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第二章 高校二年生(一学期)

べんきょう(瑠衣)

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 十分間の休み時間。瑠衣は紫乃に勉強を教えていた。
 瑠衣は成績がよく、いつも萌花以外のみんなに勉強を教えているのだとか。
 萌花とはお互い切磋琢磨して競い合ったりしているようだが。

「瑠衣ちゃん、いつもごめんね~。迷惑かけちゃって~」
「全然気にしないでいいにゃ。瑠衣、しのにゃんや他のみんなに勉強教えるのすごく楽しいからにゃ」

 紫乃は高校に入学した当初から英語の授業につまずいており、こうして瑠衣に定期的に教えてもらっている。
 瑠衣と出会って以来、紫乃にとって瑠衣はいつも助けてくれるありがたい存在となっている……に違いない。
 ……多分。

「佐島先生って僕とか、瑠衣ちゃんとか、大体決まった子に当ててくるよね~」

 紫乃は困惑顔で不満そうに呟く。
 確かに、英語の担当である佐島先生は、できる人とできない人の両方を当てることが多い。
 差を見せるためだとしたら、タチが悪い。
 瑠衣はそのことに関して、佐島先生にいい感情を抱いていなかった。

「まあにゃ~……でも、しのにゃんは一年生の一学期よりはうんと成績よくなった気がするけどにゃ?」

 一年生の一学期は、瑠衣と紫乃の間に接点などなかったが、勉強を教えている時に成績表を見せてもらったことがある。
 その時に比べれば、紫乃の成績はいいものになっている。
 瑠衣は調子に乗ることがあるため、紫乃の成績があがったのは自分のおかげだという自負があった。

「だけどさ~、やっぱり瑠衣ちゃんや萌花ちゃんには追いつけないよね~……」
「にゃはっ。しのにゃんが瑠衣に追いつくなんて百年早いにゃ!」
「……それを本気で言えるところがすごいよね~。まあ、事実なんだけどさ~」

 紫乃はペンを指で器用にくるくる回していじけている。
 瑠衣はそれができないため、その紫乃の才能を羨ましいと密かに思っている。
 そんなことは口が裂けても言えないが。

「ん? どうしたの~?」
「な、なんでもないにゃ! もう次の授業始まるし、準備しなきゃなのにゃ!」

 瑠衣が紫乃にそれを教えてもらえる日は、果たして来るのだろうか。
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