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19.04.03
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社会復帰施設に通っている女性は、綺麗な人が結構いる。常にマスクをしているせいかもしれない。だが、慎ましい感じの薄幸な雰囲気を湛えた美人が多く、ついつい目が惹かれる。気持ち悪いね。でも、そういうこともあり、施設に行くのは楽しい。私の恋愛や性の話を書くことも、この先あるかもしれない。いずれ、また。
昨日からの続き。チェーンの心療内科にて、適応障害の診断を受け、10日ほど休める診断書を貰ったが、その医師の態度に不満だった。
まだ会社には連絡をしなかった。次の診療を受けてからでいいと思った。2つの診断結果を天秤にかけて決めよう。
全体で30分程度しかかからなかったので、次の診療までは3時間以上間があった。取り合えず次の医院の最寄り駅へ移動し、近くの喫茶店に入って、読書をして時間を潰す。久し振りにゆったりと時間を取って読書が出来た。本当の鬱病の話を聞くと、何もやる気が起きなくなるそうだから、長時間の読書も、やはり私が鬱でなかったことを示しているように思える。
喫茶店で時間を潰し、2つ目の医院の行った。町医者。一言で言えばそんな感じだった。住宅街の中にあり、地味な外内装、最大でも5人くらいしか余裕がない待ち合い椅子。立派でないことが却って良いように思えた。それはチェーンの心療内科に対する反応、と言うだけで、実際のところはきっと立派な方がいいのだろうけれど。人気が高いところは予約が埋まっていたから流れ着いた場所であることを忘れてはいけない。
平日の 16:00という中途半端な時間にも関わらず、2人待っている人がいた。中年男性と若い女性。2人とも、ぱっと見の表面上は穏やかに見え、この医院を尋ねる必要があるようには思えない。向こうから見れば、私もそう見えているだろう。表を見ただけじゃ、裏に抱えていることはわからない。当たり前のことだが。
またここに至るまでの経過や自己診断を記入していると、直ぐに1人が診療室から出てきて、中年男性が入れ替わりで入室し、15分ぐらい経って、今度は若い女性と入れ替わる。チェーンの診療所では、診断時間が少ないように思ったが、1人当たり15分程度は普通なのかもしれない。
16:30頃に、若い女性が出てきて、私の名前が呼ばれる。医師は60代くらいの男性で頭髪は殆ど白に辛うじて黒が残っている程度、丁寧に口髭を整えていて、それがなんとなく鼻についた。
「鬱病だね」
色々と説明をした後で、医師はそう言い切った。この診断に至るまでの時間は、チェーンの時と左程変わらなかったが、その言い切りに力を感じた。そして、ここを訪れる前にチェーンの医院を訪れたことも話す。
「ああいうところは人数を回すことに力を使っているから、大してちゃんと見ていないんだよ」
これもバッサリと言い切った。それは客を取られるかもしれないのだから、そう言い切った方がいいだろうが、その時の私には、自分の考えていた通りだったこととその力強さに、この医師に魅力を感じ始めていた。そして、約10日間休むように診断書を貰ったことを話す。
「それじゃあ、足りないよ。3ヵ月。全く仕事のことを考えないようにしないと」
素晴らしい!頬が緩むのを締めなければならなかった。その言動や診察態度よりも何よりも、ここで3ヵ月の休暇を指示されたからこそ、ここに通うことを決めたのだと思う。その後も、現在この種の病に罹る人数がとても多いこと、だから仕事を休むとしても気にする必要がないこと、大体まず気にしないようにしなければ治らないこと等、様々なアドバイスをしてくれた。結果として、診療時間は50分程になっていて、話をしてくれて、聞いてくれて、3ヵ月の休職診断も貰い、私はとても満足していた。
17:20。医院を出て、係長に電話をする。電話に出た契約社員に取り次いで貰うと、呑気な声が受話器から聞こえた。
「おお、大丈夫か」
鬱病の診断を受け3ヵ月の休職をしなければいけない旨を伝える。笑いを抑えきれず、せめて自分に呆れたみたいに、悲し気に笑いながら伝えた。
「まじか」
係長も突然のことに、少し笑った。私は色々な業務が手つかずのままであることを悔いるように告げる。
「わかった。取り敢えず、わかった。また連絡する。取り敢えず、休め」
同じ言葉を繰り返し使っていて、電話越しにも焦っていることが充分にわかる。そんな姿は初めて見たので、楽しくなる。軽い気持ちで、帰宅する。帰宅途中に係長からメールが入る。
「明日、医務室に来れないか? 無理だったら、来られる時で良い」
私は直ぐに、行けます、と返信した。どうせ診断書は出ているわけで、これで仕事に無理してでも出ろ、と言われることはないだろうと思っていたし、仮に言われたとしても、それを断ることは出来る。
「ありがとう。そしたら、明日、9:00に直接医務室に来てくれ」
初めて感謝をされた気がする。それがこんなことになるとは思わなかった。将来のことを措けば、望んだ通り最良の結果を得ることが出来た。明朝9:00に向けて布団に入る。処方された睡眠薬がどの程度効くかわからなかったので、その日は飲まなかったが、それでも昨日までより確実に安らかに入眠することが出来た。1日で全てが変わったのだ。
細かい話は明日以降に続ける。
昨日からの続き。チェーンの心療内科にて、適応障害の診断を受け、10日ほど休める診断書を貰ったが、その医師の態度に不満だった。
まだ会社には連絡をしなかった。次の診療を受けてからでいいと思った。2つの診断結果を天秤にかけて決めよう。
全体で30分程度しかかからなかったので、次の診療までは3時間以上間があった。取り合えず次の医院の最寄り駅へ移動し、近くの喫茶店に入って、読書をして時間を潰す。久し振りにゆったりと時間を取って読書が出来た。本当の鬱病の話を聞くと、何もやる気が起きなくなるそうだから、長時間の読書も、やはり私が鬱でなかったことを示しているように思える。
喫茶店で時間を潰し、2つ目の医院の行った。町医者。一言で言えばそんな感じだった。住宅街の中にあり、地味な外内装、最大でも5人くらいしか余裕がない待ち合い椅子。立派でないことが却って良いように思えた。それはチェーンの心療内科に対する反応、と言うだけで、実際のところはきっと立派な方がいいのだろうけれど。人気が高いところは予約が埋まっていたから流れ着いた場所であることを忘れてはいけない。
平日の 16:00という中途半端な時間にも関わらず、2人待っている人がいた。中年男性と若い女性。2人とも、ぱっと見の表面上は穏やかに見え、この医院を尋ねる必要があるようには思えない。向こうから見れば、私もそう見えているだろう。表を見ただけじゃ、裏に抱えていることはわからない。当たり前のことだが。
またここに至るまでの経過や自己診断を記入していると、直ぐに1人が診療室から出てきて、中年男性が入れ替わりで入室し、15分ぐらい経って、今度は若い女性と入れ替わる。チェーンの診療所では、診断時間が少ないように思ったが、1人当たり15分程度は普通なのかもしれない。
16:30頃に、若い女性が出てきて、私の名前が呼ばれる。医師は60代くらいの男性で頭髪は殆ど白に辛うじて黒が残っている程度、丁寧に口髭を整えていて、それがなんとなく鼻についた。
「鬱病だね」
色々と説明をした後で、医師はそう言い切った。この診断に至るまでの時間は、チェーンの時と左程変わらなかったが、その言い切りに力を感じた。そして、ここを訪れる前にチェーンの医院を訪れたことも話す。
「ああいうところは人数を回すことに力を使っているから、大してちゃんと見ていないんだよ」
これもバッサリと言い切った。それは客を取られるかもしれないのだから、そう言い切った方がいいだろうが、その時の私には、自分の考えていた通りだったこととその力強さに、この医師に魅力を感じ始めていた。そして、約10日間休むように診断書を貰ったことを話す。
「それじゃあ、足りないよ。3ヵ月。全く仕事のことを考えないようにしないと」
素晴らしい!頬が緩むのを締めなければならなかった。その言動や診察態度よりも何よりも、ここで3ヵ月の休暇を指示されたからこそ、ここに通うことを決めたのだと思う。その後も、現在この種の病に罹る人数がとても多いこと、だから仕事を休むとしても気にする必要がないこと、大体まず気にしないようにしなければ治らないこと等、様々なアドバイスをしてくれた。結果として、診療時間は50分程になっていて、話をしてくれて、聞いてくれて、3ヵ月の休職診断も貰い、私はとても満足していた。
17:20。医院を出て、係長に電話をする。電話に出た契約社員に取り次いで貰うと、呑気な声が受話器から聞こえた。
「おお、大丈夫か」
鬱病の診断を受け3ヵ月の休職をしなければいけない旨を伝える。笑いを抑えきれず、せめて自分に呆れたみたいに、悲し気に笑いながら伝えた。
「まじか」
係長も突然のことに、少し笑った。私は色々な業務が手つかずのままであることを悔いるように告げる。
「わかった。取り敢えず、わかった。また連絡する。取り敢えず、休め」
同じ言葉を繰り返し使っていて、電話越しにも焦っていることが充分にわかる。そんな姿は初めて見たので、楽しくなる。軽い気持ちで、帰宅する。帰宅途中に係長からメールが入る。
「明日、医務室に来れないか? 無理だったら、来られる時で良い」
私は直ぐに、行けます、と返信した。どうせ診断書は出ているわけで、これで仕事に無理してでも出ろ、と言われることはないだろうと思っていたし、仮に言われたとしても、それを断ることは出来る。
「ありがとう。そしたら、明日、9:00に直接医務室に来てくれ」
初めて感謝をされた気がする。それがこんなことになるとは思わなかった。将来のことを措けば、望んだ通り最良の結果を得ることが出来た。明朝9:00に向けて布団に入る。処方された睡眠薬がどの程度効くかわからなかったので、その日は飲まなかったが、それでも昨日までより確実に安らかに入眠することが出来た。1日で全てが変わったのだ。
細かい話は明日以降に続ける。
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