World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
767 / 1,646

トドメの一撃

しおりを挟む
 自身の想定していた場所とは違ったところから飛び出し、周囲の景色の違いに困惑するシン。周囲を見渡し、目標であったにぃなと少女を探す。すると、移動する前の場所よりかは近づいていたが、狙い通りリザードの先回りをすることは出来なかった。

 距離的にはリザードが有利。全力で向かえばシンも追いつけるかもしれない。今は兎に角考えてる暇はないと、影から抜け出した彼は身体に鞭を打ち走り出す。

 「にぃなッ!リザードが来てる!!」

 「分かってる・・・。でも・・・もう少しなんだッ!」

 彼女の必死の回復により、吹き飛ばされた衝撃で気を失っていた少女が目を覚まし、にぃな越しに見えるリザードの姿を見て目が覚めたように瞳孔を開く。

 既にリザードは戟を背中の方にまで捻り、攻撃の為の準備段階に入っている。普通に振るうよりも勢いが増している分、その威力は絶大だろう。

 少女は咄嗟ににぃなの身体を、倒れる自分の身体の方へ引き寄せ、上下を逆転する。そして、四つん這いの状態でにぃなに覆い被さるような体勢になったところで、リザードの強烈な一撃が振われた。

 「ッ・・・!!」

 激しく鳴り響いた金属音。僅かに間に合わなかったシンには、少女の鎧が両断される一撃のように見えていた。

 リザードは振り抜いた一撃のまま、動きを止めている。そしてその下にいるにぃなと少女も動かない。

 まさか殺されてしまったのかと、その壮絶な光景に言葉が出てこない。全ての役者が時を止められたかのように静止する中、シンは肝心なことに気がついた。

 攻撃を受けたと思われていた少女の周りには、血液のような液体が一切見受けられない。つまり、どういう訳か少女らはリザードの一撃を防げたようだった。

 にぃなに覆い被さるように四つん這いになった少女の片腕は、肩の方へと伸びており、その手には剣が握られていた。間一髪のところで少女は、肩の後ろに手を回し、そこで彼女の武器である剣を出現させていたのだ。

 剣を取り出してから防御体勢に入るよりも、ずっと効率的で素早い判断だった。彼女がいつの間にそこまで、現実世界での戦闘に慣れたのかは分からないが、シンの胸の中にある大きな靄は消え去った。

 安堵して思わず止めていた息を大きく吐き出すシン。すぐに気を引き締め、リザードの背後から攻撃を狙う。

 リザードの一撃を防いだ少女は、そのまま横に身体を回転させながら体勢を反転させると、その勢いのまま片膝をつき剣を振るう。

 だがリザードは少女の剣を、クルクルと回して持ち替えた戟によって地面に突き刺し固定する。すると、反対の手で拳を握り、両手で剣を握る少女の顔面目掛けて拳を振るった。

 しかし、リザードの拳は少女の眼前で止まる。シンのスキルによって影が繋がれ、一瞬動きが鈍っていたのだ。すぐに影は切り離されたが、その隙に拳の軌道上から逃れた少女。

 影が離れたと同時に動き出したリザードの拳は、地面に命中し周囲にヒビを入れる程の威力であったことは刻んだ。少女は怯むことなく立ち上がり、地面に突き刺さるリザードの腕へ足を絡め、絞め技を腕にキメる。

 「ぅぉぉおおらあああッ!!」

 にぃなの掛けていたステータス上昇の魔法が活きる。通常の彼女の力では、変異種のリザードを押さえつける事は不可能だった。だが、今の彼女は僅かにリザードを押さえつけられるだけの力を得ていた。

 身動きが取れなくなるリザードに、背後から接近していたシンが飛びかかる。締められている反対の腕で戟を振おうとするが、シンによってその腕は蹴り飛ばされる。

 リザードの腕を足場として、真上に飛び上がったシンは身体を回転しながら落下し、渾身の投擲をリザードの首裏に投げはなった。

 まるで大砲かのような勢いで放たれた短剣は、リザードの首を貫通して地面に突き刺さる。人の身体に流れる血液とは違った色の液体を撒き散らし、これまでに見ないほどのダメージを伺わせた。

 これは致命的な一撃になっただろうと、その場の誰もが思っていた。しかし、変異種のリザードは蹌踉めきながらもぽっかりと空いた喉の傷痕を覆いながら、武器を手放しフラフラと歩いている。

 「まだ消えていないッ・・・!?トドメを刺さないとッ!」

 着地したシンが声をあげてリザードの元へ駆けて行く。その声に少女も反応し、リザードの戟によって固定されていた剣を拾い上げ、シンの動きに合わせトドメを刺しにかかる。

 シンは飛び上がり上空から、少女は剣先を地面に擦らせ火花を散らしながらリザードに近づき、損傷した首に狙いを定める。リザードの頭部に逆立ちをするように片手をついたシンは、直に自身の影をリザードに送り込み拘束する。

 回復に手一杯になっていたリザードに、シンの影を解除している余裕などなかった。身動きを封じられたリザードは首を押さえたまま硬直し、少女の斬撃が押さえた腕ごと切り落とし首を刎ねた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

処理中です...