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強かな女王
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相性の関係上、結果は既に見えている。しかし、そんな相手から勝負を挑まれたのなら、相手をしない訳にはいかない。逆境を覆そうというシャーロットの強い意志に心打たれたジャウカーン。
自らも自分の置かれた環境に争ってきたジャウカーン。無謀な戦いに笑って身を投じる者の粋な心を無碍には出来ない。
ゴールを目の前にして急停止したジャウカーン。船を旋回させ後ろを向くと、勢いを増して突っ込んでくるシャーロットを迎え撃つ。
炎によって熱しられた大気と、氷によって冷やされた大気がぶつかり合うと、周囲に先が見えなくなるほどの煙幕のような蒸気が巻き起こり広がる。それは二人だけに留まらず、彼らを追っていたロイクの竜騎士隊や先を行くエイヴリー海賊団の船団すらも飲み込む程だった。
爆風の余波はシン達のいる会場にまで届き、突風を巻き起こした。距離があったため会場への被害はないが、海賊達の戦いを肌身に感じた観客達が大いに盛り上がり歓声を上げる。
蒸気はしばらくの間その場に留まり、中の様子は外からでは確認出来ない。一隻残らず飲み込んだ蒸気の中から、僅かに人の声のようなものが薄らと聞こえる。
すると、白い靄の中に幾つかのシルエットが浮かび上がる。先に蒸気を抜けて来たのは、先陣を切っていたエイヴリー海賊団の船だった。だが、彼らの海賊船を絡め取るよう海が凍り始める。
氷塊を砕きつつも、徐々に速度を落とし始めたエイヴリーの船団。しかし、咄嗟に何隻かの船を再び一つの船へと合成させ大きな砕氷船へと姿を変える。当然のように状況に応じた形態へと変形させたのはエイヴリーの能力。そして彼に砕氷船のクラフトを提案したのは、エイヴリー海賊団の頭脳でもあるアルマンだった。
だが、全ての船を砕氷船に変えることは出来ず、残りの船は何隻か氷に足を取られてしまっていた。
「氷は我々が砕く!動ける船は後に続けぇッ!」
大地を割くように進むエイヴリー海賊団の本船。氷漬けになり動きを封じらる船を残し、数隻の海賊船が大きな氷塊にぶつかりながらも先陣の後を必死に追いかける。
しかし、氷塊はそう簡単に彼らの進軍を許さなかった。砕かれた氷塊の間から漏れ出した海水が、再び凄まじい勢いで氷へと変わり、より強固で歪な氷の馬防柵のようなものを作り上げた。
先へと進む船の船体に、氷の杭が突き刺さりいく手を阻む。まさに茨の道を海上に作り上げたのだ。そしてそんな芸当ができる人間など、この場に一人しかいない。
エイヴリー海賊団の船に紛れ蒸気を抜け出したのは、シャーロットの乗る氷の馬車だった。
「何ッ!?ジャウカーンやロイクの竜騎士隊はどうした?」
ここに来て怒涛の追い上げを見せるシャーロット。蒸気の中からエイヴリーや彼女に続く者は現れない。中で一体何が起きているのか。それとも一瞬にして勝負がついてしまったとでも言うのだろうか。
蒸気のせいで戦況の大半が飲み込まれる中、ゴールとは反対の蒸気の向こう側で、炎を纏った一隻の小型船が勢いよく飛び出してくる。その奇妙な構造をした船体は、ジャウカーンのものと見て間違いない。
しかし、彼は何故後方から飛び出してきたのか。無論、蒸気によって視界を奪われたということもあるが、熱量を感じ取る彼が真逆の温度を放つシャーロットを見失うものだろうか。
それもこれも、シャーロットの能力による仕業だった。血海を抜けた時点で、先行する海賊団を把握していた彼女は、その中にジャウカーンがいることにも気がついていた。あれだけ派手な移動をしていれば、否が応にも目立つというもの。
端から彼に狙いを定めていたシャーロットは、少し挑発すれば乗って来るだろうと踏んでいた。こうなることを予期していた彼女は、蒸気の中でとある細工をしていた。
視界を奪われた蒸気の中では音が反響し、方向感覚を見失わせていた。後方に飛び出したジャウカーンも、直進しているつもりであっても実際の方向とは異なり、熱や音も在らぬ方向から反響し伝わっていた。
「あぁ?何だ、どこ行きやがった!?」
周囲を見渡すも、シャーロットの姿はない。それどころか前方にいた筈のエイヴリー海賊団の船すら見当たらない。それまで見えていたゴールの海岸がなくなっていることから、自身が後退し蒸気から抜け出たことを悟る。
だが、ジャウカーンにとって重要なのはそんなことではない。まんまと彼女に乗せられ利用されたことに気づくと、すぐに旋回し反転すると蒸気を迂回し、先に向かったであろうシャーロットを追いかける。
「やってくれたなッ・・・。これだから女って奴ぁッ・・・!」
「あの男ではシャーロットを止められ何だか・・・。だが足場が悪いのは相手も同じこと。このまま氷を砕いて進み、砲撃で彼女の前方の氷を砕き、進路を塞ぐのが得策かと・・・」
互いに相殺し合ってくれるかと思っていたアルマンだったが、シャーロットはジャウカーンを相手にすることなく、ゴールだけを目指していた。想定外の行動ではあったが、このまま砕氷船で進み氷を砕けばシャーロットの行くても拒めると進言する。
「あの女が、そう簡単に止まるとは思えねぇが・・・。今はそれしかねぇようだ」
レース上位を飾って来たのは確かにエイヴリーやキング、そしてチン・シー海賊団だったが、何も彼らだけがずば抜けて実力がある訳ではない。単純に順位や人数に隠れ目立たないだけで、彼らに匹敵する実力の持ち主も存在する。
エイヴリーはシャーロットの実力を高く買っており、それを危惧していた。
自らも自分の置かれた環境に争ってきたジャウカーン。無謀な戦いに笑って身を投じる者の粋な心を無碍には出来ない。
ゴールを目の前にして急停止したジャウカーン。船を旋回させ後ろを向くと、勢いを増して突っ込んでくるシャーロットを迎え撃つ。
炎によって熱しられた大気と、氷によって冷やされた大気がぶつかり合うと、周囲に先が見えなくなるほどの煙幕のような蒸気が巻き起こり広がる。それは二人だけに留まらず、彼らを追っていたロイクの竜騎士隊や先を行くエイヴリー海賊団の船団すらも飲み込む程だった。
爆風の余波はシン達のいる会場にまで届き、突風を巻き起こした。距離があったため会場への被害はないが、海賊達の戦いを肌身に感じた観客達が大いに盛り上がり歓声を上げる。
蒸気はしばらくの間その場に留まり、中の様子は外からでは確認出来ない。一隻残らず飲み込んだ蒸気の中から、僅かに人の声のようなものが薄らと聞こえる。
すると、白い靄の中に幾つかのシルエットが浮かび上がる。先に蒸気を抜けて来たのは、先陣を切っていたエイヴリー海賊団の船だった。だが、彼らの海賊船を絡め取るよう海が凍り始める。
氷塊を砕きつつも、徐々に速度を落とし始めたエイヴリーの船団。しかし、咄嗟に何隻かの船を再び一つの船へと合成させ大きな砕氷船へと姿を変える。当然のように状況に応じた形態へと変形させたのはエイヴリーの能力。そして彼に砕氷船のクラフトを提案したのは、エイヴリー海賊団の頭脳でもあるアルマンだった。
だが、全ての船を砕氷船に変えることは出来ず、残りの船は何隻か氷に足を取られてしまっていた。
「氷は我々が砕く!動ける船は後に続けぇッ!」
大地を割くように進むエイヴリー海賊団の本船。氷漬けになり動きを封じらる船を残し、数隻の海賊船が大きな氷塊にぶつかりながらも先陣の後を必死に追いかける。
しかし、氷塊はそう簡単に彼らの進軍を許さなかった。砕かれた氷塊の間から漏れ出した海水が、再び凄まじい勢いで氷へと変わり、より強固で歪な氷の馬防柵のようなものを作り上げた。
先へと進む船の船体に、氷の杭が突き刺さりいく手を阻む。まさに茨の道を海上に作り上げたのだ。そしてそんな芸当ができる人間など、この場に一人しかいない。
エイヴリー海賊団の船に紛れ蒸気を抜け出したのは、シャーロットの乗る氷の馬車だった。
「何ッ!?ジャウカーンやロイクの竜騎士隊はどうした?」
ここに来て怒涛の追い上げを見せるシャーロット。蒸気の中からエイヴリーや彼女に続く者は現れない。中で一体何が起きているのか。それとも一瞬にして勝負がついてしまったとでも言うのだろうか。
蒸気のせいで戦況の大半が飲み込まれる中、ゴールとは反対の蒸気の向こう側で、炎を纏った一隻の小型船が勢いよく飛び出してくる。その奇妙な構造をした船体は、ジャウカーンのものと見て間違いない。
しかし、彼は何故後方から飛び出してきたのか。無論、蒸気によって視界を奪われたということもあるが、熱量を感じ取る彼が真逆の温度を放つシャーロットを見失うものだろうか。
それもこれも、シャーロットの能力による仕業だった。血海を抜けた時点で、先行する海賊団を把握していた彼女は、その中にジャウカーンがいることにも気がついていた。あれだけ派手な移動をしていれば、否が応にも目立つというもの。
端から彼に狙いを定めていたシャーロットは、少し挑発すれば乗って来るだろうと踏んでいた。こうなることを予期していた彼女は、蒸気の中でとある細工をしていた。
視界を奪われた蒸気の中では音が反響し、方向感覚を見失わせていた。後方に飛び出したジャウカーンも、直進しているつもりであっても実際の方向とは異なり、熱や音も在らぬ方向から反響し伝わっていた。
「あぁ?何だ、どこ行きやがった!?」
周囲を見渡すも、シャーロットの姿はない。それどころか前方にいた筈のエイヴリー海賊団の船すら見当たらない。それまで見えていたゴールの海岸がなくなっていることから、自身が後退し蒸気から抜け出たことを悟る。
だが、ジャウカーンにとって重要なのはそんなことではない。まんまと彼女に乗せられ利用されたことに気づくと、すぐに旋回し反転すると蒸気を迂回し、先に向かったであろうシャーロットを追いかける。
「やってくれたなッ・・・。これだから女って奴ぁッ・・・!」
「あの男ではシャーロットを止められ何だか・・・。だが足場が悪いのは相手も同じこと。このまま氷を砕いて進み、砲撃で彼女の前方の氷を砕き、進路を塞ぐのが得策かと・・・」
互いに相殺し合ってくれるかと思っていたアルマンだったが、シャーロットはジャウカーンを相手にすることなく、ゴールだけを目指していた。想定外の行動ではあったが、このまま砕氷船で進み氷を砕けばシャーロットの行くても拒めると進言する。
「あの女が、そう簡単に止まるとは思えねぇが・・・。今はそれしかねぇようだ」
レース上位を飾って来たのは確かにエイヴリーやキング、そしてチン・シー海賊団だったが、何も彼らだけがずば抜けて実力がある訳ではない。単純に順位や人数に隠れ目立たないだけで、彼らに匹敵する実力の持ち主も存在する。
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