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神代 コウ

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勝敗を分ける前線へ

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 キング襲撃の裏側では依然、他の海賊達によるリヴァイアサン討伐は続いていた。エイヴリー海賊団の戦力を主軸に、マクシムやロイクらと行動を共にすることにしたシャーロット。

 頭部の相手を請け負っている彼らは、ダメージを最も稼いでいる反面、各所で戦いが行われる海域の中でも、特に危険な戦場と化していた。

 頭部以外の戦場では、主に体当たりや巨体が動く度に起こる大波、そして戦場を泳ぎ回る小型のモンスターの相手をしているようだ。狙うべき的は大きいが、それを邪魔する波とモンスターのせいで、思い通りにことが運んでいないようだった。

 「おい、どうする?点数を稼ぐなら、頭部と戦っているエイヴリーに合流するのがいいと思うが・・・」

 ツバキはシン達に提案した。実際に戦うのは彼らだ。ツバキには戦闘ではなく船の操縦をしてもらわなければならない。ツクヨも操縦には慣れてきたが、流石にツバキ程の操縦技術は身に付いていない。

 視線の先には、明らかに他のところとは違う風景が広がっている。けたたましい咆哮をあげる大口と、まるで周囲の海水が生き物のように動き、エイヴリーの船団を襲っていた。

 とてもこの小さな船で、凌ぎ切れるとは思えない戦場だ。ツバキが提案をしたのは良いものの、後に続く言葉を渋った理由は、恐らくそこにある。シンやミアも、前方に広がる光景を見れば一目瞭然だった。

 「だがあれでは・・・。点数稼ぎも大事だろうが、生き残るのが最優先だと思うがな・・・?」

 ミアがツバキの心配事を代弁し、口に出した。すると意外なことに、ツバキは笑みを浮かべた。ツバキへの負担を心配する彼らを尻目に、操縦桿を握る少年は、逆に彼らを煽るように言葉を返した。

 「船の心配してんのか?それなら問題ねぇよ。それよりも・・・俺はアンタらの方が心配だぜぇ・・・。船から振り落とされちまうんじゃねぇかってなぁ~」

 「端から突っ込むき満々って訳か・・・。アタシは構わねぇが・・・。二人はどうだ?」

 どうにもミアとツバキは、血の気の多いところがそっくりだ。元よりツバキは、少しでもこのレースで活躍しなければならない。その為にも純粋にポイントを稼ぎ順位を上げたいと思うのは、自然なことだろう。

 そしてミアが強気に出ているのは、何か自信に繋がるものがあるのだろうか。レースに参加して以来ごたごたが続き、まともに共闘する機会がなかったシン達。

 連携を取るにしても、ある程度互いに手の内の割れているシンとツクヨしか出来ない。そして何より、二人とも遠距離攻撃には乏しい近接のクラスであることが、シンとツクヨの不安を煽る。

 「振り落とされないことに関しては大丈夫だが・・・。しかし、俺達にはあんな大型モンスターと戦う手段がないぞ!?」

 シンとツクヨが顔を見合わせ、互いに同じ考えであることを確認する。すると、今度はミアが鼻で笑い、船内に積まれたツバキの作品を指差し、二人の
戦い方を示す。

 「何言ってんだ。アタシに銃があるように、お前達にはアタシに無い“技術“があるだろう?」

 彼女が指差す先にあったのは、ツクヨが戻った外から戻った際に積み込んだ、ツバキのボードだった。思い返せば、ミアがそのボードに乗ったところを二人とも見たことがない。

 だが、あの荒れ狂う海上でアレに乗れと言うのだろうか。確かにロッシュやロロネーとの戦いの中で、操作技術は上達したが、あそこまで酷い環境下で乗るのは二人とも初めてだった。

 「おいおい!正気かい!?君もあの光景を見たろ?あんなに荒れてる中で乗れると思う!?」

 「そう・・・。じゃぁ船の中でゆっくり睡眠でも取ってると良い。目が覚めた時には、事態が変わってるだろうからさ」

 怖気ずくような言葉を吐き出すツクヨに、ミアは突っぱねるように冷たい言葉をかける。しかし、ミアには分かっていた。皆が命懸けで戦っている中、呑気にしていられるというのなら初めから共に行動を共にしていない事を。

 助けを求めるようにツクヨがシンの方を振り返る。だが、シンは諦めるしかないと言った様子で、両手を上げながら首を振っている。

 「分かってるくせに・・・。意地悪だな、ホント」

 彼らの決意が固まると、一行は最前線で戦うエイヴリー海賊団の元へと向かって行った。

 そしてその最前線では、レールガンの再装填を図るエイヴリーと、それを阻止せんとするリヴァイアサンの攻防が繰り広げられていた。最も効果的と思われるレールガンによる攻撃を、何としても成功させようと、ロイクの竜騎士隊が群がる小型モンスターを相手にする。

 リヴァイアサンの周りに、触手のように巻き上がる水の柱を、ロイクのドラゴンに乗ったマクシムとシャーロットが食い止める。最も警戒すべきは、リヴァイアサンのその大口から放たれる、水圧カッターのようなブレスだった。

 如何にシャーロットの凍結させる能力を持ってしても、水圧の勢いと高密度の魔力によって、瞬間冷凍は勿論のこと、軌道すら変えることも出来ない。

 ならば一体、これまでどうやって防いできていたのか。それはマクシムによる鋼糸のワイヤーで、リヴァイアサンの頭部を傾けることによって、レールガンの積まれた船だけには当てさせないようにしていたからだった。

 黒コートの男により、大幅な弱体化を受けたリヴァイアサンには、かつての超再生能力は無くなったが、それでも体表を打ち破るのは一苦労する。そして戦闘が長引けば長引くほど、人間達は魔力や体力を消耗し、初めの時のような勢いは失われていった。

 「マズイな・・・。攻撃が喰らっているのは、目に見えて分かってきたが・・・。討伐が先か、こっちがへばるのが先か・・・。シャーロット、アンタはどうだ?」

 後ろに乗せたシャーロットへ、残りの力はどのくらい残っているのか尋ねるマクシム。彼女のサポートは、攻める時にも守る時にも重要な役割を担っている。それが途絶えてしまえば、戦況は一気に傾くこととなるだろう。

 攻め時を見誤らぬよう、シャーロットの残り戦力を把握しておきたかったのだ。だが、彼女から帰ってくる言葉に、これまでの力強さはなくなっていた。

 「誰にものを言っている・・・。まだ、こんなところでは終わらぬぞ・・・」

 言葉とは裏腹に、かなり息の上がった様子のシャーロット。このままではジリ貧になりかねない。チャンスを見つけて一気に畳み掛けるしかない。しかし、そのきっかけが中々訪れぬまま、次のレールガンによる砲撃の準備が完了しようとしていた。
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