World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
478 / 1,646

仲介者ウォルター

しおりを挟む
 エイヴリーの用意した兵器が必要なエネルギーを集め終わり、発射の準備が整う少し前。キングの船団の元へ向かうロバーツの船団を見送ったフィリップス海賊団。

 彼の船団では、キング暗殺計画を実行する為にロバーツの様に前線へ向かうべきだと主張する者達と、計画を中止しレイド戦の戦地まで辿り着いて海賊達と協力し、この状況を乗り切るべきだと主張する者達で意見が割れ、内部崩壊を起こしかけていた。

 フィリップス海賊団の混乱を心配したロバーツが、少しでも多くの同胞達を説得させる為に、彼等の元へウォルターを向かわせていた。ロバーツの船を離れた彼は、恩人であるロバーツの指示通りフィリップス海賊団の元へ向かう。

 デイヴィス海賊団解散後、アンスティスの海賊船でキャリアを積み自分の海賊団を持ったフィリップスは、その頭角を見せ始めみるみる内に大きな海賊団へと成長していった。

 今ではロバーツの船団よりも大きくなり、多くの仲間を引き連れている。だがそれが災いとなったのか、人が多くなり過ぎたが故に、彼には船員達をまとめ上げるだけの力がなかったのだ。

 中には彼のやり方に不満を持っている者もいただろう。今が決別の時と、彼等は普段から募らせていた不満や溜め込んでいた思いをぶつけていた。

 ウォルターが到着した時には既に離反の動きが見えていた。急ぎフィリップスの船団から離れて行こうとする船団へ赴き、説得を試みるウォルター。しかし、彼等にしたらウォルターは部外者。フィリップス海賊団ではない彼に、聞く耳を持つものなどいるのだろうか。

 「船長、ロバーツの元からウォルターがやって来ている様です。今、離反していったモーティマーやアーチャー等の船団へ向かうのを確認しました」

 「ウォルターが?・・・何故奴がロバーツの元に居たんだ?アイツはアンスティスのとこの部下だろ。何か計画に変更でもあったのか?」

 フィリップス海賊団の船から、離反者達の船へと向かうウォルターを覗く男がいた。彼は“ジョン・ナット“。フィリップス海賊団で航海長を務める結成当初から居る古参の船員で、船長のフィリップスや船員からも信頼を集める人物。

 フィリップスとナットの会話で出てきた人物で“アーチャー“と呼ばれていた男、“ジョン・ローズ・アーチャー“はフィリップス海賊団で操舵手を務めていたが、彼が操舵手に任命された時、多くの船員から反対されていた。

 技術こそ優れていたものの、彼は他の者達から信用されていなかったのだ。それと言うのも、彼は元々別の海賊団に所属しており、フィリップスの噂を耳にしたことで、それまで居た海賊団に不満を持っていた彼は船団を抜け出し、フィリップスの元へとやって来た。

 しかし、それだけではアーチャーが信用されない理由にはならないだろう。元より海賊とは、各々様々な事情で海へと駆り出した烏合の衆に過ぎない。王国の騎士のように出自や経歴など関係ない彼等にとって、どこの海賊団に居たのかなど取るに足らない事情だ。

 問題は彼が所属していた海賊団そのものにある。アーチャーが嘗て居た海賊団と言うのが、その界隈でも特に悪名高く極悪であった“エドワード・ティーチ“と言う海賊の船だったのだ。

 自身の部下に対しても非道だったティーチは、船を降りようとする者を許さなかった。運よく逃げられたとしても、二度と海に近づけない程に恐ろしい目に遭わされるのだという噂があるくらいだった。

 そんな中で、何事もなくティーチの海賊船を抜け出し、別の船で海賊をやっているアーチャーを信用しろと言う方が難しい。ましてや頭角を表し始めたフィリップスの元へやって来たとあらば、刺客やスパイである可能性も十分にあり得る。

 バッシングを受ける逆境の中で、アーチャーはフィリップス一味の信用を得る為、ただ黙々と言われたことをこなし、その技術を証明していった。中には彼のそんな姿を見て、信用する者や慕う者も徐々に増え始める。

 アーチャーは自分を信じてくれた者達を大事にし、優先する。そんな彼等がキング暗殺計画に反対し、危険な目に遭いたくないと言えば、アーチャーは彼らの為にフィリップス海賊団を離脱する覚悟があった。

 彼にとって幸いだったのは、計画に対する意思の対立で、離反しようという者が他にも居たと言うことにある。アーチャーとその部隊の者達だけでは、とても離反など出来なかったかもしれない。

 フィリップス海賊団を離反した部隊はもう一組。それがナットの口にしていたもう一人の人物で、その名を“ロバート・モーティマー“と言う。彼も日頃からフィリップスのやり方に不満を持っており、元々キング暗殺計画には反対していた。

 そんな彼の反対を押し切られ、実行へ向けて準備を進めたことが更に彼の不満を募らせることとなってしまう。想定外のレイド戦のモンスターに、計画自体に支障があるとなれば、彼等が離反しない理由はない。

 こうしてアーチャーとモーティマーの部隊は、フィリップス海賊団を離脱しキング暗殺計画から降りていった。別の海賊達と協力し、この窮地を乗り越えようと舵を切る。

 そんな彼等の元へ向かったウォルター。その様子を見送りながら、先にキングの船団に近づく為に向かったロバーツの後を追う、フィリップス海賊団。

 しかし、ここでフィリップス達にとって予想外の展開が起こるのだ。そしてそれをやってのけたのは、ロバーツが命を救ったアンスティスの腹心であるウォルターその人だった。

 彼がアーチャー等の船団に乗り込むと、離れていく船は一時動きを止める。そして暫くすると、何と彼等の船が引き返してフィリップス海賊団の方へ戻って来たのだ。

 「せッ・・・船長!アーチャーやモーティマー等の船団が戻ってきます!」

 「な・・・何だとッ!?奴らを説得出来たとでも言うのか・・・?」

 ウォルターはロバーツに言われた通り、フィリップス海賊団の仲介役を務め、見事離反を阻止し、予定通りの戦力でキング暗殺計画を進める役目を果たしてみせたのだ。彼がどのような方法でアーチャー等を説得してのかは、彼等しか知らない。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

処理中です...