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戦いの後の帰路
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「あの時、彼女の声を聞かずにいたら・・・。俺はただ復讐という魔物に呑まれていたかもしれない・・・」
後にアズールが語ったのは、研究所の爆破を行う寸前の心境だった。
ポータルを抜けてやって来た彼は、何故か肉体強化状態だった。それを見たシンとツクヨは何事かと身構えたが、ポータルをすぐに閉じろという彼の声に、待機していた妖精のエルフ族を呼び出しポータルを閉じた。
向こう側がどうなったのかは分からないし、何処かで大爆発が起こったかのような音や様子も感じられない。一体どれ程あの研究所は離れていたのだろうか。
一行は何とか当初の目的である研究所の破壊を見事にやり遂げた。シン達は研究員達を連れ、先に避難したエイリルら囚われの者達を追って、ミア達のいるリナムルへと向かった。
その道中、研究員の数名が研究所から持ち出した資料を押収。その中身を確認していたシンとツクヨは、ある疑問の答えを見つけることになる。それはオルレラの街でツクヨ達を街の中に閉じ込めていたオスカーの願いの事だった。
彼もまた、アークシティの研究を手伝わされていた研究者の一人で、その内容はこの世界の生命体が宇宙を目指す為のもので、宇宙へ到達するために用いられる予定であったロケットの燃料についての研究だった。
しかし、その燃料というのが普通のものではなく、アークシティの研究は生き物を使った生物燃料という恐ろしいものだった。生命にはそれぞれ個体によって魔力を蓄えられる量が異なる。
その中でも、幼い幼体のうちは魔力の影響を受けやすく、大量に魔力を集めることが出来る。故に研究で扱われていたのは、人間の子供達だった。
嘗てのオルレラ研究所に閉じ込められたツバキは、そこで被検体となった子供達と出会うことになる。彼らはそれぞれ膨大な魔力を秘めており、その力を使ってツバキらの解放に協力した。
子供達も解放を望んでいたようで、子供達を守る為に結界を張ってたオスカーを止め、願わくば同じ境遇にある実験体となっている子供達を救って欲しいと、リナムル周辺にあるという研究所の事を伝えた。
そして今回、シン達は研究所で囚われていた者達を解放することに成功した。だが、その中にオスカーの言っていた子供達はいなかったのだ。エンプサーを倒した後、悍ましい実験や研究が行われていたであろう地下研究所内は隈なく探した。しかし数人の子供の姿はあれど、そのような子供達の姿は見当たらなかったのだ。
研究員が持ち出した資料の中には、上層部への報告書のコピーなのか研究の過程と結果、そしてその後の被検体の行方などが記されていた。
どうやらオスカーの見立て通り、リナムルの研究所には生物燃料である子供達は確かに居たようだった。しかし、研究の段階で子供達は別の用途で使われる事になったようだ。
彼らの代わりに生物燃料としての素材に選ばれたのは、より魔力を集め易い性質を持つエルフの子供達だったのだ。センチはエルフを使った研究に憧れていたようだが、エンプサーは捕らえたエルフの子供を、時折やって来るアークシティの上層部の者に引き渡していたのだ。
つまりリナムルにいた子供達は、別の場所へと護送されてしまっていたのだ。
「どうりで子供達の姿が見えなかった訳だ・・・」
「どうする?これではそのオスカーって人との約束は・・・」
「勿論、助け出すよ。彼が子供達を助けたいと思う気持ちはよく分かるからね。例えそれが自分の子供ではなかったとしても、それほど慕われていたらもう我が子も同然だっただろうからね・・・」
ツクヨは諦める気など初めからなかった。ツバキから間接的に頼まれた依頼だが、彼にもその熱意は伝わっていた。家族を持つ彼なら尚の事そう思うのかもしれない。
「そういえば、ツクヨの意識の中入っていったダマスクはどうなったんだ?」
「ダマスク・・・私の中に?」
エンプサーによって記憶を弄られ、デストロイヤー のクラスを強制的に解放させられていたツクヨを正気に戻したのは、他でもないダマスクだった。彼の功績なくしても、一行の作戦の成就は叶わなかっただろう。
そんな影の功労者でもある彼は、ツクヨの意思の中へ入ってからの消息が途絶えていた。シン達も命懸けの戦いでそこまで意識が回らなかったようだ。エンプサー戦の後も、囚われた者達の捜索と救助でそれどころではなかった。
狡猾な彼がこのまま退場していったとは思えないが、一切音沙汰がないのが気になっていた。だがツクヨの様子から、彼の中にいるといったことはないのだろうか。
「いないのか?」
「わっ分からない。どうやったら彼がいることが分かるんだ?」
しかし、シンにも彼の存在を今すぐに確かめることはできない。ただでさ多くの人間達を連れて移動する中、シンがブリジリアーノのスキルから習得した操影を使えばシンは自分の身体を誰かに預けなければならない。
確かめるにしても、リナムルに帰ってからになるだろう。それに彼らは、どこかそこまで心配はしていなかった。今は顔を出さないだけで、今は何処かに潜んでいるだけなのだろうと。
後にアズールが語ったのは、研究所の爆破を行う寸前の心境だった。
ポータルを抜けてやって来た彼は、何故か肉体強化状態だった。それを見たシンとツクヨは何事かと身構えたが、ポータルをすぐに閉じろという彼の声に、待機していた妖精のエルフ族を呼び出しポータルを閉じた。
向こう側がどうなったのかは分からないし、何処かで大爆発が起こったかのような音や様子も感じられない。一体どれ程あの研究所は離れていたのだろうか。
一行は何とか当初の目的である研究所の破壊を見事にやり遂げた。シン達は研究員達を連れ、先に避難したエイリルら囚われの者達を追って、ミア達のいるリナムルへと向かった。
その道中、研究員の数名が研究所から持ち出した資料を押収。その中身を確認していたシンとツクヨは、ある疑問の答えを見つけることになる。それはオルレラの街でツクヨ達を街の中に閉じ込めていたオスカーの願いの事だった。
彼もまた、アークシティの研究を手伝わされていた研究者の一人で、その内容はこの世界の生命体が宇宙を目指す為のもので、宇宙へ到達するために用いられる予定であったロケットの燃料についての研究だった。
しかし、その燃料というのが普通のものではなく、アークシティの研究は生き物を使った生物燃料という恐ろしいものだった。生命にはそれぞれ個体によって魔力を蓄えられる量が異なる。
その中でも、幼い幼体のうちは魔力の影響を受けやすく、大量に魔力を集めることが出来る。故に研究で扱われていたのは、人間の子供達だった。
嘗てのオルレラ研究所に閉じ込められたツバキは、そこで被検体となった子供達と出会うことになる。彼らはそれぞれ膨大な魔力を秘めており、その力を使ってツバキらの解放に協力した。
子供達も解放を望んでいたようで、子供達を守る為に結界を張ってたオスカーを止め、願わくば同じ境遇にある実験体となっている子供達を救って欲しいと、リナムル周辺にあるという研究所の事を伝えた。
そして今回、シン達は研究所で囚われていた者達を解放することに成功した。だが、その中にオスカーの言っていた子供達はいなかったのだ。エンプサーを倒した後、悍ましい実験や研究が行われていたであろう地下研究所内は隈なく探した。しかし数人の子供の姿はあれど、そのような子供達の姿は見当たらなかったのだ。
研究員が持ち出した資料の中には、上層部への報告書のコピーなのか研究の過程と結果、そしてその後の被検体の行方などが記されていた。
どうやらオスカーの見立て通り、リナムルの研究所には生物燃料である子供達は確かに居たようだった。しかし、研究の段階で子供達は別の用途で使われる事になったようだ。
彼らの代わりに生物燃料としての素材に選ばれたのは、より魔力を集め易い性質を持つエルフの子供達だったのだ。センチはエルフを使った研究に憧れていたようだが、エンプサーは捕らえたエルフの子供を、時折やって来るアークシティの上層部の者に引き渡していたのだ。
つまりリナムルにいた子供達は、別の場所へと護送されてしまっていたのだ。
「どうりで子供達の姿が見えなかった訳だ・・・」
「どうする?これではそのオスカーって人との約束は・・・」
「勿論、助け出すよ。彼が子供達を助けたいと思う気持ちはよく分かるからね。例えそれが自分の子供ではなかったとしても、それほど慕われていたらもう我が子も同然だっただろうからね・・・」
ツクヨは諦める気など初めからなかった。ツバキから間接的に頼まれた依頼だが、彼にもその熱意は伝わっていた。家族を持つ彼なら尚の事そう思うのかもしれない。
「そういえば、ツクヨの意識の中入っていったダマスクはどうなったんだ?」
「ダマスク・・・私の中に?」
エンプサーによって記憶を弄られ、デストロイヤー のクラスを強制的に解放させられていたツクヨを正気に戻したのは、他でもないダマスクだった。彼の功績なくしても、一行の作戦の成就は叶わなかっただろう。
そんな影の功労者でもある彼は、ツクヨの意思の中へ入ってからの消息が途絶えていた。シン達も命懸けの戦いでそこまで意識が回らなかったようだ。エンプサー戦の後も、囚われた者達の捜索と救助でそれどころではなかった。
狡猾な彼がこのまま退場していったとは思えないが、一切音沙汰がないのが気になっていた。だがツクヨの様子から、彼の中にいるといったことはないのだろうか。
「いないのか?」
「わっ分からない。どうやったら彼がいることが分かるんだ?」
しかし、シンにも彼の存在を今すぐに確かめることはできない。ただでさ多くの人間達を連れて移動する中、シンがブリジリアーノのスキルから習得した操影を使えばシンは自分の身体を誰かに預けなければならない。
確かめるにしても、リナムルに帰ってからになるだろう。それに彼らは、どこかそこまで心配はしていなかった。今は顔を出さないだけで、今は何処かに潜んでいるだけなのだろうと。
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