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調査の対象
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「この少年、ヘラルトと言ったか?本当にその名で間違いないのか?」
白獅の口から出た言葉は、慎にとって意外だった。と、いうよりも信じられないといった様子だった。故にそれを聞いた時の慎は、思考の止まったまるで人形のように目を見開いて止まっていた。
「え?あ・・・あぁ、そうだけど・・・。どうして?」
「無いんだよ、彼のデータが。お前が転移しているというWoFの世界のデータベース上に・・・。つまり、存在していないんだ」
「ぇ・・・・・?」
その後に続く言葉が見つからない。頭が真っ白になるとはこういうことなのだろう。僅かな間だが旅を共にし、共に戦い、共に語らった人物、キャラクター、NPC。
今やその存在は不確かだが、確かにシン達はWoFの世界で彼の言葉を聞き、彼と触れ合い、確かにそこに彼はいた。
ではあの時の音や感触とは一体何だったのか。あれらが全て“無かったもの“とは思えなかった。
「これは妙だな・・・。確かに俺達もその少年の存在は、お前の映像データから確認している。だが、それが存在しないとはどういうことだ?」
白獅の言う通り、シン達だけでなく今ここにいる白獅らも、シンの映像データからその目で見ている。存在しない筈はない。
「幾つか候補はあるだろうが、有力なものをあげるのであれば・・・。黒いコートの男が作り出した、あの大穴に飲まれたことで存在ごと消滅してしまったのか。元より“ヘラルト“などという人物など存在していなかったのか。或いはこの映像自体、何者かによって偽造されたものなのか・・・」
彼は“何者か“と言っていたが、恐らくそこに当てはまるのは彼らにとっても慎達にとっても、全ての謎の根源とも言うべき黒いコートの者達のことだろう。
可能性としてゼロではないのが、慎が現実世界に帰って来て唯一出会った部外者である出雲明庵もその候補者に上がるだろう。彼がそのようなことをするとは思えないが、調べておこなければならない事には変わりない。
それに、事件現場にて現実世界に現れている異変について探っていると言うこともあるので、彼が何処まで知っているのか、どうやって探る手段を手に入れたのか。
今後、アサシンギルドにどのように関与するのかも含め、調査しておく必要がある。
「偽造・・・。俺がいない間に俺のデータをいじることが出来るのか!?」
もしそうだとするならばと、考えるだけでゾッとする。これまで自分が過ごした日々や記憶が、知らない何者かに弄られているなど想像もしなければ考えたこともない。
誰かにとって都合のいいようにすげ替えられた世界。もしそれが慎だけではなく、多くの人間を対象としたものならば・・・。だが、そんな不安を払拭するように白獅が続ける。
「いや、それはない。あちらの世界へ行っている間のお前のデータへはアクセス出来ないようだ」
「ようだって・・・。もしかして、試みたのか?」
慎の驚きと心配の入り混じった表情を見ながら、人の知りたいという好奇心は時にして歯止めが効かなくなるものだと、それらしいことを口にしながら白獅は笑った。
「どうやらお前達WoFのユーザーがあちらの世界へ行っている間、そのアクセス権限は本人にのみ有効になっているらしい。当然と言えば当然だな。だが、お前に渡したオーブのように本人とリンクさせたものであれば、外部からの連絡も可能だ」
WoFにログインしているユーザー同士や、運営からのお知らせ等による連絡手段は、システム上設けられているが、現実世界からの呼び出しに関しては、実際気付きづらいところではある。
それを可能にし補助しているのが、白獅のチュルプ・オーブというわけだ。ユーザーを補助しながら、WoFの世界の映像データを収集し、情報を集めている。
彼らが元の世界へ戻るための手がかりも、その研究から現実世界だけでなくWoFの世界にも関係しているかも知れないのだ、
それぞれの世界からやって来たという彼らが一丸となるのも、元の自分の人生を取り戻すためということで合致しているからなのだった。
白獅の口から出た言葉は、慎にとって意外だった。と、いうよりも信じられないといった様子だった。故にそれを聞いた時の慎は、思考の止まったまるで人形のように目を見開いて止まっていた。
「え?あ・・・あぁ、そうだけど・・・。どうして?」
「無いんだよ、彼のデータが。お前が転移しているというWoFの世界のデータベース上に・・・。つまり、存在していないんだ」
「ぇ・・・・・?」
その後に続く言葉が見つからない。頭が真っ白になるとはこういうことなのだろう。僅かな間だが旅を共にし、共に戦い、共に語らった人物、キャラクター、NPC。
今やその存在は不確かだが、確かにシン達はWoFの世界で彼の言葉を聞き、彼と触れ合い、確かにそこに彼はいた。
ではあの時の音や感触とは一体何だったのか。あれらが全て“無かったもの“とは思えなかった。
「これは妙だな・・・。確かに俺達もその少年の存在は、お前の映像データから確認している。だが、それが存在しないとはどういうことだ?」
白獅の言う通り、シン達だけでなく今ここにいる白獅らも、シンの映像データからその目で見ている。存在しない筈はない。
「幾つか候補はあるだろうが、有力なものをあげるのであれば・・・。黒いコートの男が作り出した、あの大穴に飲まれたことで存在ごと消滅してしまったのか。元より“ヘラルト“などという人物など存在していなかったのか。或いはこの映像自体、何者かによって偽造されたものなのか・・・」
彼は“何者か“と言っていたが、恐らくそこに当てはまるのは彼らにとっても慎達にとっても、全ての謎の根源とも言うべき黒いコートの者達のことだろう。
可能性としてゼロではないのが、慎が現実世界に帰って来て唯一出会った部外者である出雲明庵もその候補者に上がるだろう。彼がそのようなことをするとは思えないが、調べておこなければならない事には変わりない。
それに、事件現場にて現実世界に現れている異変について探っていると言うこともあるので、彼が何処まで知っているのか、どうやって探る手段を手に入れたのか。
今後、アサシンギルドにどのように関与するのかも含め、調査しておく必要がある。
「偽造・・・。俺がいない間に俺のデータをいじることが出来るのか!?」
もしそうだとするならばと、考えるだけでゾッとする。これまで自分が過ごした日々や記憶が、知らない何者かに弄られているなど想像もしなければ考えたこともない。
誰かにとって都合のいいようにすげ替えられた世界。もしそれが慎だけではなく、多くの人間を対象としたものならば・・・。だが、そんな不安を払拭するように白獅が続ける。
「いや、それはない。あちらの世界へ行っている間のお前のデータへはアクセス出来ないようだ」
「ようだって・・・。もしかして、試みたのか?」
慎の驚きと心配の入り混じった表情を見ながら、人の知りたいという好奇心は時にして歯止めが効かなくなるものだと、それらしいことを口にしながら白獅は笑った。
「どうやらお前達WoFのユーザーがあちらの世界へ行っている間、そのアクセス権限は本人にのみ有効になっているらしい。当然と言えば当然だな。だが、お前に渡したオーブのように本人とリンクさせたものであれば、外部からの連絡も可能だ」
WoFにログインしているユーザー同士や、運営からのお知らせ等による連絡手段は、システム上設けられているが、現実世界からの呼び出しに関しては、実際気付きづらいところではある。
それを可能にし補助しているのが、白獅のチュルプ・オーブというわけだ。ユーザーを補助しながら、WoFの世界の映像データを収集し、情報を集めている。
彼らが元の世界へ戻るための手がかりも、その研究から現実世界だけでなくWoFの世界にも関係しているかも知れないのだ、
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