個性派JK☆勢揃いっ!【完結済み】

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幕間 様々なイフ

もしも美久里が大災厄を引き起こしたら

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「ふふ、とって喰ってやろう……」

 ニタリと嗤う“それ”は恐ろしいほどに美しかった。
 町に災厄が顕現しているというのに、どうしても魅入ってしまう。
 町は半壊状態。“風”による被害が絶えなかった。竜巻、台風、かまいたちのような鋭い刃のような風……それにより木造住宅は潰れ、人々は息絶えだえ。
 それだというのに、人を魅了するとても美しく、恐ろしい……“鬼”がおりました――

 ☆ ☆ ☆

「随分前に起きた“大災厄”を知っているか?」
「え……? 急にどうしたんすか? 朔良」

 朔良。遊郭で働いており、男のようなかっこいい口調をしている。
 スタイルが良く、見たもの全てを虜にしてしまうほどの美貌を持っている。
 腰まで伸びた茶色の髪と、茶色の目、狐耳を持っているキツネ族だ。

「いや……ちょっと聞いてみたかっただけだ」

 「気にするな」と、朔良は仕事に戻った。
 その背を見ているのは、葉奈。
 とある事情で遊郭で働くことになった少女。
 しっかりとしていて、自分のやるべき事を知っている賢い少女だ。
 緑色の短い髪と、翡翠色の目、うさ耳を持ったウサギ族だ。

「なんなんすか……?」

 そうポツリと呟いた時だった。

「あー、なるほど~。確か今日だったもんね~……」
「え!? 紫乃ちゃん!? いつの間に!?」

 気配を消していたのではと疑うほど気配を感じさせずに、自然と猫耳の少女が葉奈の隣に立っていた。

 この猫耳の少女が紫乃。
 肩甲骨まで伸びた青色の髪と、全てを見透す蒼輝のような目を持ったネコ族だ。

「え、ずっといたけど……酷くないかな~?」

 紫乃はショックを受けて、悲しそうにそう言う。
 葉奈は「ごめんなさいっす……」と長い耳と頭を下げながら謝る。
 紫乃はそれを見て可愛いと思いつつ、平然を装った。

「あ、そうっす。朔良がさっき言ってた事についてなんすけど……」
「あー、随分前に起きた大災厄の話~?」
「そうそれっす!」

 葉奈が気まづそうに顔を上げると、紫乃がしれっと返す。
 それに葉奈はハッとして顔を紫乃の近くに持っていった。

 ――大災厄。かつてこの国を滅ぼしかけた元凶、“鬼”がいた。
 その“鬼”は恐ろしいほどに美しかったと聞く。
 “鬼”はあらゆるものを破壊し、時には人をも喰らったという。
 “鬼”は人々を魅了し続け、人々の目に焼き付けるようにその身を躍らせた。
 人々は一方的な破壊、虐殺、争奪をされているにも関わらず、一目見れば惚れるほどの、人を惹きつける何かを持っていた。――

 ☆ ☆ ☆

「…………で、どうなったんすか……?」

 葉奈がゴクリと唾を飲み込む。
 紫乃の語り口が上手いのか、葉奈はすっかり話に聞き入っていた。

「その後はぁ……あ、そうそう。美奈様に成敗されたって話だよぉ?」
「へぇ……そうなんすね……」

 何故か妙に納得できるものがある。
 多分それは、美奈様がこの国で一番強い神様だからだろう。
 美奈様――この国の創造主であり、建国の神でもある。
 つまり、この国では皆が間接的に美奈様の子供にあたる。

 いくらその“鬼”が強かろうが関係ない。
 例え全知全能の神だろうが、唯一神だろうが、この国に一歩でも足を踏み入れたら最後、美奈様に全てが筒抜けになる。
 よって、美奈様に抗うものはおらず、大災厄を払い除けたこともあり、人々の信仰心が厚く、崇め奉られているそうだ。

「美奈様ってお強いよね~。尊敬ちゃうよ~」
「うん……そうっすね。うちもそう思うっす」

 紫乃は興奮したら両手を胸の前で合わせ、指を組む癖がある。
 葉奈はそれを見ながらある事について考えていた。

 建国の神、大災厄――なんとも形容し難い、言い様のない不安が葉奈を襲う。
 なんとも言えない歯がゆさだけが残る。
 紫乃も何となく葉奈の変化に気づいていた。
 しかし、葉奈の気持ちを察してか、追求することはなかった。

 代わりに意味深な一言を放った。
 ――葉奈ちゃんのその不安は杞憂じゃないかもよ。と。

 ☆ ☆ ☆

「ねぇ、葉奈ちゃん。さっき紫乃ちゃんと話してた事についてなんですけど」
「え、いきなりどうしたの?」

 ずいっと葉奈の前に顔を近づけながら話を切り出す者の名は、萌花。
 小麦色の肩まで伸びた髪に、橙色の目を持った、狐とも兎とも取れる出で立ちをしている謎の生き物が人型になったものだ。

 人型にならないと葉奈の前に顔を出せないため、人型になっている。
 萌花は葉奈の使い魔をしている。
 その前は何をしていたか、どこにいたか分からない、紫乃や朔良以上に謎に包まれた生き物だ。

「だから、紫乃ちゃんと話してた事ですよ! 大災厄の話ですっ!」
「あー、あれっすか……別にあれは世間話みたいなもんすけど?」
「もー! そうじゃないんですって!」

 頭を抱えて悶々としている生き物と、頭にはてなマークを浮かべて首を傾げている生き物の姿があった。
 萌花はふと、何かを考えている様子で顔を顰めた。
 その訝しげな様子に気づき、葉奈が問う。

「……ねぇ、その大災厄の元凶がどうかしたんすか?」
「別に…………私には、関係のないことですし……」

 そう吐き捨てると萌花はすぅ……とどこかに姿を消す。
 ある程度は察した葉奈だったが、どうしても萌花の態度が気になるようだった。

「萌花ちゃん……」

 言い知れぬ不安を抱えながら、今日の仕事に打ち込んだ。

 ☆ ☆ ☆

 数ある遊郭の中の一つ。
『松本屋』の看板が淡く光り、幻想的な雰囲気に包まれている。
 遊郭は夜の街。
 今日もその街が衰えることはない。

 この世界では女の人しかいない。
 それゆえ、女の人が女の人を悦ばせる場所になっている。

「……えへへ、激しかったね~」

 嬉しそうな、愉しそうな笑みを浮かべる紫乃。
 遊郭には無理矢理親に売られ、連れてこられてきた者が多い。
 と言うか大体がそうだろう。
 大抵は家が貧しいとか家計が苦しいとかそういった理由だろう。

 だが、その中でも紫乃はあまりにも異質だった。
 朔良に「遊郭に来ないか」と誘われ、とりあえず入って見ることにしたらしい。
 すると、一目見た瞬間、「ここで働く」と即決だったらしい。

 そんな紫乃だから、この仕事を愉しんでいるようだ。
 夜の闇を丸ごと閉じ込めたような青黒い瞳が恍惚に揺らめく。
 長い髪の毛が布団と摩擦を起こし、ぶわっと広がる。

「はぁっ……あの、少しお話しても……?」
「ん~? なにかな~?」

 息を乱しながら、問うイヌ族の女性。

「……随分昔に街に突然顕現した大災厄についてご報告を。――“あれ”はもうそろそろ、再発するかも知れません」
「へぇ…………わかった~。ありがと~」

 獰猛な笑みを浮かべて、紫乃が手を振る。
 すると、そのイヌ族の女性は素早く姿を消した。

「ふふっ。面白いことになりそうだね……」

 紫乃のその呟きを聞くものは、誰もいなかった。
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