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えっちな姉妹百合はこれからも
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ふわふわとした感覚が身を包む。
視界も思考も少しぼやけていてはっきりしない。
でも、目の前に“その人”が現れた時、私は確信した。
――これはまさしく悪夢だと。
「随分と楽しそうね」
「……そ……んなこと……ない……けど……」
いい思い出として残したはずの記憶が、全て嫌なものとして上書きされる。
私は一刻も早くここから立ち去りたかった。
「いいえ。あなたは楽しそうな顔をしていた。――あの頃と同じように、ね」
その言葉を聞いた瞬間、ひどい頭痛が襲った。
今目の前にこの人がいることも、その人の声を聞くことも、その人の存在そのものを全身が拒否している。
もう、限界だった。
それでも追い討ちをかけるように、その人は言葉を紡ぎ続ける。
「あなたはちっとも変わらない。いいえ、変われないのよ。この先もずっと」
「……やめて」
彼女が、私の身体に触れてくる。
それがひどく冷たくて、私は思わず身震いした。
「このままの方が楽だものね。いいんじゃない? 私はそんなあなたが好き“だった”のだから」
「……やめてっ!」
私の顔を、首を、肩を、胸を、背中を、お腹を、脚を……まるで恋人同士が愛し合うような感じで私の肌に触れる。
昔は確かに幸せに感じていたはずなのに、今は身の毛がよだつような恐怖心しかない。
そう、この人は私の――
「せっかく“お友達”に戻ろうって言ったのに……あなたは私への態度があまり変わらなかった。だから突き放すしかなかったのよ。ほんと、なんで付き合ったのかしらね?」
「やめてって言ってるでしょ!!」
私の――
「お、お姉ちゃん……?」
そこで私は目が覚めた。ひどく汗をかいている。
もう何年も前のことなのに、今更こんなことを思い出すなんて馬鹿げている。
私は疲れたせいでもう一度寝たかったが、寝たらまたあの人が現れそうで寝られなかった。
「あー……ごめん。私いつの間にか寝ちゃってたっぽい……?」
「はい。あ、でもそこまで長くなかったし大丈夫ですよ。それにやってあげたかったこともできましたし……」
「……え?」
そういえば、後頭部に柔らかい感触がある。
起き始めた時は枕かクッションかと思ったが、それにしては妙に暖かい。
それに、どこか懐かしいような心地さえする。
「もしかして、これって……」
「はい! “膝枕”です!」
「…………そう」
小さい頃は、お母さんにしてもらったことがある。
もうあまり覚えていないけれど、なんだかポカポカした気持ちになる。
だけど今されると気恥しさのようなものが込み上げてきて、それどころではない。
いや、ほんとすごく嬉しいんだけれども!
「私……そんなわかりやすいかな……」
あまりにも私の好みを理解しているめいに、そう呟かずにはいられなかった。
私の好きな食べ物といい性癖といい、なぜめいはここまで私を知り尽くしているのだろうか。
「わたしがお姉ちゃんのこと好きだからですよ」
私の心の中を見透かしたような答えに、私は長らく閉ざしていた――心の奥底にしまっていたものを取り出した。
おもむろに起き上がり、勢いよくめいをベッドに押し倒す。
めいの顔は困惑で満ちていた。
私は――どうなんだろう。
「ねぇ、めい。もし私がどこにも行かないで私だけを見てって言ったら――どうする?」
私の目はとてつもなく冷酷だったかもしれない。
私の顔はひどく真剣だったかもしれない。
私の声は……少しだけ、震えていたかもしれない。
あの人が招いたこと。元凶はあの人。
でも、それが事実であれなんであれ、今やっているのは紛れもなくこの私だ。
しばらくめいの顔を見続けていると、めいの顔が赤くなった。
「へぁっ!?」
私はめいの表情の変化に驚かずにはいられなかった。
「な、なんでそんな反応……?」
「ふぇ? だ、だって、お姉ちゃんの方から襲ってくれそうな雰囲気でしたから……」
「……はい?」
めいは何を言っているのだろう。
「あ、あの……このまま食べてくれてもいいですよ……」
本当に何を言っているんだこの子は!
そういう空気ではなかったはずなのだが。
「え、あの、めいさん? 君は何をおっしゃっているのかな??」
「だって押し倒してくれたなら……そういうことですよね……?」
このままだと相手のペースに呑まれてしまう。
聞きたいことが聞けないじゃないか。
いや、ちょっと恐怖感を持たせるために大袈裟にやったところはあるけれども。
「……そんなこと急に言われても、わからないです」
全く前後関係の合わない言葉が急に飛び出してきてびっくりしたが、どうやら私の問いに答えているらしい。
「でも、これだけは言えます」
ゆっくりと私の頬に手を伸ばし、にっこりと微笑む。
私にはそれが、天使のように見えた。
「わたしは、お姉ちゃんのことが大好きです! それだけははっきり言えます!」
私に触れてくれた手は、ものすごく温かい。
とても優しくて、心地よくて、思わず涙ぐんでしまう。
それを隠すため、私は決して手馴れているとは言えない手つきでめいの唇を奪った。
「んむっ!?」
めいの困惑気味な声が聞こえた気がするが、無視する。
めいの唇はとても柔らかくて、それを意識した途端に蕩けそうになった。
しかし、ただのキスでは一瞬で終わってしまうため、涙を隠すにはまだ時間が必要だ。
「……ごめん……」
「ふぇ……? んんっ!? ふ……ぁっ……」
私はめいの口を無理やりこじ開け、舌を入れた。
本当に、自分は最低だと思う。
無理やりなんて、相手のことを考えていないのと同じだ。
なのに、どうして……
「んっ……んぅっ!?」
めいが舌を絡めてきた。
私のことを受け入れてくれるかのように、丁寧に絡めてきてくれる。
私にそんな資格はないのに。
でも、それがすごく嬉しくてやめたくなかったから、お互いが満足するまで舌を絡ませ続けた。
視界も思考も少しぼやけていてはっきりしない。
でも、目の前に“その人”が現れた時、私は確信した。
――これはまさしく悪夢だと。
「随分と楽しそうね」
「……そ……んなこと……ない……けど……」
いい思い出として残したはずの記憶が、全て嫌なものとして上書きされる。
私は一刻も早くここから立ち去りたかった。
「いいえ。あなたは楽しそうな顔をしていた。――あの頃と同じように、ね」
その言葉を聞いた瞬間、ひどい頭痛が襲った。
今目の前にこの人がいることも、その人の声を聞くことも、その人の存在そのものを全身が拒否している。
もう、限界だった。
それでも追い討ちをかけるように、その人は言葉を紡ぎ続ける。
「あなたはちっとも変わらない。いいえ、変われないのよ。この先もずっと」
「……やめて」
彼女が、私の身体に触れてくる。
それがひどく冷たくて、私は思わず身震いした。
「このままの方が楽だものね。いいんじゃない? 私はそんなあなたが好き“だった”のだから」
「……やめてっ!」
私の顔を、首を、肩を、胸を、背中を、お腹を、脚を……まるで恋人同士が愛し合うような感じで私の肌に触れる。
昔は確かに幸せに感じていたはずなのに、今は身の毛がよだつような恐怖心しかない。
そう、この人は私の――
「せっかく“お友達”に戻ろうって言ったのに……あなたは私への態度があまり変わらなかった。だから突き放すしかなかったのよ。ほんと、なんで付き合ったのかしらね?」
「やめてって言ってるでしょ!!」
私の――
「お、お姉ちゃん……?」
そこで私は目が覚めた。ひどく汗をかいている。
もう何年も前のことなのに、今更こんなことを思い出すなんて馬鹿げている。
私は疲れたせいでもう一度寝たかったが、寝たらまたあの人が現れそうで寝られなかった。
「あー……ごめん。私いつの間にか寝ちゃってたっぽい……?」
「はい。あ、でもそこまで長くなかったし大丈夫ですよ。それにやってあげたかったこともできましたし……」
「……え?」
そういえば、後頭部に柔らかい感触がある。
起き始めた時は枕かクッションかと思ったが、それにしては妙に暖かい。
それに、どこか懐かしいような心地さえする。
「もしかして、これって……」
「はい! “膝枕”です!」
「…………そう」
小さい頃は、お母さんにしてもらったことがある。
もうあまり覚えていないけれど、なんだかポカポカした気持ちになる。
だけど今されると気恥しさのようなものが込み上げてきて、それどころではない。
いや、ほんとすごく嬉しいんだけれども!
「私……そんなわかりやすいかな……」
あまりにも私の好みを理解しているめいに、そう呟かずにはいられなかった。
私の好きな食べ物といい性癖といい、なぜめいはここまで私を知り尽くしているのだろうか。
「わたしがお姉ちゃんのこと好きだからですよ」
私の心の中を見透かしたような答えに、私は長らく閉ざしていた――心の奥底にしまっていたものを取り出した。
おもむろに起き上がり、勢いよくめいをベッドに押し倒す。
めいの顔は困惑で満ちていた。
私は――どうなんだろう。
「ねぇ、めい。もし私がどこにも行かないで私だけを見てって言ったら――どうする?」
私の目はとてつもなく冷酷だったかもしれない。
私の顔はひどく真剣だったかもしれない。
私の声は……少しだけ、震えていたかもしれない。
あの人が招いたこと。元凶はあの人。
でも、それが事実であれなんであれ、今やっているのは紛れもなくこの私だ。
しばらくめいの顔を見続けていると、めいの顔が赤くなった。
「へぁっ!?」
私はめいの表情の変化に驚かずにはいられなかった。
「な、なんでそんな反応……?」
「ふぇ? だ、だって、お姉ちゃんの方から襲ってくれそうな雰囲気でしたから……」
「……はい?」
めいは何を言っているのだろう。
「あ、あの……このまま食べてくれてもいいですよ……」
本当に何を言っているんだこの子は!
そういう空気ではなかったはずなのだが。
「え、あの、めいさん? 君は何をおっしゃっているのかな??」
「だって押し倒してくれたなら……そういうことですよね……?」
このままだと相手のペースに呑まれてしまう。
聞きたいことが聞けないじゃないか。
いや、ちょっと恐怖感を持たせるために大袈裟にやったところはあるけれども。
「……そんなこと急に言われても、わからないです」
全く前後関係の合わない言葉が急に飛び出してきてびっくりしたが、どうやら私の問いに答えているらしい。
「でも、これだけは言えます」
ゆっくりと私の頬に手を伸ばし、にっこりと微笑む。
私にはそれが、天使のように見えた。
「わたしは、お姉ちゃんのことが大好きです! それだけははっきり言えます!」
私に触れてくれた手は、ものすごく温かい。
とても優しくて、心地よくて、思わず涙ぐんでしまう。
それを隠すため、私は決して手馴れているとは言えない手つきでめいの唇を奪った。
「んむっ!?」
めいの困惑気味な声が聞こえた気がするが、無視する。
めいの唇はとても柔らかくて、それを意識した途端に蕩けそうになった。
しかし、ただのキスでは一瞬で終わってしまうため、涙を隠すにはまだ時間が必要だ。
「……ごめん……」
「ふぇ……? んんっ!? ふ……ぁっ……」
私はめいの口を無理やりこじ開け、舌を入れた。
本当に、自分は最低だと思う。
無理やりなんて、相手のことを考えていないのと同じだ。
なのに、どうして……
「んっ……んぅっ!?」
めいが舌を絡めてきた。
私のことを受け入れてくれるかのように、丁寧に絡めてきてくれる。
私にそんな資格はないのに。
でも、それがすごく嬉しくてやめたくなかったから、お互いが満足するまで舌を絡ませ続けた。
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