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19.05.31
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復帰施設で最終資料の読みあわせを再度行った。来週の月曜日には会社の関係者の前でこの発表を行う。とは言っても、それは形式的なもので私が余りにも会社の人間を前にして喋ることが出来なかったら、復帰計画が白紙に戻る程度のことのはずで、作成した資料の文言一言一句に口を出してくるなんてことは無いだろうし、もしそんなことになったら私は本当に会社を辞めそうな気がする。とにかくリハーサル的なことを行った。私はこの施設で自分の考え方の傾向に気付き、その思考が原因で鬱になるまで人に相談をすることが出来なかったのだと気が付きました。本当は周囲の人間が嫌いだったからな気もしますが、それは口には出しません。そして、その思考の偏りを正すべく、今後はこの施設で学んだ新しい考え方を使っていき、それによって周囲の人々に助けを求めることが出来るようになっていきます。仮に、元の部署に戻されるようなことがあれば、それはまた別の話ですが、これも発表の場では敢えて言う必要は無いでしょう。そんなことを考えたり、カウンセラーに言ったりした。カウンセラーからの指摘は何もなかった。今更言ったところで、ということもあったのだろうが、現実では今更を過ぎても指摘をされることが殆どなのだから、その理不尽さを見せて欲しくもあった。結局、この施設では最後まで理不尽には合わなかったな。理不尽を経験してきた人には沢山会うことが出来て、それはとてもよかったけれど。いや、まだ終わりではないのだから、終わるときにまた振り返る。
昨日からの続き。2月時点での会社復帰を諦めた私に、医務室担当が面談をしたいと連絡をしてきた。会いたくなかったが、それすら避ける程に元気が無いわけではなく、確かに長い間顔を合わせていなかったこともあって承諾した。
場所は新宿の喫茶店となった。集合場所と医務室担当者以外に総務の関係者が来ると連絡を受ける。経営計画の人間でなければ、誰が同席したって構わない。実際、そこまで緊張しなかった。酷く罵られるようなことはないとわかっていた。
当日、約束の5分前に到着すると、医務室担当者はもう来ていて、今電話しようかと思っていたなんてことを言った。それが事実かはわからないが、せめて電話をするにしても待ち合わせ時間が来てからにして欲しいと思う。もしこれが仕事の取引先であれば、15分前でも先に着いていただろう。つまり、私はどこか医務室担当を舐めていた。もう1人の総務の人間はまだ来ていなかった。電車が人身事故で遅れていた。
先に2人で席に着く。最近の生活について、軽く報告をする。復職の意欲は萎えていたが、3食欠かさず食べていたし、外出もしばしばしていて生活はそこまで乱れていなかった。この場で会話をするに当たって、私はかつてのように意識的に自分が塞ぎこんでいる様子を見せた。向こうの目的が定まっていなかったが、私が快方に向かっていると思わせたくなかった。
職場の現場を聞いているうちに、遅れてきた総務の人間が到着した。女性だった。自己紹介と同時に名刺を渡され、まるで社外の人間になった気がした。こうして面談が始まった。
面談と言っても、それは今まで話してきたことの焼き直しをオブラートに包んだようなものだった。考えてみれば、この面談に至るまで、私は会社の人間に何故鬱病になったのかを語っていなかった。今までの経歴や、何が駄目だったのか嫌だったのかを柔らかく話した。部署のメンバーが嫌いだとは言わなかった。何故か援助を要請出来なかったと表現した。
医務室担当は頷きながら聞いてくれたが、総務担当はまあまあ厳しかった。経営計画に異動する前の部署の仕事について、私が上司にかなり守られていたと指摘し、これからもそういう大変なことは起こりうると忠告した。言っていることは正しい。その時の私でもそう思った。しかし、この人が何をしに来ているのかわからなかった。説教ならば、全く知らない人間に言われたところで怒りを覚えるだけだ。発言の内容は正しくても、発言すること自体が間違っていることもある。
そうして1時間くらい話したり聞いたりして、最後に1つ質問をされた。
「経営計画に戻る気はある?」
愚問だった。全く無い。むしろ、よくこの状況に陥った私を元の部署に戻すなんて考えが出るものだ。そんなことを思ったが、私は静かに申し訳なさそうに弱々しく、戻りたくないですと答えた。
「それを言うのをここまで我慢させちゃってごめんね」
医務室担当が言った。謝られると、どうしようもなくなる。基本的には全て私が悪いはずなのだから。そんな風に強い気持ちと弱い気持ちの間でふらふらと動いた。
これで面談は終わった。医務室担当と総務で、まだ話すことがあると言うので、私は先に席を外した。どんなことが言われていたのか気になるが、聞いても良い結果は生まないだろう。私はこれで経営計画に戻ることは完全に無くなったと思い、明るい気持ちを取り戻していた。経営計画でないなら、すぐに復帰してもいいくらいだった。それでも、これは昨年の2月の話。復帰を決意する今年の2月まであと1年あるわけで、それはまた別のトラブルが発生してしまったせいだ。
細かい話は明日以降に続ける。
昨日からの続き。2月時点での会社復帰を諦めた私に、医務室担当が面談をしたいと連絡をしてきた。会いたくなかったが、それすら避ける程に元気が無いわけではなく、確かに長い間顔を合わせていなかったこともあって承諾した。
場所は新宿の喫茶店となった。集合場所と医務室担当者以外に総務の関係者が来ると連絡を受ける。経営計画の人間でなければ、誰が同席したって構わない。実際、そこまで緊張しなかった。酷く罵られるようなことはないとわかっていた。
当日、約束の5分前に到着すると、医務室担当者はもう来ていて、今電話しようかと思っていたなんてことを言った。それが事実かはわからないが、せめて電話をするにしても待ち合わせ時間が来てからにして欲しいと思う。もしこれが仕事の取引先であれば、15分前でも先に着いていただろう。つまり、私はどこか医務室担当を舐めていた。もう1人の総務の人間はまだ来ていなかった。電車が人身事故で遅れていた。
先に2人で席に着く。最近の生活について、軽く報告をする。復職の意欲は萎えていたが、3食欠かさず食べていたし、外出もしばしばしていて生活はそこまで乱れていなかった。この場で会話をするに当たって、私はかつてのように意識的に自分が塞ぎこんでいる様子を見せた。向こうの目的が定まっていなかったが、私が快方に向かっていると思わせたくなかった。
職場の現場を聞いているうちに、遅れてきた総務の人間が到着した。女性だった。自己紹介と同時に名刺を渡され、まるで社外の人間になった気がした。こうして面談が始まった。
面談と言っても、それは今まで話してきたことの焼き直しをオブラートに包んだようなものだった。考えてみれば、この面談に至るまで、私は会社の人間に何故鬱病になったのかを語っていなかった。今までの経歴や、何が駄目だったのか嫌だったのかを柔らかく話した。部署のメンバーが嫌いだとは言わなかった。何故か援助を要請出来なかったと表現した。
医務室担当は頷きながら聞いてくれたが、総務担当はまあまあ厳しかった。経営計画に異動する前の部署の仕事について、私が上司にかなり守られていたと指摘し、これからもそういう大変なことは起こりうると忠告した。言っていることは正しい。その時の私でもそう思った。しかし、この人が何をしに来ているのかわからなかった。説教ならば、全く知らない人間に言われたところで怒りを覚えるだけだ。発言の内容は正しくても、発言すること自体が間違っていることもある。
そうして1時間くらい話したり聞いたりして、最後に1つ質問をされた。
「経営計画に戻る気はある?」
愚問だった。全く無い。むしろ、よくこの状況に陥った私を元の部署に戻すなんて考えが出るものだ。そんなことを思ったが、私は静かに申し訳なさそうに弱々しく、戻りたくないですと答えた。
「それを言うのをここまで我慢させちゃってごめんね」
医務室担当が言った。謝られると、どうしようもなくなる。基本的には全て私が悪いはずなのだから。そんな風に強い気持ちと弱い気持ちの間でふらふらと動いた。
これで面談は終わった。医務室担当と総務で、まだ話すことがあると言うので、私は先に席を外した。どんなことが言われていたのか気になるが、聞いても良い結果は生まないだろう。私はこれで経営計画に戻ることは完全に無くなったと思い、明るい気持ちを取り戻していた。経営計画でないなら、すぐに復帰してもいいくらいだった。それでも、これは昨年の2月の話。復帰を決意する今年の2月まであと1年あるわけで、それはまた別のトラブルが発生してしまったせいだ。
細かい話は明日以降に続ける。
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