真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

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第一章 吸血少女は傷つけたい

痛めつけたい

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「痛い痛い痛い!」
「あー、ごめん。強くやりすぎちゃったね」
「……ぐすっ、うっ……」

 あたしの腕を掴んでいた手が離れると同時に、渚はしゃがみ込んで苦しそうに涙を流してしまった。
 あたしはそんな彼女の頭を撫でてあげる。

「大丈夫だよ。ほら、もう泣かないの」
「ぐっ……」
「渚がこんなに苦しむなんて珍しいね」
「だって……花恋ちゃんのおしおき……だいぶきつくなってるから……」

 渚は息も絶え絶えに言う。
 あたしとしてはそこまでのことをしているつもりはないけれど、渚にとっては思わず涙が出てしまうほどのことらしい。
 光の射さない暗い部屋で、あたしが一方的に渚を痛めつけるだけ。

 映画館で渚が見たかった映画を見終わると、すぐにあたしの家に帰ってきた。
 本当はゲーセンに行く予定だったけど、渚におしおきをするために予定を変更したのだ。

 これは傍から見たらただのイジメに見えなくもない。
 でも、あたしは渚が好きだからやっているのだ。
 好きな人ほどいじめたくなる的な、小学生男子のような思考だと言えばわかりやすいか。
 最初はさすがのあたしも渚を傷つけることに抵抗があったけど、慣れてくるとクセになるような中毒性がある。

 だってあの女子校の王子様である渚が痛みで顔をゆがめているのだ。
 しかもそれが自分のせいだっていうのがゾクゾクする!
 あたしはすっかり嗜虐心というものを芽生えさせてしまったようだ。

「も、もう許してくれないかな……お願いだから……」
「まだ駄目だよ。今日は徹底的にやらないと」
「ひっ……いやっ!」

 あたしは再び鞭を振るう。
 普段好かれている渚がこんなふうにあたしに傷をつけられていると知ったら、みんなはどんな反応をするのだろうか。
 それを考えるだけで、鞭を握る手に力が入る。

 おもむろに、渚が着ている黒のパーカーを下からめくる。
 渚にはすばやく手錠をかけたから、戸惑った様子を見せながらも抵抗できていない。
 パーカーの下のシャツもめくると、そこにはあたしによってつけられた無数の傷跡があった。

 健康的な肌に痛々しい傷があるという事実が、一層あたしを興奮させる。
 渚を傷つけていいのはあたしだけ。
 ほかの誰にも傷つけさせたりはしない。

「結構傷増えてきたね。でも思ったより治りが早い……さすが医療従事者を目指してるだけはあるって感じ?」
「うぅ……」
「じゃあ次はこっちね」

 あたしは渚をベッドの上に寝かせると、その上に馬乗りになって見下ろした。
 渚の顔色がサッと青ざめる。
 あたしはそれに構わず、真っ赤なスカートの中からある物を取り出した。

「これなーんだ?」
「えっ!? そ、それは……っ!」
「お注射ですよぉー」

 あたしの手にあるものは、針のない注射器だった。
 小さい頃に、渚に頼んで渚のお母様からもらったものだ。
 さすがに本物は危ないということで、この注射器はおもちゃなのだが。

 それでも、できることはある。
 とっくに小さい頃に改造して、採血できるようになっている。
 あたしは渚の血が好きだ。渚の血がほしい。

「ひぃっ……!」
「怖い? でも安心してよ。別に毒とかじゃないから」
「や、やめ……」
「やめない」

 あたしはその細い棒を腕に押し当てる。
 すると、渚はまた涙を流した。

「いっ……!」
「どうしたの?」
「うっ……くぅ……」

 痛みに敏感になっている渚にとって、注射器が当たるだけでも苦痛となっていることだろう。
 それでも、あたしは少しずつ注射器を押し込んでいく。
 渚は必死に耐えていた。
 その姿を見ると、余計にいじめたくなってしまう。

「――終わろっか」

 でもなんだか飽きてきて、注射器をポケットにしまって手錠を外す。
 渚は痛みで動けないのか困惑しているのか、ベッドに横たわったままだった。
 そんな渚に背を向けて、あたしはこの黒いカーテンで締め切った暗い部屋を後にする。
 震えている手を必死で抑えながら。
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