真っ赤な吸血少女は好きな人を傷つけたくてたまらない【完結済み】

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第二章 吸血少女は愛されたい

二人が羨ましい

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 嫩先輩の名字は渡島というらしい。
 あたしは渚以外名前で呼ぶ気もないし、渡島先輩と呼ばせてもらおう。
 呼ぶ機会があるかわからないけど。

「あなたが黒衣花恋ちゃんね。沙織ちゃんと仲良くしてくれてありがとう」
「え、いえ……こちらがお世話になってばかりなのでお礼なんて……」

 渡島先輩は高宮先輩の保護者みたいだ。
 渡島先輩が年上だということもあるけど、それ以上に気品というか大人っぽい雰囲気がある。
 だからなのか、とても高校三年生には見えない。
 この人が生徒会長だったら、学校もよりよくなる気がする。
 ただの勘だけど。

「沙織ちゃんから聞いてるわ。最近一緒にいることが多いんだって?」
「まあ……はい」

 確かに最近一緒にいることは多いと思う。
 あの衝撃的な出会いから、なぜか忘れられずにこうして度々牧場に来てしまう。
 でもそれは、高宮先輩と一緒にいたいとかじゃなくて、ただ単に動物が好きっていうだけだ。
 決して変な意味はない。
 あたしは渚一筋だし。

「それはよかったわ。だって沙織ちゃん人見知りであまり友だちいないから。心配だったのよ」
「ちょ、ちょっと嫩先輩!?」

 ……本当に、渡島先輩は高宮先輩の保護者みたいだ。
 いや、恋人だから、相手のことが心配なだけなのだろうけど。
 それにしても、二人とも仲よさそうに見える。
 なんだか羨ましい。

「嫩先輩がいじわるなこと言うのでそろそろ馬に乗りますね」
「あら、残念。もっとおしゃべりしたかったんだけど」

 渡島先輩は心底残念そうな顔をして言った。
 これにはさすがに……というか、高宮先輩は渡島先輩に勝てないのか、とても気まずそうに目を逸らしながら「……じゃあもっと喋りましょう」と呟いた。
 ……あたしはなにを見せられているのだろうか。
 夫婦漫才か。夫婦漫才を見せられてるんだな。
 あたしはそんなことを考えながら、二人が馬を駆っていく姿を眺めていた。

「うーん、楽しかったぁ!」

 乗馬を終えた高宮先輩はとても満足げな表情を浮かべている。
 あれから二人は馬に乗って、いろんなところを回ったらしい。
 あたしも行きたかったけど、まだ一人で馬に乗れないから断念した。

 そして今は休憩中だ。
 少し離れたところにある木陰に座っている。
 本当はここで読書をしようと思っていたのだが、今日はいつも以上に気温が低くて寒すぎるため諦めた。
 年明けに読みたいと思っていた真っ黒の本。
 だけど、中々時間が取れずにじっくりと読むことができない。

「ところで、もうすぐバレンタインよね。花恋ちゃんはあげたい相手とかいるの?」
「いますよ。小学生の頃からずっと付き合ってる子がいるので」
「小学生の頃から!? すごいわねぇ……」
「別にすごくないですよ。その子とは幼馴染みですし」

 あたしは淡々と答える。
 昔から好きな相手は変わってないし、きっとこれから先も変わることはないと思う。
 ずっとずっと、渚のことを好きでい続ける。

「へぇ、そうなのね。どんな子なの? 可愛い?」
「はい、すごく」
「ふふっ、即答なのね。花恋ちゃんってば顔が緩んでるわよ?」
「えっ……」

 慌てて口元に手を当てる。
 あたしの顔は今どうなっているのだろう。
 もしかしたら、気持ち悪いくらいニヤけてしまっているかもしれない。

 恥ずかしくなって俯いていると、突然目の前に影ができた。
 見上げると、そこには高宮先輩がいた。
 あたしのほっぺたを両手で包み込むように触っている。
 その手は冷たくて氷みたいだった。

「ひゃっ!? つめたっ!」
「ごめんなさい。驚かせちゃいました?」
「大丈夫……じゃないです。手が冷たい人は心があったかいって聞いたことありますけど、嘘なんですね」
「え……」

 あたしがわざと意地悪く言うと、高宮先輩は目に見えてしょんぼりうなだれた。

「え、冗談なんですけど……」

 あたしは慌ててフォローを入れる。
 すると高宮先輩はくすっと笑って、あたしの頭を撫でてくれた。
 冷えの取れた高宮先輩の手はあったかくて優しい。
 まるで渚みたいだった。
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