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少年の手助け
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再び勢いを取り戻したガレウスによって、次々に彼らを襲う獣達が宙へと舞う。しかし、その戦いぶりの節々に攻撃を躊躇うような挙動が見られる。自らを奮い立たせ、目の前のやるべき事に集中しようとするも、未だに幻覚を見ているのだろうか。
「よかった!元に戻った様だね!」
「どうかな・・・。アンタらには分からねぇかもしれねぇが、どうも本調子じゃない様だ。俺達からすれば、空回りしてるように見えるぜ。攻撃にいつものキレがねぇ・・・」
十分過ぎるほどに活躍してくれている様に見えたのは、ツクヨやミアだけだったようだ。言われてみれば、豪快に獣を投げ飛ばしていくガレウスだが、その実致命傷を与えるようなダメージにはなっていない。
まるで苛立ちを発散するかのように、見た目だけの大暴れとも見て取れる戦いの内容だったのだ。
「彼は何かに謝っていた・・・。心当たりは?」
「謝る?何にだ?」
「分からない。最初は独り言か敵に対してだと思ったけど、近づいて見たら明らかに近くにいる何かに謝ってるようだった・・・」
ガレウスの側近を務める獣人達にも、彼が何に対して謝っているのかは分からなかった。それもその筈。彼らはガレウスがアズール達のいる獣人族の群れに合流した後に出会った者達ばかり。
自らの汚点でもある過去を、ガレウスは彼らにも話したことはなかったのだろう。自身の弱みを隠し、“剛腕のガレウス“という力強い印象をその身に纏い、この獣人族の群れの中でのし上がってきた。
彼の強さに憧れてついて来る者も大勢いたことだろう。側近になった彼らもその内の一人だ。だからこそ、ガレウスのちょっとした変化にも気づけたのだ。
だが、戦いの中でここまで冷静さをかいたガレウスを初めて見たようで、彼らも動揺しているようだ。
そこへ、窮地を自らの発明品で乗り越えたツバキが、ツクヨやミアを追ってやって来た。彼の足には獣人達にも渡したガジェットが取り付けられており、まるで身軽なクラスの忍者や武闘家のような動きで、次々に木々を渡って来る。
地上で獣と戦うツクヨの姿を見つけた彼は、ガジェットにより強化された踏み込みで飛び出すと、背後からツクヨを狙う獣に対し少年が打ち出した技とは思えぬ威力の蹴りをお見舞いする。
「ッ・・・!!」
布都御魂剣の能力で何か小さな反応が近づいて来ていた事には気がついていたツクヨだったが、それがツバキだとまでは判断できなかった。対象の魔力や戦闘能力を、気性や潜在能力を可視化したオーラで判断する布都御魂剣の能力では、機械により本人の身体能力をアシストする能力の向上を読み取ることは出来ない。
故に、瞼の裏で見ていた光景に映る他の者達と比べて弱々しい反応のツバキが、彼らが苦戦する獣を一撃で吹き飛ばした事に驚きを隠せなかった。
「おいおい、しっかりしろよな」
「その声はッ・・・ツバキかい!?君、今のは・・・」
「そうか、ツクヨにこれ見せんのは初めてだったか。言ったろ?俺ぁ手先が器用なんだって。コイツがあれば俺だってお前らみたいに戦えんだぞ!?」
ツバキが発明を披露し、自ら戦闘を行ったのはオルレラの研究所での戦闘が初めてだった。ウィリアムの元で造船技師をしていた事で、世界中の様々な素材が海賊達の手によって持ち込まれた。
そこで見てきたウィリアムの技術や素材に対しての知識が、ツバキの発明を後押しし彼自身の強さへの憧れや発想力を実現する力となっていた。フォリーキャナルレースを経て、ツバキは武術の何たるかをハオランを見て学んだ。
その時のインスピレーションが、ツバキの“身体能力の底上げ“というものを手助けするガジェットを生み出したのかもしれない。
「何だぁ!?そのガキは!?」
「ガキじゃねぇ!助けに来てやった“仲間“だ!後で吠え面かくなよ?俺がアンタらの仲間を助けてやったんだって知ることになるぞ?」
「威勢のいいガキだ。だが、どうやら口だけではないらしい。戦力が増えるのはありがてぇ事だ!」
幻覚を振り払い戦闘に復帰したガレウスに加え、その側近の獣人二人とツクヨら人間の三人と全体の戦力が増し、獣達の猛攻を徐々に押し返し始める一行だったが、彼らに吹き飛ばされ物陰の奥へと飛ばされた獣の一部が、獣人族の肉体強化の性質を徐々に理解し始めたのか、身体の一部を強化して襲ってくる個体が現れ始めたのだ。
獣人族の気配の感知や、ツクヨの布都御魂剣の能力では、それほど大きな変化を戦いながら感知するのは難しいようで、実際に懐へ飛び込んで来て初めてその強化に押され始める。
「なッ・・・!?コイツ!!」
「妙に力強い奴が混じってるッ!?みんな!気をつけろ!強化された奴が混じってる!」
「強化だと!?コイツらいつの間に・・・!肉体強化してる奴ぁ止めたはずだろ!?」
「強化されてんのは一部だ。コイツら途中で強化を止められんのかぁ!?」
腕力を増して力押しを仕掛けてくる個体や、脚力を強化し素早い動きで翻弄する者など、獣達の強化は様々だった。故に対策が取りづらく、彼らを苦戦させる要因となっていた。
激しさの増す戦闘の中で、戦力は増たもののまだ経験の足りないツバキが、一瞬の隙を突かれ、一体の獣に捕まってしまう。
「よかった!元に戻った様だね!」
「どうかな・・・。アンタらには分からねぇかもしれねぇが、どうも本調子じゃない様だ。俺達からすれば、空回りしてるように見えるぜ。攻撃にいつものキレがねぇ・・・」
十分過ぎるほどに活躍してくれている様に見えたのは、ツクヨやミアだけだったようだ。言われてみれば、豪快に獣を投げ飛ばしていくガレウスだが、その実致命傷を与えるようなダメージにはなっていない。
まるで苛立ちを発散するかのように、見た目だけの大暴れとも見て取れる戦いの内容だったのだ。
「彼は何かに謝っていた・・・。心当たりは?」
「謝る?何にだ?」
「分からない。最初は独り言か敵に対してだと思ったけど、近づいて見たら明らかに近くにいる何かに謝ってるようだった・・・」
ガレウスの側近を務める獣人達にも、彼が何に対して謝っているのかは分からなかった。それもその筈。彼らはガレウスがアズール達のいる獣人族の群れに合流した後に出会った者達ばかり。
自らの汚点でもある過去を、ガレウスは彼らにも話したことはなかったのだろう。自身の弱みを隠し、“剛腕のガレウス“という力強い印象をその身に纏い、この獣人族の群れの中でのし上がってきた。
彼の強さに憧れてついて来る者も大勢いたことだろう。側近になった彼らもその内の一人だ。だからこそ、ガレウスのちょっとした変化にも気づけたのだ。
だが、戦いの中でここまで冷静さをかいたガレウスを初めて見たようで、彼らも動揺しているようだ。
そこへ、窮地を自らの発明品で乗り越えたツバキが、ツクヨやミアを追ってやって来た。彼の足には獣人達にも渡したガジェットが取り付けられており、まるで身軽なクラスの忍者や武闘家のような動きで、次々に木々を渡って来る。
地上で獣と戦うツクヨの姿を見つけた彼は、ガジェットにより強化された踏み込みで飛び出すと、背後からツクヨを狙う獣に対し少年が打ち出した技とは思えぬ威力の蹴りをお見舞いする。
「ッ・・・!!」
布都御魂剣の能力で何か小さな反応が近づいて来ていた事には気がついていたツクヨだったが、それがツバキだとまでは判断できなかった。対象の魔力や戦闘能力を、気性や潜在能力を可視化したオーラで判断する布都御魂剣の能力では、機械により本人の身体能力をアシストする能力の向上を読み取ることは出来ない。
故に、瞼の裏で見ていた光景に映る他の者達と比べて弱々しい反応のツバキが、彼らが苦戦する獣を一撃で吹き飛ばした事に驚きを隠せなかった。
「おいおい、しっかりしろよな」
「その声はッ・・・ツバキかい!?君、今のは・・・」
「そうか、ツクヨにこれ見せんのは初めてだったか。言ったろ?俺ぁ手先が器用なんだって。コイツがあれば俺だってお前らみたいに戦えんだぞ!?」
ツバキが発明を披露し、自ら戦闘を行ったのはオルレラの研究所での戦闘が初めてだった。ウィリアムの元で造船技師をしていた事で、世界中の様々な素材が海賊達の手によって持ち込まれた。
そこで見てきたウィリアムの技術や素材に対しての知識が、ツバキの発明を後押しし彼自身の強さへの憧れや発想力を実現する力となっていた。フォリーキャナルレースを経て、ツバキは武術の何たるかをハオランを見て学んだ。
その時のインスピレーションが、ツバキの“身体能力の底上げ“というものを手助けするガジェットを生み出したのかもしれない。
「何だぁ!?そのガキは!?」
「ガキじゃねぇ!助けに来てやった“仲間“だ!後で吠え面かくなよ?俺がアンタらの仲間を助けてやったんだって知ることになるぞ?」
「威勢のいいガキだ。だが、どうやら口だけではないらしい。戦力が増えるのはありがてぇ事だ!」
幻覚を振り払い戦闘に復帰したガレウスに加え、その側近の獣人二人とツクヨら人間の三人と全体の戦力が増し、獣達の猛攻を徐々に押し返し始める一行だったが、彼らに吹き飛ばされ物陰の奥へと飛ばされた獣の一部が、獣人族の肉体強化の性質を徐々に理解し始めたのか、身体の一部を強化して襲ってくる個体が現れ始めたのだ。
獣人族の気配の感知や、ツクヨの布都御魂剣の能力では、それほど大きな変化を戦いながら感知するのは難しいようで、実際に懐へ飛び込んで来て初めてその強化に押され始める。
「なッ・・・!?コイツ!!」
「妙に力強い奴が混じってるッ!?みんな!気をつけろ!強化された奴が混じってる!」
「強化だと!?コイツらいつの間に・・・!肉体強化してる奴ぁ止めたはずだろ!?」
「強化されてんのは一部だ。コイツら途中で強化を止められんのかぁ!?」
腕力を増して力押しを仕掛けてくる個体や、脚力を強化し素早い動きで翻弄する者など、獣達の強化は様々だった。故に対策が取りづらく、彼らを苦戦させる要因となっていた。
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