216 / 1,646
勝機と銷魂と渇望と
しおりを挟む
戦線から少し離脱したかというところ。砲撃を撃ち込むには近づかなければならないくらい遠く離れた位置。武装を積んだ囮役となる船に乗るルシアンと、それを知ってか知らずか単身乗り込んで来たヴォルテル。
こちらでの戦いも相手のクールタイムを読み、如何にして攻撃の波を乗り越えるかという状況。船員達の奮闘によりヴォルテルの前進は食い止められ、ルシアンの遠距離攻撃によって少しずつではあるが、着実にダメージを与えられている。
だがそこは、ロッシュ軍の主戦力ともなる男。受けたダメージによる疲労や苦悶の表情を一切見せることなく、グレイス軍の船員を悉く打ち負かしていく。
ここで気掛かりとなってくるのが、ヴォルテルのスキルのクールタイムだ。攻守を一遍に担い、ルシアンを含めグレイス軍の者達を戦慄させた全方位シールドバッシュの再使用がいつ訪れるのか。
実際のところ、初手で強力なスキルを撃たれたのが戦況に大きく影響してきている。戦場において、相手に恐怖を植え付けるということがこれ程有効であるのかと、身を以て思い知らされた。
スキルを発動された時の衝撃や絶望、パニックにより統率が乱され、動揺は後方にいた者達へも伝染していったのだ。不幸中の幸いか、パニックに陥った者達の行動で、次に取るべき行動を見出すことが出来た。
しかしそれも長くは続かない。一度恐怖を植え付けられた者は、再度その恐怖が迫ると再び冷静さを失い、単純なミスや焦りを誘発させる。
今が正にその状況下にあり、ヴォルテルの全方位シールドバッシュのクールタイムがどの程度進んでいるのか、或いはもう終わっているのか。一度目の衝撃からそれなりの時間が過ぎた。ルシアンだけではなく、その場にいた誰もが内心に思うこと。
次はいつくるのか、本当は既にクールタイムは過ぎていていつでも再使用出来るのではないか。その恐怖からヴォルテルへの攻撃の手数が徐々に減りつつあった。
「今が踏ん張りどころですね・・・。私のスキルの回転率を上げて手数を増やすのが最善でしょう・・・」
誰もが痛い思いをして死ぬのは御免だと、目の前で今にも爆発せんと膨れ上がる爆弾を前に、足が言うことを聞かず後退しようとする。だが手数を緩め、ヴォルテルに進軍を許す訳にはいかない。
もし自分がヴォルテルの立場にあるのなら、強力なスキルでより多くの者達を巻き込むため、チャンスを伺うだろう。今のちまちまとしたグレイス軍の攻めは、彼にとって攻めの一手を打たせぬ焦ったい状況だろう。
彼にスキルを無駄撃ちさせるため、船員の命ではなく遠距離からの鬱陶しい攻撃による弾幕で、使わざるを得ない状況持ち込む事さえ出来れば勝機も見えてくるというもの。
だが不可解なのは、そんな状況にされながらも彼に焦りの様子が見えないということだ。そもそも表情や態度に表すようなタイプではなかったが、どうしても細かな所作に出てくるものだ。そしてルシアンの嫌な予感は的中し、更に彼の頭を悩ませる事態に陥ることとなる。
迫り来るグレイス軍の攻撃を押し退け、ルシアンの調合したシェイカーの遠距離投擲を捌いていくヴォルテル。所々で防ぎきれない攻撃が発生しているようで、圧倒的防御を誇る彼にも小さなダメージが積み重なっていく。
すると、それまでシールドバッシュや彼を休ませぬ為の波状攻撃に気を取られ気づかなかったが、彼の持つ大きな盾の周りに蜃気楼のような光の屈折による歪みが見える。
大したことではないのかも知れないが、ルシアンはヴォルテルの表情から何か掴もうとするが、彼は顔ごと身体を隠すようにルシアンの視線を遮ろうと盾の壁を隔てる。
その時、それが蜃気楼による影響なのか見間違いなのか分からなかったが、盾に隠れる刹那、ヴォルテルの表情が微かに笑っているように見えたのだ。そして、そんな彼の表情について考える間も無くその時はやって来た。
ヴォルテルの持つ盾の中心が、サンドワームの大口のようにパックリと開き、勢い良く真っ赤に燃え盛る炎を吐き出したのだ。
突然の予期せぬことに、目の前に迫る火炎に対し身体の前で両腕を出して遮ることしか出来なかった。当然、そんなものでどうにかなるはずも無く、ルシアンを含め彼の前方にいたグレイス軍の船員諸共、全身を業火に焼かれ立っていることもままならず、甲板でのたうち回る。
「あ“あ”あ“あ”あ“ぁぁぁッ!!」
ヴォルテルによる、その場にいる誰もが騒然とする衝撃はこれで二度目だ。まるで地獄かのように響き渡る悲鳴に、攻撃を受けなかった船員達の戦意をも焼き尽くし、彼を狙う攻撃の一切を止めた。
こちらでの戦いも相手のクールタイムを読み、如何にして攻撃の波を乗り越えるかという状況。船員達の奮闘によりヴォルテルの前進は食い止められ、ルシアンの遠距離攻撃によって少しずつではあるが、着実にダメージを与えられている。
だがそこは、ロッシュ軍の主戦力ともなる男。受けたダメージによる疲労や苦悶の表情を一切見せることなく、グレイス軍の船員を悉く打ち負かしていく。
ここで気掛かりとなってくるのが、ヴォルテルのスキルのクールタイムだ。攻守を一遍に担い、ルシアンを含めグレイス軍の者達を戦慄させた全方位シールドバッシュの再使用がいつ訪れるのか。
実際のところ、初手で強力なスキルを撃たれたのが戦況に大きく影響してきている。戦場において、相手に恐怖を植え付けるということがこれ程有効であるのかと、身を以て思い知らされた。
スキルを発動された時の衝撃や絶望、パニックにより統率が乱され、動揺は後方にいた者達へも伝染していったのだ。不幸中の幸いか、パニックに陥った者達の行動で、次に取るべき行動を見出すことが出来た。
しかしそれも長くは続かない。一度恐怖を植え付けられた者は、再度その恐怖が迫ると再び冷静さを失い、単純なミスや焦りを誘発させる。
今が正にその状況下にあり、ヴォルテルの全方位シールドバッシュのクールタイムがどの程度進んでいるのか、或いはもう終わっているのか。一度目の衝撃からそれなりの時間が過ぎた。ルシアンだけではなく、その場にいた誰もが内心に思うこと。
次はいつくるのか、本当は既にクールタイムは過ぎていていつでも再使用出来るのではないか。その恐怖からヴォルテルへの攻撃の手数が徐々に減りつつあった。
「今が踏ん張りどころですね・・・。私のスキルの回転率を上げて手数を増やすのが最善でしょう・・・」
誰もが痛い思いをして死ぬのは御免だと、目の前で今にも爆発せんと膨れ上がる爆弾を前に、足が言うことを聞かず後退しようとする。だが手数を緩め、ヴォルテルに進軍を許す訳にはいかない。
もし自分がヴォルテルの立場にあるのなら、強力なスキルでより多くの者達を巻き込むため、チャンスを伺うだろう。今のちまちまとしたグレイス軍の攻めは、彼にとって攻めの一手を打たせぬ焦ったい状況だろう。
彼にスキルを無駄撃ちさせるため、船員の命ではなく遠距離からの鬱陶しい攻撃による弾幕で、使わざるを得ない状況持ち込む事さえ出来れば勝機も見えてくるというもの。
だが不可解なのは、そんな状況にされながらも彼に焦りの様子が見えないということだ。そもそも表情や態度に表すようなタイプではなかったが、どうしても細かな所作に出てくるものだ。そしてルシアンの嫌な予感は的中し、更に彼の頭を悩ませる事態に陥ることとなる。
迫り来るグレイス軍の攻撃を押し退け、ルシアンの調合したシェイカーの遠距離投擲を捌いていくヴォルテル。所々で防ぎきれない攻撃が発生しているようで、圧倒的防御を誇る彼にも小さなダメージが積み重なっていく。
すると、それまでシールドバッシュや彼を休ませぬ為の波状攻撃に気を取られ気づかなかったが、彼の持つ大きな盾の周りに蜃気楼のような光の屈折による歪みが見える。
大したことではないのかも知れないが、ルシアンはヴォルテルの表情から何か掴もうとするが、彼は顔ごと身体を隠すようにルシアンの視線を遮ろうと盾の壁を隔てる。
その時、それが蜃気楼による影響なのか見間違いなのか分からなかったが、盾に隠れる刹那、ヴォルテルの表情が微かに笑っているように見えたのだ。そして、そんな彼の表情について考える間も無くその時はやって来た。
ヴォルテルの持つ盾の中心が、サンドワームの大口のようにパックリと開き、勢い良く真っ赤に燃え盛る炎を吐き出したのだ。
突然の予期せぬことに、目の前に迫る火炎に対し身体の前で両腕を出して遮ることしか出来なかった。当然、そんなものでどうにかなるはずも無く、ルシアンを含め彼の前方にいたグレイス軍の船員諸共、全身を業火に焼かれ立っていることもままならず、甲板でのたうち回る。
「あ“あ”あ“あ”あ“ぁぁぁッ!!」
ヴォルテルによる、その場にいる誰もが騒然とする衝撃はこれで二度目だ。まるで地獄かのように響き渡る悲鳴に、攻撃を受けなかった船員達の戦意をも焼き尽くし、彼を狙う攻撃の一切を止めた。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は“料理人”。
だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。
地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。
勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。
熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。
絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す!
そこから始まる、料理人の大逆転。
ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。
リアルでは無職、ゲームでは負け組。
そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
───────
自筆です。
アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる