32 / 239
第一章 高校一年生(一学期)
ぐうぜんのであい(紫乃)
しおりを挟む
てくてくと、可愛らしいリズムで道を歩く影が見えた。
清楚な青色の髪を揺らして、顔をほころばせている。
――その影の名は、紫乃。
絵を描くことが好きな少女が、一体どこに向かっているのだろうか。
紫乃が住んでいる住宅街から離れ、どんどん人気のない場所へ向かっている。
そして、木々がたくさん揺れている場所に来た。
「着いた~!」
そこは、森の中でも陽の光が直接当たる開放的な場所。
その森の木には、たくさんの木の実がなっている。
「わー……すごい……ここならいい絵が描けそ~……」
紫乃は本当に楽しそうにはしゃぐ。
自然が好きなようで、時間のある時にはこうして森に出かけていることが多い。
木々を眺め、風を感じる。
そして深呼吸し、木々や土の匂いを感じ、木漏れ日を浴びながら呟く。
「さて、何を描こうかな」
「……あれ? 紫乃ちゃん?」
「えっ? 美久里ちゃん??」
スケッチブックを取り出したところで、後ろから声をかけられた。
その人物の名は、美久里。
紫色の髪に、紫水晶色の瞳が特徴的な少女だ。
「どうしてここに?」
「え? あー、それが……ちょっと道に迷っちゃって……」
「そ、そうなんだ~……」
一通りの会話をし終えると、紫乃はあることに気づく。
美久里の顔が少し紅い。
心なしか、顔をほころばせているようにも感じる。
「美久里ちゃん、どうしたの~? 何かいい事あったぁ? 道に迷ったって言ってたけど嬉しそうに見えるよ?」
紫乃はそれを訊かずにはいられなかった。
友人にいい事があったなら、それを祝いたいと思っている。
それに、道に迷った時の不安そうな顔つきではなく、なんだかやけに顔が明るいように見えるから。
「えっとね、その……紫乃ちゃんに会えたのが嬉しくて……」
――天使か。
紫乃は、美久里の笑顔に心を射抜かれた。
……なぜか胸が苦しい。
「……紫乃ちゃん? どうしたの……?」
いつの間にか地面に崩れ落ちていた紫乃に、美久里が心配そうに駆け寄る。
だが、今の紫乃には、美久里に駆け寄られることが辛かった。
――もっと症状が酷くなるから。
「や……ちょっ……タンマ……ッ!」
「え? 私、何もしてないよ??」
紫乃の「待った!」の声に、美久里が狼狽える。
本来の目的――スケッチを忘れ、紫乃は地面に顔を埋めていた。
清楚な青色の髪を揺らして、顔をほころばせている。
――その影の名は、紫乃。
絵を描くことが好きな少女が、一体どこに向かっているのだろうか。
紫乃が住んでいる住宅街から離れ、どんどん人気のない場所へ向かっている。
そして、木々がたくさん揺れている場所に来た。
「着いた~!」
そこは、森の中でも陽の光が直接当たる開放的な場所。
その森の木には、たくさんの木の実がなっている。
「わー……すごい……ここならいい絵が描けそ~……」
紫乃は本当に楽しそうにはしゃぐ。
自然が好きなようで、時間のある時にはこうして森に出かけていることが多い。
木々を眺め、風を感じる。
そして深呼吸し、木々や土の匂いを感じ、木漏れ日を浴びながら呟く。
「さて、何を描こうかな」
「……あれ? 紫乃ちゃん?」
「えっ? 美久里ちゃん??」
スケッチブックを取り出したところで、後ろから声をかけられた。
その人物の名は、美久里。
紫色の髪に、紫水晶色の瞳が特徴的な少女だ。
「どうしてここに?」
「え? あー、それが……ちょっと道に迷っちゃって……」
「そ、そうなんだ~……」
一通りの会話をし終えると、紫乃はあることに気づく。
美久里の顔が少し紅い。
心なしか、顔をほころばせているようにも感じる。
「美久里ちゃん、どうしたの~? 何かいい事あったぁ? 道に迷ったって言ってたけど嬉しそうに見えるよ?」
紫乃はそれを訊かずにはいられなかった。
友人にいい事があったなら、それを祝いたいと思っている。
それに、道に迷った時の不安そうな顔つきではなく、なんだかやけに顔が明るいように見えるから。
「えっとね、その……紫乃ちゃんに会えたのが嬉しくて……」
――天使か。
紫乃は、美久里の笑顔に心を射抜かれた。
……なぜか胸が苦しい。
「……紫乃ちゃん? どうしたの……?」
いつの間にか地面に崩れ落ちていた紫乃に、美久里が心配そうに駆け寄る。
だが、今の紫乃には、美久里に駆け寄られることが辛かった。
――もっと症状が酷くなるから。
「や……ちょっ……タンマ……ッ!」
「え? 私、何もしてないよ??」
紫乃の「待った!」の声に、美久里が狼狽える。
本来の目的――スケッチを忘れ、紫乃は地面に顔を埋めていた。
0
あなたにおすすめの小説
私が騎士団の司令官ってなんですか!? ~聖女じゃなかった私は得意の料理で騎士たちの心を掴んだら食堂の聖女様と呼ばれていました~
あんねーむど
恋愛
栄養士が騎士団の司令官――!?
元社員食堂の職員・白城千鳥は、ある日突然「聖女」として異世界アルゼリオン王国に召喚される。
しかし期待された聖女の力はまったく発現されず、判明したのは彼女がただの一般人だという事実。
役立たずとして放逐されるかと思いきや、千鳥は王宮食堂で料理人として働くことに。慣れない異世界生活の中でも、栄養管理や献立作りを通して騎士たちの体調を支え、静かに居場所を築いていく。
そんなある日、問題児ばかりを集めた新設部隊アルゼリオン王国騎士団戦術騎士隊【アルタイル】 が発足。なぜか千鳥が司令官に任命されてしまう。
戦えない、魔法も使えない、指揮の経験もない。
困惑する千鳥を待っていたのは、王子である身分を隠している隊長のエドガー、年下で聡明だが一途すぎるノエル、俺様で口の悪い元衛士隊のクラウディオ、外見に反してサディスティックでマッドサイエンティストのフェルナンド、癖も事情も抱えたイケメン騎士たちだった。
最初は反発され、軽んじられ、失敗も重ねる千鳥。それでも彼女は騎士一人ひとりと向き合い、少しずつ信頼を勝ち取っていく。
聖女でも悪役令嬢でもない。戦場に立つことすらできない彼女は、やがて隊員たちを導く司令官として成長していく。
★にキャラクターイメージ画像アリ〼
※料理モノの物語ではありません。
香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く
液体猫
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/
香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。
ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……
その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。
香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。
彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。
テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。
後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。
シリアス成分が少し多めとなっています。
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
最強転生悪役令嬢は人生を謳歌したい!~今更SSクラスに戻れと言われても『もう遅い!』Cクラスで最強を目指します!~【改稿版】
てんてんどんどん
ファンタジー
ベビーベッドの上からこんにちは。
私はセレスティア・ラル・シャンデール(0歳)。聖王国のお姫様。
私はなぜかRPGの裏ボス令嬢に転生したようです。
何故それを思い出したかというと、ごくごくとミルクを飲んでいるときに、兄(4歳)のアレスが、「僕も飲みたいー!」と哺乳瓶を取り上げてしまい、「何してくれるんじゃワレ!??」と怒った途端――私は闇の女神の力が覚醒しました。
闇の女神の力も、転生した記憶も。
本来なら、愛する家族が目の前で魔族に惨殺され、愛した国民たちが目の前で魔族に食われていく様に泣き崩れ見ながら、魔王に復讐を誓ったその途端目覚める力を、私はミルクを取られた途端に目覚めさせてしまったのです。
とりあえず、0歳は何も出来なくて暇なのでちょっと魔王を倒して来ようと思います。デコピンで。
--これは最強裏ボスに転生した脳筋主人公が最弱クラスで最強を目指す勘違いTueee物語--
※最強裏ボス転生令嬢は友情を謳歌したい!の改稿版です(5万文字から10万文字にふえています)
※27話あたりからが新規です
※作中で主人公最強、たぶん神様も敵わない(でも陰キャ)
※超ご都合主義。深く考えたらきっと負け
※主人公はそこまで考えてないのに周囲が勝手に深読みして有能に祀り上げられる勘違いもの。
※副題が完結した時点で物語は終了します。俺たちの戦いはこれからだ!
※他Webサイトにも投稿しております。
芙蓉は後宮で花開く
速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。
借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー
カクヨムでも連載しております。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる