社会復帰日記

社会復帰中

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19.06.11

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 慣らし労働2日目。全社に配布するよう指示を出された紙をひたすら封していく。それなりに大きな会社なので、殆どあったことがない人のために封を作っていく。その際に、全社員の住所付きのデータを見せて貰う。当然、基本的には悪用厳禁なのだが、暇な時間があり、私は欲望に逆らえず様々な人の居住地をGoogleで調べて、ストリートビューでその外観を見たりする。社長は流石に良い場所に住んでいた。旧部署の偉そうな人が大したことの無い場所だったり、可愛いあの子が意外と寂れた場所だったり。悪趣味とは思いつつも止められない。今の世の中、簡単にストーカーが出来てしまうと再確認する。特にこんな住所録があれば。以前から記しているようにメンヘラの気が多少ある私は気になる人を次々と調べて、秘密を得た気がして喜んでいる。施設を経ても、私の根本は全く変わっていないようで恐ろしくなるが、施設で学んだのは私を肯定する力なので、これでも別に良いのだ。

 昨日からの続き。2つの飲み会の後で、私の中に転職をしようという気持ちが芽生えた。もしかしたらそれはこのタイミングで生まれたのではなくもっと前からずっとあったのかもしれず、その証拠に前からYouTubeには転職エージェントの広告が頻繁に流れていた。自分で環境を選んで転職し、環境をリセット出来れば今起こっている色々な嫌なことが全て無くなるような気がしていた。しかし、考えてみれば自分で環境を選ぶなんて出来るわけがなく新卒の就活だって、ある程度の選択をした上で受ける企業を選んだはずで、確かに内定を貰ったのは1社だけだった上に出た時期も遅かったから入るしかなかったのだが、転職でも結局同じことになるような気も初めからしていたが、それは気付かない振りをしていた。

 環境変化に伴う今までのリセット。私はこういうことをこの転職意識に関わらず今までもやってきたような気がする。それは積極的リセットというよりも、受動的リセットでもなく、非積極的リセットと呼べそうな態度だった。つまり、大学に入ったあとに高校の友達の連絡先を全て消すみたいな攻撃性ではなく、向こうからの連絡待ちで、こちらからはコミュニケーションをとろうとしない態度であり、仮に連絡が来ても返事をしないみたいな振舞いだった。そのせいか、昔からの友人は1人もいない。今は大学の友人すら連絡が絶たれた。絶った、と言うべきか。

 今回もそういうことになりそうだった。ある程度の人間関係が築かれた後で全部崩してしまうようなやり方。過去には沢山の恥があって、それを知っている人を切り離すことで自分の恥を清算して真っ新になるような感覚だろうか。単にこんまり風に説明をしてもいいかもしれない。環境が変わった後で過去の人間関係にはときめかない。人間関係の断捨離は様々なところで行われていると感じる。別に私に特別なことではない。第一、過去の人間関係を全て繋いでままでいると、過去に縛られ過ぎな形になりそうじゃない? と言い訳はさておいて。

 転職サイトに取り敢えずメールアドレスを登録する前に、どういった業種に就こうかを考えた。就活時代には一通り大きな会社に登録をする典型的な大手病で、それ故に1つの業界や企業に対する掘り下げも浅く、数だけ重ねて失敗してきたのだが、今回は焦る必要も無く、まずは絞って定めて調べてから動こうと思った。私は音楽や本が好きだったので、そういった関係の仕事に就きたいと思った。それが斜陽産業だろうとなんだろうと興味は無く将来のことを考えられるならばもっと昔に考えているはずで、好きなものを仕事にするのが辛いよという話は、就いてみなければ私にはわからなかった。行き当たりばったりなのはいつも通りと承知の上で、私は慣れない転職活動を始めた。

 細かい話は明日以降に続ける。
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