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壊れた研究員
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彼女に意識が芽生え始めたであろう頃、彼はついに行動に移す。施設の協力者の力を借り、外での実施試験の際に脱走。まだ身体を動かすことに不慣れなローズを連れ、組織の追手が来れないところまで逃げ切ろうと試みる。
基本的に違法な研究を行っていた彼の所属していた組織は、人目のつかないところで密かに研究実験を行っていたことから、街や国のように人の往来が激しく単純に人の多いところには姿を見せない。
それを知っていた彼は、森にある施設から最も近い街である“リナムル“を目指す。外での実験回数を重ねていないローズにとっては、環境も変わり身体を動かす事による疲労が著しく、すぐに動けなくなってしまう程息も荒くなってしまう。
ローズを抱えながらリナムルに到着した彼は、そこでとある大国へ向かう馬車を待っていた。その当時のリナムルにはまだ、希少とされる木材の存在が発見されておらず、人の往来も多くはなかった。
だが、施設にあった資料に物資の調達を行う場所や時刻を記したものを目にし、知識として記憶していた彼はリナムルにその大国から送られてくる極秘の物品が届くことを知っていた。
疲労したローズを休ませながら特定の場所で彼らが待っていると、施設へ向けた荷物を運んできた馬車がやって来る。荷下ろしを終え、リナムルを去ろうとする馬車に忍び込んだ彼とローズ。
彼らが乗り込んだ馬車の向かう先は、非道な研究を極秘に行う為に人目のつかない森に施設まで構え、様々指示を出していたとされる上層部がいる先進国、“アークシティ“へと向かっていたのだ。
彼らにとっては敵地ではあるが、最も人口が多いとされる場所であり、姿を隠すにはもってこいの場所だと考えた。それに何でも揃うアークシティなら、ローズの治療や精神を取り戻す為の手段も見つかるかもしれない。
馬車がリナムルを立ち、暫くしてから施設内では彼とローズが戻らない事が問題となり、ちょっとした騒ぎになっていた。研究者の中には、実験の段階で精神を壊してしまう者もいる為、こういった事件は少なくなかった。
だがこれまで情報が外部に漏れていないということは、それだけ問題の処理が迅速で徹底していたという事なのだろう。そしてそれは、彼やローズも例外ではなかった。
彼らが脱走したことはすぐに施設内の上層部に知れ渡り、研究を指示している者の元へ連絡がいく。その後、脱走した者達がどうなったかを知る者はいない。単純に素性を隠し身を隠したという可能性もゼロではないが、誰も情報を漏らさなかったとは考えづらい。
中には組織のやり方に不満を持っていた者や、非人道的な研究に否定的な者も多かった筈。外の者にその事を話し、政府の警備隊や施設を壊滅させる為の討伐隊が送り込まれるという事も、彼が施設に赴任してから一度も行われた事がなかった。
施設の上層部達の落ち着いた問題への対処を見るに、彼らは指示を出している者達に相当な信頼を寄せていることが伺える。上へ連絡を終えると、彼とローズが脱走した施設は、まるで何事もなかったかのようにいつも通りの研究の日々へと戻っていったそうだった。
そして彼とローズは漸くアークシティへ行き着くと、そこで素性を隠しながら街に溶け込み、密かに暮らしていた。言葉を喋れないローズの為に書物を揃え、あまり人目につきたくなかった彼らは身体を動かす道具を揃えて、徐々に一般的に人間らしい暮らしを目指し日々を過ごしていく。
子供のように様々な事を吸収して成長していくローズを、微笑ましく面倒を見ていた彼は言葉を覚え始めた彼女に、初めて名前を聞かれる。
ここで初めて煙の人物である彼の名が明かされた。
名を“ダマスク“。施設では精神に関する研究を行っており、研究の中で常人が持つ精神を欠落させてしまった一研究員の一人であった。
言葉を覚えたてのローズは、そのダマスクという言葉の響きが気に入ったのか、まるで赤子のように彼の名前を呼んでは嬉しそうな笑みを浮かべていた。徐々に言葉の意味や自分自身の思いや意図を伝えようとするローズを見て、ローズとしての意思を持ち始めたのだと、ダマスクは安堵したと同時に、元々の彼女の記憶や意思が戻った時に、今のローズとしての記憶や意思、人格はどうなってしまうのかという不安が、徐々に彼を包みつつあった。
基本的に違法な研究を行っていた彼の所属していた組織は、人目のつかないところで密かに研究実験を行っていたことから、街や国のように人の往来が激しく単純に人の多いところには姿を見せない。
それを知っていた彼は、森にある施設から最も近い街である“リナムル“を目指す。外での実験回数を重ねていないローズにとっては、環境も変わり身体を動かす事による疲労が著しく、すぐに動けなくなってしまう程息も荒くなってしまう。
ローズを抱えながらリナムルに到着した彼は、そこでとある大国へ向かう馬車を待っていた。その当時のリナムルにはまだ、希少とされる木材の存在が発見されておらず、人の往来も多くはなかった。
だが、施設にあった資料に物資の調達を行う場所や時刻を記したものを目にし、知識として記憶していた彼はリナムルにその大国から送られてくる極秘の物品が届くことを知っていた。
疲労したローズを休ませながら特定の場所で彼らが待っていると、施設へ向けた荷物を運んできた馬車がやって来る。荷下ろしを終え、リナムルを去ろうとする馬車に忍び込んだ彼とローズ。
彼らが乗り込んだ馬車の向かう先は、非道な研究を極秘に行う為に人目のつかない森に施設まで構え、様々指示を出していたとされる上層部がいる先進国、“アークシティ“へと向かっていたのだ。
彼らにとっては敵地ではあるが、最も人口が多いとされる場所であり、姿を隠すにはもってこいの場所だと考えた。それに何でも揃うアークシティなら、ローズの治療や精神を取り戻す為の手段も見つかるかもしれない。
馬車がリナムルを立ち、暫くしてから施設内では彼とローズが戻らない事が問題となり、ちょっとした騒ぎになっていた。研究者の中には、実験の段階で精神を壊してしまう者もいる為、こういった事件は少なくなかった。
だがこれまで情報が外部に漏れていないということは、それだけ問題の処理が迅速で徹底していたという事なのだろう。そしてそれは、彼やローズも例外ではなかった。
彼らが脱走したことはすぐに施設内の上層部に知れ渡り、研究を指示している者の元へ連絡がいく。その後、脱走した者達がどうなったかを知る者はいない。単純に素性を隠し身を隠したという可能性もゼロではないが、誰も情報を漏らさなかったとは考えづらい。
中には組織のやり方に不満を持っていた者や、非人道的な研究に否定的な者も多かった筈。外の者にその事を話し、政府の警備隊や施設を壊滅させる為の討伐隊が送り込まれるという事も、彼が施設に赴任してから一度も行われた事がなかった。
施設の上層部達の落ち着いた問題への対処を見るに、彼らは指示を出している者達に相当な信頼を寄せていることが伺える。上へ連絡を終えると、彼とローズが脱走した施設は、まるで何事もなかったかのようにいつも通りの研究の日々へと戻っていったそうだった。
そして彼とローズは漸くアークシティへ行き着くと、そこで素性を隠しながら街に溶け込み、密かに暮らしていた。言葉を喋れないローズの為に書物を揃え、あまり人目につきたくなかった彼らは身体を動かす道具を揃えて、徐々に一般的に人間らしい暮らしを目指し日々を過ごしていく。
子供のように様々な事を吸収して成長していくローズを、微笑ましく面倒を見ていた彼は言葉を覚え始めた彼女に、初めて名前を聞かれる。
ここで初めて煙の人物である彼の名が明かされた。
名を“ダマスク“。施設では精神に関する研究を行っており、研究の中で常人が持つ精神を欠落させてしまった一研究員の一人であった。
言葉を覚えたてのローズは、そのダマスクという言葉の響きが気に入ったのか、まるで赤子のように彼の名前を呼んでは嬉しそうな笑みを浮かべていた。徐々に言葉の意味や自分自身の思いや意図を伝えようとするローズを見て、ローズとしての意思を持ち始めたのだと、ダマスクは安堵したと同時に、元々の彼女の記憶や意思が戻った時に、今のローズとしての記憶や意思、人格はどうなってしまうのかという不安が、徐々に彼を包みつつあった。
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