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19.06.23
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ゲームを作り始めた。小説も書いている。やりたいことが多すぎて困っている。ゲームはゲームでしか出来ないだろうなと思っていることだし、小説は小説らしく書きたいことを書いている。ゲームを作る上で、音楽も作っている。どれもプロに及ばないまでも焦らずに楽しくやっている。創作が心身に与える影響は基本的にポジティブなものだろうと思っているので、睡眠時間を削らない程度にこれからもやっていきたい。ゲームはRPGツクールMVを用いて製作しており、ゆくゆくはSteamで販売までいきたいと思っている。ここでこのように宣言したのは、宣言することで自分を追い詰める為でもあり、いずれは製作過程を公開出来れば良いと思ったからである。需要はないと思われるが、世間の需要の有る無しで考えると、それは一般企業のロジックに取り込まれてしまいそうで、取り込まれてしまえば勝てる筈もなく、なので自分の中の需要をひたすらに考えていきたい。創作は自己肯定の為でもあるが、成果による肯定ではなく、過程による肯定を図っている。
昨日からの続き。応接室へ入ってきた男は出版社の社長と聞いて漠然と思い浮かべるイメージよりもずっと若かった。会社の概要は当然調べていたので、家族経営企業として、2代目へ継がれていたことは知っていたが、その2代目の写真がどこを調べても見つからず、生年すら不明だったので、勝手に脳内で老けたイメージを作っていたのだが、それは裏切られた。ソファから立ち上がって元気良く、しかし、五月蝿すぎない程度に挨拶をする。
「どうそ、座ってください」
恐らく、年齢差は十もなかったが、将来的に今のこの社長と同い年になったとき、この社長と同じような雰囲気が持てるか、と言われると絶対に持てないと断言が出来て、そう考えるとその人は2代目らしくも見えた。社長の息子として愛されて育ってきたのだろうなと感じさせるものがあった。それが自信とかなのかもしれない。英才教育を受けてきたのだろうなと思わせる何か。人よりも自分を優秀だと思っていそうな感じ、これは被害妄想だが。ベンチャー企業の営業みたいな清潔感、快活さ、そういうものを持っていて、一目で私は気圧されてしまった。格の違い。こういう根明を私はずっと怯えてきていた。受付の女性が出ていって、応接室の扉が閉まる。
「では、始めましょう」
社長はゆったりと話す人で、声はどこかネバついており、少し聴き取り辛かった。まずは自己紹介。提出した紙に書いたようなことを改めて口頭で説明する。余り長くは話さない。相手に質問をさせるようなゆとりを持たせる。かつて就活の時に聞いたことを朧気に思いだしながら話す。私は長らく使っていなかった身体の部分を起動させ、聞き取り方や応答の仕方を普段の人格とは異なる形で行った。経歴詐称と人格詐称。それでも私はそこにいて、社長と話をして、社長は私をその偽りの姿のままだと思っている。そのままだとは思っていないかもしれないが、大差はないと考えているだろう。筆記試験で学力を、面接で人柄を、その2つがあればある程度の見極めは出来ると考えられるのかもしれないが、実際は仕事とそれらは全く関係がないのだと私は知っていて、期待されているだろう振る舞いくらいは軽く出来ていると思えた。経歴について深く聞かれる。確かに本職としての経理の経験はございませんが、経営計画で数字を見続けて分析してきたので、数字には強い自負があります。嘘だ。その業務で潰れたというのに。30分程度の面接の中で、嘘を吐かずに話せたのは、最近読んで面白かった本の話題くらいかもしれない。いや、それすらわざわざその出版社の本を上げることもしたから、嘘だったかもしれない。確かに面白かったが、敢えて上げるほどかと問われれば疑問。そして、極めつけは最後の質問。
「メンタルは強い?」
強いかどうかはわかりませんが、今の部署も偉い人と話したり怒られたりしながらやっているので大丈夫だと思います。すらすらと出てきた。対策を意識して考えてはいなかったが、どこかでこういう質問が来るだろうとわかっていて無意識で答えを考えていたのだろう。強いです、と返さないところが、私らしく小賢しかった。
面接は以上で終わり。受付の女性から、結果はいずれにしても連絡をすると言われ、オフィスを出る。スーツ姿を見られぬように、急いで駅に向かって家へ逃げ帰った。家に帰って反省をしても、正直に言って手応えがあった。社長から滲み出ていた信頼の感じ。読みすぎた空気かもしれないが、嫌がられていないことは明白だった。そして、その予測の通り、1週間後に二次面接の連絡が来る。
細かい話は明日以降に続ける。
昨日からの続き。応接室へ入ってきた男は出版社の社長と聞いて漠然と思い浮かべるイメージよりもずっと若かった。会社の概要は当然調べていたので、家族経営企業として、2代目へ継がれていたことは知っていたが、その2代目の写真がどこを調べても見つからず、生年すら不明だったので、勝手に脳内で老けたイメージを作っていたのだが、それは裏切られた。ソファから立ち上がって元気良く、しかし、五月蝿すぎない程度に挨拶をする。
「どうそ、座ってください」
恐らく、年齢差は十もなかったが、将来的に今のこの社長と同い年になったとき、この社長と同じような雰囲気が持てるか、と言われると絶対に持てないと断言が出来て、そう考えるとその人は2代目らしくも見えた。社長の息子として愛されて育ってきたのだろうなと感じさせるものがあった。それが自信とかなのかもしれない。英才教育を受けてきたのだろうなと思わせる何か。人よりも自分を優秀だと思っていそうな感じ、これは被害妄想だが。ベンチャー企業の営業みたいな清潔感、快活さ、そういうものを持っていて、一目で私は気圧されてしまった。格の違い。こういう根明を私はずっと怯えてきていた。受付の女性が出ていって、応接室の扉が閉まる。
「では、始めましょう」
社長はゆったりと話す人で、声はどこかネバついており、少し聴き取り辛かった。まずは自己紹介。提出した紙に書いたようなことを改めて口頭で説明する。余り長くは話さない。相手に質問をさせるようなゆとりを持たせる。かつて就活の時に聞いたことを朧気に思いだしながら話す。私は長らく使っていなかった身体の部分を起動させ、聞き取り方や応答の仕方を普段の人格とは異なる形で行った。経歴詐称と人格詐称。それでも私はそこにいて、社長と話をして、社長は私をその偽りの姿のままだと思っている。そのままだとは思っていないかもしれないが、大差はないと考えているだろう。筆記試験で学力を、面接で人柄を、その2つがあればある程度の見極めは出来ると考えられるのかもしれないが、実際は仕事とそれらは全く関係がないのだと私は知っていて、期待されているだろう振る舞いくらいは軽く出来ていると思えた。経歴について深く聞かれる。確かに本職としての経理の経験はございませんが、経営計画で数字を見続けて分析してきたので、数字には強い自負があります。嘘だ。その業務で潰れたというのに。30分程度の面接の中で、嘘を吐かずに話せたのは、最近読んで面白かった本の話題くらいかもしれない。いや、それすらわざわざその出版社の本を上げることもしたから、嘘だったかもしれない。確かに面白かったが、敢えて上げるほどかと問われれば疑問。そして、極めつけは最後の質問。
「メンタルは強い?」
強いかどうかはわかりませんが、今の部署も偉い人と話したり怒られたりしながらやっているので大丈夫だと思います。すらすらと出てきた。対策を意識して考えてはいなかったが、どこかでこういう質問が来るだろうとわかっていて無意識で答えを考えていたのだろう。強いです、と返さないところが、私らしく小賢しかった。
面接は以上で終わり。受付の女性から、結果はいずれにしても連絡をすると言われ、オフィスを出る。スーツ姿を見られぬように、急いで駅に向かって家へ逃げ帰った。家に帰って反省をしても、正直に言って手応えがあった。社長から滲み出ていた信頼の感じ。読みすぎた空気かもしれないが、嫌がられていないことは明白だった。そして、その予測の通り、1週間後に二次面接の連絡が来る。
細かい話は明日以降に続ける。
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