World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
695 / 1,646

頼りの能力

しおりを挟む
 大通りから外れ、ビル群の間を縫うように進んでいく。妙に人気のない道を選ぶことに違和感を感じたシンが、操縦席に座る朱影に質問をした。

 「なぁ、何でさっきからこんなに狭い道を?目立たない為か?」

 シンはまた、強い口調で罵られるような返答をされるのではないかと思っていたが、彼は意外にも落ち着いた様子で丁寧に答えてくれた。ただ、それはそれで不気味でもあった。

 これまで共に行動してきて、彼の気性の荒さは十分に分かったつもりでいた。それがこうも大人しいと、これからの行動にそれだけ慎重になっているのか。或いは電力施設へ向かうのは、それだけ困難なことなのだろうかと、シンの思考を働かせた。

 「まぁ、それもある。敵さんが俺らを追っているのは、高速の時点で嫌というほど分かったことだ。これから何かしでかそうって場所で、邪魔者を入れないようにしてない筈がないからな」

 彼らの命を狙う者達は、少数ではなくそれなりに頭数のある組織であると、白獅や朱影、それに瑜那も予想して動いている。その組織のアジトが東京にあるのかは分からないが、注目度の高い都心で何か事を起こそうとするのなら、それなりに準備はしてきている筈。

 電力を落とすことが、その作戦の一部でしかないにしても、それに釣られて集まる警察組織以外の者達を見逃すまいと、罠を張っている可能性は十分に考えられる。

 もしかしたら、相手側もシンや白獅らのようなアサシンギルド以外に、どんな敵が潜んでいるのか分かっていないのかもしれない。それならば、この騒ぎに集まる者達を見分ける為の罠としては、十分効果的なものであるのは確かだ。

 現にシン達は、警察や施設関係者による復旧作業を待っていられずに、こうして現地に訪れている。

 相手は復旧にどれだけ時間が掛かるかを計算してきているのだ。それが早く復旧されるようなことがあれば、自身らや警察などの現実世界の組織以外の存在が手を加えているのに他ならない。

 「俺達は、施設の裏口から侵入する」

 「それは・・・あの時のビルみたいに、俺達にしか見えない別の通路があるってことなのか?」

 シンの質問は最もなことだった。現実の世界に実在する扉を開けば、それは警察や施設の警備員の者達にも見られてしまう。

 かといって、シンが現実の世界に戻ってきた建物のように、見えざるアジトや通路のようなものがなければ、何もない空間をただ通るなんてことは出来ない。

 例外として、何らかのスキルによる移動であれば可能かもしれないが、シンの影を使う移動術は、目的地に自身の影の一部を送り込む必要がある為、初見の場所には移動出来ない。

 瑜那や宵命のように透過のスキルなら出来るのかもしれないが、果たして本人達以外の者に付与できるような利便性のあるものであるのかは、この段階のシンには分からないことだ。

 「いや、それとは少し違う。あくまで移動するのは、本物の通路だ。だからこいつらの透過が必要って訳だ」

 「透過は俺達も可能なのか?」

 「残念ながらそんなに都合のいい代物じゃぁねぇ。だろ?」

 そう言って少年に話を振った男は、シンに答えてやれと言っているかのような視線を向けていた。少年らのスキルについては、話に聞いたし実際にも目にする機会はあった。

 だが、その実際の能力や効果について詳しくは知らない。どこまでの範囲で対象となる人物や物は何なのか。これから隠密の潜入を行うのであれば、主力となる彼の能力を知らないままにはしておけないだろう。

 「え・・・?まぁ、そうっスね。何でもかんでもって訳には・・・」

 普段とは違い、勢いのない返答に驚いた表情を浮かべるシン。一体何が彼を落ちこましているのかと思ったが、宵命の視線の先を見て、直ぐにその原因が分かった。

 彼は瑜那が心配だったのだ。呼吸はあるものの、高速道路にいた時と比べやや汗をかいているようだ。病や怪我というものは、素人には全く分からないものであるが為、この症状が危険な状態であるのか問題ない症状であるのか、全く予想がつかない。

 せめて、朱影が言っていたようなWoFの回復アイテムが入手できれば、少しは安心できるのだが。

 「・・・まぁ、心配っちゃぁ心配か。だが、もう少しで目的の場所に着く。そしたら施設までの道中で、モンスターの数体でも狩ってアイテムが落ちるのを期待するしかねぇな。最優先は電力の復旧だ、いいな?」

 宵命もそれは重々承知の上のようだ。いつもの元気はないが、黙って朱影の言葉に頭を縦に振った。

 うねうねと路地を進んだ先で、シン達を乗せた車が止まる。だが、そこには施設と呼べるような建物は見えない。何処かに裏道や抜け道でもあるのだろうか。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

処理中です...