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ファーマシスト
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彼なりに調べた結果、何か情報は得られたのだろうか。デイヴィスはモンスター襲撃の件をアンスティスに尋ねるが、彼も明確な答えは見つけられなかったようだ。ただ、一つ彼の脳裏に引っ掛かる些細な出来事があったのだという。
「それで?何か気づいた事はあったのか?」
「ぼ・・・僕は研究に没頭してしまうと、片付けにまで気が回らないんだ・・・。それで、薬品を収納していた部屋にも何度も行き来していて・・・その・・・、凄く散らかっていた・・・」
「・・・?どうした、何が言いたい?」
「僕がいろんな国や街で仕入れた薬品や、材料が床にも散らばっていて・・・。だから僕の勘違いかもしれないんだが、いくつか薬品の入ったボトルが無くなっていたような気がしたんだが・・・」
確かなことではないが、海上で彼の船から薬品の入ったボトルが何個か無くなっていたというのだ。アンスティスが言っていた通り、彼は直ぐに部屋を散らかしてしまう癖のようなものがある。故に、訪れた国や街の店で既に持っている薬品を気付かずに買い足してしまうことも、少なくはなかった。
だから彼の中で、“そんな気がした“というだけで、確証は持てなかったのだという。しかしそれだけの情報では、本当になくなっていたのかすら怪しい。
「お前・・・以前よりも散らかし癖が悪くなっているんじゃないか?・・・確か俺がいた時は、物品の管理役として誰かをお前に付けていたような気がするが・・・」
よく余計なものを買い足し、無駄な金を使っていたアンスティスの性分を、彼の才能を損なうことなくどうにかする為、デイヴィスは船に積んである食料や物品を管理する部署のようなものを設けていた。
デイヴィスの言葉に、彼を慕っていたアンスティスは当時のことを忘れていないと顔を上げ、今でも自分の海賊団にその部署を設けていると答えた。当時の人員とは変わってしまったが、彼が信頼を置くしっかりした人物だそうだ。
「あぁ、覚えているとも。・・・懐かしいな、君のアイデアのおかげで僕は、より一層研究に没頭出来たことを覚えているよ。今でも同じようなことをしているんだ。“ウォルター“という、僕が信頼を置いている男を、僕の船の専属として管理してもらってる」
「それならそのウォルターって奴に聞けば、何が無くなったのか分かるんじゃないか?」
そう口にすると、アンスティスは暗い表情を浮かべ俯いてしまった。その様子からウォルターという人物に何かあったことが伺える。確認の取れない状況にあるのか、或いは先程の襲撃で・・・。
「そ・・・それが、ウォルターと連絡が取れなくなってしまったんだ・・・。モンスターに襲撃される少し前までは、確かに僕の船に乗っていたんだが・・・。彼は・・・ウォルターは無事だろうか・・・」
不意のモンスターの襲撃により、何隻か船底に穴を開けられ沈没させられてしまったようで、海に落ちた船員を全員は救出することが出来なかったそうだ。咄嗟に起きた襲撃に、臨機応変に対応していた人物の中にそのウォルターもいたのだ。
「海に落ちてしまっては・・・。時間が空いていなければアシュトンに探してもらうことも出来ただろうが・・・。それに今は探している余裕などない・・・すまん、アンスティス・・・」
「わ・・・分かってる。計画を優先しよう・・・。油断したのは僕だ。責任は僕にある・・・」
デイヴィスは、アンスティスがこのまま自責の念を抱え込んでしまうのではないかと、励ましの言葉をかけるが彼の心に届いているかどうかまでは分からなかった。
二人が話し込んでいる内に、先程の海域からの爆発音はすっかり聞こえなくなっていた。アシュトンがモンスターの群れを一掃してくれたのだろう。既にシンプソンの海賊船がアシュトンの元へと向かい、様子を見に行ってくれていた。
島に降り立ったデイヴィスが中々戻らぬことに、心配したシンが船から現れ声を掛ける。手を上げて、催促するシンにもう直ぐ戻ると返事を返す。お前も一緒にどうだと、、デイヴィスはシンが顔を覗かせた船の方を指差す。
だが、慣れぬ人は苦手だと言い、アンスティスは自分の船で向かうと答える。話を中断し、今はアシュトンとの合流を急ごうと、双方の意見が合致する。二人はそれぞれの船へと足早に戻る。
もしかしたら、アシュトンから海の中の様子を聞き、ウォルターの行方の手掛かりが得られるかも知れない。僅かな希望を胸に戻るアンスティスと、漸く必要な戦力を揃えることに成功したデイヴィスは、アシュトンの一味が無事であることを祈りながらシン達の元へと戻った。
船につくと、当然ながら島で何をしていたのかと問われる。デイヴィスは何を隠す訳でもなく、アンスティスとの会話の内容を彼らに話した。普段水深の深いところにいる筈のモンスターらが、何故海面のアンスティスを襲ったのか。
何か原因があったのではないかと、アンスティスに尋ねたこと。彼の船から薬品が無くなったこと。行方が分からなくなってしまった船員のこと。数隻、船を沈められたことを簡潔に連ね、説明する。
しかし、彼らがそれ以上に気になった事は、アンスティスの海賊旗についてだった。注射器のような物が描かれた彼の海賊旗。髑髏と相反する治療器具から、その海賊団が治療や回復に特化した船団であるか、或いは薬物をもって相手を死に至らしめる海賊なのか、その二択で彼らの中の答えは纏まっていたようだ。
彼らのお察しの通りだと言った様子で、デイヴィスは口角を上げ鼻から息をする。共に行動する仲間であれば隠す必要もなかろうと、デイヴィスは彼らにアンスティス海賊団のことを話す。
アンスティスのクラスは、“ファーマシスト“と呼ばれるクラス。つまりは薬剤師のクラス。ファンタジーの世界とはいえど、回復や治療の手段が魔法によるものだけではないのだ。
彼らのように薬物による治療や、ステータスの強化。中には一時的に常軌を逸した力を得るバフ効果を与えることも出来るファーマシスト。アンスティス海賊団は、そういった能力に長けた者が多く乗り合わせている海賊団なのだ。
「それで?何か気づいた事はあったのか?」
「ぼ・・・僕は研究に没頭してしまうと、片付けにまで気が回らないんだ・・・。それで、薬品を収納していた部屋にも何度も行き来していて・・・その・・・、凄く散らかっていた・・・」
「・・・?どうした、何が言いたい?」
「僕がいろんな国や街で仕入れた薬品や、材料が床にも散らばっていて・・・。だから僕の勘違いかもしれないんだが、いくつか薬品の入ったボトルが無くなっていたような気がしたんだが・・・」
確かなことではないが、海上で彼の船から薬品の入ったボトルが何個か無くなっていたというのだ。アンスティスが言っていた通り、彼は直ぐに部屋を散らかしてしまう癖のようなものがある。故に、訪れた国や街の店で既に持っている薬品を気付かずに買い足してしまうことも、少なくはなかった。
だから彼の中で、“そんな気がした“というだけで、確証は持てなかったのだという。しかしそれだけの情報では、本当になくなっていたのかすら怪しい。
「お前・・・以前よりも散らかし癖が悪くなっているんじゃないか?・・・確か俺がいた時は、物品の管理役として誰かをお前に付けていたような気がするが・・・」
よく余計なものを買い足し、無駄な金を使っていたアンスティスの性分を、彼の才能を損なうことなくどうにかする為、デイヴィスは船に積んである食料や物品を管理する部署のようなものを設けていた。
デイヴィスの言葉に、彼を慕っていたアンスティスは当時のことを忘れていないと顔を上げ、今でも自分の海賊団にその部署を設けていると答えた。当時の人員とは変わってしまったが、彼が信頼を置くしっかりした人物だそうだ。
「あぁ、覚えているとも。・・・懐かしいな、君のアイデアのおかげで僕は、より一層研究に没頭出来たことを覚えているよ。今でも同じようなことをしているんだ。“ウォルター“という、僕が信頼を置いている男を、僕の船の専属として管理してもらってる」
「それならそのウォルターって奴に聞けば、何が無くなったのか分かるんじゃないか?」
そう口にすると、アンスティスは暗い表情を浮かべ俯いてしまった。その様子からウォルターという人物に何かあったことが伺える。確認の取れない状況にあるのか、或いは先程の襲撃で・・・。
「そ・・・それが、ウォルターと連絡が取れなくなってしまったんだ・・・。モンスターに襲撃される少し前までは、確かに僕の船に乗っていたんだが・・・。彼は・・・ウォルターは無事だろうか・・・」
不意のモンスターの襲撃により、何隻か船底に穴を開けられ沈没させられてしまったようで、海に落ちた船員を全員は救出することが出来なかったそうだ。咄嗟に起きた襲撃に、臨機応変に対応していた人物の中にそのウォルターもいたのだ。
「海に落ちてしまっては・・・。時間が空いていなければアシュトンに探してもらうことも出来ただろうが・・・。それに今は探している余裕などない・・・すまん、アンスティス・・・」
「わ・・・分かってる。計画を優先しよう・・・。油断したのは僕だ。責任は僕にある・・・」
デイヴィスは、アンスティスがこのまま自責の念を抱え込んでしまうのではないかと、励ましの言葉をかけるが彼の心に届いているかどうかまでは分からなかった。
二人が話し込んでいる内に、先程の海域からの爆発音はすっかり聞こえなくなっていた。アシュトンがモンスターの群れを一掃してくれたのだろう。既にシンプソンの海賊船がアシュトンの元へと向かい、様子を見に行ってくれていた。
島に降り立ったデイヴィスが中々戻らぬことに、心配したシンが船から現れ声を掛ける。手を上げて、催促するシンにもう直ぐ戻ると返事を返す。お前も一緒にどうだと、、デイヴィスはシンが顔を覗かせた船の方を指差す。
だが、慣れぬ人は苦手だと言い、アンスティスは自分の船で向かうと答える。話を中断し、今はアシュトンとの合流を急ごうと、双方の意見が合致する。二人はそれぞれの船へと足早に戻る。
もしかしたら、アシュトンから海の中の様子を聞き、ウォルターの行方の手掛かりが得られるかも知れない。僅かな希望を胸に戻るアンスティスと、漸く必要な戦力を揃えることに成功したデイヴィスは、アシュトンの一味が無事であることを祈りながらシン達の元へと戻った。
船につくと、当然ながら島で何をしていたのかと問われる。デイヴィスは何を隠す訳でもなく、アンスティスとの会話の内容を彼らに話した。普段水深の深いところにいる筈のモンスターらが、何故海面のアンスティスを襲ったのか。
何か原因があったのではないかと、アンスティスに尋ねたこと。彼の船から薬品が無くなったこと。行方が分からなくなってしまった船員のこと。数隻、船を沈められたことを簡潔に連ね、説明する。
しかし、彼らがそれ以上に気になった事は、アンスティスの海賊旗についてだった。注射器のような物が描かれた彼の海賊旗。髑髏と相反する治療器具から、その海賊団が治療や回復に特化した船団であるか、或いは薬物をもって相手を死に至らしめる海賊なのか、その二択で彼らの中の答えは纏まっていたようだ。
彼らのお察しの通りだと言った様子で、デイヴィスは口角を上げ鼻から息をする。共に行動する仲間であれば隠す必要もなかろうと、デイヴィスは彼らにアンスティス海賊団のことを話す。
アンスティスのクラスは、“ファーマシスト“と呼ばれるクラス。つまりは薬剤師のクラス。ファンタジーの世界とはいえど、回復や治療の手段が魔法によるものだけではないのだ。
彼らのように薬物による治療や、ステータスの強化。中には一時的に常軌を逸した力を得るバフ効果を与えることも出来るファーマシスト。アンスティス海賊団は、そういった能力に長けた者が多く乗り合わせている海賊団なのだ。
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