真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

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第一章 吸血少女は傷つけたい

ふさわしい?

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「今日は泊まってって、あたしが晩ご飯作ってあげる」
「え……いや、私帰ろうかと思ってたんだけど……第一着替えとか持ってきてないし……」
「大丈夫。こっちでちゃんと用意するから」
「そっか……じゃあお言葉に甘えていいかな?」
「うん、任せて!」

 あたしは渚を泊めることにした。
 理由はないが、このまま帰すのはなんか嫌だったのだ。

 まだ震えは止まらない。
 なんでだろう。いつもこうだ。
 もっともっともっといじめたくなると、いつもどこかでやめなきゃいけない気になる。

 もっと苦しんでいる表情が見たい。
 もっと渚の血がほしい。
 もっと傷をつけてあたしとの愛の証を刻みたい。

 そのことに嘘はないはずなのに、なぜか急に怖くなる。
 渚は一体どこまであたしを受け入れてくれるのだろうか。

 渚も心の奥底ではあたしのことを恨んでいたりするんじゃないだろうか。
 そんな不安に押しつぶされそうになる時がある。
 それでもあたしはこの感情を抑えきれない。

 あたしのこの気持ちが渚にも伝わるといいなと思う。
 そしていつか、本当に渚が壊れてしまうまで愛し続ければいい。
 それが一番幸せなんじゃないかな。
 だから、どうか今だけは……

「おー、カレー作ってるの? 花恋ちゃんのカレー好きだから嬉しいなー!」
「そう? ふふっ、渚っていつもそう言ってくれるよね。他の食べ物でも」
「そうだっけ? でも本当のことだしさ」

 渚はあたしの心を知っていて受け入れてくれているのか。
 それともただ優しいだけなのか。
 わからないけど、今はそれでいいんだと思う。
 あたしには彼女がいる。
 それだけで十分幸せだと思えるから。

 それからしばらくして夕食の時間になった。
 出来上がった料理をテーブルに並べる。
 渚があたしの料理を好きだと言ってくれたから、張り切りすぎてカレーの量が多めになってしまった。
 渚は美味しい美味しいと言いながら食べてくれたけど。

「あー……もうおなかいっぱい……ごちそうさまでした」
「わー……いっぱい食べたね。あ、そうだ。デザートも用意してるんだ」
「ほんと? 至れり尽くせりで申し訳ないなぁ……」
「ううん、気にしないで。それよりほら! これ見てよ!」

 あたしは食器を下げてから、冷蔵庫に入れておいたチョコレートケーキを取り出して渚に見せびらかす。
 すると、彼女は目を輝かせて嬉しそうな顔をしてくれた。
 ああ、可愛い……

 この顔を見ていると、また苦しむ表情が見たくなってくる。
 だけど、ここはぐっと堪えるんだ。
 今日はもう残り少ないけど、渚のことを優先しないと。
 あたしは今日やりたい放題やって、デートを台無しにしてしまったのだから。

「ねぇ、一緒に写真撮ろ?」
「え、あ、うん、いいよ。せっかくだし同じポーズにする?」
「おぉ、それもいいね。はいチーズ!」

 パシャリとシャッター音が鳴った後、あたしたちはお互いに顔を見合わせて笑みを浮かべた。
 今日が特別な日ということではない。
 あたしたちの誕生日は7月だし、付き合った記念日とかでもない。
 だけど、渚は写真を撮ろうと言ってくれた。
 あたしとの日々を大切に思ってくれているのだろうか。
 だったら嬉しいな。

「ありがとう、渚。大好きだよ」
「急にどうしたの? 私も好きだよ、花恋ちゃん」
「うーん、別に。ただ言ってみたくなっただけ。でも好きって返してくれてありがと」
「いえいえこちらこそ」

 なんだかこのやり取りがおかしくなって、二人で笑い合う。
 こんな時間がいつまでも続けばいいのに。
 あたしは渚がそばにいるだけで幸せだ。
 それなのに、渚をどこまでも傷つけたいだなんて、わがままだろうか。

「ねえ、渚。キスしたいんだけど……いいかな?」
「えっ……あー、えっと……それは……」
「あー、ごめん。忘れて。なんでもない」

 多分渚は、あたしとキスをすること自体が嫌なわけではない。
 あたしの嗜好的に、つい渚の舌を甘噛みしたり何分も口をくっつけたまま酸欠させたりとかしてしまうから嫌なのだと思う。

「じゃあ、あたしやることあるから」

 そうして、渚のそばから逃げ出した。
 あたしは渚の相手にふさわしいのだろうか。
 そんなことを考えながら、自室の鍵を閉めた。
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