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19.05.18
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発情期も激しく何かしらで処理する必要を感じて、個室ビデオ屋に初めて行ってきた。家庭を持っているわけでもないので、ただ映像を見るだけならわざわざ外出する必要もないのだけれど、今回の目当てはVRだ。休職中の身で風俗に高い金を出す気も起きず、それでいてある程度の満足感を得るためだった。通っている心療内科の近くにある場所へ入る。仕組みとしては漫画喫茶みたいなもので、基本料金に加えて延長の場合はプラスで金がかかるシステムだ。店員の顔が見えない受付でVRを見に来たことを告げると、丁度空いていてすぐにヘッドマウントディスプレイが入った袋を貰い、簡単説明を受けて地下のVR部屋へ。漫画喫茶的な弱い仕切りを想像していたのだけれど、実際は個室の名に反せず頑強に見える扉が通路の両側にずらりと並んでいた。指定された部屋に入る。部屋のサイズは漫画喫茶の1ブースと変わらないくらい。ドアノブはカラオケみたくレバー式で恐らく防音処理もちゃんとしているのだと見当がついた。鍵をかけて、ヘッドマウントディスプレイをコンセントに差し込んで電源を入れる。私は眼鏡をかけているので装着に苦労したが、無事にセッティングが完了しヘッドホンをつけると、視角と聴覚が外界から遮断され恐怖すら感じた。下半身を露にした私はかなり惨めな姿だっただろう。部屋が強固だったこともあり、地震や火事が発生したら私はこのままギリギリまで気付かずに死ぬだろうな。視聴を開始する。女性と1対1の作品を見たのだけれど、立体感というか奥行きが確かにリアルだった。私が首を動かせば映像内の視野も動く。私が見たものは360゚ではなく180゚くらいで世界が途切れていたが、目の前で私に跨がって腰を振る女優は間違いなく今までの映像体験よりも近くに存在していた。その分、挿入しているはずなのに私の下半身が感じているのはいつもの手の圧迫感、と言うところに違和感が生じる。玩具を使えばよかったかもしれない。そういうプランがちゃんとあったのに、ケチってしまっていた。そのような知覚間の齟齬はあったものの、無事に放出し後処理を終える。余った時間は別の作品を流し見したが、偶然かどれも女性主体のもので、現在のVRは基本受け身の世界なのかもしれないと感じた。ゲームであれば別だろうけれど、映像作品、ましてやAVの世界ではそれも仕方の無いことかと思う。それか単に私の趣味か。店を出て陽に当たり、遠くを見ると少し気持ち悪くなった。初めてのVR酔いだろうか。喫茶店で座っているうちにすぐに回復した。体験全体としては、新しい感覚でとても面白かった。既に書いたように、見えていること、聞こえていることと接触していることの感覚が異なるので、そこが埋まればよりハマれたかもしれない。いずれにしても、恐らくまた体験しに行くだろうと確信している。
昨日からの続き。ミントは結婚すると言ってきた。出会ってから8ヶ月くらい経っていた。私はそれが本当かどうか訝りながらも祝福した。実際に何故かとても感動していた。
「おめでとう。なんか、すごく泣きそうだ」
本当だった。悲しみではない。ドラマチックな清々しい気持ち。
「どうして?」
「わからない。でも、とてもいいことだ」
「うん」
「おめでとう」
何回もおめでとうと送った。電話をすればよかったのに、この時はメッセージだけだった。声を聞いていたら、本当に泣き出していたかもしれない。
「いいお嫁さんになれるかしら」
「きっとなれるよ。会うのを我慢できたのだから」
「まだ、狙っているの」
「それは駄目だよ」
「不安だわ」
「頑張って」
そんな話をした。話に聞いていたミントの彼氏は既に書いたようにミントのことを本当に好きなようで、厳しすぎない程度に束縛をしそうな人だったから、不安に陥りやすいミントにはピッタリの人だとどの目線かわからないが、そんなことを思った。幸せな気持ちになった。
この結婚発表の後もやり取りは続けた。そして、ミントは全く変わらなかった。変わらずに下着の写真を送ってきたり、会いたいとねだってきたり、凡そ新婦に相応しくない振る舞いを続けた。その都度、私はそんなことはするべきではないと自分がひまチャットで行っていた所業を棚に上げて注意した。それでも変わらなかった。まだ籍は入れていないからという理由で、同じことを繰り返した。
拒んでいたと言っても、関係を続けていたことを思えば、私も間違いなく共犯だろう。もし、本当にミントのことを考えるのであれば、私はすぐにでも離れるべきだった。そうすると、ミントのリスト上に存在する別の男への配分が増えるだけかもしれないが、それにしても何かはっきりと行動で示さなければいけなかった。
その結果、私は最終的にミントと直接会うことになってしまう。
細かい話は明日以降に続ける。
昨日からの続き。ミントは結婚すると言ってきた。出会ってから8ヶ月くらい経っていた。私はそれが本当かどうか訝りながらも祝福した。実際に何故かとても感動していた。
「おめでとう。なんか、すごく泣きそうだ」
本当だった。悲しみではない。ドラマチックな清々しい気持ち。
「どうして?」
「わからない。でも、とてもいいことだ」
「うん」
「おめでとう」
何回もおめでとうと送った。電話をすればよかったのに、この時はメッセージだけだった。声を聞いていたら、本当に泣き出していたかもしれない。
「いいお嫁さんになれるかしら」
「きっとなれるよ。会うのを我慢できたのだから」
「まだ、狙っているの」
「それは駄目だよ」
「不安だわ」
「頑張って」
そんな話をした。話に聞いていたミントの彼氏は既に書いたようにミントのことを本当に好きなようで、厳しすぎない程度に束縛をしそうな人だったから、不安に陥りやすいミントにはピッタリの人だとどの目線かわからないが、そんなことを思った。幸せな気持ちになった。
この結婚発表の後もやり取りは続けた。そして、ミントは全く変わらなかった。変わらずに下着の写真を送ってきたり、会いたいとねだってきたり、凡そ新婦に相応しくない振る舞いを続けた。その都度、私はそんなことはするべきではないと自分がひまチャットで行っていた所業を棚に上げて注意した。それでも変わらなかった。まだ籍は入れていないからという理由で、同じことを繰り返した。
拒んでいたと言っても、関係を続けていたことを思えば、私も間違いなく共犯だろう。もし、本当にミントのことを考えるのであれば、私はすぐにでも離れるべきだった。そうすると、ミントのリスト上に存在する別の男への配分が増えるだけかもしれないが、それにしても何かはっきりと行動で示さなければいけなかった。
その結果、私は最終的にミントと直接会うことになってしまう。
細かい話は明日以降に続ける。
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