301 / 1,646
人が生んだ怪異
しおりを挟む
絶えず拳を打ち込んでいくハオランに、構わず話を始めていくロロネー。
「お前は“バラスト水”ってぇのを知ってるか?まぁ、タダの海賊じゃぁあまり聞いたことはねぇかもしれねぇが・・・」
突然ロロネーが口にした言葉は、港町ならではの単語であり、主に貨物船などに用いられる用語の一つだった。
バラスト水。船舶の船底に重しの代わりに積み込む水のことだ。貨物船だけに止まらないが、主に荷物を運ぶ目的で作られた船は、積載する荷物のことを想定されて設計される。
何も考えず、ただ大きな船で荷物を積み込めるスペースを確保しただけの船を作っても、いざ荷物を積み込めるだけ積み込んでみたら、船は沈没してしまうことだろう。逆に、それだけのスペースがありながら少量の貨物しか乗せないと、今度は船が軽くなり、運搬に致命的な支障をきたしてしまう。
水に浮くのが船なのではないか。幼い頃、川やお風呂に紙や草などで作った自作の船浮かべたことはないだろうか。それは何かを積むことを想定せずに作った船で、水面に浮かべればバランスを保ち流れていく。
ある程度の波を起こしても、多少は耐え浮き続けることが出来る。水が船に入ってしまっても少しなら沈まず、そこで初めて船らしい姿を拝むことが出来る筈だ。船底を水面より少し沈め、よりリアル感じることだろう。だが、当然ながらそれは積載することを想定して作られたものではないため、風や波に極端に弱くなる。
今度は、積載を想定した船の作りについて。先程の闇雲に作った船とは違い、次は荷物を乗せて運航することを前提としているため、何も乗せずに移動させると、船の重心が上がってしまい転覆し易くなってしまう。また、浮いてしまうために、横波や横風に弱くなり外力に対する応力が低下する。
更に浮いてしまうことには、他にも大きな問題が生じる。それは船橋の視界が妨げられ死角が増えるということ。そして船が浮けばプロペラが上がり、推進力の低下が出始めるのだ。
ザックリとバラスト水について説明を終えたロロネーは、今度はその水が生態系に生じる問題について説明した。
バラスト水を用いれば、積み込む港と目的地で排出する港が異なる。すると、バラスト水に含まれる水生生物が様々な地域や場所を往来し、生態系を撹乱させる問題が生じてしまう。
生態系が崩れれば、水産物に影響を及ぼすだけに止まらず、この世界における最も危険視するべき問題が生まれる。
「バラスト水にはよぉ・・・小さなモンスターが含まれていることも多々あるんだ。すると何が起きると思う」
何故ロロネーが、そのような話をし出したのかは分からなかった。だが、ハオランはその質問に少しだけ耳を傾ける。
「生態系の崩壊による、突然変異したモンスターが現れたのさ。生物とは何時も、過酷な環境下で進化を遂げて来た。それはモンスターも同じだという事さ。皮肉なもんだなぁ・・・。人間の技術で奴らの世界は壊れ、そのお陰でより強靭な生命体へと進化を遂げたんだ!」
「・・・それが何だと言うのだッ・・・!」
ハオランが漸く口を開いたことに、明かな悦びの表情を浮かべながら彼の問いに答える。それこそロロネーが手を組んだ、この戦いでの隠し玉であり、バラスト水による環境の変化で進化を遂げた者達の名。
「濃霧の中で静かに揺蕩うミゼリコルドの怪物“メデューズ”。海中に漂動するは血濡れた祝歌のコシュマール“クトゥルプス”。それがお前達に迫る脅威の名だ。いや・・・お前達が生み出した・・・か」
メデューズ、ミアを襲った少年の姿をした水のモンスター。変幻自在にその姿を変え、触れたものを溶解する程強力な猛毒を扱うことも。複数に分かれた身体には電撃が通るが、本体は純水で出来ている為、そのままでは通用しない。
クトゥルプス、ツクヨの乗る船を襲撃した触手の女。妖艶な姿をしており、背中から生えた八本の触手は、一本一本が強力な力を持ち、切断すると本体から切り離された部位がモンスターに生まれ変わり、精神異常や幻覚を引き起こす毒を持っている。
これがロロネーが使役し、人間の文明の力が生み出した海の怪物達。
「お前は“バラスト水”ってぇのを知ってるか?まぁ、タダの海賊じゃぁあまり聞いたことはねぇかもしれねぇが・・・」
突然ロロネーが口にした言葉は、港町ならではの単語であり、主に貨物船などに用いられる用語の一つだった。
バラスト水。船舶の船底に重しの代わりに積み込む水のことだ。貨物船だけに止まらないが、主に荷物を運ぶ目的で作られた船は、積載する荷物のことを想定されて設計される。
何も考えず、ただ大きな船で荷物を積み込めるスペースを確保しただけの船を作っても、いざ荷物を積み込めるだけ積み込んでみたら、船は沈没してしまうことだろう。逆に、それだけのスペースがありながら少量の貨物しか乗せないと、今度は船が軽くなり、運搬に致命的な支障をきたしてしまう。
水に浮くのが船なのではないか。幼い頃、川やお風呂に紙や草などで作った自作の船浮かべたことはないだろうか。それは何かを積むことを想定せずに作った船で、水面に浮かべればバランスを保ち流れていく。
ある程度の波を起こしても、多少は耐え浮き続けることが出来る。水が船に入ってしまっても少しなら沈まず、そこで初めて船らしい姿を拝むことが出来る筈だ。船底を水面より少し沈め、よりリアル感じることだろう。だが、当然ながらそれは積載することを想定して作られたものではないため、風や波に極端に弱くなる。
今度は、積載を想定した船の作りについて。先程の闇雲に作った船とは違い、次は荷物を乗せて運航することを前提としているため、何も乗せずに移動させると、船の重心が上がってしまい転覆し易くなってしまう。また、浮いてしまうために、横波や横風に弱くなり外力に対する応力が低下する。
更に浮いてしまうことには、他にも大きな問題が生じる。それは船橋の視界が妨げられ死角が増えるということ。そして船が浮けばプロペラが上がり、推進力の低下が出始めるのだ。
ザックリとバラスト水について説明を終えたロロネーは、今度はその水が生態系に生じる問題について説明した。
バラスト水を用いれば、積み込む港と目的地で排出する港が異なる。すると、バラスト水に含まれる水生生物が様々な地域や場所を往来し、生態系を撹乱させる問題が生じてしまう。
生態系が崩れれば、水産物に影響を及ぼすだけに止まらず、この世界における最も危険視するべき問題が生まれる。
「バラスト水にはよぉ・・・小さなモンスターが含まれていることも多々あるんだ。すると何が起きると思う」
何故ロロネーが、そのような話をし出したのかは分からなかった。だが、ハオランはその質問に少しだけ耳を傾ける。
「生態系の崩壊による、突然変異したモンスターが現れたのさ。生物とは何時も、過酷な環境下で進化を遂げて来た。それはモンスターも同じだという事さ。皮肉なもんだなぁ・・・。人間の技術で奴らの世界は壊れ、そのお陰でより強靭な生命体へと進化を遂げたんだ!」
「・・・それが何だと言うのだッ・・・!」
ハオランが漸く口を開いたことに、明かな悦びの表情を浮かべながら彼の問いに答える。それこそロロネーが手を組んだ、この戦いでの隠し玉であり、バラスト水による環境の変化で進化を遂げた者達の名。
「濃霧の中で静かに揺蕩うミゼリコルドの怪物“メデューズ”。海中に漂動するは血濡れた祝歌のコシュマール“クトゥルプス”。それがお前達に迫る脅威の名だ。いや・・・お前達が生み出した・・・か」
メデューズ、ミアを襲った少年の姿をした水のモンスター。変幻自在にその姿を変え、触れたものを溶解する程強力な猛毒を扱うことも。複数に分かれた身体には電撃が通るが、本体は純水で出来ている為、そのままでは通用しない。
クトゥルプス、ツクヨの乗る船を襲撃した触手の女。妖艶な姿をしており、背中から生えた八本の触手は、一本一本が強力な力を持ち、切断すると本体から切り離された部位がモンスターに生まれ変わり、精神異常や幻覚を引き起こす毒を持っている。
これがロロネーが使役し、人間の文明の力が生み出した海の怪物達。
0
あなたにおすすめの小説
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は“料理人”。
だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。
地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。
勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。
熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。
絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す!
そこから始まる、料理人の大逆転。
ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。
リアルでは無職、ゲームでは負け組。
そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる
日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」
冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。
一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。
「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」
そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。
これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。
7/25男性向けHOTランキング1位
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる