鈍感王子の背徳なる性事情

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第十二話

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「だめ……殿下ッ、あっ……」

 俺はティアの声を無視して、目の前の陰裂をなぞるように舌を這わせた。
 びくびくと震える腰を両手で押さえつけて、時折舌先を細めて陰核をいじり倒す。

 ティアは俺の頭を両手で押し返そうとするがそんな抵抗は無駄だと教えるために、ペチャペチャと濡れた音をわざと立てるように吸って、舌を左右に、上下に、奥へ出し入れする。

「んっ……くぅ……ッ♡」

 耐え忍ぶ声の中に快楽の色が混ざる。
 ちょうど、舌でも届くあたりに腰が一層強く動いた弱点があったのでティアを見上げながらそこを重点的に攻めた。

「あっ♡ ……だ、だめッ♡ んあ”ッ♡ もう……ッ♡」

 ティアは顔を真っ赤にしながら、汗ばんだ白い肌をヒクヒクと痙攣させて、涙をこぼした。
 俺は一度、舌を引き抜く。
 すると、もう一歩で絶頂に登っていただろうティアがぶるりと震えて、息を荒く俺を見た。
 俺は改めて今のティアの状態を確認するため質問する。

「はぁ……ッ♡ はぁっ♡ ん……♡ 殿下ぁ……?♡」
「ティア、ここがどこだか分かってるよな?」
「……え、演習場のシャワールームです」

 まともな答えが出るくらいには酔いも覚めているか。
 ティアの答えの通り、ここはシャワー室である。
 入って奥の扉付きのブースにティアを連れ込んでから白いシャツ一枚だけに剥いた。
 その間魔力譲渡のキスを続けたことで流石に許容量を満たしたらしく、魔力量の変化がなくなったため、たぶん八割がた素面のはずだ。

 だが、ティアは拒まない。口では嫌々言うが、初めて抱いたその日から強い抵抗は皆無だった。
 そこにつけいり、俺は下着の上からクンニしてティアの劣情に火をつけた。
 快楽に襲われて発情してしまった体を、俺が慰めるように下着をずらして直接舌を這わせているのが現在。

 忘れてはならないのが、ここが外であると言うことだ。
 少し盛り上がりすぎたが、馬車のように擬似的に外を演出しているのではなく、上が空いていて、ただ間仕切りがあるだけの場所だ。

 そして、ここは男子シャワー室であることも留意すると、もし誰かが入ってきてティアの喘ぎ声が聞こえたらーーそう考えると興奮するのは何故だろうか。

「誰かが来る前にまずは一度イかせてやる」
「あっ、ちょっと……♡ まっ……ッ!♡ んっ♡ ……あぅッ♡ いやッ、待って♡ 私ッ、もうっ♡♡」
「いいぞ、イけ……! 俺にティアの可愛いところ全部見せてイけッ!!」

 じゅるるッ、と勢いよく音を立ててティアの愛液を舐めとり、陰核を強く吸い出すようにしてコリコリと舌で転がす。
 そして、俺の頭を剥がそうとしていたティアが、余裕のない顔で零した涙が俺の頬に落ちてきた時、理性が崩壊した。

 強く押さえつけていたティアの腰を引き寄せて、ティアのぷにぷにとした秘所に口を強く押し付けるようにキスをして、舌を伸ばす。膣に入っていった舌を思い切りかき回してから、今度は中から溢れてくる愛液を強く吸い出した。

 そしてーーティアの腰がガクンガクンと震えた。
 同時に、絶叫する。

「お”ッ!?♡ い”、イ”くッ♡ イッくぅうううッ♡♡」

 陶酔状態が終わってからも長く続いた快楽で脳が溶けきっていたのだろう。ここが、いつもとは違って誰かが来るかもしれないと知っていてなお、ティアは声を抑えることなく耳心地のいい嬌声を奏でた。

 以前はこの時、大量の愛液ーーのちに調べて分かったのだが潮というらしいーーを噴き出したのだが、今回は出てこなかったみたいだ。シャワー室で、かかってもいいように俺の方はあらかじめ全裸になっていたので少し残念だったが仕方がない。大量のポーションを飲んでいたから期待していたがもう少し時間が必要だったのかもしれない。

「殿下……ごめん、なさぃ……っ、うまく立てなくて……すんっ」

 変わらず白無垢の肌を真っ赤にして、泣きながらティアがビクンビクンと痙攣したように足を震わせて謝っていた。
 たぶん俺の頭に体重を乗せていることに対しての言葉だろう。まったく気にならないことだが、ティアはメイド生活が板についてから俺を頼ることを忘れているような気がする。
 むしろ、こうやって体重を預けられるくらいならいくらでもしてやるのだが、ひとまずはその意識の差を詰めるのがティアを俺のものにするための第一歩になりそうだ。

 少し名残惜しんで蜜壺の入り口をひと舐めしてから、ティアが倒れないように手を取って正面から向き合うように立ち上がった。涙を指の背で掬うように拭ってから笑いかけてやった。

「そんなこと気にするくらいならもっと声を気にしたほうがいいぞ」
「……声?」
「お前も言っていたように、ここはシャワー室だ。他の訓練場で練習してる男たちがここへ向かう途中にティアの可愛い声が聞こえてるかもしれないからな」
「あ……」
「ーー隙あり」
「んっ……」

 ようやくここが安全な場所ではないと理解したらしい。
 間抜けに開いた口を塞いで、舌を絡める。

「……む……ちゅ……っはぁ……はぁ……んん♡」

 途中息継ぎを挟んだりして、唾液の交換をして飲ませ合うと、ティアが俺の首の後ろに両手を回して抱きついてくる。
 えらく積極的だと思ったりもしたが、もたれ具合からしてまだ足に力が入らないための行動だったらしい。
 ほんの少しだけ期待して、ぬか喜びだったことが悔しくなった俺はまだ羽織らせていたシャツの前ボタンを外して、ブラの中に手を突っ込んだ。
 エリノーラと比べて未熟な膨らみだったが、片手でふにふにと揉んでやるとすぐに快感を覚え始めるあたり、感度の良さはティアの方がいいらしい。

 やっぱり若干大きくなってると感想を抱きながら、キスを続けたが、どうやら俺の股間にある性器は限界を迎えてしまったようだ。

 片付けを中断して、シャツを脱がす。ブラも剥ぎ取り、お互いに全裸で向かい合う。
 まだ足に力が入らないティアを気遣って俺はシャワー室の壁側に追い込んでやる。

 そして、背を壁につけさせ、俺の体と密着させるよう挟んでから反り上がった肉棒をティアの下腹に押し当てた。

「んっ」

 ぴったりと押し当てると、ティアが一度だけ喘いで見せた。俺は最後に揶揄う理由ができて、また鼻の先まで顔を近づけてから、ゆっくりと腰をストロークさせる。
 膣に入っていない肉棒が割れ目すぐ上まで下がってきて……腹を強調するかのように、まっすぐと肉棒が入るだろう軌跡をなぞらせた。

「どうだ、繋がったらここまで入るらしいぞ」

 桃髪少女の、緋色の瞳と見つめ合う。
 ティアは頬を赤らめさせて上目遣いに俺を見上げていた。
 返事こそなかったが、荒くなり始める息遣いがティアの期待する意思のように感じた。もはやティアには俺とセックスすることへの抵抗心はまったく感じられなかった。

 それ以上言葉をかける必要性を感じず、俺はただ一言だけ合図を出した。

「いくぞ」
「……ぅ、んっ……ぁああああ……♡♡♡」

 割れ目の中を押し広げるように亀頭を飲み込ませる。そして一気に最奥へ向けて腰を振れば、ティアが普段よりは控えめに歓喜の嬌声を上げた。

 膣が、まるで俺の帰りを待っていたかのようにきゅうきゅうと締め付けてきて、安心感さえ覚えさせられる。
 やがてティアの膣にすべて呑み込ませると、ゆっくりと腰をストロークさせながら舌先だけ絡め合うようにお互いを求め合った。
 しばらくして、動きに慣れができるようになると俺の舌を求めて背伸びしてくるティアの尻を両手で支えて口を離す。

「……んちゅ……ティアは激しいのかゆっくりだとどっちの方が好きなんだ……?」
「んっ♡ あ♡ あっ♡ あっ♡ ……あぁ♡」
「ほら、ちゃんと教えろ」
「あっ♡ それは……っ♡ んッ♡♡」

 ぱちゅんッ、ぱちゅんッ♡ と大きく腰を振りながら気になって聞くが、ティアは恥ずかしそうに抱きついてきて胸元に顔を埋めてくる。
 まさかしらばっくれる気か。
 なら直接確認するまでだと腰の動きを早くしようとしたとき、人がやってきたことに気がついた。

 ティアの体に夢中で、気づくのに遅れてしまった。
 腰を止めてティアの口を塞いで息を殺す。
 急な静止にティアが不思議そうにするが、このシャワー室に入ってきた足音を聞いて、目を見開いて、膣をきゅうっ、と緊張したように締め付けてきた。

「らーらーららりるれろ、らーれりるれろぉー!」

 シャワー室に入ってきた男は独特の歌を歌いながら個室に入って、さっさと服を脱いだあと水を浴び始めた。
 どうやら、一番奥で俺たちが個室の扉を閉めて使用していることに気がついていないらしい。水音と男の歌声のおかげで少しだけ声を出せるようになった。俺はティアの口を塞いでいた手を退けて、囁き声で会話することにした。

「(本当に誰か来ちゃったな。……それでどうだ、誰かがいる場所で俺とセックスしてる感想は? さっきからきゅんきゅん締め付けてるけど興奮してるのか?)」
「(あ……いや……ちが……そんなんじゃ……)」
「(とか言って締め付けがもっと強くなってるぞ)」

 遮音結界を張って遠慮なく腰を振って喘がせてやりたいが、ここは魔法使いの学園である。他人の魔法に敏感な人間も数こそ少ないがそれなりにいて、こんなところで魔法を使えば怪しまれてしまう可能性もある。

 なら、ギリギリを見極めてこの背徳感を最大限に楽しもうとゆっくりとティアの膣穴に挿していた肉棒を引き抜く。
 すると、ティアはそれだけの動きでも強い快感を得たらしく、慌てて口を手で覆って声を出さないように踏ん張り始めた。

 そんないじらしい姿が余計に性欲を滾らせる。

「ーーぅあ♡」
「…………ん?」

 俺は亀頭の傘が抜け、全部抜けそうになったところで、一気に奥に差し込んだ。
 抜いてくれると油断していたのだろう。塞ぎきれなかった声が溢れて、それに男が気がついたみたいだった。

 シャワーが一度止められて、室内は静寂に包まれた。
 俺とティアは今度も繋がったまま鼓動を早め、耳を澄ましているだろう男から隠れるため息を殺した。

「…………気のせいか。らーりるーれろー!」

 どうやらやり過ごせたようで男は再び変な歌を歌い始めた。というかこのフレーズを聞いて思い出したが、あの男はクラスメイトでレイモンドとよく絡んでいる男爵家の八男だった。まさか放課後に訓練するような人間だとは思っていなかったので意外すぎる人物だったが、こうしてシャワー室にくるくらいには汗を流してらしい。
 思わず関心したが、そういえば最近彼女ができたと張り切っていたことを思い出した。貴族だと政略結婚が主流だが、恋愛をできる立場にある人間は割と多い。だが、女生徒については、婚約者持ちやそもそも、他家のつながりのために嫁に出されることが大抵なので恋愛できる人間が少ないので、だいたい奪い合いが勃発しているが、こいつに関しては割とスムーズに争いなくくっついていたように思う。相手が誰だかは知らないが、おそらくこいつもバトルトーナメンに出場して彼女にカッコつけたいんだろうなと思えば、訓練している理由も納得がいった。

 しばらくして、シャワーを終えた男が、「りーるりーるるりらろ!」と意味不明なフレーズを繰り返しながら着替え終えてシャワー室を出て行った。

「もう我慢できない」
「……♡」

 それまで、ゆっくりと、小さな快楽を積み上げてきた俺たちはようやく思いっきり動けることを喜ぶように、激しく腰を振った。

「あ、やばい。くそッ、もう出すぞ!」
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ は、はい……ぃ”ッ!?♡♡ 」

 パンッパンッパンッ♡ ーーびゅるるるるるる!!!
 散々溜め込んでいた精子をティアの中で発射する。
 リブートによって強化された精力は一度の射精で大量の子種を送り出す。しかし、その命はすべて俺の強化の糧にされて、もはや子作りとは無縁の快楽を貪るためだけの行為だった。

 ティアは子宮口に押し当てられた雄棒から直接子宮内に精液を注がれて絶頂に昇りつめていた。
 まだまだ萎え知らずの自慢の勃起でティアを味わい尽くしたかったが、事切れてしまったかのように崩れ落ちそうになって俺は慌てて支えてやる。
 串刺しにした肉棒で腰同士を密着させて、壁に挟み込む。

「~~ッ♡」

 脇の下を潜らせるように右腕を通し、反対側の手で上へ引っ張るようにティアの片腕をバンザイさせ

「ーーちゅ♡ ちゅう♡ はぁっ♡ んぅ……っ♡」

 俺たちは見つめ合ってから、互いに顔を近づけて自然とキスをすることになった。
 上も下も、粘膜同士が接触して相手と溶け合うような幸せな時間だったが、もう一度邪魔が入ってしまった。

 今度は、二人組の足音だった。

「それにしても【戦屋】なんて言われるだけあってどんな武器でも使いこなせるんだな」
「僕にできるのは、誰でも使える武器を使うことだけだよ。魔法は普通の域を出ないから、優れた魔法使いとの差を他で埋めないと優勝は難しいからね」
「おまえの魔法が普通レベルなら俺、勝てる気しないんだが?」
「実際そうだからね。例えば【精密】の魔法剣技は出力の少なさと持久力の低さが欠点だけど、それを補ってあまりあるだけの強さだったよ」
「へー、【精密】って言えば王子の婚約者候補になったって言う噂の美人先輩だよな。女で剣を使って……ーーレイモンドがそこまでいうレベルって相当だな

 その会話に夢中になっているからか、俺たちが中で抱き合っている個室の扉が閉まっていることに気がつがないまま、二人は入り口から近い個室に入っていった。

 そして、布擦れ音がしてしばらく、二つのシャワーの音が隣から聞こえてきた。レイモンドがどちらかと思えば、声の高さから真横の個室に入ったらしいのがわかった。

「(多分この隣レイモンドだぞ)」
「(うそ……そんな……)」

 一つの部屋の中で幼馴染三人(+1)全員裸という状況がなんとなく面白くて、この想いを共有したかったが、ティアは先ほどとは違って、壁越しにいるレイモンドへ顔を向けて、俺の言葉が届いていないようだった。

 途端に、心臓が刺されたような痛みに襲われる。
 先程までの幸せとの落差でしばらく放心してしまったがやがて体が勝手に動き始めた。

「(えっ?)」

 ティアの中に入れていた肉棒を取り出して、まだ足元のおぼつかないティアを、レイモンドがいる方の間仕切り壁に手をつかせる。
 そして、戸惑うティアの腰を掴んで一息に突っ込んだ。

「~~ぅぐ!?」
「ん? 今なにか聞こえなかったか?」

 ティアの声が聞こえたようでレイモンドが気づきの声をあげた。
 だがーー。

「変なこと言うなよ。俺はお化けとか苦手なんだからな」
「そうかい。いいことを聞いたよ」
「あっ、ひっでえ!? おまえも弱点教えろよ!」

 連れの言葉にすぐ話題は逸らされる。
 ティアが顔だけ振り向かせて俺のことを信じられない目で見てきたが、それすら構わずに、音を立てない範囲で腰を振る。
 尻肉に腰を当てないため、子宮口少し手前を抉るピストンになったが、どうやらそこにもティアの感じるスポットがあるらしく、快楽で涙しながら声が漏れ出るのを必死に耐えていた。

「(殿下ッ、なんでっ……いやっ、……怖いよ……ッ)」

 背中に密着してティアの言葉に耳を傾ける。
 両方の乳首を強めの力でコリコリといじりながら、無言でいると、ティアは今度こそ涙が際限なく溢れて、本気泣きした。

 そこで、俺は正気に戻った。
 ティアの泣き顔が、昔の、両親を亡くして身柄を引き取られそうになっていた時の姿と重なった。

 思わず腰を振るのを止めて、自分のしてしまったことを後悔した。ティアがレイモンドに対して強く意識を向けたことに、俺は嫉妬を覚えた。俺とのセックス中で俺以外に意識を向けるティアが気に入らなかったから八つ当たりしただけ。
 こんなのどちらも幸せになれない。
 俺の好いている「愛し合う」から離れた行為だった。

 俺は気が付かれるのを承知で《遮音結界/サイレントフィールド》を展開する。範囲は、間仕切り内の空間で、俺たちの声だけが外に漏れないようになった。

「……ん?」
「どうしたんだ?」
「いや……気のせいだった」

 隠密性を意識しながらだったがレイモンドには流石に勘づかれたらしい。だが、どこで展開されているかはうまく誤魔化せたみたいなので、訓練場で誰かが強力な結界魔法を使ったと誤解したみたいだ。

 ともあれ、これで舞台はできた。

「ティア」

 魔法を展開したことを知らないティアが、ささやき程度だが先程よりも大きく気が付かれそうな声量で呼びかけてくる俺に対して目を見張った。

「(だ、だめ……気付かれちゃう!)」
「大丈夫、魔法を使ったから声は外に漏れない」

 膣に俺の肉棒を挿し込まれながら必死になって止めようとしてくるティアの手を取って、説明した。
 俺の今の声量だと、シャワー中であっても気が付かれて当然の水準だったので、それが証明になった。
 きつく締め付けていたティアの蜜壺が、緊張が溶けてとろりと緩やかな締め付けになる。
 俺は音が出ないことを利用してティアと二人でシャワーを浴びるようにレバーを持ち上げた。

 シャーッ、と温水が頭から降ってきて俺たちはたちまち全身の汗や愛液を流し、ティアの涙の跡も消すことになった。
 俺はそれから仕切り直して、声をかける。

「ティア、悪かった。おまえが嫌がってるのに無理矢理してしまった。俺と繋がってるのにレイモンドの方ばかり気にしてるおまえに……八つ当たりした。……ごめん」
「……殿下…………」

 ぎゅっと背後から抱きしめて、謝った。
 口から出たのは、まだ幼い時のように『ごめん』の言葉だった。いつからか『すまない』に変わっていた謝意の言葉がこの時は何故か、それは違うと口にできなかったのだ。

 これは甘えだ。自覚がある。
 俺はティアなら許してくれると理解しながら、王子とメイドの関係ではなく、幼馴染として、ひとりの雄と雌として対等に向き合ってくれると思い込んでいるのだ。

「…………」

 ティアはそのまま無言になって、俯いた。
 俺は拒絶されるのが怖くてより強い力でぎゅっと抱きしめると、ティアが俺の腕に両手を乗せてきた。

「少し苦しいです」
「あ……ごめん」

 もはや感情が迷子になって、どうすればいいのか分からない。俺が慌てて手を離そうとすると、今度は、ティアの両手が俺を離さないように、俺の腕を上から抱いてきた。

「殿下は……私のこと……どうしたいんですか?」

 レイモンドたちが横で話しながらシャワーを浴びる中、俺の腕を抱きとめたティアが俺と繋がりながらそう問いかけてきた。
 表情は見えない。どんな思いでそうやって問いかけてきたのか分からないが、真意を探るより先に口が動いていた。

「俺のものにしたい」
「…………」
「ティアと愛し合って気持ちよくなりたい。気持ちよくさせてやりたい。また昔みたいに、俺をひとりの対等な人間として見てもらって、王子とか関係のない付き合いがしたい」

 そういうと、水に濡れて、いつもは少しふんわりとしていた桃色髪をストレートに下ろしたティアが、よくわからない表情でじっと、緋色の瞳で俺を捉えた。

「私はメイドです。いつかはお金を返し終えて殿下のもとを離れるかもしれないですけど、今は間違いなく殿下のものです。求めてきたら断れないし、命令されたらその通りに動きます。それじゃ駄目なんですか?」
「駄目だ。俺は俺の命令を断れる、対等なティアが欲しいんだ」
「……セックスしたくないって言ったら?」
「もちろんセックスする」
「キスしたくないです」
「なんでだ?」
「……殿下のことが好きになりそうだからです」
「ならする。絶対する」
「……断る意味ないじゃないですか」
「そうだな。でも、言葉で気持ちを伝えて欲しい。俺はティアのことをもっと知りたいから遠慮なんかしないで欲しい」

 そういうと、ティアが、視線を壁の方にやった。
 その向こうにはレイモンドがいる。
 なにを思ってそちらを向いたのかも知りたいが、気持ちを強制的に吐かせるのは違うと思っている。

「……ごめんね」

 ふと、その言葉が聞こえたと思ったら、ティアが肩越しに振り返ってきて、赤らめた顔で俺を見上げてきた。

「対等になるにはどうすればいいんですか?」

 そう問いかけてくるティアの言葉に、今まで膣内で待機していた俺の雄棒に大量の血が送られた幻想を見た。
 一気に肥大化したそれは、俺の興奮具合を包み隠さず表している。

 俺は肥大化しきる前に一度引き抜いて、ティアの心が裸になっている今、すべてを手に入れるチャンスに、頭を働かせた。

 対等になるために。
 そう望んでくれたティアのために、思いついたのは、昔の記憶。
 俺の初めての友達が手を差し伸ばしてくれた記憶だった。

『ーーーーくん』

 桃髪の幼児の無邪気な笑顔を思い浮かべて、俺は一つの要求をした。

「ジルくんって、昔みたいに呼んでくれないか?」

 果たしてーーティアは頷いた。

「……ジルくん」

 ポーションなんかに頼らない。ここ5年くらい見えなかったティアとの再会と共に、俺は肥大しきった性器を充てがって、一息に貫いた。




 それからのセックスは、まるで獣のように求めあうまぐわいだった。

 隣でレイモンドたちが談笑しているのを頭の隅で聞きながら、ただ目の前の雌に精液を注ぎ込むことだけを考えて腰を振った。

 パンッパンッパンッパンーーッ♡♡

「ジルくん♡ ジルくん♡ あッ♡ あッ♡ あ”あ”あ”
ぁああああッ!!?♡♡♡♡」

 ぷしゃーーーッ、とティアが潮を吹きながら絶頂する。そして、それに伴い緩急つけられる締め付けがまるで搾り取ってくるみたいに俺の肉棒を責め立ててきたので、遠慮なく吐き出した。

「出すぞッ、ティア!」
「んぁああああッ♡♡♡」

 ーービュッビュルッビュルルルルルルッ!!

「イッくぅううううううううッ♡♡♡♡」

 もはやティアも隣にレイモンドがいることを気にせず、ただ快楽に身を任せて盛大な嬌声を上げた。

 いつもなら、ここいらで終わっていただろう。だが、水を滴らせたティアが仄暗い色を浮かべた瞳で俺を見てきて尻を思うままに使わせている幼馴染の姿に興奮は止まず、ピストンを再開する。

「あっ♡ あっ♡ あぁっ♡ あん♡」
「どうだッ、ちゃんと気持ちよくなれてるかッ!?」
「イイのッ♡ 気持ちイイッ♡ ん”ん”ッ♡ ジルくんのおちんちん気持ちイイのぉッ♡♡」

 ガクガクと膝を揺らして倒れそうになるのを、下から突き上げ、脇下から肩を持ち上げることで支えきる。
 もはや俺に使われているだけのような姿勢だったが、ティアは下を向いて喘ぐばかりで、嫌がる素振りは欠片もなかった。

「ティアッ、ティアッ、ティアッ! 俺の名前を呼べ!」
「~~ジルくんッ♡ ジルくんッ♡」
「くッ、ティアッ!!♡」
「はひぃ♡♡♡」

 雌の中に種を仕込む雄の快楽に酔いしれる。
 そして、その相手が久しぶりに再会したティアということもあり、性欲はほとんど途切れることを知らなかった。

「ティア……愛してるぞ」
「……あ♡ あ……あ……♡ は、ひ……♡ んむ♡♡」

 呂律の回らないティアに追加で中出ししながら、顎を掴んで強引に唇を奪う。ティアも抵抗なく、むしろ積極的になって舌を絡めてきてきた。

 それから隣でレイモンドたちが笑い合う声を聞きながら、俺たちはお互いの唾液を求め合って、長い長いキスはやがてレイモンドたちがシャワー室を出るまで続いたのだった。

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