんだか興味が湧いてきたので行ってみることにした。
……もちろん徒歩で。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「どうなってんだオイ!」
「クソ神父! 仕事しろよ!」
ジェイクが神殿に到着すると、そこは既にクレーマーの巣となっていた。
サンドバッグ状態の神父は全身から汗が吹き出ている。
「いやしかしですな……。私にもどうしてこんなことが起こったのかさっぱり……」
天職はこの神殿で神から与えられる。
だからこの神殿の職員は天職について一番詳しいとされていた。
しかしそんな神殿の者にも、何が起こったのかわからないらしい。
「大丈夫か?」
ジェイクは自分のハンドタオルを差し出した。
自分が天職のことでよくバカにされるので、他人事には思えなかったのだ。
「これはこれは、ジェイク殿」
存在確率、二百億分の一。
その最下位職<這いずる者>を与えられたジェイクは、神殿の関係者達の間ではちょっとした有名人だった。
もちろん貴重なサンプルとしてだ。
それもあまり良くない意味でだが。
ジェイクから受け取ったタオルで額の汗を拭く神父。
しかしそんな気遣いが余計に周囲を苛立たせてしまったらしく、一人の男が神父に詰め寄った。
どう見ても魔法使い系にしか見えない黒いローブを身に着けた男だ。
「どうして俺の天職が変わってるんだ!」
「天職が変わった? どういうことだ?」
「俺の天職が<上級炎術師>から<下級炎術師>になったんだよ!」
「は?」
ジェイクはそんなことがあり得るのかという目で神父を見た。
<上級炎術師>といえば、勝ち組の予約権とまで言われるエリート職だ。
同じ炎術師でも、大多数の<下級炎術師>とは天地の差がある。
「本当なのです。それどころか、大半の方々は最下級職に落ちています」
大半の者達の天職は各系列における下級職だ。
最下級職となると形式上はその一段下というだけだが、実際の能力には大きな差がある。
なにせ、最下級職になった者達は絶望して自殺してしまう者達が多いくらいだ。
(それを言い始めると俺は……)
ちなみにジェイクは最下<級>職ではな最下<位>職である。
最下級とはあくまでも各系列の中でランクが一番下というだけだ。
炎術師の中での一番下、戦士の中での一番下、しかしそれでも炎術師や戦士としての恩恵はある。
たとえば<治癒師>は医療水準の低いこの世界では非常に大きな需要があり、最下級でも食うのに困ることはない。
<治癒師>そのものが価値のある天職なのだ。
だが最<下>位職となると話が違ってくる。
最下位職は全ての天職の中で一番価値が無いという意味だ。
つまりジェイクの天職<這いずる者>は――。
「おい! ジェイクはどうなったんだよ!」
誰かがそう叫ぶと、みんなの視線がジェイクに向いた。
「そうだ! 今まで最下位職だったんだ、超最下位職とかになってんじゃねえのか?」
「わはははは!」
みんなは鬱憤を晴らすかのようにジェイクを笑い者にした。
別にこれはいつものことだし、だからといってランクダウンした彼らの天職が元に戻るわけではないのだが……。
心の弱いやつは下を見て安心しようとするものだ。
<上級炎術師>でなくなってしまった男も、動揺を抑えようと話に食いついてきた。
「そ、そうだジェイク。お前も天職を確認してみろ。俺ですら上級から下級になったんだ、お前はきっととんでもないことになってるぞ」
「確かにそうですな……。ジェイク殿の<這いずる者>は世界で唯一、能力にマイナスの補正がかかる天職。これが更にランクダウンしたとすると、いったいどんな悲惨なことになっているか……」
神官の言葉を聞いたジェイクは青ざめた。
これまでだって天職のせいでギリギリの生活をしてきたのだ。
それが更にランクダウンしたらどうなることか。
「俺の天職を確認してくれ! 今すぐに!」
ジェイクは慌てて神官に天職を調べて貰った。
「どれどれ。ジェイク殿の天職は……。<這い寄る混沌>……?」
水晶に浮かび上がったジェイクの天職の名をつぶやいた神父の言葉は、完全な疑問形だった。
この時はジェイク自身を含め、まだ誰もわかっていなかった。
ジェイクの得た新たな天職<這い寄る混沌>が、一般的に最高位とされる天職<勇者>と<魔王>すら超える、真の最高位天職であるということに。
ジェイクはいつもより少し早く目を覚ました。
というのも、外がいつもよりうるさかったからだ。
ジェイクの住む部屋は要約するとただの屋根裏部屋なので、防音などという概念は一切ない。
というわけで朝がうるさいのはいつも通りなのだが、それにしてもこの日は普段以上にうるさかった。
「いったいなんだっていうんだ?」
ジェイクが外に出ると、人々が自分のスキルを空打ちしていた。
「お、おい。……何やってるんだ?」
これには流石のジェイクも戸惑った。
空打ちというのはつまり特に目標も目的もないのにスキルを使うことだ。
火を出したり、風で木を切ったり、地面を隆起させてみたり。
朝練ぐらいならわかるが、今日に限ってみんながみんなそうしている理由がわからない。
ジェイクが状況を理解したのは近くの少年が叫んだのを聞いてからだ。
「ジェイク! スキルの威力が落ちてるんだよ! めちゃくちゃ落ちてるんだ!」
「威力?」
ジェイクはハッとしてみんなが使っているスキルを確認した。
結構上位の天職持ちも混じっているはずなので、街中の人間がこぞってスキルを使えば今頃は大災害になっているはずだが、全くその気配はない。
「確かに……。みんな、かなり下級のスキルばっかりだな。まあ俺から見ればそれでも凄いが」
何がなんだかよくわからないが、この状況でも自分が最下位だということだけは間違いないとジェイクは思った。
「こうしちゃいられねぇ! 神殿に行って何が起こったのか聞いてくる!」
一人の男がそう叫ぶと、周囲のみんながハッと我に帰ったように動きを止めた。
「そ、そうだ! 神殿だ! 神殿に行こう!」
「何かの間違いだ! 俺のスキルがこんなにショボいなんて!」
人々は我先にと神殿に向かって走りだした。
ジェイクもなんだか興味が湧いてきたので行ってみることにした。
……もちろん徒歩で。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「どうなってんだオイ!」
「クソ神父! 仕事しろよ!」
ジェイクが神殿に到着すると、そこは既にクレーマーの巣となっていた。
サンドバッグ状態の神父は全身から汗が吹き出ている。
「いやしかしですな……。私にもどうしてこんなことが起こったのかさっぱり……」
天職はこの神殿で神から与えられる。
だからこの神殿の職員は天職について一番詳しいとされていた。
しかしそんな神殿の者にも、何が起こったのかわからないらしい。
「大丈夫か?」
ジェイクは自分のハンドタオルを差し出した。
自分が天職のことでよくバカにされるので、他人事には思えなかったのだ。
「これはこれは、ジェイク殿」
存在確率、二百億分の一。
その最下位職<這いずる者>を与えられたジェイクは、神殿の関係者達の間ではちょっとした有名人だった。
もちろん貴重なサンプルとしてだ。
それもあまり良くない意味でだが。
ジェイクから受け取ったタオルで額の汗を拭く神父。
しかしそんな気遣いが余計に周囲を苛立たせてしまったらしく、一人の男が神父に詰め寄った。
どう見ても魔法使い系にしか見えない黒いローブを身に着けた男だ。
「どうして俺の天職が変わってるんだ!」
「天職が変わった? どういうことだ?」
「俺の天職が<上級炎術師>から<下級炎術師>になったんだよ!」
「は?」
ジェイクはそんなことがあり得るのかという目で神父を見た。
<上級炎術師>といえば、勝ち組の予約権とまで言われるエリート職だ。
同じ炎術師でも、大多数の<下級炎術師>とは天地の差がある。
「本当なのです。それどころか、大半の方々は最下級職に落ちています」
大半の者達の天職は各系列における下級職だ。
最下級職となると形式上はその一段下というだけだが、実際の能力には大きな差がある。
なにせ、最下級職になった者達は絶望して自殺してしまう者達が多いくらいだ。
(それを言い始めると俺は……)
ちなみにジェイクは最下<級>職ではな最下<位>職である。
最下級とはあくまでも各系列の中でランクが一番下というだけだ。
炎術師の中での一番下、戦士の中での一番下、しかしそれでも炎術師や戦士としての恩恵はある。
たとえば<治癒師>は医療水準の低いこの世界では非常に大きな需要があり、最下級でも食うのに困ることはない。
<治癒師>そのものが価値のある天職なのだ。
だが最<下>位職となると話が違ってくる。
最下位職は全ての天職の中で一番価値が無いという意味だ。
つまりジェイクの天職<這いずる者>は――。
「おい! ジェイクはどうなったんだよ!」
誰かがそう叫ぶと、みんなの視線がジェイクに向いた。
「そうだ! 今まで最下位職だったんだ、超最下位職とかになってんじゃねえのか?」
「わはははは!」
みんなは鬱憤を晴らすかのようにジェイクを笑い者にした。
別にこれはいつものことだし、だからといってランクダウンした彼らの天職が元に戻るわけではないのだが……。
心の弱いやつは下を見て安心しようとするものだ。
<上級炎術師>でなくなってしまった男も、動揺を抑えようと話に食いついてきた。
「そ、そうだジェイク。お前も天職を確認してみろ。俺ですら上級から下級になったんだ、お前はきっととんでもないことになってるぞ」
「確かにそうですな……。ジェイク殿の<這いずる者>は世界で唯一、能力にマイナスの補正がかかる天職。これが更にランクダウンしたとすると、いったいどんな悲惨なことになっているか……」
神官の言葉を聞いたジェイクは青ざめた。
これまでだって天職のせいでギリギリの生活をしてきたのだ。
それが更にランクダウンしたらどうなることか。
「俺の天職を確認してくれ! 今すぐに!」
ジェイクは慌てて神官に天職を調べて貰った。
「どれどれ。ジェイク殿の天職は……。<這い寄る混沌>……?」
水晶に浮かび上がったジェイクの天職の名をつぶやいた神父の言葉は、完全な疑問形だった。
この時はジェイク自身を含め、まだ誰もわかっていなかった。
ジェイクの得た新たな天職<這い寄る混沌>が、一般的に最高位とされる天職<勇者>と<魔王>すら超える、真の最高位天職であるということに。
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