World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
1,021 / 1,646

少年の手助け

しおりを挟む
 再び勢いを取り戻したガレウスによって、次々に彼らを襲う獣達が宙へと舞う。しかし、その戦いぶりの節々に攻撃を躊躇うような挙動が見られる。自らを奮い立たせ、目の前のやるべき事に集中しようとするも、未だに幻覚を見ているのだろうか。

 「よかった!元に戻った様だね!」

 「どうかな・・・。アンタらには分からねぇかもしれねぇが、どうも本調子じゃない様だ。俺達からすれば、空回りしてるように見えるぜ。攻撃にいつものキレがねぇ・・・」

 十分過ぎるほどに活躍してくれている様に見えたのは、ツクヨやミアだけだったようだ。言われてみれば、豪快に獣を投げ飛ばしていくガレウスだが、その実致命傷を与えるようなダメージにはなっていない。

 まるで苛立ちを発散するかのように、見た目だけの大暴れとも見て取れる戦いの内容だったのだ。

 「彼は何かに謝っていた・・・。心当たりは?」

 「謝る?何にだ?」

 「分からない。最初は独り言か敵に対してだと思ったけど、近づいて見たら明らかに近くにいる何かに謝ってるようだった・・・」

 ガレウスの側近を務める獣人達にも、彼が何に対して謝っているのかは分からなかった。それもその筈。彼らはガレウスがアズール達のいる獣人族の群れに合流した後に出会った者達ばかり。

 自らの汚点でもある過去を、ガレウスは彼らにも話したことはなかったのだろう。自身の弱みを隠し、“剛腕のガレウス“という力強い印象をその身に纏い、この獣人族の群れの中でのし上がってきた。

 彼の強さに憧れてついて来る者も大勢いたことだろう。側近になった彼らもその内の一人だ。だからこそ、ガレウスのちょっとした変化にも気づけたのだ。

 だが、戦いの中でここまで冷静さをかいたガレウスを初めて見たようで、彼らも動揺しているようだ。

 そこへ、窮地を自らの発明品で乗り越えたツバキが、ツクヨやミアを追ってやって来た。彼の足には獣人達にも渡したガジェットが取り付けられており、まるで身軽なクラスの忍者や武闘家のような動きで、次々に木々を渡って来る。

 地上で獣と戦うツクヨの姿を見つけた彼は、ガジェットにより強化された踏み込みで飛び出すと、背後からツクヨを狙う獣に対し少年が打ち出した技とは思えぬ威力の蹴りをお見舞いする。

 「ッ・・・!!」

 布都御魂剣の能力で何か小さな反応が近づいて来ていた事には気がついていたツクヨだったが、それがツバキだとまでは判断できなかった。対象の魔力や戦闘能力を、気性や潜在能力を可視化したオーラで判断する布都御魂剣の能力では、機械により本人の身体能力をアシストする能力の向上を読み取ることは出来ない。

 故に、瞼の裏で見ていた光景に映る他の者達と比べて弱々しい反応のツバキが、彼らが苦戦する獣を一撃で吹き飛ばした事に驚きを隠せなかった。

 「おいおい、しっかりしろよな」

 「その声はッ・・・ツバキかい!?君、今のは・・・」

 「そうか、ツクヨにこれ見せんのは初めてだったか。言ったろ?俺ぁ手先が器用なんだって。コイツがあれば俺だってお前らみたいに戦えんだぞ!?」

 ツバキが発明を披露し、自ら戦闘を行ったのはオルレラの研究所での戦闘が初めてだった。ウィリアムの元で造船技師をしていた事で、世界中の様々な素材が海賊達の手によって持ち込まれた。

 そこで見てきたウィリアムの技術や素材に対しての知識が、ツバキの発明を後押しし彼自身の強さへの憧れや発想力を実現する力となっていた。フォリーキャナルレースを経て、ツバキは武術の何たるかをハオランを見て学んだ。

 その時のインスピレーションが、ツバキの“身体能力の底上げ“というものを手助けするガジェットを生み出したのかもしれない。

 「何だぁ!?そのガキは!?」

 「ガキじゃねぇ!助けに来てやった“仲間“だ!後で吠え面かくなよ?俺がアンタらの仲間を助けてやったんだって知ることになるぞ?」

 「威勢のいいガキだ。だが、どうやら口だけではないらしい。戦力が増えるのはありがてぇ事だ!」

 幻覚を振り払い戦闘に復帰したガレウスに加え、その側近の獣人二人とツクヨら人間の三人と全体の戦力が増し、獣達の猛攻を徐々に押し返し始める一行だったが、彼らに吹き飛ばされ物陰の奥へと飛ばされた獣の一部が、獣人族の肉体強化の性質を徐々に理解し始めたのか、身体の一部を強化して襲ってくる個体が現れ始めたのだ。

 獣人族の気配の感知や、ツクヨの布都御魂剣の能力では、それほど大きな変化を戦いながら感知するのは難しいようで、実際に懐へ飛び込んで来て初めてその強化に押され始める。

 「なッ・・・!?コイツ!!」

 「妙に力強い奴が混じってるッ!?みんな!気をつけろ!強化された奴が混じってる!」

 「強化だと!?コイツらいつの間に・・・!肉体強化してる奴ぁ止めたはずだろ!?」
「強化されてんのは一部だ。コイツら途中で強化を止められんのかぁ!?」

 腕力を増して力押しを仕掛けてくる個体や、脚力を強化し素早い動きで翻弄する者など、獣達の強化は様々だった。故に対策が取りづらく、彼らを苦戦させる要因となっていた。

 激しさの増す戦闘の中で、戦力は増たもののまだ経験の足りないツバキが、一瞬の隙を突かれ、一体の獣に捕まってしまう。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れた俺が辿り着いたのは、自由度抜群のVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。 選んだ職業は“料理人”。 だがそれは、戦闘とは無縁の完全な負け組職業だった。 地味な日々の中、レベル上げ中にネームドモンスター「猛き猪」が出現。 勝てないと判断したアタッカーはログアウトし、残されたのは三人だけ。 熊型獣人のタンク、ヒーラー、そして非戦闘職の俺。 絶体絶命の状況で包丁を構えた瞬間――料理スキルが覚醒し、常識外のダメージを叩き出す! そこから始まる、料理人の大逆転。 ギルド設立、仲間との出会い、意外な秘密、そしてVチューバーとしての活動。 リアルでは無職、ゲームでは負け組。 そんな男が奇跡を起こしていくVRMMO物語。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

処理中です...