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19.06.21
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まだ2週間しか復帰して経っていないわけだが、それでもこの部署で厄介者扱いを受けている人間がなんとなく見えてくる。その人も私と同じように休職から復帰をした人のようだが、何においてもずれているのに、その割には意見を曲げようとしないので、面倒臭がられている。良く見ようとすれば過度に真面目に見える。目についた改善すべき点をどうしても直したいのだろうと話を聞いていると感じるが、費用対効果が全然駄目なので、私からしても不採用だろうとわかるのだが、彼は納得しない。すぐに引き下がればいいものの、少し食らい付くものだから、余計に引かれる。そして、ありがとう、申し訳ございません、が言えない。悪く言えば空気が読めないのだが、空気が読めないので本人は冷たい視線に気付かないのかふわふわとやっている。その人が如何にして休職に至ったのかわからないが、何も気にしていなさそうなので不思議だ。しかし、もし実は気にしているのだとしたら、その人はこのままいくとまた休職してしまいそうな気もするので怖い。
昨日からの続き。面接当日。レンタルスーツに身を包み、土曜日の指定された時間よりもずっと前に出版社の最寄駅に到着していた。手帳とペンケースも会社に置いてきてしまっていたので安いものを改めて購入し、鞄はボロボロだったので新調して、時計は当日に身につけた後で電池が切れていることに気付いたので、面接時間より少し進んだ状態にしておいた。万が一、時計のことで云々と言われたら、丁度止まってしまったみたいですね、のような話が出来るかもしれないと戦略に組み込んだ。そんなことがあるのかはわからなかったが。
面接時間よりもずっと前に到着しておいたのは、面接が昼頃だったこともあり、街に人が増えれば増えるほど、知り合いに見つかるリスクが高まりそうに思えたからで、面接後についても速やかに駅に入れるようにルートを調べておいた。
チェーンの喫茶店に入りモーニングを食べながら、会社の沿革や業務内容、私が履歴書及び職務経歴書に書いたことの確認をする。経歴や今までの業務は殆どがフィクションであるのだから、気を抜かずに騙らなければならない。私は私に私のイメージを装填する。
喫茶店にいても、入ってくる人達が知り合いに思えて怖かった。身体を縮こまらせて喫茶店で資料を見ていた。実は白いネクタイと袱紗は鞄に潜ませてあって、仮に知り合いに会ったとしても結婚式があって、と言い訳が出来るようにはしてあったのだが、通じるだろうかと考えたりして、集中して物を読むことは出来なかった。そもそも、結婚式に行けるほど元気なのかって思われてしまうだろう。
結局、全ては杞憂で喫茶店にいて誰にも会うことはなかった。時間が近づいてきたので、飲みかけ、食べかけのものを返却口へ下げて、トイレでネクタイを結び、歯を磨いて、外へ出る。誰にも見つからないように早足で向かう姿はとても怪しかっただろうから、警察が見ていたら職質を食らっていたかもしれない。つまり、特に何も問題なく目的地に着く。
外観は綺麗なビルだった。立派な会社に思えた。ビルの1フロアが全てその会社のものだった。どこか詐欺師めいてもいたが、取り合えず気にせずにエレベーターでそのフロアへ上がる。到着。入口にインターホンがあったので、押すと女性の声が応答する。面接に来たものだと告げると、扉が開いた。
細かい話は明日以降に続ける。
昨日からの続き。面接当日。レンタルスーツに身を包み、土曜日の指定された時間よりもずっと前に出版社の最寄駅に到着していた。手帳とペンケースも会社に置いてきてしまっていたので安いものを改めて購入し、鞄はボロボロだったので新調して、時計は当日に身につけた後で電池が切れていることに気付いたので、面接時間より少し進んだ状態にしておいた。万が一、時計のことで云々と言われたら、丁度止まってしまったみたいですね、のような話が出来るかもしれないと戦略に組み込んだ。そんなことがあるのかはわからなかったが。
面接時間よりもずっと前に到着しておいたのは、面接が昼頃だったこともあり、街に人が増えれば増えるほど、知り合いに見つかるリスクが高まりそうに思えたからで、面接後についても速やかに駅に入れるようにルートを調べておいた。
チェーンの喫茶店に入りモーニングを食べながら、会社の沿革や業務内容、私が履歴書及び職務経歴書に書いたことの確認をする。経歴や今までの業務は殆どがフィクションであるのだから、気を抜かずに騙らなければならない。私は私に私のイメージを装填する。
喫茶店にいても、入ってくる人達が知り合いに思えて怖かった。身体を縮こまらせて喫茶店で資料を見ていた。実は白いネクタイと袱紗は鞄に潜ませてあって、仮に知り合いに会ったとしても結婚式があって、と言い訳が出来るようにはしてあったのだが、通じるだろうかと考えたりして、集中して物を読むことは出来なかった。そもそも、結婚式に行けるほど元気なのかって思われてしまうだろう。
結局、全ては杞憂で喫茶店にいて誰にも会うことはなかった。時間が近づいてきたので、飲みかけ、食べかけのものを返却口へ下げて、トイレでネクタイを結び、歯を磨いて、外へ出る。誰にも見つからないように早足で向かう姿はとても怪しかっただろうから、警察が見ていたら職質を食らっていたかもしれない。つまり、特に何も問題なく目的地に着く。
外観は綺麗なビルだった。立派な会社に思えた。ビルの1フロアが全てその会社のものだった。どこか詐欺師めいてもいたが、取り合えず気にせずにエレベーターでそのフロアへ上がる。到着。入口にインターホンがあったので、押すと女性の声が応答する。面接に来たものだと告げると、扉が開いた。
細かい話は明日以降に続ける。
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