社会復帰日記

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19.06.25

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 オフィスで尋ねられている人がいた。「これはどういう意味なの?」と。それは叱っているわけではなく、単純に理解が出来なくて聞いていただけのように見えたが、本当に聞きたいことが意味なのか気になった。意味と意図と理由について考えたことがある。私は哲学を学んだことがないので、こういう話がどれ程語り尽くされたことなのかは知らない。車輪の再発明かもしれない。しかし、私は車輪の再発明という言葉は好きだ。確かに人類全体では価値はないのだろうが、思い付いた当人には思い付いたことそれ自体が価値だと思う。時代が悪かっただけだ。さて、意味と意図と理由だが、個人的には行動の前に意図があり、その意図に関わらず起こった結果に対してその結果に至った理由があり、その結果から得られる教訓とかを意味と呼ぶと考えた。果たしてどうだろう。私はこの周辺の言葉を区別付けずにそれこそ意図せずに使用してきた訳だが、この根が混同されていると誤解を生むはめになるかもしれない。言葉を癖で考えずに使用すると、誤解が生じるかもしれないが、考えていると会話のスピードについていけない。困りものである。

 昨日からの続き。内定が出た。そして内定が出たが為に、途端に転職が現実の選択として目の前に現れ、今更本当に転職をしたいのか自分に聞かなければいけなくなった。

 過去の医務室担当との面談で、経営計画には戻れないと宣言をしている以上、同じ部署に戻されることはないと思えた。しかし、同じ会社に勤めている以上、関わりは切っても切れないことも目に見えていた。そんな環境下で私は続けることが出来るのか。

 それが無理そうで、嫌になったから転職を選んだ訳だが、逃げた先が私にとって安全かどうかはわからない。それどころか斜陽産業の中小企業。万が一、また精神的に潰れたとしたら、今度は社内にセーフティーネットは用意されていないかもしれない。給与も今の勤め先よりも低かった。

 加えて、私は面接で嘘に嘘を重ねている。それがどこかで漏れでもしたら、私は試用期間で切られることも考えられた。現に、前任者はその期間で終わったのだと面接で聞かされている。数字は見てきたとはいえ、経理は初体験の業種であることも不安を煽った。

 しかし、考えてみれば、不安要素を並べるに当たって、転職することに不利な要素が並ぶことは当然のことだった。あの社長が言っていたように、先が見えない要素が大きすぎるのだから。幾ら斜陽産業とは言え、立派なビルに入っている以上、直ぐに潰れるとは思えなかったし、それどころかコンテンツはなんだかんだ言っても当たれば大きい。見えない先がポジティブに振れることも考えられた。何より、私は今、自分で選択出来るのだ。新卒で内定を今の勤め先しか得られなかった時と違って、自分で新しい道を切り開けるのだ。

 私はメールに、退社について会社と日程調整をしてまたご連絡しますと返信した。会社を辞めようと決心していた。その日は日曜日。翌日は月曜日。週明けと同時に、私は会社に宣言するのだ。

細かい話は明日以降に続ける。
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